あらすじ
人生で1度だけ思い切ったことをしたからには――。現代女性の奥底に潜む毒を描く、刺激的で挑戦的な桐野文学の方向性を示す短篇集。
不倫相手と夏休み、キューバに旅立った女性教師を待ち受けていたのは非難の嵐だった。
表題作の他、女同士の旅で始まった生々しい性体験告白大会、若い女の登場に翻弄されるホームレスの男達、など七つの短篇を収録。
「直木賞受賞後に発表された七つの短編を収める本書は、桐野さんの新旧二つの作品世界に架けられた吊り橋のようなものといえようか」
(本書解説より)
解説・杉本章子
※この電子書籍は2005年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
桐野夏生氏の短編集。失礼ながら、面白くなさそうと思いながら読み始めたのだが、非常に良かった。
一言で言うと、「エグい」。桐野氏の他の作品もそうだが、人間の裏の部分、つまり人が隠しておきたい部分が容赦なく抉り出され、「イテテ…もう勘弁して」と思いながら読むのが醍醐味。また、救いのない短編もあるが、なぜか読後感が重くない。
では人に薦めるかと言うと、万人にというわけにはいかない。好みが分かれるだろう。私にはハマった。
Posted by ブクログ
短編とはいえ、どの話も濃厚で露悪的。なかでもミステリー要素を含む「植林」「アンボス・ムンドス」の2編は引き込まれた。「植林」は容姿にコンプレックスを抱えた主人公の悲劇と見せかけて実在のある事件と繋がるという意外性のある内容で、短編には勿体無いと思うほど面白い設定だと思った
Posted by ブクログ
短篇集でどれをとっても面白い。どの話もいろんな意味で一線を超えちゃった人間が主人公で(この人の小説はみんなそうだ)、著者はその超える瞬間までも容赦なく激写する。『植林』『怪物たちの夜会』『愛ランド』『毒童』、いびつなタイトルのつけ方がまたいい。名は体を表してる。
いくつかの話のモティーフはその後の長編に活かされている。『ルビー』→『東京島』、『浮島の森』→『In』など。
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一つ一つの物語が個性を持っていて、印象強く本当に面白かった。
特に『愛ランド』と『浮島の森』は面白い!!!
東京島のベースとなった本とされている『愛ランド』はエロいけど女の人が本当に隠している本性、本音、願望?みたいなのを言い当てて、登場人物たちだけではない『女』の姿を上手く表現できてた。
あと『浮島の森』は谷崎潤一郎、佐藤春夫、千代夫人の3人の話をベースに、娘の立場からそれらが語られてて面白い。2人の父親の作家という仕事をクリティカルに分析し、拒否する彼女の姿勢が面白かった。
他の作品も、人間の深い黒い部分を細かく描いていて、おもしろい!!!おすすめです。
Posted by ブクログ
何もかもどうでもいい平日のど真ん中に銀座の片隅にある天井からドデカいシャンデリアのぶら下がるようなオシャンティなラウンジバーで毒薬の注がれたショットを7発嗜むような作品です。エッジィでどこかエレガントで彼女の作品は期待を裏切りませんね。
Posted by ブクログ
ひたすら女の黒い短編集。
これが真実だとしても、あまりこういう目で世界を見過ぎない方がいい。
一つひとつの話は短いので、サクサク読み進めることができる。
寝る前に読むと、変な夢みるよ。
ルビーちゃんみてえな娘、いねえかな。
Posted by ブクログ
これでもかというぐらい女の悪意と毒を味わえる桐野作品。本作は短篇集なので、大人の女性から少女までの各年代のグロテスクな内面を知ることになる。
「アンボス・ムンドス」とは、両方の世界、新旧二つの世界という意味だそうだ。桐野さんの世界観を表すのにぴったりの言葉だと思う。
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植林は女同士のあーゆーのあるよなぁって思った。男の子に「植林」するとこやばい。。女の黒い部分をよく表現されている話がおおい。アンボスムンドスも結構好きだった!
