桐野夏生のレビュー一覧
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背景は東日本大震災の直前と震災、震災後6年経って(まさに今、2019年)、そしてもっと未来、先取りの物語です。
作者が執筆したのは東日本大震災の直後です。あの頃は世の中も文学もどうなるのかという衝撃でした。
過ぎてみればそこで世界が止まるわけでもでもなかったのですけど。
この「バラカ」というヒロインが日系ブラジル人の少女の成長物語のストーリーは、現実よりも福島の放射能被害が広範囲に深刻になっていて、というデストピアの世界。「えっ!そんなぁ~」と思いますが「もしかしてほんとうはそうなのでは」と思わせられてしまう怖さもあります。
日系人の両親が日本に働きに来て貧困に陥り、他の国に脱出するもうま -
Posted by ブクログ
ネタバレうーん読むのがつらい話だった。上巻はバラカがちっちゃいのに境遇が大変で辛かったけど、下巻は成長してて自分の立場が分かってる上で巻き込まれてるからこれも辛かった。
エピローグは、こーやって大人になったんやなあと救いがあるラストだからこっちは安心するけど、読んでしまえば、なくてもよかったかもしれんと思ってしまった。何も見えない先に向かって歩みだそうとするバラカ、みたいなラストなら不安なまま終わってそれはそれでよかったかも、と思ったけど辛いもんなー。
震災後のディストピアものはボラード病を読んでるけど、表現している世界観は同じ感じだと思う。
面白かったからこの人の他の作品も読みたいわい。 -
Posted by ブクログ
友達に本当の名前を教えることも禁止されて生きてきたマイコ。
そんな母は、家を空ける度に顔を変えて帰ってくる。
住むところはアジアやヨーロッパから、今はナポリのスラムに住んでいる。
今までだって貧しい暮らしばかりで、学校もろくに行かせてもらえなかった。
それでも母を信じながらも、難民キャンプで育ったという、雑誌で知った七海という女性宛に本名で手紙を書き始める。
そして、隠し事の多い母に嫌気が差して、とうとう家出をする。
そこで国を出てきた二人の女性と暮らし始める。
彼女たちはマイコよりももっと厳しい年月を過ごしてきた。
そんな彼女たちとの生活が始まるが、母の本当の姿にも近付いてくる。
本当の自分 -
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スピード感が速い。久々一気に読んだ小説。
まだ上巻の為、何がどうなっているのか?これからどうなるのか?全く予測不可能。
出版社に勤める沙羅は独身のまま40歳を超え、子供を望むようになっていた。友人の優子にドバイで養子を購入出来るとの情報をもらい、優子と共にドバイを訪ね、バラカという少女を幼女にし、日本に連れ帰る。
日本に住む日系ブラジル人のパウロとロザにはミカという幼い娘がいた。
酒に飲まれるパウロ。
「精霊の声」教会にのめり込むロザ。
このままでは駄目になると、ドバイに家族で移住するが、パウロは厳しい暑さに身体を壊し、ドバイで働けなくなり、単身ドイツに渡る。
ロザはナニーの仕事が気 -
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肉体的あるいは精神的に隷属状態に置かれた人々を描いた短篇集。
とにかくぞくぞくしました。
面白いと言うのは不謹慎かもしれないけど、こんな気持ちにさせてくれる桐野夏生という作家はやっぱり稀有な存在だと思います。
さまざまな時代や設定の中で、奴隷として抑圧状態に置かれた人やその周囲の人を描いていますが、自分の抑圧状態に無自覚な人もいれば、脱出しようと戦おうという人もいます。
暴力によって肉体的・直接的に支配される女性を描いた話はとんでもなく苛烈で、過去だけではなく現在でもこのような扱いを受ける女性がいるのだろうと想像するのもおぞましく、反吐が出そうになりました。
精神的に搾取され続ける女性 -
Posted by ブクログ
ネタバレあらすじも何も頭に入れないまま読んだので
行間に漂う仄暗い感覚と不倫劇から始まり
娘が行方不明になるという展開に目が離せなくなりました。
両親や周りの人の取り乱し方や諦め方、諦められなさ、接し方
テレビに出たときの世間の反応、善意の第三者や悪意の人の意見に
振り回される様子など、どれもリアルに感じます。
カスミは良いお母さんではないかもしれませんし、
愛情なのか執着なのかもわからなくなりますが
人間は一辺倒ではなく、一面だけで善悪を語れないという
一例であるとも言えます。
感情移入はできないものの、今いる場所から逃げたくて
その道を相手に見つける気持ちはわかる気がします。
その人といると -