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Posted by ブクログ 2024年01月27日
震災のため原発4基がすべて爆発! 警戒区域で発見された一人の少女「バラカ」。ありえたかもしれない日本で、世界で蠢く男と女、その愛と憎悪。ノンストップ・ダーク・ロマン。
Posted by ブクログ 2023年07月03日
バラカへの、これでもかという不運な境遇。人の裏切り、今度こそ信じてもいいのか、と疑心暗鬼になる気持ち。
自分の義父に震災の広告塔とされてしまったり、反対に崇め祭られる対象にされたり。
本当に信じられるのは、一番最初に見つけてくれた決死隊のおじいちゃん。
おじいちゃん、死んでなくてよかった。
『わたし...続きを読むを離さないで』が遺品って、カズオ・イシグロのだと思うけど内容が合いすぎてる。
毒をもられ話せなくなってしまったけど、バラカと心が通じるから話したいことがわかる、そんな心温まるシーンも少しだけあって。
そして健太、康太。
40歳超えて定住するバラカの様子、そして幸せでよかった。
いつ日本がこの様になってもおかしくない。
震災が描かれているので、読むのが辛い人もいるかと思う。読めそうなら、おすすめです。
Posted by ブクログ 2022年10月17日
今、この時代に、読むべき物語、
って紹介にありました。私もそう思います。桐野作品の中でも、なんだか凄いものを読んじゃった!という気持ちになる、まさに、ディストピア小説です。
子供欲しさにドバイの赤ん坊市場を訪れる日本人女性、酒と暴力に溺れる日系ブラジル人、絶大な人気を誇る破戒的牧師、フクシマの観光...続きを読む地化を目論む若者集団、胡散臭い謎の葬儀屋、そして放射能警戒区域での犬猫保護ボランティアに志願した老人が見つけた、「ばらか」としか言葉を発さない一人の少女……。
小説内では、震災のため原発4基がすべて爆発した、という設定なので、その後の日本も、今の現実世界とは違う道をたどります。
ありえたかもしれない日本…。
でも実は、今の日本と重なる部分もあります。
いやあ〜〜いつもながら、桐野さんの筆運びは、容赦ない。身も蓋もない。
ああ〜、桐野さんの凄みをどう伝えたらいいんだろう?って思うくらい、凄いお話です。
津波のシーンはもう、恐怖なしでは読めないし、人の運命が一瞬の判断で決まってしまうことの恐ろしさ悲しさは鳥肌がたちました。
赤ちゃんが売られているという状況も、なぜ、そんなことに?というのも辛い。
そして、なんと言っても、今作の中には、きな臭く醜い悪魔のような、いや、まさに悪魔男が出てくるのです。
「こいつ・・酷い、酷すぎる」と何回も呟きながら読んでいました。
一瞬たりとも気がぬけず、運命に翻弄される、薔薇香とその周りをぐるぐる回ってるかのような人々。決して楽しいというお話ではないけれど、もう夢中でページをめくっていました。桐野さんパワー恐るべし。
しかし、私は大好きなので、桐野さんかなり読んでいますが、今作のラストは放り出すような感じとは違うのです。苦しみ闘った薔薇香のラストを、きちんと描いてくれたのが、読後感良かったです。
ハードな小説ですが、機会があったら読んでいただきたい力強い傑作です。
Posted by ブクログ 2021年02月26日
2016年刊行の長編小説。東日本大震災から5ヶ月後の2011年8月から2015年5月にかけて雑誌連載されている。「読書人」の対談(2010年)の中で本作について、大震災に直面し「小説に書かなければ」との思いで書いたと、作者が語っている。
物語の最初の方では40歳くらいの独身女性が「男はいらない」...続きを読むが子どもが欲しいと、ドバイのマーケットで1歳半の女の子を買って来るが、ちょうど川上未映子さんの『夏物語』後半を思わせる問題系の話になっている。
物語に登場する川島なる男性が凄まじく凶悪な人物で、あり得ないような命中率で出会う女性を次々と妊娠させ、不幸を呼び寄せ死へと至らしめる。まったく嫌悪すべき「悪魔」的人物なのだが、物語の中では引き込まれるようなまがまがしい魅力を持っている。一種ドストエフスキー的なイメージである。
既にここまででじゅうぶん物語を展開できそうな素材配置だが、さらに東北大震災が到来する。小説内では福島の原発が「4基とも爆発」したことになっており、現実よりも放射線の被害は甚大なものになっている。東京にも避難勧告が発出され、大量の人びとは西へと逃れる。首都は大阪に移り、何と2020年には大阪でオリンピックが開催される予定となっている。
大震災の偶然的な到来により物語の風景は一変し、後半は震災から8年後、つまり2019年の設定であり、本作執筆時よりも未来が描かれている。政府や原発推進派が隠蔽・情報操作により原発事故を「なかったこと」にしようとしており、大半の国民は今や大阪オリンピックに夢中になり放射線や避難者のことなど忘れ去っているあたり、現実の日本と同じである。リアルな現在においても「避難者」は4万人を超えているそうで、この「避難者」の定義はよくわからないものの、我々の生活は彼らを忘却した上での「平時」において成立している。
