桐野夏生のレビュー一覧
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女子プロレスが舞台の小説・・いったいどんな内容なんだろう?
そう思ってパラパラとめくったら、それだけでも面白さが伝わってきた。
「ファイアボール」とは女子プロレス界きっての強者・火渡(ひわたし)選手の別名のこと。
そしてこの小説は、火渡の付き人兼女子プロレス選手でもある近田(ちかだ)の目を通して描かれてゆく。
彼女たちが所属するPWPという女子プロ団体は、財政状況も悪く倒産寸前だ。
その中で外人選手の失踪事件や、新人選手へのリンチ事件、事務所の独立問題などが次々と起こりストーリーが盛り上がる。
また、何といっても近田はいまだに一試合も勝つことができないのだ。
女子プロレスって、今は人気があるのかどうかも知らない。
しかしこれまでも「ビューティペア」とか「クラッシュギャルズ」なんてアイドルのようなグループもいた。
また、ダンプ松本とかアジャコングなんて悪役選手もいた。
彼女たちが青春をプロレスにかけ、日々を送っていたのはこんな感じだったのかな・・と想像もしてみた。
大怪我をしても、次の町での興行のためにバスで夜に移動する・・。
お客を呼ぶために、マイクパフォーマンスをしたり、派手な衣装を着てみたり・・。
人気の出てきた選手へのやっかみや、ライバル意識・・・等々。
一人ひとりの選手が何となくイメージでき、非常に面白かった。
そして小説の中で、まるで男性のような強さを誇る火渡は・・・あとがきに書いてあった。
やはり、あの「神取忍選手」がモデルなのだそうだ(笑)
実はこの小説には「ファイアボール・ブルース2」という続編もある。
これはいくつかの短編なのだが、主人公の近田が女子プロレスを引退するまでが描かれている。
ご興味のある方は、あわせてぜひ読んでみて欲しいと思う。
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Posted by ブクログ
桐野夏生さんの「ミロシリーズ」全6巻中、第5巻となる『ダーク・上巻』を手にした。
主人公の村野ミロは、探偵の仕事で有罪とした男が獄中で自死したことを知り落ち込む。
犯罪者の男ではあったが、いっ時は身も心も許した相手だったこともあり、内心では男の出獄を心待ちにしていたことにミロは気付いたのだ。
4年前に男が自死した事をミロは全く知らなかった。
その事実を知ったミロは、「私の中の何かが死んだ」と自覚し、探偵を辞めて人が変わったような動きをとる。
事実を隠していた義父を許すことができず殺すと決め、北海道を訪れたミロは、計画通りに容赦のない行動をとる。
その後も義父の内妻、ホモセクシャルの親友、そして義父と永く仕事をしていたやくざの老人たちに災厄をまき散らす。
その結果、誰もが命懸けでミロを追い詰めて行くことになる。
そしてミロは、偶然の出来事から偽のパスポートを作って韓国へ渡る計画を立てる。
これまでのミロとは異なり、情け容赦のない性格へ変貌していた。
徐々に桐野夏生さんらしい激しい内容となりつつある。
『ダーク・上巻』が楽しみだ。 -
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ネタバレバブル期の証券会社の話ということで、しんどい話だろうと思って覚悟して読み始めた。
悲劇ではあるけど、謎の爽快感?もあるのは、女性2人の潔さかな。
望月目線がもっと多かったら苦しかったかも。
装画の女性は勝手に同一人物だと思いこんでたけど、よく見ると佳那と水矢子か。
水矢子は綺麗な名前、「風の人」というのが印象的。
望月が「無知で馬鹿な子供だったのだろうか」「狡賢い大人たちに、さんざん利用されただけだった」と悟るところは悲しかった。
結局大人たちは生き延びてるし。
20代半ばは社会の中では子どもなんだなと過ぎ去ってからわかる。
「何もかもなくして街を彷徨うことになると、最初は惨めだったが、やがて心の底がひりひりと乾いて灼けるような心持ちが、いつしか心地よくなってきた。何も持たないことが、いっそすがすがしくて解放感がある。」
プロローグのこの部分が救い。 -
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ネタバレ桐野夏生の『真珠とダイヤモンド』は、バブル狂騒の光と影を女性たちの視点から浮き彫りにした作品。
上巻では多様な立場に置かれた女性たちの葛藤が幅広く提示され時代の空気感が立ち上るが、下巻では佳那と水矢子という対極的な二人の末路へと集約されていく。上巻から漂う不穏な気配は、下巻で予想を裏切らず逃げ場のない結末へ…バブル期を生きていながらその恩恵を享受できず低調に過ごした身としては、熱狂の裏にあった歪みを改めて知る思いがした。
本作が描く狂乱と破滅は、過去の歴史にとどまらない。日本社会がバブル崩壊後に適切な検証や痛みを伴う改革を先送りした結果、就職氷河期世代の孤立や8050問題、少子化、デフレマインドといった深刻な社会問題につながっていく。バブルという虚飾の渦中で翻弄され堕ちていく登場人物たちの姿は、適切な反省を怠ったまま格差と停滞へ突き進んだ現代日本そのものの縮図といえる。
それにしても、野心と美貌を備えフロントで台頭した佳那でさえ、力を得た先の行き着く果てが専業主婦やホストクラブ通いだった点に、当時の女性が置かれた社会的限界を感じる。 -
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主人公視点でナダンの栄光と凋落を語っている。主人公と両者の間にどうにも距離があるな、と感じたがそれも当然、彼らは途中からは実際の交流は無い。同じ世界で生きるようになった以降も、連絡は取れず取らず、あくまでいち視聴者のように憶測で失望したり嫉妬したり。不倫騒動の友人との関係との対比が鮮明だ。友人になれたであろうナダンと、どこで道を違えたのか?同じ世界で揉まれながら、何を望み、何に疲れたから分岐してしまったのか?最終盤のナダンとのシーンはどこか現実感がなく、お互いここまで来てしまった状態での邂逅はもはや彼らの関係を動かし得なかった。だからこそナダンの「あなたのファンです」の言葉が今さらながら肌に沁みる。
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ハードな読書体験ってこういう感じなのだろうか。
理解しがたいというか、理解したくないが正しいのかも。過去の忘れたい出来事とか蘇ってきて、あー早く読み終わって楽になりたいと思いながら読んでいた。
Q学園の階級社会、和恵の報われない努力や孤独、わたしの悪意、心が重くなる要素が満載で、読むのが辛かった。
けど読んでよかったと思う。差別、ヒエラルキー、劣等感、自己顕示欲、承認欲求、孤独は今の時代でもあふれている。苦しい環境の中で他者から認められることが自分の価値を感じられる唯一の術という思考に陥る時もある。でもそれらに囚われすぎると生きづらい。苦しい環境でも自分を自分で認められるよう強くありたいと強く思った。 -
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かつて 瀬戸内寂聴さんも講話でおっしゃられたように 人が恋に落ちるというのは「事故みたいなもんなんですよ、もうね、仕方ないことなんです」… この小説でも、あたかも 「物見事故」のように あるいはミイラ取りがミイラになるがごとく 人が想定外に恋に落ち、そしてその沼から抜けられなくなり、ある者は 多くを失い またある者は したたかに伴侶を裏切り いずれにしても恋を叶えていく。ハピネス は 都市生活における人間関係の困難さ という背景のもと さまざまな事情さまざまな過去を抱えた登場人物の人生が描かれていたのに対して その続編であるこちら「ロンリネス」は手に汗握る大人の愛憎劇、という感じ。これはこれで僕としては面白かった。