【感想・ネタバレ】さよなら妖精のレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2023年08月15日

「王とサーカス」を先に読んでいたので、
思ったより雰囲気がよくて、青春ものでびっくり。
大刀洗万智の青かったころ。

ユーゴスラビアから来た謎の女の子マーヤ。
マーヤの天真爛漫さと、ユーゴスラビア情勢の不穏さが比例していく対比が見事。
マーヤはどこに帰ったのか?をめぐるミステリ。

いかにも日本の男...続きを読むの子、と言った感じの青さの守屋くんがいい味出してました。

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Posted by ブクログ 2023年06月15日

面白かったです。終盤にかけて不穏な空気が流れ始め、想像しうる最悪のオチで終わります。古典部が好きな方には雰囲気的に刺さるかと思いますが、まあ真っ暗ですね。本当に。
誰もこの結末を変えられないのもまた皮肉なモノですよね…

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年12月23日

これを氷菓シリーズの最終回として構想していたとは……
ビター作家なのは知ってるけどそりゃエグいて。
にしても良い作品。主人公の精神的な揺れ動きが繊細に描かれていて、ラストはなんとも言えない読後感に襲われるから、それだけ実は主人公に感情移入していたことがわかる。
なんでこれアニメ化しないんだろね?映画...続きを読むにしていいやろ、京アニィ!!!
にしても今タイトルの意味考えてたけど、異世界への扉を開く妖精に喩えて「さよなら妖精」ってホントにそりゃないよ……
「物語」のプロットとしては完成されすぎているね。こんなの新人レベルで書けないよ。

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ネタバレ購入済み

妖精さん

K
2023年02月13日

謎解きは軽快だった。ミステリーによくある殺人事件ではない、いわゆる「日常の謎」とされるものだった。
しかし、結末は哀しかった。タイトルから哀しい物語だろうと考えていたけれど、考えていたよりも哀しかった。

語り手の守谷は、若くて野心的で、自分が抱いている理想と、現実との間でじりじりと燻っていて...続きを読む、だから現実の外から来た(ように思えた)マーヤが輝いて見えたのだろう。大刀洗もまた、鋭く、冷たく、賢く、輝いて見えたのだろう。僕も男だから、いくつか心当たりのある、ごくありふれた幻想だ。
その脆い幻は、時を経て儚く壊れた。

マーヤは現実の外・幻想の中に住んでいる妖精ではなく、現実をどうにかしようとしていた一人の心優しき愛国者だったし、大刀洗は鋭く、冷たく、賢いように見えた一人の悩み多き女子高生だった。
マーヤは、現実の中で生き、そして死んだ。大刀洗は、現実の中で生き、そして恐らくこれからも現実の中で生きていくのだろう。
そして、守谷は……。

守谷の前に、二つの道がある。
一つは、文原のように、手の届く範囲のものを大切にして生きる、現実的な道。
一つは、今いる場所から飛び出て、何かを成し遂げる、理想的な道。

その二つの道について、多分、二十歳くらいの人は誰しも一度は考え、一応、選ぶだろう。

米澤先生も二十歳の頃に二つの道について考えていたのだろう。そして、米澤先生は、故郷を飛び出て、小説家になる道を選んだ。

では、語り手の守谷はどうするのだろう。
そして、読み手の僕はどうするのだろう。
まるで、他人事のようにそう思った。

『さよなら妖精』というタイトルは、マーヤの肉体的な死と、守谷が抱いていた『マーヤ』と『大刀洗』という幻想の死なのだと思う。
それから、もしかしたら、守谷が抱いていた何かを成し遂げたいという理想の死なのかもしれない。

守谷は語り手ではあったけれど、最後まで「主人公」にはなり得なかった。
僕もそうかもしれないと思った。でも、これから頑張れば、主人公になりうる可能性はあるのだ。
そう思って、生きるしかない。

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Posted by ブクログ 2022年04月24日

再読。守屋と同い年のときに読んでとても重い衝撃を受けた記憶が生々しいけど、その頃に比すると十分に歳を取った今読んでも、ショックが大きい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年02月02日

読み終わってしばらく経つけど、何を書いていいかわからない。

前半が古典部シリーズのように、日常の謎を、ある意味微笑ましく解く内容だっただけに、後半の展開がとても辛い。

何かをしなければ、と思う主人公の気持ちが痛いほどわかる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年11月17日

