感情タグBEST3
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「OUT」以来の久しぶりの桐野夏生さん。
短編6篇の登場人物がそれぞれ心の内で悩んだり怒ったり決意したり、その決意が鈍ったり…その辺にいる人間らしくて、各々の話にどっぷりハマりこんで読めた。
特にジェイソンが気に入った。ジェイソンに変貌した自分を知るにつれ落ち込む主人公。ラスト、妻さえいてくれたらと開き直ったのに、やっぱりジェイソンは妻に対してもジェイソンだった。けど、お酒の失敗でなくても時に誰かのジェイソンに誰でもなり得てしまうんではないだろうか?私だけが知らないだけで…。
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これを読んで好きな小説家が増えた。『柔らかな頬』のときも感銘を受けたが今回もそうだった。日常の中でふっと訪れる狂気。それは何も特別ではなく、他者の眼差しで冷ややかに見つめる自分自身も同じ狂気に染まっていた、といった安住のなさがある。こと「安住のなさ」にはいくつか在り方があるのだが桐野夏生の場合のこれは好きだ。別の在り方としては真実で四方八方を追い詰めるやり方だがそもそも真実とは?といった果てのない疑問を残すのだが、『錆びる心』の場合は「何を信じるのか」から出発するので問題の回答権を自身が掌握することができる。答えることのできる問題。そのようなものに挑戦できるのがこの著者の書く小説の真骨頂なのだと感じた。
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表題作の錆びる心はすごく心にずしんときた。【自分の何かを印象的にくっきりと傷つける形で残そうとしていた。】人間には誰しも持つ心で、実際に程度は違えど経験しているはず。怖い。
月下の楽園も、心に冷たく響いた。
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夏生氏の処女短編集。
「虫卵の配列」、「羊歯の庭」、「ジェイソン」、「月下の楽園」、「ネオン」、そして表題作の「錆びる心」の六作が収録されている。
つーかもう感嘆。
短編集のはずなのに、長編を読んだような満足感に充足感。
とくに「虫卵の配列」からヤられ、完全に夏生の描く人間世界に引き擦り込まれて、孤立させられた。ゾーッとした、あの感覚は。
その後、王道とも言われるような舞台が続くが、だがその中で人間を描くだけに終わらず、必ず研ぎ澄まされた刃のような鋭利な光がキラリと差し込み、それによって物凄いものを目撃してしまったような気にさせられた。とにかく、人間描写がすごいのだ。
友達相手でさえ見落としてしてしまう”本質”に喰らいつき、最後まで離さない。書ききる、という熱が伝わってきて、こちらまで熱くさせてくれる。
そして最後、表題作ではそれに鳥肌が加わった。
淡々とした「よくある」始まりから、誰があのラストを思いつけるだろうか……
靖夫とのただ一瞬のやり取りの中で、一人の女というものをあれだけ描かれてしまったら、もう何も言えないではないか……!(興奮しすぎ。笑)
そしてまた、絹子の心情を靖夫に重ねさせるという技量にも、舌を巻いてしまった。
ほんとこの人の作品を持っていると、女性の中に潜むいわゆる男性的な部分の力というのは凄まじいな、とか思ってしまうのだった。あーほんと夏生好きすぎる。
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6つのお話、ミステリーというのだろうけど、怪しげな世界観があり、ファンタジー(大人向け?)という感じもする。
表題となっている『錆びる心』。自分が去ることで、相手に「自分を植え付けたかった」というところ。共感しすぎて、息が詰まりそうだった。
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桐野作品に出てくる登場人物は、安易な感情移入を許さない癖の強さを感じます。6つの短編も語り手の常識や行動の方向は私と異なっていて、予測できない分、おもしろかったです。
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現実にありそうな世にも奇妙な物語。
初めての桐野夏生の本だったが、するすると読ませる巧みな文章を書く作家だと思った。
感情の描写も巧く、震えるほど共感した部分が所々あった。
様々な人生を垣間見れておもしろかった。
桐野夏生の長編にも挑戦してみたい。
虫卵の配列 ★4
羊歯の庭 ★4.5
ジェイソン ★3.5
月下の楽園 ★3.5
ネオン ★3
錆びる心 ★3.5
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桐野夏生さんの短編小説集。
