あらすじ
辻村深月、万城目学、湊かなえ、米澤穂信――。
綺羅、星のごとく輝く人気作家たちによる、“時”をテーマにしたアンソロジー。
小学校時代に埋めたタイムカプセルがほどくこじれた関係、配置換えになった「縁結び」の神様の新たな仕事、人類には想像もつかない悠久なる物語……。
“時間”が築いたきらびやかな迷宮へ、ようこそ――。
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Posted by ブクログ
四人の作家によるアンソロジー。「時」を題材にした作品集。
タイムカプセルの八年 辻村深月
主人公は大学教授だが、自身の研究に没頭し、父親らしい姿は今まで見せられた事がない。
どことなく自分に投影できてしまう人物で、息子のクリスマスプレゼントを買い忘れた際のいい訳もある意味で納得してしまった(笑)。父親というだけで煩わしい人間関係やコミュニケーションに巻き込まれていく事への疑問は自分勝手に感じるが通じる部分もあり彼の人間臭さを感じたが、合わせて「タイムカプセル」の事実を知り、行動してしまう矛盾、もう一度父親の会メンバーが集合し、意気投合する様子に温かみと少し滑稽な感じがした。
彼自身が見る彼の人生や息子に対する想いは少し捻くれてはいるがきちんと息子に伝わっているようで、おそらくこれだけ変わり者とずっと一緒にいる奥さんとも、実はお互いに信頼関係を持っているのだろうとかってに想像し、暖かい気持ちになった。
トシ&シュン 万城目学
文章の運びが面白く、文学的な作品だがとても楽しむ事ができた。俊(シュン)と瞬(シュン)は、確かに結婚したらどうするのかなぁと勝手に心配しているが、それはまだまだ先の話で。
神様も大変なんだなぁ(笑)と思える程、ジャンルが違ってもフォローしなければならない程忙しい、合格祈願の神様の元、派遣されてきたのはずっと縁結びを生業にしていた神様。トシ&シュンの芸能の夢を成就させるが、それがきっかけで彼らは未来に別れる羽目になるという。元縁結びの神様が下す決断、そして驚きの結末に面白かったと心から言える作品だった。
下津山縁起 米澤穂信
箇条書きの様な状態で、物凄く広大な時間軸で人類史が進む。途中、とある教授が登場し、人が電気信号により意思を保つのであれば、電気を持っているモノには知性があるとして研究を進めている。そこから再び時間軸はすすむ。一体何を見せられているのか。
最後のオチ、やりとりは当然衝撃。今までの伏線から鑑みればこの結末は必然なのだが。一体どうやって罰を下すのかは考えるのが愚かなのか(笑)余りにもスケールが大きい、おそらく米澤穂信にしか思いつく事ができないであろう、そんなあらすじであり作品だ。頭を柔らかくして(ドロドロになるまで)いないと。空いた口が塞がらなくなってしまうだろう。
長井優介へ 湊かなえ
ある意味で感動的なストーリーだが、アンソロジー内でテーマが被ってしまうのは面白くない。短編集の特徴を活かしてまさかのコラボレーションになっていたら感激だったが残念だ。
優介の様な経験をしてしまうと、どんな理由があれ、過去のグループに戻りたいとは思えない。今回の様な理由であっても絶対に戻る事はない。(いじめられた事がない奴にはわからないだろうなぁ)
そして、いじめられている当時は自身に対する悪意については敏感に感じ取る事が出来る(嫌な予感がするんだ)
15年経って都合の良い真相が現れる事なんてバカバカしい限りだ(ミステリーとは言えない)
主人公の想いが余りにも中途半端な設定だった。湊かなえなら「復讐で全員殺す」様な狂った展開を書いて欲しかったが・・・。
という事を妄想しながら読んでしまった僕が可笑しいのだろうなあ(笑)
Posted by ブクログ
私には一年に一度だけ訪れる街があります。
数年前からその街に行く事が家族の行事となり街の成長が私の密かな楽しみです。
そんな街の雑貨屋さんで発見したのが本書です。
まず、驚いたのが私の好きな作家だけの短編集であり、時という言葉に弱い私の掌に収まってしまうのは必然でした。
辻村深月さんの作品:子育てが苦手な父親が登場、身近な人にこんな人が居るなぁと思いながら読むものの、物語は途中で反転する!?
