あらすじ
「家出するなら夫の誕生日にしようと心にきめていた……」
人間のダークサイドを炙り出した作品集。
十年間堪え忍んだ夫との生活を捨てて家政婦となった主婦。囚われた思いから抜け出して初めて見えた風景とは。(錆びる心)
劇作家にファンレターを送り続ける生物学教師の“恋”を描いく。(虫卵の配列)
荒廃した庭に以上に魅かれる男の内面に秘められたもの。(月下の楽園)
魂の渇きと孤独を鋭く抉り出した六つの物語。
解説・中条省平
※この電子書籍は1997年11月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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「OUT」以来の久しぶりの桐野夏生さん。
短編6篇の登場人物がそれぞれ心の内で悩んだり怒ったり決意したり、その決意が鈍ったり…その辺にいる人間らしくて、各々の話にどっぷりハマりこんで読めた。
特にジェイソンが気に入った。ジェイソンに変貌した自分を知るにつれ落ち込む主人公。ラスト、妻さえいてくれたらと開き直ったのに、やっぱりジェイソンは妻に対してもジェイソンだった。けど、お酒の失敗でなくても時に誰かのジェイソンに誰でもなり得てしまうんではないだろうか?私だけが知らないだけで…。
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これを読んで好きな小説家が増えた。『柔らかな頬』のときも感銘を受けたが今回もそうだった。日常の中でふっと訪れる狂気。それは何も特別ではなく、他者の眼差しで冷ややかに見つめる自分自身も同じ狂気に染まっていた、といった安住のなさがある。こと「安住のなさ」にはいくつか在り方があるのだが桐野夏生の場合のこれは好きだ。別の在り方としては真実で四方八方を追い詰めるやり方だがそもそも真実とは?といった果てのない疑問を残すのだが、『錆びる心』の場合は「何を信じるのか」から出発するので問題の回答権を自身が掌握することができる。答えることのできる問題。そのようなものに挑戦できるのがこの著者の書く小説の真骨頂なのだと感じた。
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人間の心の裏側が描かれた六篇の短篇集。それぞれの短篇に味わいがありよかったが、中でも最後の表題作の「錆びる心」が最も好みだった。主人公の絹子が住み込みのお手伝いとして働く打田家はそれぞれの絶妙なバランスで成り立っているが、近い将来に靖夫が亡くなったらミドリはどうなるんだろうかと思いを巡らせてしまった。
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虫卵の配列
羊歯の庭
ジェイソン
月下の楽園
ネオン
錆びる心
「現状を変えたい」とか「こんな生活はイヤだ」とか思って
現状を変えるべく何かことを起こしたら、必ず誰かに影響を及ぼす。
自分の思うように、思った通りに、事態は推移していかない。そういう中で
立ち現れる、その人それぞれの姿、本性、実力?
イチオシは「虫卵の配列」。静かな狂気と思い込みの脆さ。
表題作「錆びる心」も良かったです。
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6つのお話、ミステリーというのだろうけど、怪しげな世界観があり、ファンタジー(大人向け?)という感じもする。
表題となっている『錆びる心』。自分が去ることで、相手に「自分を植え付けたかった」というところ。共感しすぎて、息が詰まりそうだった。
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桐野作品に出てくる登場人物は、安易な感情移入を許さない癖の強さを感じます。6つの短編も語り手の常識や行動の方向は私と異なっていて、予測できない分、おもしろかったです。
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現実にありそうな世にも奇妙な物語。
初めての桐野夏生の本だったが、するすると読ませる巧みな文章を書く作家だと思った。
感情の描写も巧く、震えるほど共感した部分が所々あった。
様々な人生を垣間見れておもしろかった。
桐野夏生の長編にも挑戦してみたい。
虫卵の配列 ★4
羊歯の庭 ★4.5
ジェイソン ★3.5
月下の楽園 ★3.5
ネオン ★3
錆びる心 ★3.5
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桐野夏生さんの短編小説集。