本書後半で描かれている「避難者」は「棄民」と呼ばれ、おのずと原発反対派を結集させ、原発推進派とその背後にいる大企業・政府という強力な権力と激しく対立しており、震災後の日本の状況を多少誇張しているものの、基本的にはほとんど同じである。桐野夏生さんは本書において、原発事故後の日本社会の分断と病んだ権力構造を極めて鋭く描出しているのだ。主にジェンダー問題に敏感に反応していた桐野さんは本書と『日没』(2020年)では更に日本社会の今日的状況を大きく捉えて問題化しているようだ。
ドバイから連れられてきた少女バラカは、震災8年後に10歳となっているが、震災時に被爆して甲状腺癌を患って首に大きな手術婚を持ち、原発事故の「象徴」として原発反対派・推進派の双方に身勝手に利用される。分断され二派にわかれた陣容のやりきれない対立に巻き込まれ翻弄される運命のバラカはただひたすらに生きようとしており、魅力ある主体として造形されている。隠蔽・改ざん・腹黒い工作がはびこる大人たちは、誰が本当の味方なのかわからず、常に絶望的な危機状況だ。
桐野夏生さんは初期の作品を除いて、あまりディテールを描写しない作家となったが、その分非常にスピーディーに人物たちの関係性とその変容を追って物語はうねりにうねって、その波動を魅力の中心としている。本作はそれが実に豊かに結実していて、読み応えのある小説作品となっており、さらに、日本社会の醜悪な現状を映し出している見事な現代文学たり得ている。
「ガイジンは出て行け」というレイシストたちも登場している辺り、悲惨な現在の病んだ社会の実相がえぐられているし、こうした「えぐり」が主人公の心をも容赦なく襲う痛苦が、やはり桐野文学の特質を直接的に示しているのである。
Posted by ブクログ 2023年08月13日
桐生夏生ってホラーチックという先入観があるのか、その存在も知ってるし過去に読んだ作品も面白かったしはずれのない作品を書ける人というイメージをもっているにもかかわらずあんまり読んだことがない。久しぶりにたまたま見かけた『バラカ』という小説を読んでみた。
震災で原発事故が起こった日本が舞台になっている。...続きを読む作品自体も2011年夏頃、つまり東日本大震災と福島第一原発の事故から間もないうちに「小説すばる」での連載が始まり2015年まで続いた。だから途中から震災後であり原発事故である世界は、実際の世のなかとはちょっと違う方向に動いている。いや、あえてより悲惨な状況を描いたのだろう。そんななかを数奇な生まれ育ちの少女バラカ(薔薇香)は生き抜いていく。相関関係が狭すぎる気はするけど、それを凌駕するようなスケールの大きい面白さ。そして、人間関係のもろさと不可解さを感じる。相当過酷な運命を背負った少女の目を通して、人は信じ合えるのかといった命題を問われているよう。そしてどちらかといえば否のような空気を感じてしまう。
Posted by ブクログ 2022年04月09日
東日本大震災、赤ちゃん売買、それらに関わる人達の繋がりと邪悪な心。
一人の幼い少女が立ち向かうにはあまりに強大で恐ろしいものがある。
読んでいるこちら側が恐怖で叫びそうになる。
2022.4.9
Posted by ブクログ 2021年12月19日
ドバイのベビースークで売られてしまった日系人の娘バラカ。
身勝手な大人たちに振り回されていた中
東日本大震災が起きる。
原発事故の状況は伏せられ
大阪オリンピックの準備が進められる中
反原発を訴える人たちは何者かによって追い詰められる。
バラカを支えてくれる人達にも次々と災いが訪れる…。
小説と...続きを読む現実と重なり合うところがあって考えさせられる。
日本はどこへ向かうのだろうか。
Posted by ブクログ 2019年10月29日
自分の信念をまげずに信じることだけを胸に前に向かって突っ走るバラカ。
彼女の精神力とあきらめない信念がいくつもの試練を潜り抜けるを許したのだろう。
自分だけが頼りだ。自分自身と真の情報が自分を生かす最後の頼りである。
Posted by ブクログ 2019年10月05日
前の巻から、登場人物は大きく変わり、現在の日本とはやや異なる状況の設定となっており、社会問題がクローズアップされている。現状の日本にも当てはまることもあり、考えさせられる部分もある。物語はこれまでの登場人物が繋がってきてクライマックスを迎えつつある場面はワクワクした。一方で、壮大な物語の終焉では違和...続きを読む感を覚える部分もあるが、それも著者の狙いなのかもしれないと考えるようにしている。
Posted by ブクログ 2019年08月15日
