桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大好きだったミロシリーズの最新刊が出ていると知り、驚きと喜びで本を開いた。
あまりにも長い年月の経過。
前作「ダーク」から23年…ミロも読者の自分もそれだけの時間を重ねて来たことに感慨を覚える。
母親として息子ハルオを育てて来たミロ。
息子が愛おしくてたまらないミロ。
出生の秘密を話せずに苦悩する心情が切ない。
ミロを追いかけるダークな運命から、ハルオを守り抜こうと懸命に生きて来たのに、物語はそれを許さない。
ラスト残り数頁の思わぬ展開は息を呑む。
本当にこれで最後?
違うよね?桐野先生!と叫びたくなる余韻はさすが。
絶対に続編があると信じて。
さて、大好きなミロシリーズ、どこにしまっちゃったかな?
最初から読み返したくなって来た。
自分的には番外編である「水の眠り灰の夢」が一番の推しである。
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Posted by ブクログ
ネタバレ和恵が日記をつけていることが上巻で明かされたときから、和恵の日記は視点として出てくるだろうなと思ってたらやっぱり出てきて、しかしその支離滅裂っぷりがあまりに凄すぎて圧倒されてしまった。自分が何を求めているのか、何が辛いのか、悲しいのか、そういうものがわからなくなって、本人は理論的なつもりなのに世間とは明らかにズレはじめてしまっている、これはギャグなのではないか?と疑うくらいの滑稽さ。既視感あるなと思ったら、闇金ウシジマくんに出てくる女性に似てるんだと気づいた。自分は一生懸命なんの問題もなく振る舞っているのに、周りはドン引きして離れていって、それがどうしてかわからないっていう感じ。読んでて本当に辛かった。
そして、今いったことを次にはすぐに覆しちゃうところが、和恵と「わたし」よく似ているところだなと思った。
しかし、まさか「わたし」まで売春しはじめるENDで終わるとは思わなかったのでラストの展開は予想外すぎた。これは、解放や復讐としてのエンディングとして肯定してよいものなのか?と疑問に思う。
けっきょくユリコに囚われ続けた「わたし」は、今度はユリオに囚われるだけではないのか?とも思えるし。
あと結局、チャンが殺してるのか殺してないのかも最後までわからない。誰が本当のことを言ってるのかも最後までわからない。その辺がちょっと読後感としてはモヤモヤするというか、白黒はっきりつけたい欲が消化不良をおこしているなと感じる。
ハッピーマニアとかもそうだけど、性に奔放であることが女の解放だった時代の小説を、今読むから違和感を感じるのだろうな。たとえ破滅するにしても、推しとか金のために売春するのではない、自分のために売春する女の物語を久々に見た気がする。
登場人物の女たちのような差別や序列や劣等感、プライド、虚栄心をもったことのない女などおそらくこの世にはいないと思う。多かれ少なかれ若い頃はこういうものに支配されて少し頭がおかしくなる。だからこそ、どのキャラたちも全然好きじゃないけど笑い物にはできないなぁと思った。 -
Posted by ブクログ
ええっ!?ラストの展開、想像もつかなかった。でもどこか納得してる自分もいる。だってミロの今までの生き様を見ていれば、安全な生活に辿り着けるのは無理だろうと思うし。でもだからって、ミロに対して酷すぎないかな。
色んな男がミロを愛し、そしてミロから去っていった。そのときそのときは楽しめたと思うが、ミロの暮らしはいつも不安定だった。ハルオとの20年間だけが、彼女の安寧の日々だったんだろう。
ハルオが自分の出生を知ったときにどうなるのかが怖くて、読んでいる間、なかなか緊張した。ハルオのどこか冷酷なところのある性格から、彼がミロとの訣別を選択することも容易に想像できたし。あんなに葛藤してハルオを産んだミロの気持ちを考えると、ハルオとミロの別れは辛い。
本作はミロとハルオの視点が交互に書かれているが、かっこいいミロに比べるとやはりハルオはまだ幼い。若干20歳にしては度胸も行動力もあるとは思うが、勝手に単身で自分のルーツを確認しにいくのは危険過ぎる。自分の親が、最低な人物だったという衝撃的な出来事がハルオの精神を追い込んでいたように感じた。
私はミロに何となく肩入れしてしまうため、彼女の幸せを願ってしまうのだが、どうにもこの結末を見るに、幸せからまた一歩後退した気がする。
