桐野夏生のレビュー一覧
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うーん、先に「ローズガーデン」読んでしまったのがいけないかな。
ミロさんのキャラクターを知っていて、最初から好もしく読み進み期待を裏切られなかったのですが、ここではミロさんに過去があるからこそ、そこはかとない陰影がでてすごみがあるように思うのです。
やはり作品が書かれた順に読むべきだったとの思いです。
ところで私の早とちり「村野ミロさん」を「野村ミロさん」と思い込んでた。「ローズガーデン」の感想日記にそうなってる。よくこういうことある、なんか掛け違って思い込むのよね。
あえて直さないこっぱ恥ずかしい日記はここにあります。
解説にもあって思い出したけど、サラ・バレツキー著「V・I・ウォーショースキー」のキャラクターを髣髴させます。私、かなり読んでる。
「ミロさん」が父の事務所を住みかにしているのが新宿なら、探偵業「ウォーショースキー」の事務所はシカゴ。
排気ガスと埃と人ごみ。性と暴力やあやしけな店やビル群。人いきれみたいなものに囲まれて。
ミロさんはまだ探偵業になってないがこの事件後なるし。
夫が居たというのも共通、頼れるが煙たいキャラクターの後ろ盾(ミロは探偵調査業だった父、ウォーショースキーは亡き警官だった父の友人)がいるのも同じ。
最後の最後までの推理の楽しさがあります。
友人耀子のキャラクターにも哀しさがしみじみと。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『OUT』の2年後の1999年に刊行され、直木賞を受賞した桐野夏生さんの初期長編である。
5歳の娘が北海道支笏湖付近で失踪する。見失われた長女を捜し求める母親・カスミと、癌を患い退職し、死期を間近に迎えつつある男性の元刑事・内海との、奇妙なランデブーがストーリー中メインの骨格となっている。この両者は「現実と折り合いを付けることが出来ない」点で共通点を持つとされている。
一般的な写実的描写に基づく小説ではリアリティが大切であり、描かれゆく人物・心理・光景・出来事などが、いかにあり得るものであるか・ありそうであるか・ありがちであるか、といった尺度で現実解と比較し計測され、総合的に見てリアルな感触が得られない場合は「つまらない小説」ということになってしまうだろう。実は先日中村文則氏の『私の消滅』という小説を読んだがこれが酷いクズで、いかなるレベルのリアリティも皆無であり、ただの理屈に基づいて設計された非-人間的なアイディアを垂れ流すだけであって、文学を自称するのは僭越だろうという程度の駄作であった。これが芥川賞作家なのか、芥川賞って全然たいしたことないじゃん、というのが感想だった。
初期の桐野夏生さんの小説は、もっと後の時期のものと比べて「普通のリアリティ」がより多くあり、ストーリーはリアルな日常世界の中を突き進む。しかし桐野さんの文学の面白さはそういう「普通のリアリティ」に留まらず、もっと野放図な「想像し、創作することそれ自体」が導き出す自己組織化的な言語ストリームがその余りの自在さと勢い故に、しばしば「普通の小説」の型を食い破ってしまうという事態にある。そしてこの次元では、「言語ストリームそれ自体のリアリティ」が前面に押し出されてくるのだ。
本作では、元刑事の内海やカスミが目の当たりにする白昼夢や妄想が何度か現れる。この挿入された「夢のテクスト」では、誰が何故どのように少女を誘拐したかという「真相」がその都度語られ、読者のパースペクティヴを書き換えるかのような衝撃を惹起する(これは本格推理小説の「あっと驚く意外な結末」と同等の装置である)。しかし、これら夢のテクストが暴いた真相は真相ではなく、次々と切り捨てられる。
失踪した少女という文字通りの<不在のシーニュ>は、何故(誰によって)拉致されたか、生きているのかあるいは殺されたのかというミステリ的な「真相」を含んでおり、ミステリと同様に<不在のシーニュ>への欲望がストーリー(言語ストリーム)を押し進めてゆく。そしてこの不在という空白=死が、ガンによる病死が刻々と迫る内海という人物にも表象化されている。主人公カスミはかくして空白=死との不思議なランデブーを辿る。
そして、この小説では、ついに事件の真相はわからない。娘は最後まで不在であり、真実は不可知であり、圧倒的な空虚さを抱えた主人公の心理描写やモノローグ、ダイアローグが連ねられた末に、結局全ては空白のままだ、しかしそれでも生きていかなければならない、生はまだ延々と続いていくのだ、という展望と共に作品は終わる。