万城目学さんの作品:神様の言動が非常にコミカル!万城目学さんの他の作品に出て来る超常現象はこんな神様が起こしていたりして!なんて思ってしまいました。
米澤穂信さんの作品:長い歴史の物語、山の意志と人間
湊かなえさんの作品:らしくてらしくない作品、反応が遅い人にもう少し優しくしようと思った!
いずれに致しましても、私にとっては豪華なアンソロジーでした!
Posted by ブクログ
「タイムカプセルの八年」辻村深月
「トシ&シュン」万城目 学
「下津山縁起」米澤 穂信
「長井優介へ」湊 かなえ
壮大なスケールの「下津山縁起」、コミカルな神様コメディっぽい「トシ&シュン」
そしてタイムカプセルものの残り二編。卒業の記念に埋めるタイムカプセルを扱った二編なんですが、どちらも明るい読後感で爽やかでした。ニコ的には、ダメ教師の出てくる「タイムカプセルの八年」の方が好みでしたが。イヤ、いましたよ、このタイプのダメ先生。なんでしょう、自己陶酔型?辻村深月のダメorクソ教師の出てくる話、好きだなー。
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読み友さんの高評価につられて、時の罠。そうそうたる大御所の時を超えたミステリー。辻村さんのお話しはダメ親父が仕事が忙しいながら息子を陰で見守るお話し。最後は父親が本気を出したところは良かった。万城目さんのトシ&シュン。2人の夢をかなえるべく神様が本気になるお話し。米澤さんは上津山と下津山の不思議なお話し。2800年頃の人間、山との関わりが秀逸。最後の湊さんのお話しが一番。3秒遅れて聴くことができる主人公。様々な不運もあり人生がうまくかみ合わない。しかし最後は一気に視界が広がった。⑤辻⑤、万⑤、米⑤、湊⑤↑
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人気作家4人による「時間」をテーマにしたアンソロジー。
それぞれの作家性を読み比べることができて、とても楽しかった。それと同時に、自分の好みの作風を再確認でき、よい読書体験だったと思う。
辻村さんはいつもの作風と少し異なる人情もの。米澤さんはなかなか壮大な裁判もの(?)地名は架空だけど、地元の話で興味深かった。湊さんは初めて読んだけど、なかなか好みだった。
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タイムカプセルの八年と長井優介へが好き。
特に湊かなえさんの作品の方は鳥肌がたった。
心が温かくなった。
辻村深月さんの作品では、こどもの愛し方に強く共感した。子育て中のわたしにとって糧になる物語に出会えた。
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4名の作家さんのうち、2名は好きな作家さん。
最初の辻村深月さんのお話は先がさらにどうなったのか気になったし、最後の湊かなえさんもはぁーさすが!って思った。
新しい作家さんを知りたいのにとてもオススメー!
Posted by ブクログ
短編集とかアンソロジー物はあまり読んだ事がありませんでしたが、これは楽しめるお話ばかりでした。
家族愛もの(私にはオヤジの友情もの)やSF物、オチがスッキリとしたものニヤリとさせられるもの。
いろんな作家さんに少しずつ触れるには持ってこい、な一冊でした。
Posted by ブクログ
4人の作家さんの短編集。それぞれ面白かったけど1番気に入ったのは湊かなえさんの物語。
小学生の頃のタイムカプセルを開けに行く話だったんだけど、小学生時代にこじれたままになっていた友達との関係が見事にほぐれていく感じが読んでいて心地良かった。
人間関係のゴタゴタって結局は誤解から始まってるんだよなぁって思った。
Posted by ブクログ
アンソロジーは
手にした事のない
作家さんを
開拓できるから
嬉しい
実際
湊かなえ先生以外は
お初でした
''時''をテーマにした
コチラ
どのストーリーも
短編なのに
読み応えのある
ものばかりでした
「タイムカプセルの八年」
とっても共感が出来る
ストーリーと
ニヤッとしてしまうラスト
心が温まる時のお話しでした
「トシ&シュン」
これまた
全く違うテイスト
鴨川ホルモーや
偉大なるしゅららぼんが
元は小説だとは!