重厚で読んでいることに誇りさえ感じる。

ユーゴスラビアに興味を持たざるを得ない。
マーヤの故郷を当てる?ことへの伏線回収はまさにミステリーだが、この小説の真骨頂はやはり太刀洗万智の存在だと思う。

太刀洗万智のことをもっと知りたい。

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Posted by ブクログ 2021年10月17日

古典部っぽい雰囲気だなーと読み進めていったら、思いの外、辛いお話だった。でもきっとこの話は、作り話だけど作り話じゃなくて、今もどこかの国でさよならしていく人がいる。もしそれが友達だったら??……辛いけど心に残る一冊でした。

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購入済み

1度読んだら忘れられない本

2020年08月19日

生きているう内にこの本を読めて良かったと思う

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ネタバレ

2024年02月24日

守屋くん視点で進む話いいねぇ
センドーとの関係も信頼しあってる感じが良かった。「まだ考えてないだけなんでしょう」って台詞好き

#切ない #タメになる

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Posted by ブクログ 2024年01月28日

マーヤとの出会いと思い
彼女の祖国で戦火が始まった帰国後に、彼女の消息を心配する主人公は、その思い出と共に、彼女の無事を祈り推理する
平和な日本とマーヤの祖国との違いに、何かをしなければとの思いを持つであろうことも共感する
米澤穂信の初期作のようだか、最近の黒牢城や、可燃物よりもずっと好き

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年10月29日

気軽に読み始めて後悔した。。
可愛くて無邪気なマーヤと愉快な仲間たちの青春かと思いきや
後半からの不穏な空気、、そして最後のどうしようもない悲しみ。
ましてやこんな世界情勢のときに読んでしまったのを後悔しつつも、、、
本としてはめっっちゃ良かったですー(´;ω;`)

儚い羊たちの祝宴とか、満願とか...続きを読む
そっちを先に読んでいるから
米澤先生の物語で泣くと思わんかった
やっぱ作家先生の引き出しはすごいや、、

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年10月01日

若者の淡い期待を嘲笑うような現実、祈り続ける事の苦しさを刻まれるような作品だった。
作中では各々の人物がマーヤに対してどこまで関わっていくか決断しており、想いの断ち切れない守屋の苦悩と葛藤が描かれるが、本作ではどれだけ手の届かない範囲の事であっても、自分がその身で感じて触れたいと思った世界について、...続きを読む徹底的に知らなければいけない。そしてそれには限りが無いという考えを示していると感じた。
守屋はこれから自分に問い続けるであろうラストや、徹底されたリサーチがそれを裏付けているように思う。