Posted by ブクログ
短編集に対する期待が薄かったからか、逆に楽しく読めた一冊。後の長編小説の原点と思われる作品も見られ、アイデアノート的な短編集でした。
個人的にはちょうど「当世鹿もどき」を読んだ後だったので谷崎潤一郎をモデルとした「浮島の森」は興味深かった。表紙のデザインも印象的。
Posted by ブクログ
桐野夏生の短篇集。ミステリだけでなく、ファンタジー、恋愛小説、果てはポルノなどバラエティを楽しめる。
桐野作品にはよく実際にあったことが盛り込まれる。下手をすれば、つまらない小説になりがちだが、不思議に物語にグイと引き込まれることが多い。松本清張の読後感に似ている。
Posted by ブクログ
姉に借りた本。
涙を誘う悲しいお話というよりは、胸の中が重たくなる切ないお話が多いかな。
桐野夏生さんの作品を読むとダークな気分に堕ちるのは私だけじゃないよね(笑)
Posted by ブクログ
7つの短編を収録。ちょっと怖わかったり、なんだか不思議な終わり方をするお話だったり、ファンタジーなのか現実なのか、その境界線を行きつ戻りつする。わずかな隙間から垣間見える異次元空間にわたしは鳥肌がたった。
この中では『ルビー』が面白い、落ちようのないところにいるはずの浮浪者登喜夫は、ルビーと関わることで更なる不幸の淵へ追いやられることになる。短編なので登喜夫のその後まで知る由もないが、ものすごく意味深な終わり方をするお話だ。
Posted by ブクログ
最初の短編を読んで、こういう感じあんまり好きじゃないかも、と思ったけど、読んでいくうちに、どんどん引き込まれていった。全体的に暗い、人間の憎悪とか嫉妬とかそういうテーマの話。読み返したくなるような話ではないけど、娯楽としては面白かった。表題にもなってる「アンボス・ムンドス」がいちばん好き。先生の気持ちわかる。実際自分が教員のとき、11歳の女の子、こわかった。これも実際の事件(事故)がモデルだとしたらその話も気になる。
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2話目のルビーは結局住処のためには身体を差し出さなければならない。悲しく思う。
怪物達の夜会/田口家はどうなってるんだ。怪物達という題名が妙にしっくりくる。
愛ランド/オバハン達の果てしない性欲……
代表作は本当に小学生だよね?っていう怖さよ。恐ろしい。
パッとキレよく終わる話もあれば、え?というまだ続きあるのでは?という話もあってどれも刺激的で飽きずに楽しく読めた。
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短篇集ということでさらっと読める感じですが、例によって後味のよろしくないものが多いのは覚悟の上。
作家が妻を譲る話とか、いろいろ下敷きにはネタがあるものなのだろうけど新たな解釈を加えて書き上げているって言う点で評価されているんでしょうね。
構成力とか筆力はもう申し分ないんですけど、なんか好きになりきれないこのもやもやはまだわからないなぁ…なんだろうなぁ…
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桐野 夏生の短編7編集
タイトルは不倫旅行に行ったことで人生終わった女教師が
相手教師と泊ったホテルの名。
その他ホームレスの話や、中年女3人の旅行での
性体験告白譚などがあり、どれも女性が軸になる。
けどもまー物足りないかな。
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毒気たっぷりの短編集でした。タイトルの意味は「新旧2つの世界」という意味があるそうですが、どの作品も2つの世界=女性の表・裏の顔が嫌なぐらいに味わえます。・・・ただ、女性向きかな。
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桐野ワールド全開です。
よくもまぁこれだけ性格が悪い人たちを作りあげること(笑)
ダークな雰囲気が好きならお勧めです。
短編集なので、嫌になればやめればいいし。
Posted by ブクログ
短編集です。
この人の作品は『顔に降りかかる雨』から愛読しております。
偉大な作家だなぁと思っております。カッコいいよなぁ、です。
この人の作品も、未読のが入手出来るとすぐにゲットしております。
で、『アンボス・ムンドス』。
7編の短編が入っている短編集なのですが、中身は濃い。
どれもこれも、人間の悪意やどろどろした感情を抉り出しているような作品ばっかりです。
俺もいいトシだけど、こんなに内面深くねぇよ!と言いたくなりますが、でも、う~ん…と唸ってしまう作品ばかりです。
いっぽん、いっぽんの作品の感想を書くってのも良いのですが、それは読んでのお楽しみってコトで…。
この中のお気に入りとしたら個人的には最初に出ている『植林』かな?
