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Posted by ブクログ
これを読んで好きな小説家が増えた。『柔らかな頬』のときも感銘を受けたが今回もそうだった。日常の中でふっと訪れる狂気。それは何も特別ではなく、他者の眼差しで冷ややかに見つめる自分自身も同じ狂気に染まっていた、といった安住のなさがある。こと「安住のなさ」にはいくつか在り方があるのだが桐野夏生の場合のこれは好きだ。別の在り方としては真実で四方八方を追い詰めるやり方だがそもそも真実とは?といった果てのない疑問を残すのだが、『錆びる心』の場合は「何を信じるのか」から出発するので問題の回答権を自身が掌握することができる。答えることのできる問題。そのようなものに挑戦できるのがこの著者の書く小説の真骨頂なのだと感じた。
Posted by ブクログ
桐野夏生さんの短編小説集。
はじめ把握していないまま読み始めたのだが、収録作は作者デビュー翌年の1994年から1997年で、大ブレイクする『OUT』(1998年)より前の、初期の作品群だ。
これらは多彩で、どれも面白く読める豊かな短編小説である。なるほど、松本清張の作品のように、それぞれに心理的な劇の物語時間が推進されていて、それが確かな人間観察に基づいているからこそ、リアルな感触を持ち、読者の心を引きずり込んでいくのだろう。
ただし、結末は
「あれ? これで終わり?」
と驚かせるような、少々肩すかしを食わせるようなものが多く、一般的な多くの読者をいくらか失望させるのではないだろうか。
古典的な「完結感」を演出せずに、突然パタッと止まるかのような終結をしばしば導き出す現代音楽を私はよく聴いているので、「終わり方」に関しては何でもありと考えているから、「それもOKかな」ととらえる。しかしたいていの読者はやはり落胆するのではないか、という終わり方が幾つかあった。大衆向けのエンターテイメント小説としては、それはうまくないと思われる。
本書はあくまで作家初期の作品集なので、後年の短編は円熟によって形式的にも「よくまとまった」作品になっていくのかもしれない。
だがこれをマイナス要素としても、作者の人間理解の鋭さが端々に現れるこれらの小説の魅力は代えがたいものがある。
特に巻末の表題作は、結婚生活にウンザリした主婦の心理を鋭くとらえ、家出からさすらい歩く新たな生の歩みが、場面転換に応じてラプソディックに綴られてゆくが、全く違う場所に到達したかのような最後のところで上手く冒頭の場面の状況と結びついていて、印象深い作品となっている。
本書全体にわたる、多彩な心理世界を描出するこの手腕が、後年さらに円熟してどのような短編集を生んでゆくのか、興味をそそられた。
Posted by ブクログ
全6編の短編が収録された桐野夏生氏の短編小説。文庫の発刊は2000年なので、もう15年も前の作品なんですね。
桐野夏生さんの作品は初めて。『OUT』や『東京島』からダークなイメージを持って読みましたが・・・、まんまでした(^-^;
ボキャブラリーがないのでちょっと違う表現かもしれないですが、『世にも奇妙な物語』のようなテイストがあるんですよ。つくづく、人って怖いな、と。解説にもありましたが、人間の心の裏側が見事に描かれた面白い小説だと思います。
また、この小説は、全体的に短編の良さが詰まっていて、読んでいてストレスを感じなかったですね。
一つ一つの話がダラダラと間延びしないし、オチがあってスッと終わるところが良いんですよね。ミステリー要素からの結末が想像力を掻き立てられて、何とも言えない読後感を味わえます。
次は、桐野夏生さんの長編作品も読んでみたいと思います。
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小説・文芸
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