桐野夏生のレビュー一覧

  • ロンリネス

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    『ハピネス』の続編。見栄と嫉妬を描いた前作から、テーマは情愛と憎悪へ。変えられない過去と妥協で選んだ現在。それらへの後悔が高梨との関係という更なる深みへ駆り立てる。現実という壁に阻まれる度に、自ら破滅への道を選び取る有紗の姿が印象的でした。

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    2026年02月15日
  • 真珠とダイヤモンド(下)【毎日文庫】

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    ネタバレ

    はじめましての作家さん。
    でも面白くて、上下巻ともあっという間に読み終わった。

    上手く回ってる時こそ、慎重になることも必要なんだと思う。
    誰か1人でも救われてほしかった。

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    2026年02月12日
  • 錆びる心

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    ネタバレ

    偶然桐野さんのペンクラブ会長の就任会見を動画で見て、桐野さんはしばらく読んでなかったと思ってこの本を引っ張り出した。書棚の整理中に見つけていたので再読。期待通り面白かった。
    短編が六編だが、とに角最初の「虫卵の配列」という題名にインパクトがある。
    昆虫は可愛らしいものも多いが、きれいな葉っぱをふと裏返してみて、並んだ卵はさすがに気持ちが悪いこれOUT。

    ☆虫卵の配列
    教師向けの雑誌を作っている私は、中学の生物教師をしている瑞恵と偶然出あった。会いたいと思っていたので嬉しかった。教師を辞めて今は介護施設で働いているという。私は付き合っていた画家に失恋をした話をした。意外なことにおとなしいイメージだった彼女はもっと積極的になれといった。
    彼女は今では劇作家の大ファンで作家にファンレターを送り続けていた。その手紙が脚本に使われているというこれは作家の愛情だ。
    四個の卵が並んでいる斬新な前衛劇には観客の彼女も姿のない形で参加している。そして演じている女優は作家の奥さんで排斥される異物役だったという。作家に心から愛されているのだ。だが関係がこじれ、虫の卵が詰まった箱が送られてきて……
    誘われたのでその劇団の公演に行ってみることにしたが、壁のポスターは、聞いていた「虫卵の配列」ではなかった。そして修羅場。
    虫卵のうすら寒い感覚まで短いストーリーに溶け込ませる腕は鮮やか。

    ☆羊歯の庭
    暮らしの中からいつも外の風景の中を覗いているような、趣味で羊歯ばかり描いているような男。
    年上の妻と子供たちとの味気ない暮らしから抜け出して気ままに絵を描く暮らしをしたい。
    昔別れた女から電話があって付き合い始めた、すっかり女に溺れたといっていい。夢のような外の暮らしが手に入りそうで妻に離婚を言い出した。女のことを妻は知っていた。
    女は裕福で下見した家を即買って住むことにした。趣のある羊歯の庭があるような家で、その上格安のその家は、聞いてみると自殺者が出た曰く付きで途端に熱が冷めて尻込みをしてしまった。女は落ち着いたものでもうもとには戻れない。今となってはあちらが夢か。

    ☆ジェイソン
    院正時代の友人と飲んだ。どうやって帰ったのか思い出せないが二日酔いがひどい。「しーちゃん、しーちゃん」と新婚の妻を呼ぶが返事がない。甘えているのがばれたかな、「俺どうやって帰ってきた」友人は言葉を濁してそそくさと出て行った。泥酔すると記憶が飛ぶ、不安になった。
    「あんな人とは思いませんでした」メモを残して妻はいなかった。

    無理をして職場の女子大に出た。レポートが遅いと学生を皮肉混じりにとがめたら、彼女に昨夜の醜態を見られていた。仰天の事実。
    友人に電話して言いにくそうな昔の出来事の真相と、ジェイソンと呼ばれていたというあだ名の由来を知った。大学を中退した友人の屋台に飲みに入った、寂れた店で昔の話と中途退学の訳を知った。