はじめ把握していないまま読み始めたのだが、収録作は作者デビュー翌年の1994年から1997年で、大ブレイクする『OUT』(1998年)より前の、初期の作品群だ。
これらは多彩で、どれも面白く読める豊かな短編小説である。なるほど、松本清張の作品のように、それぞれに心理的な劇の物語時間が推進されていて、それが確かな人間観察に基づいているからこそ、リアルな感触を持ち、読者の心を引きずり込んでいくのだろう。
ただし、結末は
「あれ? これで終わり?」
と驚かせるような、少々肩すかしを食わせるようなものが多く、一般的な多くの読者をいくらか失望させるのではないだろうか。
古典的な「完結感」を演出せずに、突然パタッと止まるかのような終結をしばしば導き出す現代音楽を私はよく聴いているので、「終わり方」に関しては何でもありと考えているから、「それもOKかな」ととらえる。しかしたいていの読者はやはり落胆するのではないか、という終わり方が幾つかあった。大衆向けのエンターテイメント小説としては、それはうまくないと思われる。
本書はあくまで作家初期の作品集なので、後年の短編は円熟によって形式的にも「よくまとまった」作品になっていくのかもしれない。
だがこれをマイナス要素としても、作者の人間理解の鋭さが端々に現れるこれらの小説の魅力は代えがたいものがある。
特に巻末の表題作は、結婚生活にウンザリした主婦の心理を鋭くとらえ、家出からさすらい歩く新たな生の歩みが、場面転換に応じてラプソディックに綴られてゆくが、全く違う場所に到達したかのような最後のところで上手く冒頭の場面の状況と結びついていて、印象深い作品となっている。
本書全体にわたる、多彩な心理世界を描出するこの手腕が、後年さらに円熟してどのような短編集を生んでゆくのか、興味をそそられた。
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短編集。作品に共通するのが作品の中での輪廻というか因果応報のような流れがあって思わずなるほどと感心してしまうオチがある。それが作品一つ一つに魅力を作り出していると思う。
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全6編の短編が収録された桐野夏生氏の短編小説。文庫の発刊は2000年なので、もう15年も前の作品なんですね。
桐野夏生さんの作品は初めて。『OUT』や『東京島』からダークなイメージを持って読みましたが・・・、まんまでした(^-^;
ボキャブラリーがないのでちょっと違う表現かもしれないですが、『世にも奇妙な物語』のようなテイストがあるんですよ。つくづく、人って怖いな、と。解説にもありましたが、人間の心の裏側が見事に描かれた面白い小説だと思います。
また、この小説は、全体的に短編の良さが詰まっていて、読んでいてストレスを感じなかったですね。
一つ一つの話がダラダラと間延びしないし、オチがあってスッと終わるところが良いんですよね。ミステリー要素からの結末が想像力を掻き立てられて、何とも言えない読後感を味わえます。
次は、桐野夏生さんの長編作品も読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
最近のおどろおどろしい内容の長編に比べると、軽い内容で読みやすい。と云っても、悪意に満ちた人の心を描いている作品が多く、読後感は必ずしも良くない。ブラックユーモア風の短編が異色で面白いと思った。
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とても良かった。桐野夏生独特の世界に魅せられた。危うい人間の心がテーマの短編集で、ちょっと不気味でダーク、でも作品によっては美しさを感じるものまである。「虫卵の配列」「月下の楽園」が特に好み。
ところどころに「ジェイソン」のようなちょっとユーモアのある話が挟まってるのもヨイ。
Posted by ブクログ
ほんと、あっという間に読める。
キャラ描写、話の切り口、淀みない文章。さすが、手練れ( ´ ▽ ` )ノ
大長編にどっぷり浸かって倫理も常識も忘れ去ってしまえるのが桐野作品の魅力だけど、短編もいけるね( ´ ▽ ` )ノ
Posted by ブクログ
どのストーリーも救いのないというか、悲しい結末と言うか。
1話目は読んでいて、「んん??」と思ってしまった。
ラストで表題にもなっている「錆びる心」は私としてはこの中で一番好きでした。
Posted by ブクログ
私は桐野さんが好きです。
好きな小説家は?と聞かれたら、桐野さんと答えます。
