桐野夏生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ミロシリーズ4作目。
心の支えを失い、義父を見殺しにしてから、主人公ミロは憎悪に巻かれ、転がり落ちていく。
上巻最終章に登場する韓国の光州事件。
つい先月、韓国に行く機会があり、事件の中心となった光州に滞在した。事前に事件に関する映画を観たり調べたりして、民衆化を訴える一般市民に、政権を握る軍部が無差別で行った蛮行を知り、たかだか45年前の出来事であることに驚いたばかりだ。
偶然とはおもしろいもので、つい先日再読したシリーズ第1作には、去年訪れたベルリンが登場している。
好きなシリーズって、本筋とは関係ないこんな部分でも御縁があるのかしら、とほくそ笑んだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレニクヨさんの推薦書として読んでみた。
和恵のパートで胸が痛い。
鈍感で悪意にも気づかず、
いつも承認欲求に飢えている女。
パートの後半で「優しくして」という言葉が胸に刺さる。自分を商品として売っている街娼なのに「買われたい」以上に「認められたい」「愛されたい」「私をみて大丈夫だって言って」「安心させて」という悲痛な声が読み取れて悲しい気持ち半面、分かるなぁーとも思った。
誰かに承認されて「正常です」と言われたいのに、その言葉を求めるあまり怪物と化していく。。
承認欲求は恐ろしい。
綺麗なもの、美味しいもの、素敵なもの、良い経験を積めば積むほどに未来に出会うものと比較して評価する。
そん -
Posted by ブクログ
女性が主人公のハードボイルド小説。少し異色に感じるが、ヒロインは別れた夫と、その死をひきずる32歳の独身女性であり、並外れた美貌だとか屈強の身体能力を持つ訳でもなく、等身大のごくありふれた人物像だ。
しかし、ある日、忽然と姿を消した美貌の親友と、彼女と共に消えた大金を巡り、その恋人の男やヤクザに、あらぬ疑いをかけられ追われる羽目になる。ただ追われるだけならよくある話だが、時に監視され、或いはこの追っ手と行動を共にしながら消えた女の行方を追う。
ヒロインの強い精神力や機転、失踪した親友の見えざる過去や倒錯した性癖、人脈などが明らかになるにつれ、事態は思わぬ結末を目指して疾走していく。
作者が表現 -
Posted by ブクログ
去年、反日武装戦線の元メンバーで、本名は桐島聡だと名乗ったあと病死した男のことを思い出しながら読んだ。
この小説の啓子は桐島と違って、捕まったあと服役し、ひっそりと生活していた。
それは、ずっと逃げ回る日陰の身か、元犯罪者として、家族からもそのことを周りに知られないよう生きていくことを暗に強いられる身か、の違い。
親族の結婚にまで過去の犯罪は影を落とす。
桐島も啓子も、若気の至りなんて軽い言葉では片付けられないが、死ぬまで引きずる十字架はなんて重いのだろう。
実在の人物の桐島聡や永田洋子。彼らも、こんなことになるなんてと暴走しすぎてしまったことを、最期には後悔しながら亡くなったと思いたい。