小説であの世界観を
どう表現してるのか?
出来るのか?
この短編読んで
なるほど・・
と納得しましたね
出来るんだと笑
「下津山縁起」
とっても読みづらい笑
な、何だこれは?
と半分混乱しながら
読み進めますが
どんどんのめり込み
ラストなるほど〜と
唸ってしまいました
「長井優介へ」
湊先生ってだけで
身構えちゃダメよね
最後のストーリーが
いじめかぁ
しかも湊先生の…
って
どんな結末こようが
落ちないぞ!
って
思ってたけど
穏やかな気持ちのまま
本を閉じる事が
出来ました
Posted by ブクログ
短編集だけどそれぞれ読み応えがある。
湊かなえの長井優介へが1番好き。
イヤミスイメージが強いけど
こんな暖かいストーリーもあるんだと思った。
Posted by ブクログ
「時」をテーマに捻ったアンソロジー4編。
・面白かった編
「タイムカプセルの八年」
何だこの屁理屈親父は?という導入から始まって、こんなのあるあるだなぁな脇キャラに流されながら意外と矜持を見せ、”黄金期”だった小学生時代の父親たちで優しい嘘を守り、綺麗にオチをつける。流れるように起承転結のレベルが高くて「いいもん見せてもらったぜ」って気分になる。ハズレなし作家だなぁハッピーエンドっていいよなあと素直に思える良作。
・微妙だった編
「トシ&シュン」
「パーマネント神喜劇」やん!よね??と思いながら読む。再掲かいと思いきや、こちらの発表が先で後でもう1章足して「パーマネント」完成だったみたい。これだけぶつ切りでもまぁ面白いけど、前後があった方が(っていうかパーマネント先に読んじゃってるから!)絶対うさん臭さと面白さが倍増するから惜しいなぁむず痒いなぁもったいないなぁともぞもぞしながら読む。そういう意味で微妙だったけど、夢の入れ子とか使いまわしとか(作者は嫌がるかもしれないけど)森見登美彦みたいで面白いよなあと改めて思った。パーマネントまた読も!
Posted by ブクログ
面白かった。続きが読みたくてあっという間に読んだ。
4人の作家さんの短編集。
題名の時の罠はなぜそのタイトルにしたのかやや不明。
私の好きな作家の辻村深月さん、湊かなえさんの短編は本当にワクワクした。さすがのお2人。
ただあとの2人の作家さんの話は面白くなかった。星4つは辻村さんと湊かなえさんの面白さだけでつけた。あとの2人は興味のあった作家さんだったのでとっても残念。
Posted by ブクログ
4人の人気作家による『時』をテーマとしたアンソロジー。
女性作家2人の作品は、どちらも学校の卒業記念で埋めたタイムカプセルがコア。しかし、辻村深月はハートフル。湊かなえはちょっとウエット気味と、それぞれの持ち味が存分に出ていて興深い。
対して男性作家2人の作品は、どちらかと言うとSF的作品。万城目学は、神様モノ。米澤穂信は過去から未来にかけての壮大な時間モノ。
売れっ子作家さんだけにハズレなし。
装丁の猫は何故?と思うが、読み終えるとおそらくシュレーディンガーの猫なのだろうと気付かせてくれる。
何れも初出は別冊文藝春秋らしいが、このアンソロジーは、企画が先にあって雑誌に掲載されたのか、掲載後に似たテーマを纏めてアンソロジー化したのか、どっちだったんだろう。
Posted by ブクログ
限りなく☆5つに近いが、米澤穂信さんの作品がネックになった。好きな作家さんばかりで胸が踊るお宝作品集。短編なのに読み応えもあり読後感もここまで素晴らしいとは。同じタイムカプセルものでも作家さんの味がそれぞれにあって甲乙つけがたい。人気作家さんだけにうならせるところが
全ての作品にあって最高。
Posted by ブクログ
アンソロジーです。アンソロジーは編者の意図というものがあると思うので、掲載されている順番に読んで、編者の思いを読み取るという楽しみもあると思うのですが、辻村さんがとても好きなので、好物は最後に、という嗜好ですので、辻村さんを最後に回して読み始めました。