子供に悪意をまさに『植林』していく、って話です。
悪意はどんどん根深くなっていて、それを植林された子供はどんなコトになるんだろうか?っていうところで終わっている作品です。
余韻が凄いなぁ…。
Posted by ブクログ
短編となると物足りない?が出てくるけれど、誰にでも降りかかりそうなある瞬間の一番印象的な部分を描写しているから、7編すべてを一気に読むのは精神的につらい。
桐野氏の作品は、自分の心のエネルギーを計るバロメータにもなる。
Posted by ブクログ
彼女の作風が存分に生かされている作品。しかしやはり短編集なだけあって、後味悪い・・・という印象を持たざるを得ないのが遺憾である。「東京島」の元ネタになったと解説に書かれている作品(『愛ランド』)もあるけど、これもまあ…ひどい(笑)このひどさに惹かれてつい読む人、多いのでは?私もその一人。
Posted by ブクログ
リアリティのある文章で、何となく後味悪くていや~な気分。
だからこそ、この作者の持ち味がよく出てる短編集ではあるが、
桐野夏生はやっぱり短編より長編で読みたい。
Posted by ブクログ
うーん! 物足りない!
なんだなんだ、夏生さん、こんな薄いもの書くなんて。
久々の夏生で楽しみに読んだんだけどなあ。
全ての話が短編というよりは、長編になりえなかった小咄という感じで、中途半端感が満載だった。
その中で好きだー! と思えたのは「植林」と「毒童」。
「植林」は夏生作品には多い、腐った性根の女の根底にある膿みたいなものが軽快に描かれていた。
”植林”に含まれる意も空恐ろしくて惹かれるし、何より自分を特別な存在に押し上げるために、突然「グリコ・森永事件」を絡ませる破天荒な構成がなんともたまらん。
「毒童」の方は途中までは、何かミステリー的な仕掛けがあるはずと気を張って読んでいたんだが、最後まで読むと夏生作品にしては珍しいタイプの完全なエンターテインメントに仕上がっていて、思い切り楽しませてもらった。
いやあ、異界覗いちゃった! こえー! みたいな。(なんだそれは)
夏生作品では、どんな人間も皮膚の一枚下に隠し持ってる醜悪さとか、思考の流れにぞくぞくさせられることが多いせいか、こうした「毒童」のような訳の分からないものを主軸として、登場人物の歪んだ感情がスパイスとなって生きてくる、という作品に出会えるとは思っていなかったので、本当に「桐野夏生の中にあるアンボス・ムンドス」に触れたという感じがした。
さあ、次はどんな世界を見せてくれるのか!
Posted by ブクログ
桐野さんて、ほんと人間のやらしい部分とか屈折した感情みたいなのを描写するのがうまいなー。
自分にもこういうとこあります。
面白かったけど、ダークすぎるので星3つにしときます。
Posted by ブクログ
桐野夏生はどんどん容赦がなくなってきているような気がする。
小説として面白いけれども救いがなくて読むのが辛かった。
解説にある「現実を虚構で凌駕したい」という一文で納得した。
Posted by ブクログ
あいかわらず読後感悪の桐野作品7短編。1篇目の「植林」は中でも終わらせ方がきつく感じ、読んだ後はぐへ。。。って胸焼けしたような感覚。「怪物たちの夜会」では不倫のドロドロ・愛人の狂気に空恐ろしさを感じ、表題「アンボス〜」では子供の妬みが表されていて、キツイ。他の作品も男女の卑しさ、心の闇、エゴ等などを各短編に徹底的に押し込めて、中途半端な救いなど垣間見せることさえなく・・・以上のように読んで楽しくなることは全くないが、それでもたまに桐野作品を読んでしまうのは、本質的に「的を得た」人間の内面を描いているからだろうと思う。ダーク過ぎるが、嘘はないというか。もしかしたらそれを読んでどこか安心しているのかもしれない・・