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ネタバレ購入済み

さよなら妖精

匿名 2023年06月14日

他の作品と同じように日常に潜むミステリーを織り交ぜ、一人の少女との出会いがここまでひとつの物語になる様は改めて素晴らしいと感じる作品でした。

#切ない

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Posted by ブクログ 2023年04月27日

ミステリーというより青春小説。
ユーゴスラビアについてめちゃくちゃ勉強になった。
ソ連が崩壊したあと、東欧のほうで小さな国が沢山生まれた…というより元に戻った。私が生まれたときには既に“ソ連”の一部だった土地は本当は別の国だったのだと初めて知った。
ところが、ユーゴスラビアではそれから激しい内戦が始...続きを読むまった。ユーゴスラビア、サラエボという地名を何故良く知っていたかというと、確かその数年前に“サラエボ・オリンピック”があったからなのだ。あのクマちゃんをマスコットにした平和の象徴、オリンピックを行なった国が、内戦で国も人もボロボロになっている…目の前のテレビの画面の光景が信じられなかった。
サラエボは元々“ボスニア・ヘルツェゴビナ”という国の首都だったのだと初めて知った。“ボスニア・ヘルツェゴビナ”“セルビア”“クロアチア”という国が独立したというニュースをなんとなく覚えている。
そして私の頭の中ではいつしか“元ユーゴ=ボスニア・ヘルツェゴビナ”に変わっていたのだが、元ユーゴは“ボスニア・ヘルツェゴビナ”“クロアチア”“セルビア”だけでなく、“スロヴェニア”“モンテネグロ”“マケドニア”という合計6つの国だったのだ。知らなかった。
“マケドニア”なんて世界史の初めのほうに出てこなかったっけ?調べてみたら、あのマケドニア王国のほとんどの地域は現在のギリシャであるらしく、ギリシャから「マケドニアという国名を使うな!」と文句を言われたらしく、今は“北マケドニア”と戒名しているらしい。それからモンテネグロ。内緒だが、私はアフリカの国だと思っていた\(^o^)/って笑っている場合ではない。実はモンテネグロと日本は2006年まで戦争状態にあったらしい!1905年、日露戦争の時、モンテネグロはロシアを支援するために戦戦布告したが、実際に戦闘状態になることはなく、その後の講話条約も結ばず、忘れたまま一旦モンテネグロと言う国が無くなり、2006年、モンテネグロがセルビア・モンテネグロから独立してモンテネグロ公国になった際にやっと日本と休戦協定が結ばれたとのこと(え、終戦じゃなくて休戦なの?)。
日本に生まれた日本人の私は、自分の生まれた国が100年後もそのまま同じ国であると思っているし、自分が日本の国の国民であることに何の疑問も持っていないが、そうではない国の人々も世界には沢山いるのだな。
それから、独立のための内戦は“愛国心”のみが理由ではない。元々豊かな国が貧しい国と一緒になって「損をしている」という気持ちも大きな動機なのだと、人間とは結局、現金なものだと、ユーゴからきたマーヤが教えてくれた。
それにしてもこの小説の舞台“海無し県の観光地”。「どこだ?」と調べたら、どうも作者の米澤さんの出身地、高山市がモデルらしい。高山には3回くらい行ったことがあり、いい所なのは知ってるが、どうしてユーゴスラビアからわざわざ高山だったのか?そこが謎だ。

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Posted by ブクログ 2023年02月24日

当時小学生だったから何も深く考えずにいたけど、クロアチア人が立て続けに数人編入してきたのはこういう事情があったんだと今更ながらに思いながら読んでました。(ちなみに日本ではなく海外におりました)
今のウクライナの情勢も相まって、まさに今読んでよかったと思った1冊です。
描写される90年代初頭の雰囲気も...続きを読むどことなく懐かしい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年10月30日

米澤穂信の初期作品。
元々は『氷菓』シリーズの最終章として書かれた物だけアリ、どことなく古典部のような雰囲気で、高校生特有のみずみずしさとさわやかさ、そしてその背後にある世界観の不穏さがバランス良く配置され、更にマーヤの日本の習慣や言葉などからの謎解き要素も含まれている所も面白かったです。
マーヤと...続きを読む他のメンバーが過ごして行くにつれてユーゴスラヴィアの治安が悪化していき、それにつれてマーヤの雰囲気もシリアスな物になっていき、守屋やいずるの彼女を戦火に帰したくないという思いがとても切なかったです。送別会のシーンでの守屋とマーヤのシーンは心がキュッとなりました。そして彼女が亡くなったことを知るシーンはとても切なかった。守屋はもしかしたらマーヤのことが好きだったのかも知れないなぁと思ってしまった。
太刀洗万智シリーズが始まったきっかけともなった出来事であるため、同シリーズを読み返したら他の発見もあるかも知れないと思いました。

この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
守屋路行:中村悠一
マーヤ:石見舞菜香
太刀洗万智:茅野愛衣
白河いずる:佐藤聡美
文原竹彦:阪口大助
額田広安:吉野裕行

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Posted by ブクログ 2022年10月05日

平和で退屈な日常に突然訪れた遠い国からやってきた少女との出会い。
ニュースでしか聞かない国ユーゴスラヴィアから来た少女との出会いで急に身近になる外国。
日常の謎解きはこの著者らしく、理屈っぽくて、やっぱりちょっとよくわからないとこが多かったけど、
外国の人から見た日本はどう見えるのか、
ユーゴスラヴ...続きを読むィアの情勢、
平和のありがたさ、
などなど興味深く読めた。

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Posted by ブクログ 2022年09月13日

思い違いと思い込み。
気づかなかった想い、気づかないフリをされた想い、理解した時にはもう遅かった想い。
"間違ったと言ってくれた方が、ずっと楽になるのに"
青春時代の思い上がった全能感とか、すれ違いとか、そういう苦い記憶が蘇るようだった。

