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東日本大震災によって、福島原発4基すべてが爆発し、日本は混沌としていた。たった一人で放射能被害の警戒区域で発見された少女バラカは、豊田老人に保護された。幼くして被曝した彼女は、反原発・推進両派の異常な熱を帯びた争いに巻き込まれ―。全ての災厄を招くような川島に追われながらも、震災後の日本を生き抜いてゆく。狂気が狂気を呼ぶ究極のディストピア小説、ついに文庫化!
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Posted by ブクログ
震災のため原発4基がすべて爆発! 警戒区域で発見された一人の少女「バラカ」。ありえたかもしれない日本で、世界で蠢く男と女、その愛と憎悪。ノンストップ・ダーク・ロマン。
今、この時代に、読むべき物語、 って紹介にありました。私もそう思います。桐野作品の中でも、なんだか凄いものを読んじゃった!という気持ちになる、まさに、ディストピア小説です。 子供欲しさにドバイの赤ん坊市場を訪れる日本人女性、酒と暴力に溺れる日系ブラジル人、絶大な人気を誇る破戒的牧師、フクシマの観光...続きを読む地化を目論む若者集団、胡散臭い謎の葬儀屋、そして放射能警戒区域での犬猫保護ボランティアに志願した老人が見つけた、「ばらか」としか言葉を発さない一人の少女……。 小説内では、震災のため原発4基がすべて爆発した、という設定なので、その後の日本も、今の現実世界とは違う道をたどります。 ありえたかもしれない日本…。 でも実は、今の日本と重なる部分もあります。 いやあ〜〜いつもながら、桐野さんの筆運びは、容赦ない。身も蓋もない。 ああ〜、桐野さんの凄みをどう伝えたらいいんだろう?って思うくらい、凄いお話です。 津波のシーンはもう、恐怖なしでは読めないし、人の運命が一瞬の判断で決まってしまうことの恐ろしさ悲しさは鳥肌がたちました。 赤ちゃんが売られているという状況も、なぜ、そんなことに?というのも辛い。 そして、なんと言っても、今作の中には、きな臭く醜い悪魔のような、いや、まさに悪魔男が出てくるのです。 「こいつ・・酷い、酷すぎる」と何回も呟きながら読んでいました。 一瞬たりとも気がぬけず、運命に翻弄される、薔薇香とその周りをぐるぐる回ってるかのような人々。決して楽しいというお話ではないけれど、もう夢中でページをめくっていました。桐野さんパワー恐るべし。 しかし、私は大好きなので、桐野さんかなり読んでいますが、今作のラストは放り出すような感じとは違うのです。苦しみ闘った薔薇香のラストを、きちんと描いてくれたのが、読後感良かったです。 ハードな小説ですが、機会があったら読んでいただきたい力強い傑作です。
2016年刊行の長編小説。東日本大震災から5ヶ月後の2011年8月から2015年5月にかけて雑誌連載されている。「読書人」の対談(2010年)の中で本作について、大震災に直面し「小説に書かなければ」との思いで書いたと、作者が語っている。 物語の最初の方では40歳くらいの独身女性が「男はいらない」...続きを読むが子どもが欲しいと、ドバイのマーケットで1歳半の女の子を買って来るが、ちょうど川上未映子さんの『夏物語』後半を思わせる問題系の話になっている。 物語に登場する川島なる男性が凄まじく凶悪な人物で、あり得ないような命中率で出会う女性を次々と妊娠させ、不幸を呼び寄せ死へと至らしめる。まったく嫌悪すべき「悪魔」的人物なのだが、物語の中では引き込まれるようなまがまがしい魅力を持っている。一種ドストエフスキー的なイメージである。 既にここまででじゅうぶん物語を展開できそうな素材配置だが、さらに東北大震災が到来する。小説内では福島の原発が「4基とも爆発」したことになっており、現実よりも放射線の被害は甚大なものになっている。東京にも避難勧告が発出され、大量の人びとは西へと逃れる。首都は大阪に移り、何と2020年には大阪でオリンピックが開催される予定となっている。 大震災の偶然的な到来により物語の風景は一変し、後半は震災から8年後、つまり2019年の設定であり、本作執筆時よりも未来が描かれている。政府や原発推進派が隠蔽・情報操作により原発事故を「なかったこと」にしようとしており、大半の国民は今や大阪オリンピックに夢中になり放射線や避難者のことなど忘れ去っているあたり、現実の日本と同じである。リアルな現在においても「避難者」は4万人を超えているそうで、この「避難者」の定義はよくわからないものの、我々の生活は彼らを忘却した上での「平時」において成立している。 