    もう取り返しがつかない、その上訪ねて行った妻は怯えていた。

    ☆月下の楽園
    宮田はその荒れ果てた庭を見た時、興奮して震えた、名園ではないその荒れ果てた風情に魅せられた。不動産屋はいかにも嫌そうに大家のところに案内した。
    荒廃した広い屋敷から出てきた大家は白髪でシミの付いた服を着て「どうぞ」といってすぐに消えた。
    借りる離れは裏門に一つ出入り口があり、汚れた長い竹垣をまわっていった。伸び放題の庭木の風情がなんとも言えない雰囲気を醸しだしている。
    離れのまわりは竹垣が味気ないコンクリート塀に変わり、小さな木の扉が入り口だった。
    「息子さんのために建てた家です、当時はよく手入れされて庭も立派だったのですが」と案内人は言う。庭続きであったらしいところが今は高いコンクリートの壁で仕切られていた。
    塀を見て呆然として脱力した。「借りた方は牢獄みたいとおっしゃって」「息子さんは亡くなったんです」詳しいことはわからないまま借りることにした。
    ビールケースを積んで覗いてみると、凝った庭づくりだったらしいのを夢中になって眺めた。感動した。
    仕切りのコンクリート塀を何とかしてもらえないか、という心づもりで引っ越しの挨拶にいった。「何とかしてもらえませんか」「そんなことはしません」にべもない。
    あばら屋に手を入れるのに来た老人が噂話を耳に入れた。「大家さんはもとは神楽坂の芸者で後妻、一人息子はこの離れで死んだようですよ」
    それもこれもあの庭の風情には代えられない。
    塀に下で横穴を見つけた。「防空壕があったとか」老人が手伝って塞いだ石を取り払うと横穴が現れた。「こりゃ立派だ」
    スコップとツルハシで穴を広げとうとう隣の庭に入った。月に照らされた庭を歩いてみた。
    冷え込んだ夕方雪になった。荒れた雪の庭は一層趣深く幻想的だった。ちびちび飲んだウイスキーが効いてきた。宮田は服を脱いで石に横たわった。そこにぬっと白衣の人影が。

    ☆ネオン
    舞台は新宿歌舞伎町、初期のミロシリーズを思い出すほど、この風景を描き出す桐野さんの筆は快調。
    桜井は何でも屋でうだつの上がらない小柄な店の用心棒をしているが、顔を利かして店を見回り、北村を連れて流して歩く態度も大きい。
    栄枯盛衰のやくざな世界でテキヤから取り上げたシマを流している。
    路地の奥のパブの前で、立ったままかつ丼を食べていた男に「裏に行け」というと体格のいい男だったが恐れ気もなく刃向かって来た。
    面白い、桜井組に入れて様子を見よう。
    この男島尻清隆は「仁義なき戦い」をバイブルに組に入れてほしいという。
    「あいつ極道のセンスないっすよ」「そうかもしれねえな」
    思った通り、かぶれすぎて言葉も広島弁崩れ。セリフもそれなりにまねる。
    「体いいじゃねえか」「高校時代サッカーやってましたけ」「おお高卒か、うち一番の高学歴じゃねえか」と少しずつ組に馴染んでいく。
    「お前広島か」「岩手じゃけ」
    組員の思惑とは別に、それなりに使い道はあると桜井は様子を見ることにした。
    北村の携帯に電話が入った「喧嘩」だという。そこで島尻は暴れた、まるで猛獣のように襲い掛かっていった。
    一夜明け喧嘩に勝っても、呆けた顔の島尻は芝居の幕が下りたような妙な雰囲気だった。
    北村は言う。妙なやつです。夢見ているというか、酔っているというか。喧嘩でも「仁義なき戦い」が乗り移ったというか。セリフもそっくりなんですよ。キレ方も気持ち悪くて。
    アノ狂気はそれとして組に入れることにした。酒を酌み交わした後、島尻は型通り盃を背広のポケットにしまった。今時そんな、桜井は見た。
    「カシラ」「今時そんな」「すんません桜井さん」
    どうもこうも、だが「命を懸けて勤める」という。今時そんな台詞をぬけぬけといい、それよりデカイ島尻が並んで歩くのが窮屈だ。