でも、正直、この短編集は面白くなかったと思います・・・。
解説で、ある文芸評論家が、「本書で桐野夏生が短編作家としても松本清張に匹敵する~」と書いていますが、そんなことないんじゃないかな。桐野さんはやっぱ長編なんじゃないかな、僭越ながら。
それでも、絶賛離活中の私としては、表題作とか気になりました。
主人公は、夫の心に自分の何かを印象的に、しかもくっきりと傷つける形で残そうとしていたというのは、夫に不満を抱えるママ友からたまに聞く話ではありますが、私にはそういう気持ちはありません。
夫の心に私の何かを残したいとは思いません。
離婚したら、夫とは、名実共に子育てという私にとって最重要事業の共同事業者という関係になるだけです。その信頼関係が残れば、他には何も望みません。
夫の心に何かを残したいという話を聞くと、彼女はまだご主人に愛情があるのかなーと思います。
Posted by ブクログ
偶然桐野さんのペンクラブ会長の就任会見を動画で見て、桐野さんはしばらく読んでなかったと思ってこの本を引っ張り出した。書棚の整理中に見つけていたので再読。期待通り面白かった。
短編が六編だが、とに角最初の「虫卵の配列」という題名にインパクトがある。
昆虫は可愛らしいものも多いが、きれいな葉っぱをふと裏返してみて、並んだ卵はさすがに気持ちが悪いこれOUT。
☆虫卵の配列
教師向けの雑誌を作っている私は、中学の生物教師をしている瑞恵と偶然出あった。会いたいと思っていたので嬉しかった。教師を辞めて今は介護施設で働いているという。私は付き合っていた画家に失恋をした話をした。意外なことにおとなしいイメージだった彼女はもっと積極的になれといった。
彼女は今では劇作家の大ファンで作家にファンレターを送り続けていた。その手紙が脚本に使われているというこれは作家の愛情だ。
四個の卵が並んでいる斬新な前衛劇には観客の彼女も姿のない形で参加している。そして演じている女優は作家の奥さんで排斥される異物役だったという。作家に心から愛されているのだ。だが関係がこじれ、虫の卵が詰まった箱が送られてきて……
誘われたのでその劇団の公演に行ってみることにしたが、壁のポスターは、聞いていた「虫卵の配列」ではなかった。そして修羅場。
虫卵のうすら寒い感覚まで短いストーリーに溶け込ませる腕は鮮やか。
☆羊歯の庭
暮らしの中からいつも外の風景の中を覗いているような、趣味で羊歯ばかり描いているような男。
年上の妻と子供たちとの味気ない暮らしから抜け出して気ままに絵を描く暮らしをしたい。
昔別れた女から電話があって付き合い始めた、すっかり女に溺れたといっていい。夢のような外の暮らしが手に入りそうで妻に離婚を言い出した。女のことを妻は知っていた。
女は裕福で下見した家を即買って住むことにした。趣のある羊歯の庭があるような家で、その上格安のその家は、聞いてみると自殺者が出た曰く付きで途端に熱が冷めて尻込みをしてしまった。女は落ち着いたものでもうもとには戻れない。今となってはあちらが夢か。
☆ジェイソン
院正時代の友人と飲んだ。どうやって帰ったのか思い出せないが二日酔いがひどい。「しーちゃん、しーちゃん」と新婚の妻を呼ぶが返事がない。甘えているのがばれたかな、「俺どうやって帰ってきた」友人は言葉を濁してそそくさと出て行った。泥酔すると記憶が飛ぶ、不安になった。
「あんな人とは思いませんでした」メモを残して妻はいなかった。
無理をして職場の女子大に出た。レポートが遅いと学生を皮肉混じりにとがめたら、彼女に昨夜の醜態を見られていた。仰天の事実。
友人に電話して言いにくそうな昔の出来事の真相と、ジェイソンと呼ばれていたというあだ名の由来を知った。大学を中退した友人の屋台に飲みに入った、寂れた店で昔の話と中途退学の訳を知った。
もう取り返しがつかない、その上訪ねて行った妻は怯えていた。
☆月下の楽園
宮田はその荒れ果てた庭を見た時、興奮して震えた、名園ではないその荒れ果てた風情に魅せられた。不動産屋はいかにも嫌そうに大家のところに案内した。
荒廃した広い屋敷から出てきた大家は白髪でシミの付いた服を着て「どうぞ」といってすぐに消えた。
借りる離れは裏門に一つ出入り口があり、汚れた長い竹垣をまわっていった。伸び放題の庭木の風情がなんとも言えない雰囲気を醸しだしている。
離れのまわりは竹垣が味気ないコンクリート塀に変わり、小さな木の扉が入り口だった。
「息子さんのために建てた家です、当時はよく手入れされて庭も立派だったのですが」と案内人は言う。庭続きであったらしいところが今は高いコンクリートの壁で仕切られていた。
塀を見て呆然として脱力した。「借りた方は牢獄みたいとおっしゃって」「息子さんは亡くなったんです」詳しいことはわからないまま借りることにした。