結果として、辻村さんで初めて湊さんで終えた編者の意図も、うん、なるほどなあ、このストーリーの組立ても面白い。と思ったのですが、辻村さんを最後に回して、ふわぁっと、「さぁ、明日からも生きていこう」という気持ちが温かく湧き上がってきて読み終わったことで、この配列も正解の一つではないか、と思ったのです。
タイムカプセルが2作品続く、という難点が出てきたのですが、それも面白い効果に思えました。
私にとっては、湊さんのものは、やっぱりそうなのね、という感じを覚え、辻村さんの、ほ~そう来ましたか、の感じの方が、意外性があったように思います。
アンソロジーをたっぷり楽しんだ感じです。
Posted by ブクログ
1作品目を読みはじめ、なんだか見覚えがあると思ったら「家族シアター」に収録されている作品の1つだった。久々に読み直すことができ、やはり面白いと感じた。
特に不思議な世界観だったのは3作品目。米澤穂信さんの作品は初めて読んだが、切り口が独特で興味深かった。
Posted by ブクログ
神様の罠に続いて読んだ4名の作家さんによる時をテーマにしたアンソロジー。
神様の罠は個人的にいまひとつだったがこちらはどれも面白かった♪
辻村深月さんは神様の罠も良かったけどこちらも◎
万城目学さん、米澤穂信さんは"ぶっ飛んだ"お話で面白かった!
湊かなえさんも読後は暖かい気持ちになる作品。
ページ数も多くないのであっという間に読み終わりました☆
Posted by ブクログ
「タイムカプセルの八年」辻村深月
ひるま先生なぁー、、、こんな先生、小学生には人気だけど大人になってから考えるとこんな人無理、、ていうタイプの先生いるよね。熱血、金八先生の真似事、、
ただそれだけじゃない、これは浮世離れした大学教授の父親と小学校教師を目指す息子の話。
「トシ&シュン」万城目学
芥川龍之介の杜子春が関係あるかと思ったらたぶんないのかな?それとももう少し深読みすれば関係してるのかな?と。神様の目線の話は畠中恵さんを思い出した。
「下津山縁起」米澤穂信
なんとスケールのでかい!!米澤穂信さんがやってくれたなぁって思った。現実を追い越したタイミングあたりでゾクゾクしてきた。
「長井優介へ」湊かなえ
イヤミスの女王が書く救いのある話。
Posted by ブクログ
辻村深月さん、万城目学さん、米澤穂信さん、湊かなえさんの〈時〉をテーマにしたアンソロジー。辻村さんのタイムカプセルを題材に書かれたもの。私も小6の時、タイムカプセル埋めたけど、あの後どうなったんだろ。何を入れたかも全く覚えてないし、大した物入れてないんだろな。米澤さんのはよくわからなかった。湊さんのは、短編だけどよくできていて、面白かった。
Posted by ブクログ
面白かった。複数作家の短編集は良いものだなあ、と思った。一番面白かったのは米澤穂信か。ああいうヘンテコな短編が好きなのかもな。よって万城目学のものも好きだった。湊かなえのものはシンプルに良い物語だと思った。辻村深月の作品はやはり俺の体質に合わない。女性だからか? と思ったが湊かなえもいるので違うらしい。なんというかな、人物が単調で「良い話」を見せられているとだけ。回想形式を交える物語が好きなのかもしれない。短編というのはどれも、それぞれの人生のハイライトを切り取ったような、一人だけの物語という気がした。
Posted by ブクログ
”時間“をテーマにした4人の作家たちの競演
辻村深月「タイムカプセルの八年」
不器用な父親と息子の物語、ジワリと涙腺がやられるやつです。
万城目学「トシ&シュン」
この人の感性は本当に面白い。
“時間”をテーマにしたとき、よくこの発想へたどりつくなと、感心してしまう。
米澤穂信「下津山縁起」
今度の時間は気の遠くなるほどの長さ。
