桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書は中ピ連のリーダー榎美沙子氏をモデルにしたヒロインに多様な関りを持った人々に取材する形式でヒロインの姿を浮き彫りにしようとしている。
ヒロインの生死も最終的に明瞭にはわからない状況で、結果的には彼女の全体像が見えたとは言い難いだろう。
それでも今から50年以上前に女性の生殖に関する自己決定権を自覚して現実的な運動を展開したことは正当に評価されてしかるべきということは同意したい。
ただ彼女がピンクのヘルメットをかぶって不倫男を会社の前でつるし上げた行動が、結果的にマスコミの興味本位な餌食となっていった経緯は残念だった。
まだ小学生だった私は中ピ連の活動がその意義を理解することもなく下火になっ -
Posted by ブクログ
代理母出産がビジネスとして成立するかはわからないし、成立してよいものかそもそもの疑問はあるけど、割り切れない思いがあるのなら引き受けてはいけないと思う。
貧困を理由に代理出産を引き受けてしまうリキ、依頼主側ではあるけど代理出産に対して納得できない悠子、自分の遺伝子の続きを見たい元バレエダンサーの基。3人それぞれの視点で話が進んでいく。
それぞれの登場人物に共感はできない。
悠子はまっとうに見えるが、状況によって意見が変わって一貫性がない。
自分の遺伝子の先が見たいという理由で子供を欲しがる基が自分の夫だったら、絶対別れる。笑
女性は様々なものを犠牲にして出産するのに自分勝手が過ぎる。
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Posted by ブクログ
ネタバレ時代の流れから展開はある程度予想してたけど、あまりに救いがなくショックが大きい。長編で登場人物達に感情移入してしまっていたから余計辛い。
望月が嫌いだったけど、最期まで自分よりかなを心配する姿には胸が熱くなった。死に際で望月が本当に一番大切なのは仕事ではなくかなだと確信した。望月は自分が成功することが、かなの幸せと信じてたと思うとすれ違いが悲しい。
本のタイトルが「一生輝かないダイヤモンドに薄汚れた真珠」だったことに驚いた。素敵な意味が含まれていると思い、最後まで希望を捨てずに読んでしまった。あのプロローグにもすっかり騙された。作者が容赦なくメンタルを潰しにくる。
下巻は夢中になってス -
Posted by ブクログ
幼少期の体験や育ちが与える、その後人生や
性のゆがみをよくよくお調べになられてこの作品を書かれたんだなと、桐野さんの本気を感じました。
さらにその細やかな機微の言語化能力の素晴らしさ。私も凶悪犯罪や少年犯罪について背景を調べたりなどしてなぜこのような事が起きたのかを1人検証していたりするのですが、幸せに愛情いっぱいに育った人は皆無です。どうかこの本は幸せに生きて、
いつも何か犯罪が起きるたび、物騒ねーくらいにしか思わない人にこそ読んでいただきたいし、
お子様がいらっしゃる方にも目を通してほしいと思います。
そして、私も子供がいないので里子を考えたこともありますが、預かったその日から沢山愛情を与 -
Posted by ブクログ
読んだその日は自分が虐待される夢を見たほどに心抉られた。
おそらく精神疾患のあるであろう母親のだらしなさに教養のなさ、男に頼って自分だけ楽に生きていければいい、流され生きてきた様子が本当にリアルな描写で何か自分にも通ずる部分もあると思うと満足に子育てなんてできやしない。
なんでこういう家庭って福祉に頼らないんだろうとふんわり頭の片隅で思っていたことが解説に書かれていて、なるほどなと。そんな親や子供達が埋もれてしまう前に、手を差し伸べれる人間でありたいと感じました。でも里親なんてなれるわけでもない難しい問題のまま結局他人事になるんだろうか。
篤人と鈴木のその後の様子がわからないのがホラー。もうち