ビールケースを積んで覗いてみると、凝った庭づくりだったらしいのを夢中になって眺めた。感動した。
仕切りのコンクリート塀を何とかしてもらえないか、という心づもりで引っ越しの挨拶にいった。「何とかしてもらえませんか」「そんなことはしません」にべもない。
あばら屋に手を入れるのに来た老人が噂話を耳に入れた。「大家さんはもとは神楽坂の芸者で後妻、一人息子はこの離れで死んだようですよ」
それもこれもあの庭の風情には代えられない。
塀に下で横穴を見つけた。「防空壕があったとか」老人が手伝って塞いだ石を取り払うと横穴が現れた。「こりゃ立派だ」
スコップとツルハシで穴を広げとうとう隣の庭に入った。月に照らされた庭を歩いてみた。
冷え込んだ夕方雪になった。荒れた雪の庭は一層趣深く幻想的だった。ちびちび飲んだウイスキーが効いてきた。宮田は服を脱いで石に横たわった。そこにぬっと白衣の人影が。
☆ネオン
舞台は新宿歌舞伎町、初期のミロシリーズを思い出すほど、この風景を描き出す桐野さんの筆は快調。
桜井は何でも屋でうだつの上がらない小柄な店の用心棒をしているが、顔を利かして店を見回り、北村を連れて流して歩く態度も大きい。
栄枯盛衰のやくざな世界でテキヤから取り上げたシマを流している。
路地の奥のパブの前で、立ったままかつ丼を食べていた男に「裏に行け」というと体格のいい男だったが恐れ気もなく刃向かって来た。
面白い、桜井組に入れて様子を見よう。
この男島尻清隆は「仁義なき戦い」をバイブルに組に入れてほしいという。
「あいつ極道のセンスないっすよ」「そうかもしれねえな」
思った通り、かぶれすぎて言葉も広島弁崩れ。セリフもそれなりにまねる。
「体いいじゃねえか」「高校時代サッカーやってましたけ」「おお高卒か、うち一番の高学歴じゃねえか」と少しずつ組に馴染んでいく。
「お前広島か」「岩手じゃけ」
組員の思惑とは別に、それなりに使い道はあると桜井は様子を見ることにした。
北村の携帯に電話が入った「喧嘩」だという。そこで島尻は暴れた、まるで猛獣のように襲い掛かっていった。
一夜明け喧嘩に勝っても、呆けた顔の島尻は芝居の幕が下りたような妙な雰囲気だった。
北村は言う。妙なやつです。夢見ているというか、酔っているというか。喧嘩でも「仁義なき戦い」が乗り移ったというか。セリフもそっくりなんですよ。キレ方も気持ち悪くて。
アノ狂気はそれとして組に入れることにした。酒を酌み交わした後、島尻は型通り盃を背広のポケットにしまった。今時そんな、桜井は見た。
「カシラ」「今時そんな」「すんません桜井さん」
どうもこうも、だが「命を懸けて勤める」という。今時そんな台詞をぬけぬけといい、それよりデカイ島尻が並んで歩くのが窮屈だ。
戦争だ。組員は乗り気でないそれなりの理由もある。だが桜井は鉄砲玉に島尻を使うことにした。しかしジリは来なかった。さて。
おかしかった。ユーモラスな島尻の浮世離れ具合がツボ。幕切れの鮮やかさには脱帽。
☆錆びる心
良幸とは見合い結婚だったやすやすと決めたことに後悔している。
つい昔の上司と不倫関係になりその妻が怒鳴り込んできた。友人のところに身を寄せたが、夫は三日後に迎えに来るといった。春休みになるので。
夫は大学の講師をしている。迎えに来た夫はお礼にと五百円玉が詰まったフィルムケースを二個差し出した。「変わってるねあんたの旦那」 恥。
それから十年、娘が育ったらこの家を出るのだと決心した。忍従の十年。いざ自由な世界へ。
家事が趣味なので住み込みのお手伝いがいい。
高級マンションで面接。何人家族なのか玄関は乱れた靴がいっぱい。男の子が三人。「朝お弁当三つと朝食、それに軽く夕ご飯、休日もね」ここはいやだ。
次は湘南、車いすの老女と独身の男二人。どうかお願いという娘を振り切った。ここもダメだ。
友人も長居でそろそろイラつき始めた。決めないと。
住み込み、二十三万。料理できる人。個室あり。
応募の三十人がひしめく中採用された。
小太りの老女が二人、実は息子が病気で寝たっきり。娘もいます。
ああ、まぁいいか、「私でよければ親身になってお世話させていただきます」
娘のミドリは子供の様に無邪気であどけなく「こんにちは」と可愛らしい。
食費は一日五百円でお願い。それでも何とかそれぞれの体調に合わせて工夫する。しばらくするとそれにも慣れた。
寄り添って暮らし、助け合い、一日は無事に営まれる。家もきれいに掃除され、育った花をミドリが飾る。
胃がんの靖男だけは次第に弱ってくるがミドリが甲斐甲斐しく世話をしている。
睡眠薬の飲み過ぎて救急車を呼んだり、ミドリが靖男のベッドで寝ていたり、靖男の動けない体を支えて庭の芝生に寝かせたり。
