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Posted by ブクログ
神の恩寵という意味のバラカ。飲んだくれで自己中心的な父親と神にすがる母親に連れられて行ったドバイで母親を失い、人身売買組織に売られ、そこを訪れた日本人の女に買われ、最後は原発事故を起こしたフクシマで行方不明になり、お爺さんに拾われた女の子。日本にたどり着いてからは、周りの人間の自己実現や社会正義の実現のために利用されつつ、自分を見失わずに生き延びた女の子。親代わりになったお爺さんの豊田さんでさえ、バラカに娘のような愛情を抱いていたのか、それとも自分の正義のために彼女を連れていたのか、結局のところはよくわからない。でも、守ってくれる人や見方になってくれる人との途切れ途切れに現れては消えていく儚い繋がりのようなものが、彼女を生き延びさせてきた。神の御加護なのかもしれない。
読者である私の現実の生活などはつまらないもので、冒険も挑戦もなく毎日淡々とすぎていくのだが、桐野さんの書く女はいろんな理由で生き延びるために、それぞれのやり方で戦っている。こういうハードボイルドな女たちを見たいから、私はこの人の本を読むのかなあとぼんやりと考えた。こういう登場人物に、私は耳元で囁いてもらいたいのかもしれない。がんばろう、やっていこう、たたかおう、と。バラカはミロに次ぐヒロインだと思う。
桐野バージョンのフクシマ後の日本では、原発4基が爆発して首都は遷都となっている。8年前の大事故はなかったように全てがコントロールされ、反対派はひっそりと確実に消されていく。東京の高所得層は関西や外国に逃げているため、東京には多国籍の外国人の居住区となっている。被曝した地域は農業もままならないが、同時に帰還地域では、子供たちが学校で楽しく過ごす様子などを広報している。ディストピアではあるが、そんなに驚きがないということに少し驚いた。
Posted by ブクログ
桐生夏生ってホラーチックという先入観があるのか、その存在も知ってるし過去に読んだ作品も面白かったしはずれのない作品を書ける人というイメージをもっているにもかかわらずあんまり読んだことがない。久しぶりにたまたま見かけた『バラカ』という小説を読んでみた。
震災で原発事故が起こった日本が舞台になっている。作品自体も2011年夏頃、つまり東日本大震災と福島第一原発の事故から間もないうちに「小説すばる」での連載が始まり2015年まで続いた。だから途中から震災後であり原発事故である世界は、実際の世のなかとはちょっと違う方向に動いている。いや、あえてより悲惨な状況を描いたのだろう。そんななかを数奇な生まれ育ちの少女バラカ(薔薇香)は生き抜いていく。相関関係が狭すぎる気はするけど、それを凌駕するようなスケールの大きい面白さ。そして、人間関係のもろさと不可解さを感じる。相当過酷な運命を背負った少女の目を通して、人は信じ合えるのかといった命題を問われているよう。そしてどちらかといえば否のような空気を感じてしまう。
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小説・文芸
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