インシテミル
クローズドサークルに得体の知れない密室人狼が組み合わさった様なストーリー。米澤穂信の2007年の作品であり、自身再読になるが改めて楽しんだ作品。
詳細は忘れていたがどこか物足りなさがあった印象で、改めて作中世界へと飛び込んだ。
クローズドサークルものにありがちな其々の登場人物達の因縁は今作では希薄で、ちょっとした繋がりについても上手く反映はされていない。一方通行の関係性のなかで、トリックを駆使したり伏線として活用できていればさらに面白かったと思う。
また、彼らが参加した実験について全体的に大味で綻びがある様に思ったが、これについては最終的にその理由が語られており腹落ち出来た。
主人公の結城のキャラクターについては、序盤にあまり切れ者の印象がなかったため、後半の覚醒に面食らってしまった。序盤から切れ者である事を読者に共有しても作品としては大きな影響は無かったのではと思う。
須和名のキャラクターは見事で、お嬢様でありながらマイペースに見え、それでいて時折垣間見える冷酷さは「正しく」魅力的だ。願わくば続編を期待していたのだが、流石に無理だろう。
今作においては、クローズドサークル特有の雰囲気というか、リズムが存在していない。大量殺人もいくつかの事件に分かれてしまっており、一貫性がなく、生き残った人数もある程度いるため、純粋なクローズドサークルものとは一線を画す。作中の当事者たちの役割についても少し物足りなく感じてしまい、それぞれがそれぞれの持ち回りで活躍する前に退場してしまうようなイメージだ。もっと人間的な内面の分や恐ろしさの部分を表現することができれば、今作はもっと面白いものだったかもしれない。
既存のクローズドサークルに比べれば、設定などを踏まえて新しい試みがされており、当時においてはとても斬新な作品だったに違いない。2025年の現代から読めば、その後圧倒的に成長している筆者の作品を知っているため、現在の筆者が同じようなテーマで作品を書いたらどうなるものだろうと興味がある。レビューに投稿して、評価については、あくまで現代の筆者の作品を知っているからで、当時読んだ印象ではもっと斬新だった記憶がある。