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Posted by ブクログ 2021年10月16日

妖精とのさよなら、あるいは青春の終わり。何というのか読後感がとても痛い。無知とは無力なのだと突き付けられる。けれども探偵役というものもまた辛いという事がわかってしまう。それは誰よりも先に残酷な現実を知ってしまうから。マーヤとの邂逅はたったの二か月。でもその出会いには一人の人間を揺さぶるだけの熱量があ...続きを読むった。力があった。妖精は去った。後に残るのは人間だけだ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年12月21日

ユーゴスラビア紛争をモチーフにした日本が舞台の小説。紛争にかんする説明も端的で読みやすい。重い結末であるが、同時に視野が開けるようなさわやかさがある。

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Posted by ブクログ 2023年12月24日

静かな街に現れた外国から来た少女。仲良くなった普通の高校生たちとの交流とその後のお話。途中からそんな感じかなと思っていた通りに話が進んでいった。

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Posted by ブクログ 2023年11月06日

 『王とサーカス』『真実までの10メートル』の主人公 太刀洗万智(たちあらいまち)が高校生の時の話で、彼女の友達が主人公。

 ある日彼らが住む街に現れたユーゴスラビアの女の子。彼女との交流を通してユーゴスラビアや世界について学んでいきます。

 こんな高校生いるかな?って気になったし、なかなか入り...続きを読む込めなかったけど、こんな世界情勢の今だからこそ読んで良かった。
 
 ユーゴスラビアの女の子は日本の高校生に比べると精神的に大人で、大人にならざるを得なかったんだろうな、それに比べていつまでも子どもらしくいられるって幸せな事なんだなとありがたく思いました。

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Posted by ブクログ 2023年10月21日

主人公がどうしてマーヤが帰った場所を探すために日記をもとに過去を思い出そうとしているのかがぼんやりしていて、話の中に入り込むまでに時間がかかってしまった。
お墓の紅白饅頭のくだりが米澤さんの作品特有のゾワァ感がしてすごくすき。

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Posted by ブクログ 2023年05月16日

面白かった。
主人公の在り方や思考は青春小説そのものではあるが、単純なそれではなく、日常ミステリが散りばめられていたり、ユーゴスラヴィア内戦が軸になってたりと、様々な要素がある。
マーヤの故郷がどこなのかについては、ポイントとなる場面が印象的に描写されているので、なんとなくここがヒントになるのだろう...続きを読むと考えながら読んだ。
読後感は苦く、ショックが残った。

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Posted by ブクログ 2023年02月05日

青春だなー。ユーゴスラビアから来た少女マーヤと、日本の地方都市で暮らす高校生達との交流。
ユーゴスラビアはその時まさに解体の危機で戦争も起こっていた。マーヤは各国を見て周り、ユーゴスラビアで政治家となり7つめの文化を作ることを理想としていた。
一方で主人公守屋は、何事もそつなくこなすが熱くなれない。...続きを読むそんな彼が最後にユーゴスラビアに行きたいとした気持ちはわかる。。でもマーヤが止めたように、何となくでは何も生まれないんだよな。

最後はしんみり。

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Posted by ブクログ 2022年12月12日

ユーゴスラビアから来た少女マーヤの故郷探しという大テーマの中に、高校時代の青春の1ページを挿入しつつ、日常の謎も交え、時代小説の一面も含む。
守屋少年の背伸び具合と青臭さに面映い気持ちになるが、読み応えあり。

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Posted by ブクログ 2022年09月01日

太刀洗万智シリーズは好きだけど、他の読んだことあるやつとは毛色が違う感じがした。というか読む順番とか気にしてなかった、、こっちが先か。
私の中で作られてる万智のイメージは、こんな背景があったのかと繋がった。

守谷くんには全然共感できなかったな、、
万智は事件と感情とが原因結果で噛み合ってるイメージ...続きを読むだから、感情が先に出て行く守谷くんはなんで?っていう気持ちが大きかった。
再読はない気がするけど、なんというか「しっくり」な話だった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年05月07日

