桐野夏生のレビュー一覧
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桐野夏生『もっと悪い妻』文春文庫。
僅か140ページ程で6編収録の短編集。
現代日本の様々な市井の人びとの日常を切り取ったような短編ばかりが並ぶ。歪な関係の夫婦、独り身となった男性や女性。事情や状況は様々あれど、しっかり生きていることだけが人生の証なのかも知れない。
『悪い妻』。キラキラネームの娘と暮らす、脆くて危うい若い夫婦の日常を描いた短編。いつ破綻してもおかしくないようなイマドキの若い夫婦の生活。家事と育児に一切関わらないアマチュアロックバンドに熱中する牛丼屋のバイトの夫に不満を募らせる千夏はついつい娘のドレミに当たっていた。
『武蔵野線』。中年男の悲哀をこれでもかと描いたような短編。何時までも過去を引きずりながらも、若い女性とどうにかなることを夢見る男の哀しい性は端から見ると情けない。会社をつぶし、タクシー運転手となった53歳の原田は首都高を自転車で走る老人の姿を目にする。その老人は会社をつぶした時に別れた妻の義理の父親に似ていた。義理の父親は何かあると武蔵野線にでも飛び込むかと言うのが口癖だった。
『みなしご』。妻に先立たれ、独り暮らす老人の悲哀。掴みかけた微かな幸せも儚く消えていく。亡くなった妻が引き取って来たみなしごの老犬ハッチと暮らす老人男性。親が遺した8部屋ばかりのアパートを更地にして年金の足しにして、悠々自適に暮らそうとしていたが、1人だけ初老の女性が居残っていた。
『残念』。違う男と結婚することを夢想する愚かな女。結婚は人生の墓場と言うが、これは男性側のセリフというのが一般的だ。42歳になる佐和子は海外セレブたちのゴシップに興味津々で、夫の雅司と結婚したことを後悔している。細身で美形の佐和子に対して雅司はぱっとしないずんぐりむっくりで、何で彼と結婚してしまったのだろうか。
『オールドボーイズ』。僅かな繋がりだけで、その隙間に入り込もうとして来る自己中な人びと。12年前に赴任先のヨハネスブルクで夫の隆哉を亡くした歳49歳の広沢亜美は気ままな独り身の生活を楽しんでいたが、義理の母親や隆哉の元上司から連絡が入る。
『もっと悪い妻』。様々な家族の形があるだろうが、描かれるこの家庭は歪で異常だと思う。夫の新と娘の美織、犬のジンジャーと暮らす37歳の麻耶には夫公認の不倫相手で大学時代の元彼の翔太郎が居た。
本体価格640円
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「夢と現の“あわい”を行ったり来たり」
最終盤、“幻の”谷崎潤一郎のひと言。
“あわい”という言葉、この春から何かと目に付き、いちいちハッとしてしまう。
ぼくが大好きな上白石萌歌さん。クリエイティブコンソーシアム“adieu”の最新EP『adieu5』を語る際のキーワードのひとつが“あわい”だった。
adieuが語った“あわい”についての、僕の意識がそうさせるのか、“あわい”の文字を目にした背景のことごとくに、adieuや萌歌さんの“影”を感じていた。いちいち数えることも億劫なくらいに、僕の目の前に現れては積み重なってゆく“あわい”の文字。
2027年1月放送予定のNHKドラマ『デンジャラス』に、萌歌さんは千萬子役で出演する。紛れもなく萌歌さんの“一部”となった本書『デンジャラス』もまた“あわい”の文字の、記憶のひとつに編み込まれた。
萌歌さんの千萬子役を耳にし、手にした『デンジャラス』。はたして彼女の役回りとは。そんな動機で読み始めたせいか、本書とは無縁のバイアス下で、物語への没入観に至る寸前に、淡い意識のベールがかかってしまった。
とにかく千萬子の存在ばかりが気になった。
タイトルからは思いがけず、穏やかな印象でした。終盤は、ハラハラしましたが、谷崎潤一郎が完全な脇役で、愛おしさすらおぼえました。『デンジャラス』とは大げさなタイトルとも思いましたが、人の心のうちに秘めたもの、言葉や態度にはならなくても、伝わるもの、にじみでるもの。本音と建前。逆に、それらに気づいていても、表出させない意思の頑なさ、発露したそれを認めるより早く、開き直る"太さ"。そういうところが『デンジャラス』の本質かなあ、と思いました。
ハシゴを外されたカタチになった千萬子の心持ちが、読後の気掛かりです。
いちばん『デンジャラス」な気配が...
