なんでか今、ブグ友界隈で大刀洗万智が人気。
波に乗せられて急いで読む。
★3の……中かな〜?
大刀洗万智初出の「さよなら妖精」を既読だからその分オマケで。
大刀洗万智三部作。
出版順なら「さよなら妖精」「真実の10メートル手前」「王とサーカス」だと思ってた。
しかし
「さよなら妖精」2004年
「王とサーカス」2015年7月
「真実の〜」2015年12月
5ヶ月違いで「王とサーカス」の方が先やないか〜!!
しかもややこしいのは大刀洗万智自身の時系列なら
「さよなら妖精」
↓
「真実の10メートル手前」の表題作の真実の10メートル手前
↓
「王とサーカス」
↓
「真実の10メートル手前」の表題作以外の五編
となっている。
いや、めんどくさ。
まあ、どっから読んでもいいわ。
支障ありません。
大刀洗万智を楽しめばよろし。
はい、六編の短編集。
・真実の10メートル手前
わずかな手がかりで場所を特定するも10メートル手前で……。
フリーになる前の記者時代の大刀洗の一人称。
・正義漢
電車のホームで。
・恋累心中
心中を利用する者は。
・名を刻む死
近所の鼻つまみ者爺さん。
・ナイフを失われた思い出の中に
「さよなら妖精」の……。
・綱渡りの成功例
災害被災者老夫婦。
なぜ表題作だけが「王とサーカス」以前で、残りの短編は「王とサーカス」以後なのか。
なぜ表題作だけが大刀洗の一人称なのか。
そもそもなぜ大刀洗万智という「さよなら妖精」のキャラクターを復活させたのか。
それらの答えが文庫巻末に付けられた「単行本版あとがき」に記されています。
(*´ω`*)ナルホドネー
読んでいて思ったのは大刀洗万智のキャラクターの秀逸さ。
頭が切れ、観察眼に優れ、感情表現があまり豊かとは言えない彼女は一見して怜悧で孤高の存在に思える。
しかしその実態は自分の行動や言説がときに凶器となることを理解し、常に気を使い、利己的なまたは謎を解く優越感や売名、自己満足からは遠い存在であるように思える。
そこに陥らないよう自戒が伺えるのが「正義漢」だった。
少し潔癖すぎるのではとも思ったが、言説の方向性のない威力を慮る彼女らしいとも思う。
もしかしたら大刀洗に協力する高校時代のこの友人とは「さよなら妖精」の守屋だろうか? だといいな。
「名を刻む死」ではラストの意外なほど強い言葉に驚かされる。
彼女は、優しいがゆえに自己を蝕んでいる少年の心を、まるで通り魔のような罪悪感から、その強い言葉をもって解き放ちたかったのだろう。不器用で朴訥などちらかといえば男性的ともいえる優しさが感じられた。
「ナイフを〜」でも彼女の明晰さと行動力が際立つが、何より同行している人物に驚かされることになった。
彼が折に触れ妹と呼ぶその存在は「さよなら妖精」の。
「綱渡りの成功例」もポイントは罪悪感だが、これはあまり上手くないな。なんだか中途半端な印象。いかにも日本の素朴な老夫婦らしいが、きっと海外に出版されたなら読者は首を傾げるだろう。
賢いがゆえにスクープとなるような真実に触れながら、しかし、単純に自己の手柄とせず、誰にとっても最善の伝え方を考える大刀洗万智のキャラクター。
そら好感呼ぶよな〜。
ただ完璧すぎるきらいはある。
なにかしょーもない弱点、お化けが怖いとか、実はかなりの運動音痴とか、下ネタに弱いとか、なにか愛嬌のようなものも欲しいなーとは思う。
あと思ったのは、現代のいわゆる探偵というものは記者というのが1番近い位置に立てるのではないだろうか。
警察ならもっとダイレクトに事件に接するが、警察の売りは組織力だし、本職の探偵は浮気調査なんかが本業っぽいしね。
ミステリーに使い勝手が良いキャラクターだけにもっと活躍が見たいものです。
結局なんでフリーになったのか分からずじまいだし。
そのへんのことを絡めて長編一本お願いしま〜す。