今の情勢と似ているところがあった。
「人間というものは、殺された父親のことは忘れても、奪われた財産のほうはいつまでも忘れない」

最後のオチに向けての物語だと感じた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年05月07日

 端々は好みで、楽しく読んだが、とりわけミステリとして若干の物足りなさを感じる作品だった。そして、仮にも西洋史を専攻しておきながら、現代東欧史への自分の理解の浅さを恥じながら読んだ。
 それでも、はっとするモチーフは随所にある。マーヤがネーションを形成しようとしているのだ、という辺りが中心なんだけど...続きを読む、「伝統の創造」に言及があったりなど。「国家」という入れ物を満たす「国民」を創造することは難しい。共通項でくくろうとしてみても、特にその共通項が新しく「見出された」ものであるほど、互いの差異は際立ち、まとまらない。
 知識があれば、最も深くまで食い込んで、洞察や批判を行えたかも知れないが、どうにもずっと輪郭ばかりをなぞっていたように思う。コソヴォを筆頭に、ユーゴの内戦は知っていたから、ゴールはなんとなく予測はできたけれど。

 雨が降り続いていたのが印象的で、陰鬱な雰囲気をより際立たせている。
 とはいうものの、 マーヤにまつわる思い出それ自体は明るいものが多く、青春小説っぽさを感じたり、コメディタッチに描かれるシーンは少なくない。それだけに、最後の展開の落差が辛く感じる、というのはあると思うけれど。
 挫折と悔恨を描かせたら右に出るものはいない米澤先生。今回は、自分自身も読んでいて「ん?」と思った、主人公がユーゴへの渡航を決意するシーンをあとで振り返って、「あれは結局エゴで、なんも見えてなかった」と悔やむところが好き。今回は違う、と無茶な計画を構想するエネルギーも、振り上げた拳をあてどなくおろさざるをえなくなるもの。
 書きながら思いついたけれど、「なににも本気になれない」と評された主人公が、ようやく本気で目指したいことを見つけた話だと取ることもできるのか。そしてそれをなし得ないことにしてしまう話。残酷な作家だなあ(そんなところが好き)。

 ミステリとして読むとどうか、というと、最後の謎解きはマーヤの出身地を絞り込んでいくのがメインになっていて、「こういうのもあるんだな」と感心した。答えを知っているホームズがいて、ワトソンがなぞときを行うのも、ちょっと捻りが聞いている。その一方で、冒頭で提示された一番大きな謎については、ずっと表面でうろちょろして、最後一気に本論に入ったことによる間延び感がある。回想で語られる「日常の謎」が、大きな謎とそこまで密接に関係する訳でもなく、その謎自体もトリックも大したことがないというのが大きいように思う。
 良いでも悪いでもないけれど、〈古典部〉シリーズのように、ヒロインに引っ張られてやむなく謎解きをする、という手法を取っていながら、こちらは異文化の眼差しを持つゆえに、日常の中の非日常に気づく、という体裁をとっていたように感じた。
 同シリーズとは、主人公のキャラクター造形という点でも若干似ているような気もする。軽妙かつ豊富な語彙で語るのは、当初提示された「何にも本気になれない」というキャラクターからすると意外な感じがするけど、奉太郎同様、それなりに読書家であることが明かされるし、この時代に出版業界が最盛期を迎えていたことを考えれば、まあそこまで意外でもないのかも。

 日記という形で過去のエピソードを提示する語り口、最後には現代においついて、その先を語る、というやり方は好み。ただ、日記の体裁を取るには本編の文体が普通の小説なので、単に日記を起点に記憶を呼び起こしている、つまりこのテクストは日記そのものではなく、その時点の描写ないし回想を文字起こししたものと捉えるのが妥当だろう。

 日常と暴力(死)を架橋した作品としては、〈小市民〉も挙げられるだろうけれど、本作はバックボーンを書き込むことで、よりリアルに接続されていると思う。外部からやってきたマーヤという存在が、人間関係に痛烈な一打を加えて去っていくのも良い。

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Posted by ブクログ 2022年02月17日

太刀洗万智とは『真実の10メートル手前』という本で初めて出会った。とてもよかったので彼女が出てくる他の本も読みたくなり、『王とサーカス』を選んだ。でも、それはこの『さよなら妖精』の続編だと何かに書かれていたので、こっちを先に読むことにした。
まだ太刀洗がライターになる前の学生時代の頃の話だ。