背景は東日本大震災の直前と震災、震災後6年経って(まさに今、2019年)、そしてもっと未来、先取りの物語です。
作者が執筆したのは東日本大震災の直後です。あの頃は世の中も文学もどうなるのかという衝撃でした。
過ぎてみればそこで世界が止まるわけでもでもなかったのですけど。
この「バラカ」というヒロイ...続きを読むンが日系ブラジル人の少女の成長物語のストーリーは、現実よりも福島の放射能被害が広範囲に深刻になっていて、というデストピアの世界。「えっ!そんなぁ~」と思いますが「もしかしてほんとうはそうなのでは」と思わせられてしまう怖さもあります。
日系人の両親が日本に働きに来て貧困に陥り、他の国に脱出するもうまくいかず、ついに娘を人身売買に出してしまうのです。日本人の女性の養子になるも、日本に連れてこられて、東日本大震災に巻き込まれて苦労連続の放の旅をするのです。
救いは「バラカ」が巫女的に直観力があって、しかも賢くて・・・というスーパーヒーローだからいいんです。この節はそういう運びになる物語も多いです。
少し前の世の中は「夢よ羽ばたけ、先に希望がある」でした。今は「なんとなくわかっている、これ以上変わりようがないのでは?」です。そんな世界を描くのには何を糧にすればよいのか!文学の普遍性は未来予想の面もありますから。
Posted by ブクログ 2019年08月02日
うーん読むのがつらい話だった。上巻はバラカがちっちゃいのに境遇が大変で辛かったけど、下巻は成長してて自分の立場が分かってる上で巻き込まれてるからこれも辛かった。
エピローグは、こーやって大人になったんやなあと救いがあるラストだからこっちは安心するけど、読んでしまえば、なくてもよかったかもしれんと思っ...続きを読むてしまった。何も見えない先に向かって歩みだそうとするバラカ、みたいなラストなら不安なまま終わってそれはそれでよかったかも、と思ったけど辛いもんなー。
震災後のディストピアものはボラード病を読んでるけど、表現している世界観は同じ感じだと思う。
面白かったからこの人の他の作品も読みたいわい。
Posted by ブクログ 2019年05月05日
もう、訳わからないけどスピード感はあった気がする。
次から次へと起こる試練。
あっちもこっちも何処もかしこも試練、試練、試練。
何でこんなに不幸が続くのさ、、、と嫌になる。
決してオールクリアなハッピーエンドではないけれど、何とか消化出来た。
上巻より下巻の評価が低いのは、この苦しさからく...続きを読むるものなのかな、、、
川島の最後がどうも腑に落ちない。
ギッタンギッタンのメッタメッタに打ちのめしてやりたい(*`へ´*)
バラカがここまで追い詰められないといけない理由もイマイチわからなかった。。。(^◇^;)
Posted by ブクログ 2019年04月08日
生き抜いているバラカ。彼女を本当に愛しく思っていたのは助けてくれたお爺さん達だけだったのかもしれない。
原発に反対の勢力と賛成の勢力の影でのぶつかり合いが哀しい。そこまでやるか?と思う時と、そこまでやるかもしれない…と思う時があって苦しくなる。
命を脅かされることなく穏やかに暮らしたいのは誰にも共通...続きを読むすることだろうに。
Posted by ブクログ 2023年11月22日
大好きな桐野夏生先生の作品。
最初は40歳を過ぎた女性の寂しさや孤独、それに伴う身勝手さなどなど自分にもこれから降りかかるんじゃないかという現実を描いていたが東日本大震災が起こり、原発爆発事故が起こり…とここまではリアルな描写。
原発4基すべてが爆発っていうところからファンタジー感が増してちょっと追...続きを読むいつけなくなってきたって感じかな。
私がファンタジーやSFが苦手なのもあるけど。
それでもこの人の弱者の視点や観察眼は本当に好きで毎回考えさせられる。
ただ結末は悩んだんじゃないかなあ、それとも悩まなかったのかなあ。
私はご都合主義のハピエンはそんなに好きじゃない。
もちろん希望を持たせた終わり方で救われる人もいるのも事実だから否定はしないけど。
そして原発の事故によって首都は大阪に移転しない、けどコロナがやってきた。
得体の知れないウィルスに世界は飲み込まれた、なんて思いもよらないよな。
事実は小説より奇なり。
Posted by ブクログ 2021年04月01日
う〜む バラカちゃんの魅力に尽きるが、思っていた内容と違い、いまいちだったかな〜
エピローグも取ってつけたようで、しっくり来ない。
なんだかんだ言って、桐野先生に着いて行きます。
Posted by ブクログ 2020年07月26日
上巻が終わって、止まらず下巻に行ったのに、
急に時間軸が変わってて、ちょっと拍子抜けした。
でも、バラカの不幸はどこまでも続く。
読んでるうちに、
あー!そいつも悪いヤツか…となっていくので
誰が出てきても、
そいつもダメなんじゃないの!!
