あらすじ
離婚の危機を乗り越えた岩見家だったが、娘・花奈のお受験や、夫・俊平の実家のある町田への引っ越し話を巡って、夫婦仲はぎくしゃくしている。そんななか、有紗はふとしたきっかけから同じタワーマンションに住む高梨と二人で会うようになり、ダブル不倫中の美雨ママに相談するうち、彼に強く惹かれていく自分に気づく。許されない恋の行く末は――!?
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この本の文庫版の解説は、井上荒野が書いているが、井上荒野は、本書の前書の「ハピネス」について、斎藤美奈子が文庫版に書いている解説を引用している。孫引きになるが、引用する。
【引用】
「桐野夏生はつまりプチセレブのバイブルである"VERY"の読者に向けて、読者層と重なる女性たちを徹底的に皮肉り、批評した小説をぶつけたのである」
【引用終わり】
本書「ロンリネス」も、「ハピネス」と同じく初出は「VERY」連載であり、登場人物も前書から継続しているので、この斎藤美奈子の解説は、この「ロンリネス」にも当てはまるはずだ。
「VERY」という雑誌を知らなかったので、ネットで調べてみた。いくつかのソースから引用・整理すると、下記の通りである。
■30代女性をターゲットとする光文社発行の月刊誌
■1995年に30代主婦向けファッション雑誌として創刊。1998年には本誌から、東京都白金にちなむ造語「シロガネーゼ」という新語が生まれた
■女性の社会進出に伴い、主に30代から40代前半の、結婚、出産、育児、復職など子育て世代の女性を対象としてファッション、ライフスタイルの情報を中心に掲載している
■雑誌ベリーのターゲットは、共働きである事が前提ですのでそれだけで世帯年収も必然的に上がります。実際に、VERY妻の世帯年収は1500万円以上というのが条件となります。セレブな生活を送るという事も条件の一つですので、やはりそれなりの年収がなければセレブ生活は送れませんよね
■雑誌ベリーの読者層の主な居住区域は、「世田谷区、江東区、目黒区、中央区」というのが一番多いようです
■VERY妻というのは、妻であり母である前に、「女性」なんです。そこを楽しめるか楽しめないかという事もVERY妻にとっては死活問題です
なるほど。それで、本書内の色々なエピソードの背景が少し分かった気がした。キーワード的に言えば、「タワマン-分譲棟と賃貸棟」「子供のお受験」「不倫」「青山のセレクトショップ」等である。他にも色々とある。
そういう読み方をすると、主人公の有紗の設定は面白い。
タワマンの賃貸棟の方に住んでおり、地方(新潟)出身で短大卒。共働きではあるが、パート勤務であり、上記のVERY妻の設定とは明らかに異なった設定を桐野夏生は選択している。また、有紗の一番の友人、洋子も駅前の賃貸マンション住まいで「セレブ」とは言えない生活水準。確かに、この2人がVERY妻たち、および、その夫の生活を引っ掻き回すという斎藤美奈子が言った「読書層と重なる女性たちを徹底的に皮肉り、批評した小説」と読めなくはない。
ただ、そんなこと(VERY連載であること/VERYとはどういう雑誌か)を知らなければ、この小説は、有紗と洋子の不倫恋愛に関する小説であり、読者は、2人の不倫恋愛の持つ、潜在的・顕在的破壊力に驚くばかりである。私は「そんなこと」は、小説を読んだ後に知ったので、破壊的恋愛小説として、この物語を面白く読んだ。
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面白かった。何人子供を産もうと何回結婚しようと恋に落ちてしまうことはあるという過程の描写がリアルで読みながらドキッとして擬似不倫体験ができる小説。興味軸がママ友間の都内高水準生活マウントから男に切り替わったっていう人生にに感情移入した感覚になって、読んだ後は世知辛さも感じた。
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高級タワマンに暮らすママ友たちの人間模様を描いた『ハピネス』の続編。
前作で主人公・有紗の夫が出張先のアメリカで女子大生と不倫したという告白を聞いた一件を経て、今作では有紗自身がタワマンの一階下の住人(『ハピネス』にも登場した高梨という男)と怪しい関係に、そしてやっぱりというか、親友の美雨ママは別のママ友の夫と相変わらず不倫&修羅場継続中という、何だかドロドロとした展開のお話である。
『ハピネス』ではタワマン住民内にある格差みたいなところがテーマとして前面に出ていたと記憶しているけど、今回はお受験に関する話は出てくるものの、プライベートな不倫ネタがメインとなっており、やや俗っぽくなった印象だ。
もちろん俗っぽさがダメというわけではなく、むしろ無国籍風な登場人物の多かった近年の桐野作品と比べて感情移入しやすくなっているところはあると思う。
