桐野夏生のレビュー一覧
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大好きな桐野夏生なのですが、初のエッセイ集?あ、こんなのあったんだ、と手に取りました。どれも非常に短いけどパワフル。いつもどうやったらあんな世界を書き描くことができるんだろう、この人の頭の中はどうなっているんだろう、と思っていたので、彼女が書いている様子をちょっと覗けたみたいで嬉しくなりました。最終章の、彼女及び作品に対する不当な書評や無責任な非難に対しての、断固たる反論は非常に読み応えあり。まわりにもずいぶん「そんなものは放っておけ」と言われたらしいし、私も桐野さんほどの人がこんな軽い書評無視すればいいのに、と思ったが、あえて反論するところが彼女らしさなんだろうな。作家をするということがどれ
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桐野夏生の白蛇教異端審問を読みました。桐野夏生のエッセイ・日記・短編集でした。あとがきで東野圭吾が「このエッセイは彼女の口から吐かれた怒りの炎なのだ」と書いているように、桐野夏生の歯に衣着せない意見がこれでもか、と書かれていました。女性の視点から感情的で理論的な、そして結構過激な論説が展開されています。(と、書いたとたんに女性の視点とは何か、定義してから論説しろ、といわれてしまいそうですが。)このエッセイ集で主張されている意見は、私が日頃感じているものも多く、応援したくなります。表題作の白蛇教異端審問は、直木賞を受賞したときに、匿名の評論家からあしざまに批判されたことに対して、反論したエッセイ
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かなり面白い。一気に読んだ。主要登場人物は、監督の薮内三蔵、カメラマンの有村、プロデューサーの玉置優子、主演男優の高見、女優の井上佐和など。彼らが、ひとつの映画をつくるために終結するが、個人の色々な思惑や確執が重なり、うまくいかず、破綻してしまう。文庫版の作品紹介では、逆プロジェクトX物語という紹介もされていた。ひとりひとりのキャラクター設定が、なかなか秀逸だと思うし、それらのキャラクターの思惑、キャラクター間の関係なども、とてもよく書けていると思う。書けそうで、なかなか書けない小説のように思えた。それにしても、桐野夏生は、とても色々なタイプの小説を書く人だな、と思う。「一作一作に変化を持たせ
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ダーク、Dark。村野ミロシリーズは、この本以降書かれていないと思うので、いちおう、シリーズでは最新刊。村野善三が全くしまらない方法で死に、トモさんは人間が変わったように卑しくなってしまい、鄭はかなりヤキの回った老人になっていて、成瀬は獄中で自殺をしていて、それを知ったミロはきれてしまい、周囲にトラブルをまき散らし始めると共に自分自身も泥沼のようなトラブルに落ち込んでしまう。小説は、そのように始まり、村野ミロシリーズになじんでいた人は、当然私も含め、これまでのシリーズ中での人物設定や人間関係が全く異なるものになってしまっていることに気がつき、とまどってしまう。とまどってしまいはするが、でも、こ
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桐野夏生 (1951- )。
主婦たちの犯罪をリアルに描いた『OUT』が書かれたのは、1997年。
その二年後の1999年に、本作『柔らかな頬』は発表され、直木賞を受賞した。
娘を失踪事件で失った母親の、娘を探す物語。
別荘で不倫に溺れる母親は、その時、娘を失っても良いと思う。
その思いを実現化するかのように、娘は突然神隠しに合う。
後半、末期癌に犯された元刑事が、母親の娘探索に加わる。
死の迫る元刑事にとって、この事件は最後に生命の炎を燃やすテーマたり得ていたのだ。
最愛の娘を失い、自己の人生の核を喪失した母親にとって、娘の探索を助力してくれる元刑事はありがたい存在だ。
二人は、実は「 -
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両親が借金のため、親戚の家に弟と別々に預けられた高校生の真由。
真由が預けられたのは父親の弟夫婦の家で、そこには小学生の娘2人いた。どちらかといえば貧しい暮らしの叔父の家で真由は居場所もなく、食事もろくに与えてもらえなかった。
学校も市立に行く予定が金銭的な理由で公立に変更になり、通うことになった高校も荒れた所で行く気になれなかった。
真由は少ない小遣いしか渡されておらず、昼食も買えないことから、ラーメン屋のバイトを見つけ、なんとか少しでも足しにしていた。
しかし、叔父の家に帰りたくなくて夜の町をさ迷っているうちに年上の女性に騙されたり、とにかく危険な目に合って行く。
そして、リオナというひと