若い靖男は「死んでいくのをミドリに見せておきたい、記念樹の桜の幼木は育って生き続けるが」といって木を見上げたり。
「他人だからできるんだなこういうこと、ミドリに悲しみを植え付けたいという衝動があるんですよ」。
初めてもらった給料をもって娘とお茶を飲んだり。夫が離婚はしない紙の上だけでも繋がっていてうれしいと言ったとか。
これが日々の充実というのだろうか。
桐野さん、内面描写も深いです。
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人のいろいろな面が垣間見える。いろんな面を持っているわけだから、それがおかしいわけじゃないけど、そんなもんだと思っていないと、後で裏切られたような気分になることがありそう。
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桐野夏生さんの文章が好き。
短編集は初めて読んだが、とても読みやすかった。長編のイメージだったが、短篇でもこんなに上手くまとめられる、本当にすごい作家さんだなと思った。
錆びる心が一番良かった。
最後にもあったけど用意周到に傷つくようにそこまでは変わりなく過ごして計画通りに家を出るということは、夫を傷つけたい、そして自分を忘れないようにしたいということなんだと思った。
なんの気持ちもなかったら用意なんてしないかもしれない、どうでもいいから。傷ついてもつかなくてもどうでもいいから。
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桐野夏生は好きな作家のtop3に入るけど、人間のおどろおどろしい感情を描くのが得意な彼女だからさっぱりとしたら短編小説は合わないのかもしれない。
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6の短編集。
初っ端から驚きの話でした。
これは相手が知り合いだからなのか
普通だったからなのか。
どれもこれも、普通に始まっているのに
妙な方向へねじ曲がって着地するので
不思議になってしまいます。
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6つの短編集。
消化不良な話もある気がするけど
おもしろかったし、読みやすかった
人間の裏側をちょっと覗き見たって感じ
"錆びる心"は、1番印象に残った
主観で見よることが
自分の世界やし正義で正解なんやろうけど
見方を変えたらちょっとズレとることもあるんやろうなって思った
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テーマが微妙に不揃いな6本の短編集。どの話も先が超気になり読書速度を加速させる掴みは完璧、結末はキツい尻切れトンボが多めで★4寄りの★3。表題作が一番印象的だったかな。
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内容(「BOOK」データベースより)
十年間堪え忍んだ夫との生活を捨て家政婦になった主婦。囚われた思いから抜け出して初めて見えた風景とは。表題作ほか、劇作家にファンレターを送り続ける生物教師の“恋”を描いた「虫卵の配列」、荒廃した庭に異常に魅かれる男を主人公にした「月下の楽園」など全六篇。魂の渇きと孤独を鋭く抉り出した短篇集。
Posted by ブクログ
人の闇を感じさせる話ばかりの6篇。
ジェイソン。
主人公がしでかしたことが主人公とともにだんだんと判明していく展開はおもしろく、読み進めるのが楽しかった。
大学からの友人が何ひとつ言ってくれてないのが、一番の復讐だよなぁ。
ネオン。
終わり方、桜井のセリフがすべて。笑
羊歯の庭。
なかなかにイライラさせる主人公。
虫卵の配列。
美しく毅然とした瑞恵の正義が怖くていい。
Posted by ブクログ
桐野夏生さんは初めてだと思います。大体ミステリーは読まないので。
あることから興味を持って、桐野さんの作品を読むことにしたのですが、なるべくミステリーっぽくない本ということで、この本を選んだのですが。
読後感は・・・。余り印象が無い。何か特別な仕掛けもないし、さほど情緒溢れる雰囲気でもないし。。。。
どうも苦手な作家さんのようです。
Posted by ブクログ
日常に潜む狂気を描いた短編集。
心の奥底に封じ込めていた歪んだ思いが、何かの拍子に表出する様子がリアル。
現実的な事件はほとんど起こらないのですが、人が持つ薄暗い部分を浮き彫りにする描写は巧みで惹きつけられます。