本作の終盤、主人公が自由を求めてあることを主体的に決断してそれを実行する様は、なかなか清々しいものがあるなと感じたけど、登場人物たちが身近に感じられるからこそ、不倫が絶対に許せないっていう人は受け付けないだろうから、読者を選ぶところはありそうで、このあたりはやっぱり桐野作品に通底するところかなと思う。
そしてラストのモヤモヤっとした展開は更なる続編を匂わせているのか、それとも娘のいる母親の物語としてはここまでが限界なのか、『ダーク』みたいに大爆発するのかなとちょっと期待したけど、さすがにそうはならなかったか・・・
それにしても『ハピネス』に登場したときの高梨は、冴えないおっさん程度の印象しかなかったのだが、とんでもないクセ者だったとは。
実際、この押しの強さは同じオトコの目線で見て大変勉強になった。
彼の人物造形はかなりイヤ~な感じが出ていてとても良かったと思う。
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2018年刊。『ハピネス』(2013年)の続編である。
前作はタワマンに住むプチセレブな女児をもつママ友グループに露呈される階級による軋轢が主題であったが、本作ではそれは影を潜め、恋愛—不倫が主題となっている。
主人公は同じ有紗で、前作のラストでは夫とよりを戻してハッピーエンドになっていたのに、2年後を描く本作では冒頭から夫婦仲があまり上手くいっておらず、不穏である。
前作から引き続いて継起している親友・美雨ママのダブル不倫に触発されたこともあって今度は有紗が妻ある男性・高梨と恋愛に落ちる。
しかしこの高梨なる男性はよく分からない。美雨ママの言うように「女たらし」であって、上手いこと女性心理を操縦して遊んでいるのではないかという風に見える。
はっきりしない悶々としたやり取りが続き、この不透明さは最後まで解消しない。それは現実がそのような不透明さだらけであるからだろう。
この作品もまた、さらなる続編を可能にしているような終わり方だった。
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第一章 賢妻愚妻 第二章 良妻悪妻 第三章 賢母愚母
第四章 聖母俗母 第五章 愛夫憎夫
妻も母も夫もいろいろあるのね
会話しながら相手の心の内を推測するなんて私にはムリ。「じゃあね」と分かれた後で、ホントはこんなつもりだったのではと思いついてありゃりゃと思うのがせきのやま。次に会う時はもう忘れてるのさ
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ハピネスが好きで何回も読んでます。主人公の有紗は嫌いだけど。ハピネスは子育て、ロンリネスは不倫がメイン。不倫に嫌悪を抱くけど、少し羨ましくなるような感じになっちゃいます。中途半端で終わったので、次は「エンドレス」かな。。
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ハピネスの続編。恋愛の良い部分だとか、甘ったるく共感できる部分なんてほとんどなくて、ただ淡々と書かれたそのストーリーが面白い。あまり登場人物の誰かに強く肩入れしていない書き方が、この手のストーリーの重さや苦しさを軽くしてるから、割とあっさり読めた。高梨は危ない臭がすごい…このやり口で一体何人の女を泣かせてきたんだと言いたくなる。一生2人で旅に出るなんて絶対うそ!面倒くさくなった女に距離を持たせる貞の良い常套句で、また新しいところで新しい女をつくるぞこいつは!!と1人悶々としながら読んだ。でもこういう危ない男を求めてしまうのが不倫なんだろうなー。結婚してるから、ただ優しくて誠実でおおらかな人は求めない。何を考えてるかわからなくて振り回されるような刺激的な男がスパイスになってしまうんだろうなー。気をつけようー、なんて。笑
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「ハピネス」の続編ともいえるお話。タワマンで子育てしている有紗。不倫しているママ友がおり、気が付くと自分も不倫をしている。この小説のテーマは「不倫」ではなく、子育て中の男女がしがらみの中でいかに「自分」を失わずに大切に育てていくという話だと思った。なかなか面白かった。
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ハピネスの続編。登場人物の表現が○○ママ、○○パパとなっているときと、名前の時があり、この人誰だっけと思い出すのに立ち止まることも。主人公が男との合瀬のために未就学児を夜1人留守番させるシーンさすがに引いた。続きがありそうな終わり方だった。
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出会ってしまったら危ない橋でも渡りたくなってしまうのは正直わかる。だから、有紗が沼に嵌っていくまではソワソワし通しで、指の隙間から見るように読んだ。ただ、これが本物の恋なんだとしてしまうところまでは気持ちが追いつかなかった。もちろん洋子の恋愛も同様である。