本書後半で描かれている「避難者」は「棄民」と呼ばれ、おのずと原発反対派を結集させ、原発推進派とその背後にいる大企業・政府という強力な権力と激しく対立しており、震災後の日本の状況を多少誇張しているものの、基本的にはほとんど同じである。桐野夏生さんは本書において、原発事故後の日本社会の分断と病んだ権力構造を極めて鋭く描出しているのだ。主にジェンダー問題に敏感に反応していた桐野さんは本書と『日没』(2020年)では更に日本社会の今日的状況を大きく捉えて問題化しているようだ。 ドバイから連れられてきた少女バラカは、震災8年後に10歳となっているが、震災時に被爆して甲状腺癌を患って首に大きな手術婚を持ち、原発事故の「象徴」として原発反対派・推進派の双方に身勝手に利用される。分断され二派にわかれた陣容のやりきれない対立に巻き込まれ翻弄される運命のバラカはただひたすらに生きようとしており、魅力ある主体として造形されている。隠蔽・改ざん・腹黒い工作がはびこる大人たちは、誰が本当の味方なのかわからず、常に絶望的な危機状況だ。 桐野夏生さんは初期の作品を除いて、あまりディテールを描写しない作家となったが、その分非常にスピーディーに人物たちの関係性とその変容を追って物語はうねりにうねって、その波動を魅力の中心としている。本作はそれが実に豊かに結実していて、読み応えのある小説作品となっており、さらに、日本社会の醜悪な現状を映し出している見事な現代文学たり得ている。 「ガイジンは出て行け」というレイシストたちも登場している辺り、悲惨な現在の病んだ社会の実相がえぐられているし、こうした「えぐり」が主人公の心をも容赦なく襲う痛苦が、やはり桐野文学の特質を直接的に示しているのである。
原発が爆発した警戒区域で発見された一人の少女「バラカ」は、大人たちの色々な思惑に翻弄され、過酷な運命を辿る。震災後の日本で有り得たかもしれない「もしかしたらこうなっていたかも」のお話だった。最後まで息をつかせない展開でラストはサラッと終わったが、物足りなさを感じないくらいそれまでの話が濃かった。
上下巻だったけど、入り込めました。子供の新聞で紹介されてて気になって読んだけど、内容はすごく暗い世界で(^_^;)でも、好きです^_^
桐生夏生ってホラーチックという先入観があるのか、その存在も知ってるし過去に読んだ作品も面白かったしはずれのない作品を書ける人というイメージをもっているにもかかわらずあんまり読んだことがない。久しぶりにたまたま見かけた『バラカ』という小説を読んでみた。 震災で原発事故が起こった日本が舞台になっている。...続きを読む作品自体も2011年夏頃、つまり東日本大震災と福島第一原発の事故から間もないうちに「小説すばる」での連載が始まり2015年まで続いた。だから途中から震災後であり原発事故である世界は、実際の世のなかとはちょっと違う方向に動いている。いや、あえてより悲惨な状況を描いたのだろう。そんななかを数奇な生まれ育ちの少女バラカ(薔薇香)は生き抜いていく。相関関係が狭すぎる気はするけど、それを凌駕するようなスケールの大きい面白さ。そして、人間関係のもろさと不可解さを感じる。相当過酷な運命を背負った少女の目を通して、人は信じ合えるのかといった命題を問われているよう。そしてどちらかといえば否のような空気を感じてしまう。
東日本大震災、赤ちゃん売買、それらに関わる人達の繋がりと邪悪な心。 一人の幼い少女が立ち向かうにはあまりに強大で恐ろしいものがある。 読んでいるこちら側が恐怖で叫びそうになる。 2022.4.9
ドバイのベビースークで売られてしまった日系人の娘バラカ。 身勝手な大人たちに振り回されていた中 東日本大震災が起きる。 原発事故の状況は伏せられ 大阪オリンピックの準備が進められる中 反原発を訴える人たちは何者かによって追い詰められる。 バラカを支えてくれる人達にも次々と災いが訪れる…。 小説と...続きを読む現実と重なり合うところがあって考えさせられる。 日本はどこへ向かうのだろうか。
自分の信念をまげずに信じることだけを胸に前に向かって突っ走るバラカ。 彼女の精神力とあきらめない信念がいくつもの試練を潜り抜けるを許したのだろう。 自分だけが頼りだ。自分自身と真の情報が自分を生かす最後の頼りである。
前の巻から、登場人物は大きく変わり、現在の日本とはやや異なる状況の設定となっており、社会問題がクローズアップされている。現状の日本にも当てはまることもあり、考えさせられる部分もある。物語はこれまでの登場人物が繋がってきてクライマックスを迎えつつある場面はワクワクした。一方で、壮大な物語の終焉では違和...続きを読む感を覚える部分もあるが、それも著者の狙いなのかもしれないと考えるようにしている。
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