桐野夏生のレビュー一覧
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1994年刊。『顔に降りかかる雨』(1993)に続く、桐野夏生さん初期の女探偵ミロ・シリーズの2作目に当たる。
やはり、面白かった。やはり現代のエンタメ系文学は非常にスイスイ読めるし、物語の展開にはまって先へ先へと駆り立てられる。
本作でミロは、むしろ敵側と思われるようなダ男性に性的に惹き付けられて寝てしまい、それが原因となって失敗を招くなど、「アラアラ」と悔しくなるような弱さを露呈しており、それもあって、非常にリアルでなまなましい女性像を確立している。
ミロが探し求める女性リナも、極めて不幸な幼少期を送って情緒面で発達障害的になってしまった人間として、後半リアルに描き出される。
そ -
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Posted by ブクログ
高級タワマンに暮らすママ友たちの人間模様を描いた『ハピネス』の続編。
前作で主人公・有紗の夫が出張先のアメリカで女子大生と不倫したという告白を聞いた一件を経て、今作では有紗自身がタワマンの一階下の住人(『ハピネス』にも登場した高梨という男)と怪しい関係に、そしてやっぱりというか、親友の美雨ママは別のママ友の夫と相変わらず不倫&修羅場継続中という、何だかドロドロとした展開のお話である。
『ハピネス』ではタワマン住民内にある格差みたいなところがテーマとして前面に出ていたと記憶しているけど、今回はお受験に関する話は出てくるものの、プライベートな不倫ネタがメインとなっており、やや俗っぽくなった印象 -
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Posted by ブクログ
2001年刊。『柔らかな頬』の2年後で、『グロテスク』の2年前。桐野さんのキャリアの中では比較的初期の作か。
桐野さんの近年の作品の文体はずいぶんと薄っぺらく人物の風貌や情景はさほど書き込まないまま、スピーディーにプロットを追うようなものが多いようだが、『OUT』(1998)辺りでかなりきめ細やかな文章力を発揮していた。
本作もそれに近く、特に冒頭は何やら文学的な雰囲気が漂っている。しかし、そんな文章を噛みしめつつ読み進めると、突如強烈な、ショッキングな出来事が起きてビリビリと来た。第1章の主人公有子は上海の学生寮に住む留学生なのだが、同じ留学生の女性が、その寮で数人の日本人男子留学生( -
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文庫本になってから読む利点は解説があるから、それがいいのか、邪魔なのか。
この文庫版の政治学者白井聡の解説は、なるほどなあと思う。桐野夏生さんの作品が現代の(平成の)新しいプロレタリア文学ではないか、というところはおもしろい。
ここに集められている7短編は、何かに隷属させられて藻掻くか、打ち破れる人間たちだ。現代見聞きするありがちな事情あり、昔の時代にさかのぼったのや、もっとおとぎ話的なのもあるが、それぞれが救われないどうしようもない状態なのは一緒で、作者は怒りに満ちて描いている。
デストピアの世界といっても、人間たちが構成している世界だから、そこに矛盾が生じるのは当たり前、前向きに、個 -
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本書のストーリーのベースとなっている事件は、ウィキでは「山岳ベース事件」として扱われている。それを引用する。
【引用】
山岳ベース事件とは、1971年から1972年にかけて連合赤軍が群馬の山中に設置したアジト(山岳ベース)で起こした同志に対するリンチ殺人事件。当時の社会に強い衝撃を与え、同じく連合赤軍が起こした、あさま山荘事件とともに新左翼運動が退潮する契機となった。
【引用終わり】
事件の首謀者の1人であった永田洋子は裁判で死刑を言い渡される。ただ獄中で病を得て、死刑執行の前に病死する。それは、2011年2月、東北の大震災の直前であった。
永田が地裁で死刑判決を受けた際の判決文は、下記のよ