桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
去年、反日武装戦線の元メンバーで、本名は桐島聡だと名乗ったあと病死した男のことを思い出しながら読んだ。
この小説の啓子は桐島と違って、捕まったあと服役し、ひっそりと生活していた。
それは、ずっと逃げ回る日陰の身か、元犯罪者として、家族からもそのことを周りに知られないよう生きていくことを暗に強いられる身か、の違い。
親族の結婚にまで過去の犯罪は影を落とす。
桐島も啓子も、若気の至りなんて軽い言葉では片付けられないが、死ぬまで引きずる十字架はなんて重いのだろう。
実在の人物の桐島聡や永田洋子。彼らも、こんなことになるなんてと暴走しすぎてしまったことを、最期には後悔しながら亡くなったと思いたい。
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Posted by ブクログ
なんの予備知識もなく読み始めて、あ、これって、榎なんとかって人と似てるなと思ったら、彼女をモデルにした小説だった。子供すぎて、ピンクのヘルメットと、中ピ連のピは「避妊薬ピルのピなんだ」と、どこまでわかっていたのかわからないが、記憶にあった。
宗教や政治に進出とかは全く覚えていないが、テレビ等で派手に取り上げられていたのだろう。
全体的に、早すぎた人は潰されてしまうというのはよくあることなのだろう。男の恨みを買い過ぎると潰されてしまうということも。
いくら調べても消息がなかなか辿れなかったということだけがはっきりして、それも良かったと思う。
「悪女について」(読んだことはないのだが)方式の構成も -
Posted by ブクログ
閉鎖的かつ観念的な組織が、国家でいう「死刑」を行うときや、その「死刑」行為を正当化する時には、その組織独自の言語・概念を適用します。
連合赤軍なら「総括」
オウム真理教なら「ポア」
ナチスドイツなら「最終的解決」
どれもその殺人行為には「浄化」の意味合いが込められていますが欺瞞的です。また、その観念のよりどころは、ある個人を中心に数年で急激に累積してきた恣意的な組織文化に依存しています。
「革命」は多かれ少なかれ「暴力」に帰結していくことがあります。ただ「暴力」をその組織の目的にしているのではないため、矛盾が生じてしまい、その行為を正当化するためにどうしても欺瞞的になっていきます。
啓 -
Posted by ブクログ
ネタバレ上巻は「わたし」と一緒に和恵をいじめて楽しみ、下巻は和恵に盛大に共感して落ち込んだ。
日本で努力信仰の世界で生きることを許されていた和恵の姿が、自分に被る。老いる身体を受け入れず、鏡の中の幻影に縋り、いつしか怪物になっていく過程を楽しみすらしていた和恵が。
彼女の自己認識のズレが、私の持つ自己認識のズレとオーバーラップする。和恵は上方にズレ、私は下方にズレているという違いはあれど、ほんとうの自分の姿と、ほんとうの周囲の視線や評価を受け入れない限り、ひとに幸福は訪れないんじゃないだろうか。
あと、チャンがシンプルにこわい。人間の作りが違いすぎる。心の底から分かり合えない、関わってはいけない人