    戦争だ。組員は乗り気でないそれなりの理由もある。だが桜井は鉄砲玉に島尻を使うことにした。しかしジリは来なかった。さて。

    おかしかった。ユーモラスな島尻の浮世離れ具合がツボ。幕切れの鮮やかさには脱帽。


    ☆錆びる心
    良幸とは見合い結婚だったやすやすと決めたことに後悔している。
    つい昔の上司と不倫関係になりその妻が怒鳴り込んできた。友人のところに身を寄せたが、夫は三日後に迎えに来るといった。春休みになるので。
    夫は大学の講師をしている。迎えに来た夫はお礼にと五百円玉が詰まったフィルムケースを二個差し出した。「変わってるねあんたの旦那」 恥。
    それから十年、娘が育ったらこの家を出るのだと決心した。忍従の十年。いざ自由な世界へ。
    家事が趣味なので住み込みのお手伝いがいい。
    高級マンションで面接。何人家族なのか玄関は乱れた靴がいっぱい。男の子が三人。「朝お弁当三つと朝食、それに軽く夕ご飯、休日もね」ここはいやだ。
    次は湘南、車いすの老女と独身の男二人。どうかお願いという娘を振り切った。ここもダメだ。
    友人も長居でそろそろイラつき始めた。決めないと。
    住み込み、二十三万。料理できる人。個室あり。
    応募の三十人がひしめく中採用された。
    小太りの老女が二人、実は息子が病気で寝たっきり。娘もいます。
    ああ、まぁいいか、「私でよければ親身になってお世話させていただきます」
    娘のミドリは子供の様に無邪気であどけなく「こんにちは」と可愛らしい。
    食費は一日五百円でお願い。それでも何とかそれぞれの体調に合わせて工夫する。しばらくするとそれにも慣れた。
    寄り添って暮らし、助け合い、一日は無事に営まれる。家もきれいに掃除され、育った花をミドリが飾る。
    胃がんの靖男だけは次第に弱ってくるがミドリが甲斐甲斐しく世話をしている。
    睡眠薬の飲み過ぎて救急車を呼んだり、ミドリが靖男のベッドで寝ていたり、靖男の動けない体を支えて庭の芝生に寝かせたり。
    若い靖男は「死んでいくのをミドリに見せておきたい、記念樹の桜の幼木は育って生き続けるが」といって木を見上げたり。
    「他人だからできるんだなこういうこと、ミドリに悲しみを植え付けたいという衝動があるんですよ」。

    初めてもらった給料をもって娘とお茶を飲んだり。夫が離婚はしない紙の上だけでも繋がっていてうれしいと言ったとか。
    これが日々の充実というのだろうか。

    桐野さん、内面描写も深いです。

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    2026年02月05日
  • ハピネス

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    ネタバレ

    桐野夏生さんの本は読みやすくて、読み始めると止まらない。
    ママ友同士のドロドロについては、皆様お疲れ様ですという気持ち。これを楽しく読んでしまう私の中にも(認めたくないが)マウント心があるのかもしれないな、と思った。

    そんなことより、最後の結末は納得できなかった。
    夫の俊平に対して「貴方もだいぶ身勝手すぎないか?」と思う。

    経産婦であったことを隠されていたショックはあったかもしれない。
    しかし妻が経産婦だったことがそんなに許せないことなのか?ただ前夫との間に子を産んだだけで、何も悪いことをしていない。
    一方で、離婚を妻に受け入れてもらえなかったからとアメリカで愛人を作るのはどうなのか。俊介の方がよっぽどルール違反だと思うけどな。
    そもそも相手をよく知らぬうちにおめでた婚をしたのに、今更何言ってるの。

    だから娘のためとはいえ、そんな俊介を有紗が許したことに少しがっかり。
    よーく話し合いをして、離婚した方が良かったのでは?

    このもやもやは種となって、続編につながるとか。これ以上のドロドロは怖くてもう読めない。笑

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    2026年02月02日
  • 燕は戻ってこない

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    ネタバレ

    なかなかきついテーマ。
    ひとり子どもを育てている身として読むと
    どうしても現実寄りの視点で見てしまった。

    出産なんて予定外のオンパレードだし、
    感情も身体も、契約書どおりになんて動かない。
    それを商売として成立させようとすること自体、
    やっぱり相当無理があるよなーと思う。

    グレーゾーンだらけで、
    契約違反かどうかなんて簡単に線も引けない。
    リキの冷静さが、この物語のスパイスだった。
    感情的になりすぎず、突き放しすぎもしない、
    ちょうどいい温度感。