さて。NHKドラマ10『デンジャラス』
千萬子を演じる萌歌さんいわく「新境地」とのこと。期待と不安の“あわい”で揺れ動く、ぼくのこころの成り行きやいかに。 -
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ネタバレ16歳の真由は突然両親が家を売り、叔父家族のもとに預けられてしまう。食事も居場所も満足に与えられず、家出をして渋谷へ。サバを読んだ自称高校生ミックに騙されそうになり、バイト先のラーメン屋(ゲン兵衛)ではレイプされた。1つ年上のリオナと出会い、リオナの友人ミトと3人で、秀斗というリオナのJKビジネスの客のマンションで、秀斗を監禁しながら暮らす。真由はゲン兵衛のことを警察に話しに行ったことから両親の居場所がわかり、母が店の人と子どもを作って父がその相手を刺したとわかった。真由はショックを受け、警察を逃げ出したリオナに連絡をし、すぐ返事が来て安心するところで物語が終わる。
登場人物のほとんどの人が自分とは全く違う生活をしていて、こんな世界があるのかと思った。
女子高生が家に居られなくなってJKビジネスに手を出したり、大人に騙される流れがリアル。
何も解決したわけではないラスト。社会問題を強く感じるとともに、じゃあ自分はどうすればいいんだろう、何ができるのか、という疑問も湧いてきた。 -
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桐野さんはもしかしたらさいとうたかおプロダクションみたいにいろんな人に書かせているんじゃないかと思うくらい、また違う印象を受けました。今回は東山彰良さんを思わせましたね。
ちょうどワールドカップで韓国が敗戦して、監督がひどくなじられているいるニュースを見たこともあって、韓国では我が国以上に誹謗中傷が過激なんだなあと改めて思いました。自殺する芸能人も多いですしね。徴兵制もいろいろと問題の種になっているんですね。
ナダンが愛おしいです。この「眠れぬ・・・」の詞がまたいいですね。完成されていないのがまた絶妙。
なぜ舞台を韓国にしたのか、そこらへんを聞いてみたいです・ -
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ネタバレ成功と転落を味わったナダンの人生を、テミンという男の目を通して見せてもらった感じ。
デビューを夢見る少年の頃のナダンは、純粋で、未来しかなくて、ただ眩しかった。
成功を掴んで次々と問題を起こすナダンを見ていると、そんなはずない、あのナダンがそんなことするはずない、と受け入れ難く感じてしまったけれど、それはテミンの目を通しているからそう感じたのかもしれない。自業自得とはいえナダンを哀れに思ったけれど、芸能界ではよくある話で。私たちからすれば次々と流れていくニュースのひとつでしかない。ただ、芸能人だってひとりの人間なんだと思えて、アイドルを見る時にかけられるフィルターが効果をなくしてしまった感じがする。それは決して悪い意味ではなくて、その人を商品としてではなく、もっと奥行きのある人間として見られるようになったということでもある。 -
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4篇の短編からなる構成だ。
表題作の「ローズガーデン」だけは亡き夫の博夫が語る内容となっているが、後の3篇は村野ミロ探偵の視点で綴られている。
⚫︎「ローズガーデン」
年上の女とはたくさん遊んでいるという自負があった博夫は、同い年の女子高生は子ども過ぎて付き合ってられないと思っていた。
ところが博夫と同じように高校を欠席ばかりしている村野ミロという少女に会い、ミロの落ち着き払った目に惹かれ、やがて心身共にミロに溺れる。
ミロも博夫に好意を抱くのだが、博夫の嫉妬心を煽るためなのかどうか、義父と性的関係にあることを平然と告白する。
⚫︎「漂う魂」
ミロが住んでいる歌舞伎町のマンションに、幽霊が出るという噂が立っていた。
4階に住んでいた28歳のホステスが自殺したためだという。
ホステス、男性同性愛者、イケメンのゲイたちの悪意や恐怖心が絡み合う物語だ。
⚫︎「独りにしないで」
美しい中国人ホステスの有美に惚れ込んだ男性から、有美の気持ちを確かめて欲しいとの依頼を受けたが、彼女の本心を聞き出す事などできないとミロは断る。
その男性が、歌舞伎町の路地裏で刺されて死亡する。
⚫︎「愛のトンネル」
地方の公務員の娘が、駅のホームから線路に転落して亡くなったので、部屋を片付けて欲しいとの依頼を受ける。
簡単な仕事だと思っていたミロだが、その娘はSMクラブで女王だったことが判明する。
社会で生きる人々は、幾つかの顔を使い分けていて当然なのだろう。
実質3作目となるミロシリーズ。
桐野夏生さんがデビューしたての頃から始まったこのシリーズだが、巻を重ねる都度に登場人物の人言模様に、より焦点が当てられた内容となっている気がする。
少々危なさが伴うミロの捜査方法ではあるが、そのスリル感が堪らない。
残り2巻となるが、最終章に向かってのミロの活躍が楽しみだ。