イヤイヤ、ソイツ信じちゃダメだろ!と、
そういう意味でハ...続きを読むラハラしてた。
でも、最後イマイチ、伏線回収については消化不良感あり。
あんなに丁寧に描いてきたのに、結局父娘は再会しなかったかんかーい!と思った。
まぁ。
最後は、やっと穏やかな日常を取り戻せたようで良かった。
でも、戸籍とかないのにどーしたんだろうねー。
Posted by ブクログ 2020年07月12日
面白かったのは間違いない。読み始めたら止まらなくなり、「バラカ」という1人の少女の数奇な人生を、並走するように猛スピードで読みきった。
だが。ちょっと風呂敷広げ過ぎと言うか情報量多過ぎと言うか……。
上巻では、キャリアと財力を手にした四十路過ぎの独身キャリアウーマン2人が、それに飽き足らずドバ...続きを読むイの人身売買組織から幼女を購入。その前に現れた元カレの悪魔のような策略により二人の運命が狂いだす。こういう女のルサンチマンを書かせるとホント筆者は上手くて、こっちはその醜悪さに閉口しつつも目が離せなくなる。
並行して綴られるのは出稼ぎで来日した日系ブラジル人の一家の日常だ。やがて失踪した妻と子を探して彷徨する夫。妻が傾倒していた怪しげな宗教団体は敵か味方か。
この失踪した妻に連れられた子供が主人公「バラカ」で、その後キャリアウーマンの養子となり、二つの物語は複雑に絡み合うのだが、下巻に入ると一転して東北で起こった大地震の「その後」の話となる。原発廃炉派がバラカをシンボルとして祭り上げ、敵対する推進派とバラカを巡って綱引き状態となる。
筆者が意図したかどうかはわからないが、この下巻には筆者の政治的スタンスが垣間見えたように感じ、(その是非はさておき)上巻とのカラーの違いに面食らった。
人の業が色濃く描かれていた上巻のほうが面白かったなあ。小説3本分くらいのプロットを一気に詰め込んだような満腹感がありつつも、結末は慌てて風呂敷を畳んだようにあっさりしていて、やや物足りなく感じた。
Posted by ブクログ 2019年08月19日
フィクションなのだけれども、一歩間違えればこうなっていたかも知れないと思わせられるディストピア作品。
上巻では赤ん坊だったバラカは小学生へ。
小学生になったバラカも苦難の連続。
義父の川島の目的が最後までよく分からず、ひたすら気持ち悪い存在のままラストへ。
最後はなー、ちょっと急ぎ足すぎて、そこ...続きを読むだけが残念。
しかし久し振りの桐野作品、面白かったです。
Posted by ブクログ 2019年03月13日
下巻。震災後の世界。原子力発電所への津波により東日本が避難区域になる。バラカは、それから8年経って10歳になる。
狡猾な大人たち。でも、それは等身大の自分自身だったりする。誰が味方で誰が敵か。子どもであることの無力さと純粋さ。川島のバラカに対する異常さと執念。
震災は生きている限りは過去でもあり、...続きを読む現在でもあり、未来でもある。分断されていく社会。あまりにも狂った世界(主に川島の行動)なんで、ハッピーエンドや幸せの尺度がきちんと計れない印象でした。
Posted by ブクログ 2019年03月12日
ちょうど8年目、このタイミングで読むのはなかなか感慨深いが、読み進むにつれて「で、何と闘ってる訳?」ってなツッコミが止まらず、ネット上で目にする脳内仮想敵にキーキー言ってるひとびとを思い出したりするのであまり快い読書体験には至らなかった。そもそも著者の芸風は胸糞表現であるのは承知だとしても。
日系...続きを読むブラジル氏の隣家描写あたりは「うわーーーーッ!繋来たあああ!」と期待が高まったものの、実はピークはそこで以降急激に失速する点も惜しまれる。結局、下巻は雰囲気だけで押し切った塩梅。カタルシスなし。エピローグもなんだか。好きな作家だけに残念。