    周りが激しいぶん、結果的に一番現実を見ている視点だった気がする。
    主観がリキだから、自然とリキ寄りで読んだ。

    最後に一人だけ連れていく展開は
    そうきたかーと思った。
    でもなるほどねって。
    細かい取り決めなんてしていないし、
    最初から全部が曖昧だったんだから。

    これ以上感情に寄せていたら
    たぶん読むのがきつすぎたと思う。

    テーマ自体が重いからこそ、
    この温度感で描かれていたのは正解だった。
    割り切れないし、簡単な答えもないね

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    2026年02月01日
  • ハピネス

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    10余年前に発表された本作。華やかな学歴や経歴を手に入れ、周囲から羨望されるような「いい暮らし」を送りながらも、胸の内から消えることの無い強い虚無感や劣等感を描いた「タワマン文学」の元祖と言うべき作品でした。

    階層、眺望、分譲、賃貸。あらゆる要素で住民の階級差を可視化するタワーマンションは、住民の虚栄心を満たす一方で、大変差別的な一面を持つ。いぶママを頂点とするBWT組のヒエラルキーと外様組の美雨ママ、その境界で漂う有紗の描写が印象的でした。

    人よりちょっといい暮らしをしたい。人より少しだけ上でいたい。わずかな優越性を求める気分が、些細な差異を過剰に気にする心性と、他者に対する差別心を生む。これまでの人生に少なからず劣等感や負い目を感じるからこそ、帳消しにしてくれる存在としてのタワーマンションを人は求めるのでしょう。

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    2026年01月25日
  • デンジャラス

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    いつもの桐野夏生の作風と違って、読み進めるのに時間がかかった。まあまあ面白い。谷崎潤一郎の本は読んだことがないので一度は読んでみようと思った。若い頃ちょっと仲の良い同期から「卍」を貰ったことを思い出した。

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    2026年01月23日
  • ダークネス

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    23年ぶりのミロシリーズ。えっ今さら?という思いと期待で手にして、やっぱり後悔。カッコいい思い出のままにしておけばよかった。桐野さんは何故今さら続編書こうと思ったのかなぁ。複雑な親子の情愛、キズナ?なんだか全体的に薄っぺらいし。ハードボイルド、イヤミス女王のイメージが崩れそう。

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    2026年01月22日
  • バラカ 下

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    上巻を読んでいたときは、川島を甘く見ていた。
    あいつは極悪人だ。
    人は善と悪で単純に分けられるものじゃない。
    誰しもが、それぞれの「善」だと思う方向に向かって行動している。
    悪を悪だと自覚したうえで行動する極悪人は一握りだ、という言葉を思い出した。
    川島は特に同情できるところもない、絵に描いたような極悪人…

    この物語には
    人身売買、宗教、大地震、反原発、
    そしてミソジニー(女性嫌悪)
    が複雑に絡み合っている。
    一本の映画を観ているような感覚で
    息つく暇もなく読み進めた。

    「子どもを売り物にする」という言葉。
    文字通りの意味と、象徴的な意味の両方が重なり
    もうやめてくれ…
    助けてやってくれ…
    と何度も思った。

    そしてなぜだかフィクションだと思えなかった。
    大地震という非常時の混乱の中で
    こうしたことが起きていてもおかしくないんじゃないか。
    実際には隠されていただけで、あったのでは…?
    とさえ感じてしまう。

    桐野先生の作品だからこそ、
    現実への接続や取材の影がちらつく。

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    2026年01月21日
  • バラカ 上

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    桐野さんらしく読んでいてずっとキリキリする。
    ページは進むのに気は休まらない。

    川島という男がとにかくきつい。
    支配的でモラハラ気質。
    読んでいて
    おるよね、こういう人
    と思ってしまうタイプ。

    正直に言うと川島はまだ詰めが甘い。
    本当にやばい人間は、周囲や大人には「いい人」に見える。
    外面がよく密室でだけ相手を支配する。
    その点川島は少しわかりやすい。
    それでも十分に不快で現実と地続きの怖さがある。
    桐野夏生の描く人物は、フィクションとして割り切れないところがあるからきつい。

    今はまだ上巻。
    続きは覚悟と体力があるときに読みたい。
    夜寝る前はダメ、ゼッタイ!