挿入された「夢のテクスト」は結局どれも「夢」でしかないのであって、ディスクールは反転し、捻転しつつもすべてが中心にある<ゼロ>へと帰着するのである。
この作品の核心にあるのは、空白=死の周りで苦痛にうめきながら自己生成されてゆく言表の生々しいリアリティと、救いの無い現実界の手触りとを兼ね備えた、未知の能力を秘めた創作-場のエネルギーの猛々しさである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ目次
・ローズガーデン
・漂う魂
・独りにしないで
・愛のトンネル
表題作以外は、ミロが探偵になってからの事件。
長編では気になるミロの性癖が、短編だと気にならないので読みやすかった。
ただ、ミロの調査って、詰めが甘い。
100%の調査をしていないまま報告書を書いているのが、プロとしてどうなのか。
また、一度断った仕事を、個人的興味で勝手に調査しているのもプロではない。
そして問題の表題作。
ずっと気になっていたミロと自殺した夫の関係が、これですっきりと分かるのかと思いきや、余計にもやもやが募る。
知り合った高校生のころからミロはエキセントリックだった。
ならなぜ、結婚した挙句に自殺するのか?
高校生の博夫は既にミロに振り回されていることを自覚している。
嫌なら結婚しなければいいのだし、納得して結婚した挙句の単身赴任先での自殺…。
「義父と寝た」と言う告白は事実ではないと思う。
それは「わたしを見て」という、ミロから善三へのアピールなのではないかと思った。
エキセントリックなミロと、夫の死をひきずるミロが、やっぱりつながらない。
「愛のトンネル」の被害者である山神恵も、多面性がありすぎてつかみどころがなかったし。
解説よんでもさっぱり理解できない。
もやもやもやもや。 -
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ネタバレ東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年の東京が舞台。
今までのイメージでは、高度経済成長の波に乗って、イケイケの時代。
古いしがらみを切り捨てて、明るい未来に向けて社会が一丸となっていたのだと思っていた。
高校生が昼間っから薬でラリッているという日常。
もちろん世間の全てがそうではないにしても、これは多分特殊な事例というわけでもないのだろう。
戦後出回っていた覚せい剤は、このころには表ルートでは入手できなくなっていたと思うけど、今よりはるかに睡眠薬は手に入りやすかった時代。
ストーリーとは関係なく、当時薬に溺れていた若者たちがその後どういう人生を生きていったのかが気になってしょうがなかった。
さて、作品の方に戻ると、連続爆弾魔、女子高生殺し、薬物中毒、少女売春など、事件を追うトップ屋の村野善三が主人公。
ネタを掴んだら情報屋から情報を仕入れ、自分の足でコツコツ証拠を固めてく村野は、自身が殺人事件の容疑者として拘束されながらも、事件の真相に近づいていく。
はずなのだが、読んでいても一向に事件の核心に近づいた気がしない。
確実に前に進んでいるはずなのに、これはどうしたことだろう。
まったくカタルシスがなかった。
それよりも、こういう時代だったのか…という衝撃の方が大きかったな。
でもってこれ、村野ミロシリーズである意味はあるのだろうか。
ミロは乳幼児として登場するけどさ、具体的に村野善三との係わりは書かれず。
『読書メーター』の方で、特にシリーズ読破にこだわる必要なしと言われたのも納得。
しかし「ダーク」が気になるから、やっぱり読破するわ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ村野ミロシリーズの第一作。
先に二作目を読んで、彼女の夫の自殺理由などいろいろ不明でもやもやしたので第一作に遡って読んでみたのですが、もやもやは晴れず。
村野ミロって、亡くなった人のことをうじうじ考えている割に、今現在の人間関係を大切にしているように見えない。
頭は切れるけれど行動は衝動的で、他人の不幸にいっさい心を痛めた様子がない不気味。
登場人物みんなに言えるのだけど、セリフや肩書で人となりが語られるだけで、互いの人間関係をあらわす様なエピソードがないので、非常につながりが薄っぺらく感じられる。
二作目を読んだうえでの今作の感想としては、精神的な安心感を与えてくれる男、性的な満足を与えてくれる男、仕事を回してくれる弁護士等を周りに配置して、ミロは誰かのために何かをしたの?
