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Posted by ブクログ
夏生氏の処女短編集。
「虫卵の配列」、「羊歯の庭」、「ジェイソン」、「月下の楽園」、「ネオン」、そして表題作の「錆びる心」の六作が収録されている。
つーかもう感嘆。
短編集のはずなのに、長編を読んだような満足感に充足感。
とくに「虫卵の配列」からヤられ、完全に夏生の描く人間世界に引き擦り込まれて、孤立させられた。ゾーッとした、あの感覚は。
その後、王道とも言われるような舞台が続くが、だがその中で人間を描くだけに終わらず、必ず研ぎ澄まされた刃のような鋭利な光がキラリと差し込み、それによって物凄いものを目撃してしまったような気にさせられた。とにかく、人間描写がすごいのだ。
友達相手でさえ見落としてしてしまう”本質”に喰らいつき、最後まで離さない。書ききる、という熱が伝わってきて、こちらまで熱くさせてくれる。
そして最後、表題作ではそれに鳥肌が加わった。
淡々とした「よくある」始まりから、誰があのラストを思いつけるだろうか……
靖夫とのただ一瞬のやり取りの中で、一人の女というものをあれだけ描かれてしまったら、もう何も言えないではないか……!(興奮しすぎ。笑)
そしてまた、絹子の心情を靖夫に重ねさせるという技量にも、舌を巻いてしまった。
ほんとこの人の作品を持っていると、女性の中に潜むいわゆる男性的な部分の力というのは凄まじいな、とか思ってしまうのだった。あーほんと夏生好きすぎる。
Posted by ブクログ
短編集。作品に共通するのが作品の中での輪廻というか因果応報のような流れがあって思わずなるほどと感心してしまうオチがある。それが作品一つ一つに魅力を作り出していると思う。