有紗には自分という軸ができた。ハピネスの頃の彼女とラストの彼女はまるで違う人間だ。それでもこれを「大人になった」とか、「人間として成長した」と前向きな表現で評価したくない。彼女は「図太くなった」だけなのだ。そしてきっとこの先もよりそれが強くなるのだろうと思う。良くも悪くも。
結果的になんとなくきれいに丸く収まったとしても、後々を考えると恐怖でしかない。このように考えてしまう私は、この本で言うところの"つまらない女"なのだろう。
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ハピネスからのロンリネス。
タワマンママとタワマンパパのW不倫小説。
単身赴任から帰国した夫との仲を修復した妻が、ハピネスで子供シャベルを落とした階下の男との強引な不倫設定。後付け感は否めない。それでもテンポ良い展開で、ありえない設定と思いつつも読み進めてしまう。さすが桐野夏生先生。
破滅に向かうことはわかっていても突き進む、止めるのかと思っても止められない不倫。こいつら、今回不倫止めてもまたやるんだろうな、と思わせてくれる。
不倫はダメと教えてくれている気もする。
関根勤先生の意見も聞いてみたい。
Posted by ブクログ
02月-16。3.0点。
タワマン小説「ハピネス」続編。
賃貸タワマンに住む主婦の、その後を描く。
うーん、ただの不倫小説になってしまった。前作はママ友たちの複雑な人間関係だったのが、主人公中心の物語に。
Posted by ブクログ
「ハピネス」の続編という事で手に取る。
前作の流れを思い出しつつ読み進める。
ハピネスの見えるか見えないかのひりつく女のバトルでは無く
今作はガッツリとドロドロしている。
不倫なぁ。
妻になって母になっても、
女で居たいと願うから足を踏み入れてしまうんでしょうが
本当にハマって抜け出せなくなるんだろうな。
子供が可哀想だと思いつつ
こんな風に奔放に動けるのは凄い。
幸せかどうかは別として。
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前作の「ハピネス」とともに、小説としての設定ではなくリアルな描写も多い
一時期流行ったタワマンカーストのドラマとともに大袈裟に書かれることも多いママ友系、決して大袈裟ではないことも多い 笑
Posted by ブクログ
前作がなんとなく幸せに舵を切ったのに、冒頭から鬱々とした始まりで、読み終わるのに時間がかかった。
子どもは、自分の命よりも大切。
でも、孤独は埋められない。
難しい問題。
子どもに目を向けない夫、自由を楽しむ夫にイラつく妻。
夫婦それぞれのかたち。問題は一難去ってまた一難。終わりが見えない戦いの日々。問題から逃げ続ける、話をしようとしない夫と、とどまることから抜け出したい、なんとか一歩踏み出したい妻。
大なり小なり皆、ワガママ。自分がかわいい。
その言葉、言ったら終わりだよね(地雷)という言葉を平気で口に出来てしまう夫とその言葉を言ったら終わりだから、腹立たしいけど心のうちに納める妻と言う構図が、ざわざわする。妻が黙っていると、勝ったと思っていそうでイラつく。妻はいつまでたっても、本音が言えないのか…。夫のちっぽけなプライドのために涙を飲み込むしかないのだろうか?
妻の寂しさは、どうやって解決すればいいのか。苦しさは…と、いっている時点で、一人で何とかしようとしている、二人で話すという行為は消えてしまっているのが悲しい。
頼れないのは悲しいだろうな。
だから、いろいろなところに、癒しを求めてしまう。現実の世界でも、韓流、犬、猫、SNS、酒、不倫等々…
結婚って何だろう?
誰かが重荷を背負うだけの制度なのだろうか?
自分の陣地を守る、確保するための戦いのようで、苦しくなる。
誰だって苦難を避けられるなら避けたい、一人のときは、乗り越えようとするのに、生活をする、誰かと居るということを選んだとたん、相手に丸投げしてしまうのは何だろう。
主人公はすぐ、誰かと比べてしまう。
不毛だと思う。
自分の都合の良いフィルターがかかった、幸せそうに見える家族に嫉妬するほど寂しいものはない。
SNSに、高価なものをあげている人も、本当に満たされているかはわからない。タワマンに住んでいるから、お金持ちなのかもわからない。
一人でいる孤独と家族、恋人といるのに孤独。
例えば、休日、クリスマスなどのイベントの日に歩いている家族、恋人が、本当に幸せかは、わからない、リア充に見えても違うかもしれない、キラキラした子が高校・大学デビューをしたばかりの子かもしれない等々、見えているものだけがすべてではない。
健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命あるかぎり真心を尽くすことを誓いますか?
難題…。