“時間”という概念について少し前いろいろ本が出ていたけど、”知性“という概念と合わせて編年体にして描く、お上手です。
湊かなえ「長井優介へ」
“イヤミスの女王“と言われた作者らしい短篇。でも最後に少し光が見え読後感がいい。
辻村深月と湊かなえが少しかぶり気味だったけど、全員「タイムカプセル」で作ったらあとの二人はどんな物語だったのだろう……と勝手に想像してしまう。
Posted by ブクログ
〈時〉をテーマにしたアンソロジー。
辻村さんは父子の人情話、万城目さんは神様が夢を叶えるトリッキーなファンタジー、米澤さんはSF、湊さんはミステリ。
アプローチも語りも異なった競演。読みやすく楽しかった。タイムカプセルに始まりタイムカプセルに終わったけれど、二つともパンドラの匣にならなくて良かった。
個人的に意外性No. 1は米澤さん。
Posted by ブクログ
再読。
というよりも、湊かなえさんワールドに浸かりたくて
湊さんの話だけ読もうと思って手に取ったら
他のも結局読み返してしまった!
アンソロジーなので、一つ一つのお話は短くて
でもしっかりと世界観を魅せてくれる安心の4名……
湊かなえさんの「長井優介へ」がすごくすき。
15年は長すぎるけど、またこれからの15年は
長井にとって明るい15年であってほしいなと思いました!
そして辻村さんの「タイムカプセルの八年」は
胸が熱くなった。
親父たちがすごい!かっこいい!
小学校卒業から成人までの八年と、
成人からの八年は本当に全く違うだろな。
他二編はファンタジー?要素もあり
不思議な感覚で面白いです。
Posted by ブクログ
湊かなえ、米澤穂信等、よく読ませていただいている作家さんの短編小説。
自分自身、教育に携わるものとして、ハッとされられる場面が何回かあった。
人と関わる仕事の責任の重さ、影響力について改めて考えさせられた。
Posted by ブクログ
4人の作者による短編集。
すべて時間・時がメインテーマとなっている。
辻村深月の「タイムカプセルの8年」の登場人物である父親は正直なところ、いい父親では無い。
私が妻であれば今すぐにでも離婚したいと思うような父親である。
何しろ我が子の誕生日やこどもの日のようなイベントから、運動会や授業参観のような学校行事もよく忘れ、挙げ句の果てにクリスマスプレゼントまで買い忘れる有様!
それらを別にたいしたことがない、プレゼントなど実用的ではないと言ってのける。
あんたはそうかもしれないが、と腹立たしい。
心がないのではないかと読んでいて心底嫌になったものだ。
確かに祝い事やプレゼントなど実用的でもないし大した事では無いかもしれないが、だったらなぜ家族を持つのだ。
それでも息子が教師になろうと思ったのは、父親の影響があると言うのだから、母親にしてみればなんとも悔しい話ではないか。
教師になると言うのが悪いのではない。
そんないい加減な(ように見える)のような人には憧れて、日々一生懸命子供のことを考えて身も心もすり減らしている母親には何の見返りもない。
ああ、やりきれない。
とは言っても物語は、「時間」が思いがけない形でつながっていくことがあるときれいにまとめられている。
何となくモヤモヤした気持ちが抜けないのは今まさに子供のことで悩んでいるからなのだろうか。
湊かなえ 「長井優介へ」
湊かなえにしては優しい話だったように思う。
主人公の雄介は耳がよく聞こえないため3秒経ってから返事をする。
それが誤解を生んでしまう。
そのために小学3年生の時にいじめられ、親友を失ってしまった。
この事件は一体どこに着地するのだろうかとドキドキしながら読んでいた。
真実とは残酷であるが、今回は真実に救われた。
人と違う事で起きてしまう行き違いや悲しみや苦しみ。
それをどう乗り越えていくか。
参考になるものがあったように思う。