桐野夏生のレビュー一覧
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ネタバレ福祉システムが破綻した日本が舞台。スラム化したかつてのシブヤの野宿者、イオンは闇を根城にする若者たちと出会い、アンダーグラウンドに足を踏み入れる。NGO「ストリートチルドレンを守る会」。女性ホームレス集団「マムズ」。彼の「優しいおとな」はどこにいるのか…?
「平等」とは?「優しさ」とは?「闇」と「光」、「絶望」と「希望」。人によっては「闇」が「希望」で「平等」となっている世界。
今の日本がこの作品の世界に一歩ずつ近づいているように思えて、かなり怖いです。
真実を知るためにどんどんイオンが悪い方に悪い方に転がっていくのを見るのが辛かったです。鉄と再会できたのはよかったけど、とにかくラストが悲しすぎて…
子どもが子どもでいられない世界。
イオンにとっては幸せな最後だったろうか?
アンダーグラウンドのカリスマ的存在の錫が歌う歌が印象的です。 -
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全6編の短編が収録された桐野夏生氏の短編小説。文庫の発刊は2000年なので、もう15年も前の作品なんですね。
桐野夏生さんの作品は初めて。『OUT』や『東京島』からダークなイメージを持って読みましたが・・・、まんまでした(^-^;
ボキャブラリーがないのでちょっと違う表現かもしれないですが、『世にも奇妙な物語』のようなテイストがあるんですよ。つくづく、人って怖いな、と。解説にもありましたが、人間の心の裏側が見事に描かれた面白い小説だと思います。
また、この小説は、全体的に短編の良さが詰まっていて、読んでいてストレスを感じなかったですね。
一つ一つの話がダラダラと間延びしないし、オチがあってスッと終わるところが良いんですよね。ミステリー要素からの結末が想像力を掻き立てられて、何とも言えない読後感を味わえます。
次は、桐野夏生さんの長編作品も読んでみたいと思います。 -
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低予算映画にかける職人たちの、汗と涙の物語......が崩壊していくお話( ´ ▽ ` )ノ。
解説にある通り、さっぱり先が読めない( ´ ▽ ` )ノ。
予定調和に飽きた口には最高( ´ ▽ ` )ノ。
深作欣二?大島渚?木村大作?......その他諸々、モデルのあるようなないようなキャラの渦の中に、しれっとビル・ジグムンド(作中ではスィグムンド)なんて実在の名カメラマンが出てきたり( ´ ▽ ` )ノ。未知との遭遇を撮影した人だよ( ´ ▽ ` )ノ。
映画は夢( ´ ▽ ` )ノ。情感が剥き出しでとりとめがない( ´ ▽ ` )ノ。それを丸ごと再現したかのような小説( ´ ▽ ` )ノ。
難を挙げれば「ポートレート24」か? どこどう転んでも、面白い映画にはなりそうもない...... -
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いよいよ夷腕村が東一の村になるわけですが。少女時代のマヤが持っていた神秘性は少女が女性になっていくにあたって変容していったわけですが。
マヤと東一(をめぐる、いわゆるこの作品でつよく男性性を強調して描かれている男性)のパワーバランスが変わった時に、小杉に対して考える、以下のようなモノローグがある。
「(うろ覚え)この男を刺した所でぶよぶよとした贅肉に当たるだけで云々〜」
もう本当にうろ覚えなんだけれど、ぼんやりと自分が考えたことのあることと同じで。つまりどれだけ憎しみのように感情の刃を研ぎすませたところで、その受け手というのは贅沢な肉に守られていて、自分の感情の刃はその者の心臓とは言わず肝臓などにさえ傷ひとつ付けられないのだなあと思っていて。贅肉がどろっと出て終了なんだよなと。お金の塊が変化した分厚い肉のかたまりに阻まれちゃうんだよなと。
もしかしたらありきたりの発想かもしれないけれど、自分の考えがこの本を導いてくれたような気がして、奇妙な感動があった。
いつだって桐野さんの本は人間の弱い部分を描いていて、男と女の弱くて愚かでだけれど見つめなければいけない部分を描いていて、この本もやはり読んでよかったなと。何かを諦め何かを守っていくために読んでよかったなと思ったのだった。 -
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ネタバレ自分にとって桐野夏生作品を読むことは、一種の自傷行為なのだと最近自覚するようになった。でもこの作品は自傷にはあたらない優しさがあった。
舞台は福祉が崩壊した近未来日本のシブヤ。近未来といいながら、主人公イオンのまわりの地上風景はすでにこの国が現実に抱えている問題そのものだった。企業による炊き出しや公園村、女性ホームレス、NPO支援団体。見たことあるものばかりだ。そうすると、この物語の地下風景も実在するのではないかと本気で思えてくる。
特にリアリティを感じたのが、夜光部隊が暮らしていた地下までサブとイオンが進む洞道。自分がふだん暮らしている東京アンダーグラウンドは、きっとこのままに違いない。私たちの目に見える綺麗ぶった世界は、私たちが垂れ流しフタをしたドロドロの上に成り立っている。
イオンはなんだかんだで出会いに恵まれていた。作品を振り返るとイオンのまわりの大人は「優しいおとな」ばかりで、だんだんとイオンの閉ざされた心が溶解していくさまが心地よくもあり、桐野作品ならもっと深く傷つけてほしくもあった。
終盤、イオンの過去が明かされるモガミの手紙の内容が突拍子もなく、これまでの近未来SFの世界観が一気に違うものに変わってしまった。イオンのルーツにちょっと落胆したが、参考文献一覧を見て納得。このような子どももおとなもきっと現実に存在するのだと思うと不気味だ。この不気味さを残すところに桐野夏生らしさがあった。
ラストはこれでよかった。涙が出た。
子どもが大人に求める愛情と、大人が子どもとつくりたい世界は必ずしも一致しない。子どもは無条件に大人へ愛情を求めるが、大人はどんな愛情のかけ方が正しいのだろうと考えずにはいられない。
追記
ディケンズの『オリバーツイスト』にインスパイアされている気がした。