はじめ把握していないまま読み始めたのだが、収録作は作者デビュー翌年の1994年から1997年で、大ブレイクする『OUT』(1998年)より前の、初期の作品群だ。
これらは多彩で、どれも面白く読める豊かな短編小説である。なるほど、松本清張の作品のように、それぞれに心理的な劇の物語時間が推進されていて、それが確かな人間観察に基づいているからこそ、リアルな感触を持ち、読者の心を引きずり込んでいくのだろう。
ただし、結末は
「あれ? これで終わり?」
と驚かせるような、少々肩すかしを食わせるようなものが多く、一般的な多くの読者をいくらか失望させるのではないだろうか。
古典的な「完結感」を演出せずに、突然パタッと止まるかのような終結をしばしば導き出す現代音楽を私はよく聴いているので、「終わり方」に関しては何でもありと考えているから、「それもOKかな」ととらえる。しかしたいていの読者はやはり落胆するのではないか、という終わり方が幾つかあった。大衆向けのエンターテイメント小説としては、それはうまくないと思われる。
本書はあくまで作家初期の作品集なので、後年の短編は円熟によって形式的にも「よくまとまった」作品になっていくのかもしれない。
だがこれをマイナス要素としても、作者の人間理解の鋭さが端々に現れるこれらの小説の魅力は代えがたいものがある。
特に巻末の表題作は、結婚生活にウンザリした主婦の心理を鋭くとらえ、家出からさすらい歩く新たな生の歩みが、場面転換に応じてラプソディックに綴られてゆくが、全く違う場所に到達したかのような最後のところで上手く冒頭の場面の状況と結びついていて、印象深い作品となっている。
本書全体にわたる、多彩な心理世界を描出するこの手腕が、後年さらに円熟してどのような短編集を生んでゆくのか、興味をそそられた。
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短編集。作品に共通するのが作品の中での輪廻というか因果応報のような流れがあって思わずなるほどと感心してしまうオチがある。それが作品一つ一つに魅力を作り出していると思う。
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全6編の短編が収録された桐野夏生氏の短編小説。文庫の発刊は2000年なので、もう15年も前の作品なんですね。
桐野夏生さんの作品は初めて。『OUT』や『東京島』からダークなイメージを持って読みましたが・・・、まんまでした(^-^;
ボキャブラリーがないのでちょっと違う表現かもしれないですが、『世にも奇妙な物語』のようなテイストがあるんですよ。つくづく、人って怖いな、と。解説にもありましたが、人間の心の裏側が見事に描かれた面白い小説だと思います。
また、この小説は、全体的に短編の良さが詰まっていて、読んでいてストレスを感じなかったですね。
一つ一つの話がダラダラと間延びしないし、オチがあってスッと終わるところが良いんですよね。ミステリー要素からの結末が想像力を掻き立てられて、何とも言えない読後感を味わえます。
次は、桐野夏生さんの長編作品も読んでみたいと思います。
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最近のおどろおどろしい内容の長編に比べると、軽い内容で読みやすい。と云っても、悪意に満ちた人の心を描いている作品が多く、読後感は必ずしも良くない。ブラックユーモア風の短編が異色で面白いと思った。
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とても良かった。桐野夏生独特の世界に魅せられた。危うい人間の心がテーマの短編集で、ちょっと不気味でダーク、でも作品によっては美しさを感じるものまである。「虫卵の配列」「月下の楽園」が特に好み。
ところどころに「ジェイソン」のようなちょっとユーモアのある話が挟まってるのもヨイ。
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ほんと、あっという間に読める。
キャラ描写、話の切り口、淀みない文章。さすが、手練れ( ´ ▽ ` )ノ
大長編にどっぷり浸かって倫理も常識も忘れ去ってしまえるのが桐野作品の魅力だけど、短編もいけるね( ´ ▽ ` )ノ
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どのストーリーも救いのないというか、悲しい結末と言うか。
1話目は読んでいて、「んん??」と思ってしまった。
ラストで表題にもなっている「錆びる心」は私としてはこの中で一番好きでした。
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この人の本は短編で読むのがちょうどいいのではないかと思い始めてきた。
