桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこういう小説、なんていうジャンルになるんだろう?(最後の解説によると、「モデル小説」というらしい。へぇ。)実在の人物を取材し、膨大な資料を分析した上で、当人たちの気持ちなどはあくまでも作家の想像によって書き、その人生の物語を描きだす。林芙美子をモデルにした「ナニカアル」もとても面白かった。沢木耕太郎さんの「壇」とか、すごく面白かったけど、あれもモデル小説というのかな?
本書「デンジャラス」は、谷崎潤一郎を題材にした物語。谷崎は妻・松子とその妹”重子”と暮らす。重子は義理の兄である谷崎を慕い、谷崎も自分を特別に思ってくれているはずだと感じている。そこに妻の連れ子や、重子の養子の妻(つまり嫁)、数多くの女中たちなど、様々な女性が入り乱れ、愛憎渦巻く物語が生まれる。
終戦前後のお金持ちの風俗を描いているという点でも、いろいろと興味深い。谷崎潤一郎は「痴人の愛」くらいしか読んだ覚えがないけど、本書で取り上げられている「細雪」や「鍵」、「夢の浮橋」も読んでみたいと思った。
この時代の作家って、自分の周りの人たちを踏み台っていうか、食い物っていうか、犠牲にしながら書いていたのかなぁ…。書かれる方は書かれる方で、それを誇りに思ったり、純粋に芸術作品として分析したりする。松子と重子が、「夢の浮橋」を読んで、「あの人は橋を渡って向こう側に行ってしまった」っていうところ、とても切なく感じた。
最後の、重子と谷崎の対決(?)のシーンは恐ろしくて、でもなんとなく、重子の妄想のような感じもして深い。重子の目線で書かれているのだから、他の誰にも確かめようのないことを重子が本当らしく主張しても誰も否定できない。女の業というか、私は勝ったのよ、と主張しているところがエグい。 -
Posted by ブクログ
ここ30年、家族が壊れてきた。
昔のようではないということは目安にはならない、とは知っている。
変んだ、変んだと他人事に思って、 というより おかしくなってしまっているのを身近に経験する。
身内に感じる、ためいき。子育てを誤ったのか?親が悪いのか!?
言い訳をすれば一度しか経験できないものを、 失敗だってあるさ!
じゃあ、この物語のように親が誰だかわからずに、育っていくのって、どうか?
本人の拠りどころの無さは過酷だと思う。親代わりを見つけてしまうのも無理は無い。
だったら
失敗を恐れず親になるしかないのじゃない!?
出版されたらさっそく購入して読みたくなる作家さんの一人。 好きこそ、あたりはずれはなんのその、 わくわく手に取る、ファンのありがたさ( と自分で言う)
一瞬、「まんが」かと思う装丁は、 なるほど、 ストーリの展開には欠かせないのだった。
(単行本で読んだ) -
Posted by ブクログ
桐野夏生『優しいおとな』中公文庫。
何故か気になり、手にした2013年刊行の文庫本。福祉システムが破綻した希望無き近未来の日本を舞台にした小説である。
全編に漂う絶望感。何とも言えない退廃的な雰囲気の中で主人公イオンの成長の物語が展開する。ラストの描写は……
どうしても今の日本と比較したくなるのだが……今の日本は福祉システムの破綻どころか、新型コロナウイルス感染と相次ぐ未曾有の天災により、破滅への道をまっしぐらに突き進んでいるとしか思えない。本作には微かな生きる望みが描かれているが、今の世の中はどうだろうか……
スラム化したかつての繁華街シブヤで、他人とは距離を置いて独り暮らすホームレスのイオンは、ンダーグラウンド組が暮らす地下の世界に足を踏み入れる。『優しいおとな』は、NGO『ストリートチルドレンを助ける会』のモガミなのか、女性ホームレス集団『マムズ』のケミカルなのか……
本体価格648円
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Posted by ブクログ
谷崎潤一郎の半フィクションバイオグラフィ、という宣伝が目に入ったので読んでみた。私も例にもれず、10代の頃に谷崎・三島の耽美沼にハマったので、それこそ作品はもちろんありとあらゆる書簡集やら論文やらを読み漁った。若かりし頃のあの滾るものを思い出した。本作、非常に真面目に史実と史実の間を”ええ感じ”に盛ってあり、読みやすくわかりやすい。ただ、わかりやすすぎて、すこし寂しさが募る。寂の文字が大谷崎にはよく似合うのでそれはそれでええかとも思う。自分の中で構築している谷崎及び家族像とは少々違うところも目立つが、ギャップも面白く感じた。
視点人物はマスターピース『細雪』の雪子のモデルになった重子。細雪の雪子のキャラクターイメージから外れることなく、外れていないが故に、サプライズはないものの、ストレスもなく読めた。ヘビロテで時折再読し続けているが、大谷崎の描く女性にはシンパサイズしたことがないので、本作でもどうしても”兄さん”(谷崎)の方に気持ちが寄ってしまう。ラストシーンの重子と光源氏谷崎の一騎打ち(一騎打ちではないが)は圧巻。もうちょっと込み入った叙述が欲しいぐらいだが、さらっと描かれていながらも、画像が頭の中に強制投影されるような良いシーンだった。良いバランス。