守屋...続きを読む路行と白河いずるは、以前ユーゴスラビヤから日本にきたマーヤという女の子について喫茶店で話している。二人はマーヤにまつわる何かの謎を解明しようとしているらしいが、解こうとしている謎が何なのかは分からない。
彼らは当時の記憶をなぞりながら、当時守屋の書いた日記を読み返すことにする。
これからこの本を読む人もいるだろうから、守屋と白河が解き明かそうとしていた謎には触れない。

遠くで起きたことを、自分に関係ないことだと流してしまうことは多々ある。それをひとつひとつ手に取って考えていたら、日常がままならないからだ。地球上にはたくさんの人間がいて、それ以外の多くの動物がいて、数えきれないほどの重要な問題を抱えている。それは大小様々なのだけれど、自分と距離の近い問題は大きく見えて、遠くで起こっている問題は大抵小さく感じる。ものの感じ方にも遠近法はあるのかもしれないと思ってしまう。

正直言って、最後のほうまであまり面白いと思って読めなかった。だけど、太刀洗が感情を露わにして、守屋君に心の内を吐露するラストシーンがとても胸に響いた。
無表情で冷たい顔立ちが故に、誤解されやすい太刀洗万智。
「でも、守屋君、あなたちょっと、わたしを冷たく見積りすぎじゃないの!」という彼女の言葉がなぜかやたらと心に残っている。見積もり。
しかし。
彼女は守屋君のことが好きだったのかな。それがこの本における、わたしにとっての最大のミステリーだ。

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Posted by ブクログ 2021年10月29日

ユーゴスラビアから来たというマーヤとの二ヶ月を描いた物語。
日常と、時折はさまれるちょっとした謎解きの積み重ねが、物語の終わりをより悲壮なものにしている。
「ねえ守屋くん。……あなた、幸福そうね?」
「Ni, もりやさん。わたしは、あなたよりわかっているんですよ……」
「失敗と思い込みと勘違いばかり...続きを読むだ。」
これを薦めてくれた人が、「米澤穂信は自分を賢いと思っている男子高校生の挫折を描くのがうまい」と言っていた。たしかにそうかもしれない。

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購入済み

解説が入っていない

2016年01月23日

解説も読もうと思って購入した。
明記しておくべきでは。
また、同じ値段で売るのは読者を騙しているのではないか。

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Posted by ブクログ 2022年08月01日

この作品の続編が出ると知って。
同じ作者で古典部シリーズを読んでいるので。

かなり早い時点で一度、本を閉じた。
まぶしいというか、胸の奥が痛いというか、
なにか辛くなって。
その時は、
少し離した方が字が読みやすくなってきているお年頃には、
青春が痛々しいのかと思っていた。
もしくは、冒頭の雰囲気...続きを読むから、
あまり良くない先行きを予感していたせいかもしれない。

しかし、結末は予想以上だった。
そして、腹立たしかった。
こんな結末は読みたくなかった。

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Posted by 読むコレ 2014年01月06日

問題が提起されたとき、ここまでの情報量で解決するのは無理だろう、というところから、何気ない会話、何気ない情景に張られた見えない伏線を回収していく様は流石。米澤さんらしい作品と思いました。
ただ、短いストーリーがあって、「はい、ではここで問題です」みたいな流れはありふれたクイズ番組を見ているようで、...続きを読むいまいち入り込めませんでした。
最後の推理に入る動機も、イマイチ希薄な気がしました。これを解けば素晴らしい結末が待っている、というような期待感があれば、もっとワクワクしたのではないでしょうか。

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Posted by ブクログ 2023年07月16日

91年の春に、高校3年の守屋とセンドーが出会った外国人の少女マーヤ。
旅館の娘いずるの元に滞在した彼女に、弓道の試合を見せたり、旧市街を案内したり。
日本語は話せるがわからないことも多いマーヤの質問に答えたり、日常の謎を楽しんだ2ヶ月だった。
92年の夏、大学生になった彼らは、手紙の来ない彼女の行方...続きを読むを求めて連絡を取り合う。そこには大きな謎が…
マーヤの母国はユーゴスラヴィアで、戦場となっていたのだ…
異色作ですが、男子2人女子2人プラス外国人の少女という組み合わせは、読者にとって入りやすいかな。
2004年2月の作品。

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