桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ下巻。上巻を読み終わってから、バブルが崩壊したらどうなる!?と、気になって気になって一気読み。
望月は株の取り引きで暴力団や、怪しい仕手師と関わっちゃうし。
バブルは崩壊するからさぁ…堅実にいこうよー…って読者は思うけど、でも実際、バブル景気のときはこんな人たちがいっぱいいたんだねって思うと、もの悲しくなってくる。水矢子だけは、幸せになってほしいと祈るような気持ちで読み進めるが、上巻の最初に、水矢子がホームレスになっていることが分かっているから、こんなに堅実に、地道に頑張っているのにな、ととにかく悲しい気持ちで読み進めるしかない。
その辺、やっぱり著者はちゃんと狙って書いてるよね。すごい。
バブルはもちろん、見事に崩壊し、みんな転落していくわけだが、唯一救いがあるなと思ったのが、望月は本当に佳那のことを大切に思っていたんだな、と思えるところ。追い詰められて、どうしようもない状況になっても、一緒に過ごす時間がなくても心の中では、「どうか佳那だけは幸せに笑っていてほしい」と願っている。その祈るような気持ちだけは本物で、だからこそ悲しい。
書いてしまうと本当に陳腐になるが、幸せはお金では測れない、どんなにお金持ちになっても、それで幸せにはなれないんだということが、上下巻通して読み続けて身に染みて分かる。一番近くにいる人が大切だし、大切な人と笑い合う時間が大切だし、もし「誰とも一緒にいたくない」と思うなら、一人で気ままに過ごす時間が大切だし、それはお金がいくらあるかは関係ない。
でも、「もっとお金が欲しい」と思いながら努力する時間も大切だったりする。一緒に夢を見て、野望を抱いて、どん欲に仕事に励む時間は、けっこう尊かったりする。
望月と佳那はそれで結ばれたわけだし、水矢子はそんな佳那にあこがれたわけだし。
水矢子の佳那に対する思いも切なかった。
ほんとに、水矢子には幸せになってほしかった。頑張って、自力で道を切り開いてきて、つつましくても幸せな暮らしを一度は手に入れたのに、転落するきっかけはけっこうありきたりなものだった。ネタバレですが・・・・
結局水矢子は、母が作った借金の返済に追われて、幸せになれなかった。もっと他の展開はなかったのか?と桐野夏生さんを恨みそうになるが、もちろんこれも、あえてそんなあっけない、つまらないと言えばつまらない展開にしてあるのだろう。ここは、賛否が分かれるかもしれない。
読み応えありまくりの上下巻でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ桐野夏生さん大好き。間違いなく、絶対に面白い。
本書は、バブル前夜、証券会社に就職した若い3人の物語。
社会の不合理をありのまま描いている印象です。
彼らの証券会社は、昔ながらの男尊女卑社会で、総合職の女性もただのお飾り。男性社員の結婚相手として入社させた、という程度の存在。ましてや短大卒や高卒は一人前の労働力として認識されない。学歴や容姿でランク付けされる。
男たちは、早朝から深夜まで、ひたすら競争させられ、営業成績を上げるように叱咤激励され、先輩からいびられる。男性営業マンも、出自や学歴であからさまに差別される。
そんな社会で、主人公の3人は、なんとか恵まれない環境から抜け出そうとそれぞれのやり方で踏ん張っていて、全員すごくクセがある人物なのだが、心から応援したくなる。なんとか頑張って、幸せをつかんでほしいと思ってしまう。
本当は賢く、大学に行きたかったのに母子家庭で貧しかったため高卒で証券会社に入社した水矢子。堅実に働いて、コツコツとお金をため、自力で大学受験してアル中の母から逃れ、東京に行こうと頑張っている。冷静に自分の会社のおかしさを見つめている。
短大卒で、男性と対等に働きたいと思っているしその能力もある佳那。周りに流されず、強い意志をもって頑張ろうとするが、しょせん女性は最初から戦力と思われていないので、空回りするばかり。彼女も、田舎の出身でお金がなく、つつましく暮らしており、バブルの波にのって派手に生活している人たちからは見下されている。