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    2026年01月18日
  • 夜また夜の深い夜

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    ネタバレ

    暗い小説かと思って読み始めたら全くそんなことがなくスラスラ読めた。不遇な環境で生まれ育ったはずのマイコ、特に思い悩みすぎる様子なく、淡々と自分のできる形で生きていて、悪いことをしているのは置いといて明るい冒険に感じた。
    ふだん暗くて考えさせられる小説が好きだけど、読むのに疲れず、たまにはいいなーと思った!

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    2026年01月15日
  • 新装版 顔に降りかかる雨

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    主人公の村野ミロは、夫の自死による喪失感から広告代理店の勤務を辞め、父親が探偵事務所として使っていた歌舞伎町の片隅で、一人ひっそりと暮らしていた。
    ある日成瀬時男と名乗る男から、ミロの親友の宇佐川耀子の行き先を知らないかとの電話が掛かってきた。
    成瀬は耀子の恋人であり、輸入車の販売店の経営を暴力団と関係が深い上杉と云う男から任されていた。
    耀子はノンフィクションライターとしてそこそこの仕事をしていたのだが、経済的には然程稼いでいたとは言い難いのだが、生活は派手だった。
    そんな耀子が、表には出せないお金1億円(新装版で金額アップか?)を持って姿を隠してしまったと成瀬はミロに告げる。
    要はミロと耀子が共謀してお金を横領したと疑っているのだった。
    耀子がアシスタントとして雇っていた小林ゆかりも横領に関係しているのではと疑われ、お金の出所である暴力団の上杉のオフィスに二人して連れて行かれる。
    そして一週間以内に耀子を見つけ出さなければ、落とし前をつけろと脅迫されたミロは、成瀬と協力して耀子と大金の行方を追う羽目になる。
    この理不尽とも云える要求に対してミロは立ち向かうことになるのだが、探偵だった父親譲りの推理の鋭さで事件の真相に迫って行く。

    耀子は、ボンデージ、フェティッシュ、SMなどの世界の著作もあり、それに伴って知人にも特殊な趣向の持ち主も多く存在していた。
    またベルリンの壁の崩壊後に台頭してきたネオナチにも関心を抱き、それに関したノンフィクションを書き起こしていた。
    それらの人々が複雑に絡み合い、殺人事件をも巻き込んでのサスペンスが描かれた物語だ。
    果たして耀子は大金を横領したのか、無事にミロの前に姿を現すのか、とても興味深い内容の物語だった。

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    2026年01月13日
  • 燕は戻ってこない

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    貧困と代理母出産についての社会派小説。代理母出産についての記述多め。ご興味がある方は良いと思います。

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    2026年01月04日
  • 夜の谷を行く

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    巻末に参考文献が掲載されており、当事者らが記した書籍も含まれている。そのうちのいくつかは自分も読んだことがある。
    それらを読んだとき、印象に残るのは彼ら彼女らの無責任さである。当事者なのに他人事のように語り、さんざん総括を要求していたくせに自分たちのことは総括はしない。これは学生運動に熱心だったひとたち全般に言えることだが、言葉が達者なだけの幼稚な人間たちという印象は拭い得ない。

    この小説では、そのような無責任な幼稚さが徹底して描かれる。主人公は元連合赤軍で、山岳ベース事件にも関わっていた設定で、幾度となく「自分は殺人そのものはしていない」と語る。しかし、それは現実の主犯であった永田や森が自分で手を下したわけではないのと同様である。

    こう書いていくと、なんだか重たい話のように思えてくるし、実際そうなのだが、本小説で印象深く書かれるのは主人公の妹や姪との関係である。姪の結婚式に行くとか行かないとか、そういう瑣末な話をもって元連合赤軍の無責任な幼稚さを炙り出し、しかもそんなどうでもいい家族のいざこざをおもしろく読ませてくれる。

    ただ、ラストはたしかに衝撃的なのだが、少し甘いと思う。ちょっと2時間サスペンスっぽいメロドラマ感がある。

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    2025年12月29日
  • 柔らかな頬 下

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    今、Netflixであるリアリティ番組を観ている。
    私はその人たちのことを映像というフィルター越しに
    少し距離を取って眺める感覚がある。

