桐野夏生のレビュー一覧
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実際にあった事件、実在の人物をモデルにしたお話で、私はその運動も人物も全く知らないし、過激な感じから、この物語を読むのを躊躇したが、読み始めたら引き込まれた。
塙玲衣子という女性を主人公にして、彼女の目線から物語を進めるのではなく、ライターである女性が証人を訪ねて、塙玲衣子について語らせることで、彼女の人物像が語られていく。
今では、普通語られるピルの話。女性が自分の生きたいように生きるための主張、正しいと考える女性は当時からいたのに、彼女の活動は早過ぎで過激だった。でも、彼女がいなければ、ピルの解禁はもっと遅れていたかもしれない。女性の権利も。
そんな事をこの物語を読んで考えた。しかし、今現 -
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ネタバレ心優しいコンビニ店員の日加田、実の母とその交際相手から虐待を受ける優真、優真の実の母亜紀、優真が心を寄せる同級生花梨の視点を行き来しながら物語が進んでいく。
紆余曲折あり日加田と彼の妻洋子は里親として優真を迎え入れることになる。優真は中学生になるが、なかなかクラスに馴染めず、問題行動を起こして孤立していく。
でもこれ読者からすると優真くん自身は全然悪くないように思う。彼の行いには問題があるけれど、それはきっと全て彼の成育環境に起因するものだからである。
普通の、一般的な環境で育った人たちは無意識に世渡りの術、社会で生きていく上でのマナーのようなものを習得する。しかし本当の意味で社会というものに -
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最高に楽しめた。
やはり上下巻合わせて読むと達成感ある。
上巻は主にQ女子校の階級闘争の話。
内部生と外部進学生徒たちとの、「努力では獲得できないもの(ヒエラルキー上層部やコネ等)」を描いていて、下層部生徒への風当たりがきつく、酷くて強烈だった。
努力を嘲笑う場面では反吐が出そうだった。
変わって下巻では、そんな学園の劣等生だった佐藤和恵が一転、大学を経て一流企業に入りバリバリ働いているではないか。
下克上。
今まであたしをバカにしていた奴ら、ざまあみやがれ!!
という勝気な和恵の叫びが聞こえてきそうだ。
しかし、そんな彼女は高スペックOLの傍ら街に繰り出し娼婦として生きるようになる。 -
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ネタバレ怖くて、かわいそうで、腹が立って、ハラハラして、文字通り一気読み。ページをめくる手が止まらなかった。
一言で言うと、児童虐待・ネグレクトの物語。
主人公の優真は、母親の亜紀から完全に育児放棄されている。小さい弟と一緒に放置され、学校にも行かせてもらえず、母親はおにぎりとカップラーメンを置いて、男とゲームセンターで遊び、数日は帰ってこないことが当たり前。飢えて、小さい弟は暴れ、隣の男からうるさいと怒鳴られ、おびえながら暮らす日々。母と男が帰ってくると、家が汚いなどと言って殴られる。暴力も日常茶飯事。
母親の亜紀は、優真の父親のことは本名も知らず、弟の父親のことは好きだったということもあり、どち -
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重い重い。でもこれぞ文学。女性という生き物をこれでもかとグロテスクに描き、絶妙に私の何かを突いてくる。凄みがあり素晴らしかった。
下巻ではチャンの上申書から始まり、グッと惹きつけられた。この目線が後からかなり効いてくる。木島先生の手紙パートも味わい深くて良い。
このグロテスクさを味わうには今の年齢じゃないと読みきれなかったんじゃないかなーと思う。
桐野夏生さん他も読みたい。
でも一旦美しいものに触れるぞー!バランスが大事。
「わたしが考えるに、水とは、女の場合、男なのです。
わたしはユリコと違って男という生物が大嫌いです。男と好き合うこともなければ、抱き合うこともない。だから、発酵も -
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すげえかった…一気に読み終わった今、頭がぐわんぐわんしている。
このあいだ読んだ、田中美津さんの「かけがえのない、大したことのない私」の中で本作品について言及しているところがあって興味を持った。自分はこの事件が起きたときしっかり小学生だったはずだけど、全然覚えていなかったので、事件自体は知っていたけど、もっと昔のことだと思っていた。97年、私の感覚では意外と最近だ。この作品の中では2000年になっている。
今、この年齢でこの本を読んだことにも宿命めいたものを感じる。私は30代なかばを過ぎていて、この4人とはほとんど同世代だ。そして私は最近、自分の目の下の濃くなってきたクマとか、昔より丸くなった