そしてこの短篇集はいつもどおりすっきりしない幕切れで終わるものが多いのだけど、そのなかでも爽やかに読める数少ない作品が入っている印象。かつ、小説特有のおかしさというよりは、現実にありそうな話としての人間の可笑しさが描かれているという点でも親しみやすい。男性が主役の作品より女性が主役の作品のほうがリアルで読んでいて勉強になりますが。
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桐野夏生は好きな作家のtop3に入るけど、人間のおどろおどろしい感情を描くのが得意な彼女だからさっぱりとしたら短編小説は合わないのかもしれない。
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6の短編集。
初っ端から驚きの話でした。
これは相手が知り合いだからなのか
普通だったからなのか。
どれもこれも、普通に始まっているのに
妙な方向へねじ曲がって着地するので
不思議になってしまいます。
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6つの短編集。
消化不良な話もある気がするけど
おもしろかったし、読みやすかった
人間の裏側をちょっと覗き見たって感じ
"錆びる心"は、1番印象に残った
主観で見よることが
自分の世界やし正義で正解なんやろうけど
見方を変えたらちょっとズレとることもあるんやろうなって思った
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テーマが微妙に不揃いな6本の短編集。どの話も先が超気になり読書速度を加速させる掴みは完璧、結末はキツい尻切れトンボが多めで★4寄りの★3。表題作が一番印象的だったかな。
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内容(「BOOK」データベースより)
十年間堪え忍んだ夫との生活を捨て家政婦になった主婦。囚われた思いから抜け出して初めて見えた風景とは。表題作ほか、劇作家にファンレターを送り続ける生物教師の“恋”を描いた「虫卵の配列」、荒廃した庭に異常に魅かれる男を主人公にした「月下の楽園」など全六篇。魂の渇きと孤独を鋭く抉り出した短篇集。
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人の闇を感じさせる話ばかりの6篇。
ジェイソン。
主人公がしでかしたことが主人公とともにだんだんと判明していく展開はおもしろく、読み進めるのが楽しかった。
大学からの友人が何ひとつ言ってくれてないのが、一番の復讐だよなぁ。
ネオン。
終わり方、桜井のセリフがすべて。笑
羊歯の庭。
なかなかにイライラさせる主人公。
虫卵の配列。
美しく毅然とした瑞恵の正義が怖くていい。
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私は桐野さんが好きです。
好きな小説家は?と聞かれたら、桐野さんと答えます。
でも、正直、この短編集は面白くなかったと思います・・・。
解説で、ある文芸評論家が、「本書で桐野夏生が短編作家としても松本清張に匹敵する~」と書いていますが、そんなことないんじゃないかな。桐野さんはやっぱ長編なんじゃないかな、僭越ながら。
それでも、絶賛離活中の私としては、表題作とか気になりました。
主人公は、夫の心に自分の何かを印象的に、しかもくっきりと傷つける形で残そうとしていたというのは、夫に不満を抱えるママ友からたまに聞く話ではありますが、私にはそういう気持ちはありません。
夫の心に私の何かを残したいとは思いません。
離婚したら、夫とは、名実共に子育てという私にとって最重要事業の共同事業者という関係になるだけです。その信頼関係が残れば、他には何も望みません。
夫の心に何かを残したいという話を聞くと、彼女はまだご主人に愛情があるのかなーと思います。
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桐野夏生さんは初めてだと思います。大体ミステリーは読まないので。
あることから興味を持って、桐野さんの作品を読むことにしたのですが、なるべくミステリーっぽくない本ということで、この本を選んだのですが。
読後感は・・・。余り印象が無い。何か特別な仕掛けもないし、さほど情緒溢れる雰囲気でもないし。。。。
どうも苦手な作家さんのようです。
Posted by ブクログ
日常に潜む狂気を描いた短編集。
心の奥底に封じ込めていた歪んだ思いが、何かの拍子に表出する様子がリアル。
現実的な事件はほとんど起こらないのですが、人が持つ薄暗い部分を浮き彫りにする描写は巧みで惹きつけられます。
Posted by ブクログ
やっと最近になって読み始めた桐野さんの本だけど、彼女の短編面白いかも。
なんかこうすきっとしない心情とか。
「ネオン」のあのあっけない唐突な終わりもいい。