    人が衝動的に動く瞬間や、
    理屈より先に感情が出る場面を
    じっと見てしまう。

    柔らかな頬を読んでいてその感覚とどこか重なった。
    カスミや石山、内海、別荘地の人々のような存在は
    身の回りにそう多くいるわけではない。
    でも、確かに「どこかにいる人たち」でもある。

    桐野先生はある五歳の女の子の失踪事件を通して
    そうした人間のふるまいを一定の距離を保ちながら、あらゆる視点から描いている。
    人間をよく見ている作家さんなんだなと感心。
    何もないところからカスミや石山みたいな人物を作り上げることはできないでしょ。
    人の視線の動かし方、会話の間、無意識の自己正当化、言葉にしない悪意。
    すごいよこの人。

    桐野先生にかなり感心が湧いているのでまだまだ他の本も読もうと思う。
    ただ内容的にはけっこうヘビーなので間になにか癒しを挟もうかな!

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    2025年12月21日
  • ダークネス

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    村野ミロシリーズ最新刊。

    薬物影響下で山岸によるレイプから生まれた20歳の息子ハルオと、那覇で20年間隠れて暮らすミロ。

    大阪の刑務所で懲役20年の刑に服す夫ソ・ジンホの刑期満了間近にハルオが面会に訪れたことから足がつき、ミロの過去に連なる闇勢力に追われ始める。

    シリーズの愛読者でないせいか、ミロを含めて登場人物はどれも中途半端で魅力に欠け、物語も平板に感じる。

    虚無感に浸りたい読者には合っているのかもしれない。

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    2025年12月16日
  • 奴隷小説

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    読んでいる途中は、何を伝えたいんだろうと思っていたが、解説を読んで、なるほどあらゆる支配構造とその構造の中でその境遇を当たり前として生きているものたちへの著者の「怒り」が表わされているのか、とわかった。

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    2025年12月14日
  • ハピネス

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    憧れのタワマン暮らしで煌びやかな生活!と思いきや、旦那は海外で子育てせず母子での生活、でもタワマンのママ友たちに仲間外れにされないように虚勢を張る生活。なんでこうなった?幸せってなんだっけ?って話。

    実際のタワマンママたちを知らないが、きっとこの本のようにみんな見栄を張ってるんだろうなと思う。
    描写は少ないが、大人たちに振り回される子どもたちの気持ちを想像してしまい可哀想に感じてしまった。

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    2025年12月11日
  • 新装版 天使に見捨てられた夜

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    前作に続き、危なっかしいなと思って読んでいたら。一線を超えてしまった。。。やれやれ。。。次作が楽しみ。

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    2025年11月25日
  • 柔らかな頬 上

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    桐野夏生 (1951- )。
    主婦たちの犯罪をリアルに描いた『OUT』が書かれたのは、1997年。
    その二年後の1999年に、本作『柔らかな頬』は発表され、直木賞を受賞した。

    娘を失踪事件で失った母親の、娘を探す物語。
    別荘で不倫に溺れる母親は、その時、娘を失っても良いと思う。
    その思いを実現化するかのように、娘は突然神隠しに合う。

    後半、末期癌に犯された元刑事が、母親の娘探索に加わる。
    死の迫る元刑事にとって、この事件は最後に生命の炎を燃やすテーマたり得ていたのだ。
    最愛の娘を失い、自己の人生の核を喪失した母親にとって、娘の探索を助力してくれる元刑事はありがたい存在だ。
    二人は、実は「共犯者」でもある。
    生の空虚を埋める手段として少女の探索を行なっていく、という意味で「共犯者」なのだ。

    作中に、別の刑事が述べる「娘は最初からいなかったのでないか」という発言が印象的だ。
    子供という存在とは、存在の曖昧さを示すものなのかもしれない。
    現実の子供と、親の認識としての子供。
    その中で子供という存在は揺れ動き、時には曖昧模糊となる。
    曖昧模糊とした子供は存在しないのと同じではないか。

    女性である桐野夏生による女性登場人物の描写は、男性読者にとっては、ある種、異生物の生態を描くような恐ろしさを感じさせる。
    こうした驚きが女性作家の作品を読む喜びでもある。

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    2025年11月24日