受け取るばかりの女が、ハードボイルド気取るなよ、というちょっとした苛立ち。
でも、第三作目も読むよ。 -
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ネタバレ失敗した!
またシリーズ物を途中から読んでしまった。
シリーズ物は刊行分をとりあえず全部読む、という縛りを課していたのだけど、さすがに一向に減らない読みたい本リストの残を考えると、もう、おすすめされた一冊だけでいいかなという気がしてきていたこの頃。
でも、主人公・村野ミロの壮絶そうな過去が気になるので、やっぱり全部読むとするか。
失踪したAV女優を捜すという依頼のため、最初の方がちょっとエグくて読み通せるか不安だったけど、意外と読みやすく思えたのは作者の力量なのだろうと思う。
女流ハードボイルドと言えば、若竹七海の葉村晶シリーズがあるが、痛い目に遭ったり怖い思いをしても、葉村晶よりも生々しい。
そして、最後まで事件の落としどころがわからなかったので、気持ちを切らすことなく読み終えることができた。
思いのほか前向きな着地でびっくりしましたが。
ただし、犯人に対する村野ミロの態度は、コナンくんに叱られると思う。 -
Posted by ブクログ
桐野夏生さんの短編小説集。
はじめ把握していないまま読み始めたのだが、収録作は作者デビュー翌年の1994年から1997年で、大ブレイクする『OUT』(1998年)より前の、初期の作品群だ。
これらは多彩で、どれも面白く読める豊かな短編小説である。なるほど、松本清張の作品のように、それぞれに心理的な劇の物語時間が推進されていて、それが確かな人間観察に基づいているからこそ、リアルな感触を持ち、読者の心を引きずり込んでいくのだろう。
ただし、結末は
「あれ? これで終わり?」
と驚かせるような、少々肩すかしを食わせるようなものが多く、一般的な多くの読者をいくらか失望させるのではないだろうか。
古典的な「完結感」を演出せずに、突然パタッと止まるかのような終結をしばしば導き出す現代音楽を私はよく聴いているので、「終わり方」に関しては何でもありと考えているから、「それもOKかな」ととらえる。しかしたいていの読者はやはり落胆するのではないか、という終わり方が幾つかあった。大衆向けのエンターテイメント小説としては、それはうまくないと思われる。
本書はあくまで作家初期の作品集なので、後年の短編は円熟によって形式的にも「よくまとまった」作品になっていくのかもしれない。
だがこれをマイナス要素としても、作者の人間理解の鋭さが端々に現れるこれらの小説の魅力は代えがたいものがある。
特に巻末の表題作は、結婚生活にウンザリした主婦の心理を鋭くとらえ、家出からさすらい歩く新たな生の歩みが、場面転換に応じてラプソディックに綴られてゆくが、全く違う場所に到達したかのような最後のところで上手く冒頭の場面の状況と結びついていて、印象深い作品となっている。
本書全体にわたる、多彩な心理世界を描出するこの手腕が、後年さらに円熟してどのような短編集を生んでゆくのか、興味をそそられた。