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どこにも、逃げられないよ──。
長老との結婚を拒絶する女は舌を抜かれてしまう、という掟のある村で、ある少女が結婚相手として選ばれる「雀」。
ある日突然、武装集団によって、泥に囲まれた島に拉致された女子高生たちを描いた「泥」。
アイドルを目指す「夢の奴隷」である少女。彼女の「神様」の意外な姿とは?(「神様男」)。
管理所に収容された人々は「山羊の群れ」と呼ばれ、理不尽で過酷な労働に従事し、時に動物より躊躇なく殺される。死と紙一重の鐘突き番にさせられた少年の運命は?(「山羊の目は空を青く映すか」)……など。
時代や場所にかかわらず、人間社会に現れる、さまざまな抑圧と奴隷状態。
それは「かつて」の「遠い場所」ではなく、「いま」「ここ」で起きている。
あなたもすでに、現代というディストピアの奴隷なのかもしれない――。
様々な囚われの姿を容赦なく描いた七つの物語。
桐野夏生の想像力と感応力が炸裂した異色短編集。
カバーイラストは、かわいさと残酷性を併せ持った作風で物議を醸すLA在住の画家、Luke ChuehのRough Waters。
解説・白井聡
※この電子書籍は2017年12月刊行の文春文庫を底本としています。
Posted by ブクログ 2024年01月21日
7つの短編小説が収められた短編小説集。雑誌掲載の作品を集めたものであるが、発表時期は2006年から2014年の間でばらついている。何かに物理的に捉われていたり、あるいは、支配されている状況を描いた小説ばかりである。「奴隷小説」という短編小説集全体の題名も、そこから来ているのだろう。
どれも、やり切れ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年02月08日
文庫本になってから読む利点は解説があるから、それがいいのか、邪魔なのか。
この文庫版の政治学者白井聡の解説は、なるほどなあと思う。桐野夏生さんの作品が現代の(平成の)新しいプロレタリア文学ではないか、というところはおもしろい。
ここに集められている7短編は、何かに隷属させられて藻掻くか、打ち破れ...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年01月31日
「雀」「泥」「神様男」「REAL」「ただセックスがしたいだけ」 「告白」「山羊の目は空を青く映すか」
これら7編が収録されています。
どの短編も日常と掛け離れた一種独特の世界が描かれていて桐野さんらしい「毒」が溢れた作品でした。
現代を描いた「神様男」その他、場所や時代背景は異なるけれど皆...続きを読む
Posted by ブクログ 2019年03月02日
肉体的あるいは精神的に隷属状態に置かれた人々を描いた短篇集。
とにかくぞくぞくしました。
面白いと言うのは不謹慎かもしれないけど、こんな気持ちにさせてくれる桐野夏生という作家はやっぱり稀有な存在だと思います。
さまざまな時代や設定の中で、奴隷として抑圧状態に置かれた人やその周囲の人を描いています...続きを読む
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