そして同じく田舎の無名の大学出の男性社員、望月。望月はなんとしても営業成績を上げて上り詰めるのだと意気込み、あらゆる手段を使って営業する。危なっかしくてハラハラする。でも、応援したくなる。
そして危ない橋を渡りつつ、徐々に株で儲けて成功を重ねていくのだが、なにせ読者は、バブルがすぐに崩壊することを知っているので、そこまでにしときなよ~。欲を出しちゃだめだよ~。と怖くてしょうがない。
唯一堅実で、危ない橋を渡ろうとしない水矢子がいるから彼女だけは世の中の熱に浮かされず、そのまま堅実にやっていきなよ~。と祈るような気持ちで上巻が終了。
まだまだ、望月は上昇気流に乗っている。 -
Posted by ブクログ
桐野夏生『真珠とダイヤモンド 下』毎日文庫。
いよいよバブル崩壊により、株で莫大な財産を築こうとしていた人たちの人生が狂い出す。
特に終盤の緊迫感は半端無く、この世には神も仏も居ないのかと思うような無慈悲な展開が待ち受ける。人を騙して泡銭を稼いだ者も、慎ましやかに堅実に暮らす者にもバブル崩壊の火の粉は同じように降り注ぐのだ。
そして、何と潔い結末。何も残さず、潔く全てを描き切った桐野夏生の手腕に感服した。
華やかな酒と薔薇の日々を過ごしていた小島佳那と、慎ましやかに堅実に暮らす伊東水矢子の2人の人生は……
小島佳那と結婚し、東京にある証券会社の本社の国際部に栄転した望月は九州のヤクザの山鼻と付き合いながら、互いに株で一儲けしていた。専業主婦となった佳那は山鼻の東京の愛人である美蘭と知り合い、東京ディズニーランドを一望するマンションで華やかな日々を過ごす。
望月はさらに金を増やそうと仕手筋の若手カリスマの亀田優成に近付き、山鼻に仕手株を勧める。
一方、東京の女子大に通う伊東水矢子は大学に馴染めず、住んでいるアパートの環境にも悩み、近所の女性占い師の南郷に相談する。
本体価格850円
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Posted by ブクログ
桐野夏生『真珠とダイヤモンド 上』毎日文庫。
始めこそ大昔の安っぽいテレビドラマを見せられているかのような感覚だったのだが、読み進めるにつれ知らぬ間にストーリーに引き込まれていった。
バブル前夜の証券会社に入社した2人の女性を中心にストーリーは展開していくのだが、バブル期を知る者は懐かしさを覚えることだろう。
自分自身もバブル期の中で就職活動を行い、意外と簡単に第一志望を含め、数社から内定を貰えたのだが、内定を貰った証券会社に断りを入れるのには難儀した。人事担当に断りを入れたのに何度となく、飲みに行こうとか、卒業旅行をプレゼントするから入社して欲しいなどと3月末までコンタクトがあったのだ。
バブル期の当時は証券会社や保険会社はかなり儲かっていたようで、証券会社や保険会社に就職した自分の同級生は半年で見る影もなく横幅2倍に肥えていたのには驚いた。
しかし、この後直ぐにバブルが崩壊するなど誰もが知らず、誰もがカネを使うことを躊躇せず、皆が浮かれていた時代である。
1986年春、対象的な2人の女性がバブル前夜の福岡の証券会社で出会う。貧しい家庭ながら短大を卒業し、2年後に上京することを夢見る目端が利く美貌の小島佳那と、貧しい母子家庭に育ち、東京の大学に通うために2年間、証券会社で働くことを決めた慎重派の伊東水矢子は何故か意気投合する。
そんな佳那に目を付けたのは同期入社のパッとしない望月という男性だった。しかし、望月は見る見るうちに大口顧客を獲得し、福岡支店で1番の売上げを上げ、佳那と結婚し、東京本社に栄転する。
一方、水矢子も第一志望ではないが、東京の女子大に合格し、晴れて大学生となる。
自分の本作のイメージは御伽噺の『うさぎとかめ』である。小島佳那がうさぎで、伊東水矢子がかめというイメージなのだが、下巻ではどのような結末が待ち受けているのだろうか。
バブルがはじけることは決定事項なので、調子に乗り過ぎた望月が佳那をも巻き込んで、奈落の底に堕ちていくのではないかと思う。そして、堅実な伊東水矢子の方はバブルの痛手は受けないのではなどと予想したりする。
本体価格900円
★★★★★