まだ、彼女の大切な人は残っているから、希望は消えた訳ではないけれど。
これでシリーズが完結するのかな。まだ、ミロの話を読みたい。 -
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あるツイートで腐女子は読むべき課題図書であると書いてあり、いずれ読まなくてはなぁと思いながらも機会がなかったのですがようやく読み始めました。まだ上巻しか読んでないし、元ネタの事件のことも知らないのでどのようなストーリーが展開していくのか楽しみです。
語り手である「わたし」が、いわゆる信用できない語り手なので、物語のどこまでが真実でどこまでが嘘なのかまったくわからない中での読書はちょっとだけしんどいです。
しかもこの語り手、底意地の悪さが半端じゃないので、読んでいてすごく嫌な気持ちになります。よくぞここまでひどい性格や思考でいられるな、と思いつつ、ちょっとだけ似ている人を知っていて(学生の頃の友人)、程度はあれどこういう悪意に覚えはあるな、とは思いました。
和恵のある種純粋で真っ直ぐな姿を滑稽で無知幼稚と描写する語り手の悪意には我が身を顧みてちょっと傷ついたりもしました。
しかし、お金持ちの内部性たちを、豊かさは淫靡であると表現したのには言い得て妙だなと思いました。
豊かさは淫らで享楽的。すごいいい表現だと思う。
女の意地悪さ、プライド、無知、思い上がり、自意識過剰、いろんな悪いものを詰め込んだみたいな小説って印象の上巻でした。(語り手の悪意を通しているからこそ際立っているのかもしれないけれど) -
Posted by ブクログ
ミロシリーズ4作目。
心の支えを失い、義父を見殺しにしてから、主人公ミロは憎悪に巻かれ、転がり落ちていく。
上巻最終章に登場する韓国の光州事件。
つい先月、韓国に行く機会があり、事件の中心となった光州に滞在した。事前に事件に関する映画を観たり調べたりして、民衆化を訴える一般市民に、政権を握る軍部が無差別で行った蛮行を知り、たかだか45年前の出来事であることに驚いたばかりだ。
偶然とはおもしろいもので、つい先日再読したシリーズ第1作には、去年訪れたベルリンが登場している。
好きなシリーズって、本筋とは関係ないこんな部分でも御縁があるのかしら、とほくそ笑んだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレニクヨさんの推薦書として読んでみた。
和恵のパートで胸が痛い。
鈍感で悪意にも気づかず、
いつも承認欲求に飢えている女。
パートの後半で「優しくして」という言葉が胸に刺さる。自分を商品として売っている街娼なのに「買われたい」以上に「認められたい」「愛されたい」「私をみて大丈夫だって言って」「安心させて」という悲痛な声が読み取れて悲しい気持ち半面、分かるなぁーとも思った。
誰かに承認されて「正常です」と言われたいのに、その言葉を求めるあまり怪物と化していく。。
承認欲求は恐ろしい。
綺麗なもの、美味しいもの、素敵なもの、良い経験を積めば積むほどに未来に出会うものと比較して評価する。
そんなことしてたらいずれ欠乏感に苦しみ、和恵みたいな化け物になってしまうのたど思った。
悲しい。。私にも怪物の片鱗があって苦しくて嫌にもなった。 -
Posted by ブクログ
女性が主人公のハードボイルド小説。少し異色に感じるが、ヒロインは別れた夫と、その死をひきずる32歳の独身女性であり、並外れた美貌だとか屈強の身体能力を持つ訳でもなく、等身大のごくありふれた人物像だ。
しかし、ある日、忽然と姿を消した美貌の親友と、彼女と共に消えた大金を巡り、その恋人の男やヤクザに、あらぬ疑いをかけられ追われる羽目になる。ただ追われるだけならよくある話だが、時に監視され、或いはこの追っ手と行動を共にしながら消えた女の行方を追う。
ヒロインの強い精神力や機転、失踪した親友の見えざる過去や倒錯した性癖、人脈などが明らかになるにつれ、事態は思わぬ結末を目指して疾走していく。
作者が表現する生々しい都会や異国描写、さらには全編を通じて描かれる「夜」や「雨」の情景を切り取った描写が好きです。
ミステリーとしては、最後の方まで疑問が解消されないモヤモヤ感があり、これが正に伏線となって、最後の最後でどんでん返しの結末を迎え、全てが白日の元に晒される(スカッと解消・伏線回収)という秀作でありました。
この種のジャンル好きには是非一読をお勧めします。