桐野夏生のレビュー一覧
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ネタバレ偶然桐野さんのペンクラブ会長の就任会見を動画で見て、桐野さんはしばらく読んでなかったと思ってこの本を引っ張り出した。書棚の整理中に見つけていたので再読。期待通り面白かった。
短編が六編だが、とに角最初の「虫卵の配列」という題名にインパクトがある。
昆虫は可愛らしいものも多いが、きれいな葉っぱをふと裏返してみて、並んだ卵はさすがに気持ちが悪いこれOUT。
☆虫卵の配列
教師向けの雑誌を作っている私は、中学の生物教師をしている瑞恵と偶然出あった。会いたいと思っていたので嬉しかった。教師を辞めて今は介護施設で働いているという。私は付き合っていた画家に失恋をした話をした。意外なことにおとなしいイメー -
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ネタバレ桐野夏生さんの本は読みやすくて、読み始めると止まらない。
ママ友同士のドロドロについては、皆様お疲れ様ですという気持ち。これを楽しく読んでしまう私の中にも(認めたくないが)マウント心があるのかもしれないな、と思った。
そんなことより、最後の結末は納得できなかった。
夫の俊平に対して「貴方もだいぶ身勝手すぎないか?」と思う。
経産婦であったことを隠されていたショックはあったかもしれない。
しかし妻が経産婦だったことがそんなに許せないことなのか?ただ前夫との間に子を産んだだけで、何も悪いことをしていない。
一方で、離婚を妻に受け入れてもらえなかったからとアメリカで愛人を作るのはどうなのか。俊介 -
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ネタバレなかなかきついテーマ。
ひとり子どもを育てている身として読むと
どうしても現実寄りの視点で見てしまった。
出産なんて予定外のオンパレードだし、
感情も身体も、契約書どおりになんて動かない。
それを商売として成立させようとすること自体、
やっぱり相当無理があるよなーと思う。
グレーゾーンだらけで、
契約違反かどうかなんて簡単に線も引けない。
リキの冷静さが、この物語のスパイスだった。
感情的になりすぎず、突き放しすぎもしない、
ちょうどいい温度感。
周りが激しいぶん、結果的に一番現実を見ている視点だった気がする。
主観がリキだから、自然とリキ寄りで読んだ。
最後に一人だけ連れていく展開は -
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10余年前に発表された本作。華やかな学歴や経歴を手に入れ、周囲から羨望されるような「いい暮らし」を送りながらも、胸の内から消えることの無い強い虚無感や劣等感を描いた「タワマン文学」の元祖と言うべき作品でした。
階層、眺望、分譲、賃貸。あらゆる要素で住民の階級差を可視化するタワーマンションは、住民の虚栄心を満たす一方で、大変差別的な一面を持つ。いぶママを頂点とするBWT組のヒエラルキーと外様組の美雨ママ、その境界で漂う有紗の描写が印象的でした。
人よりちょっといい暮らしをしたい。人より少しだけ上でいたい。わずかな優越性を求める気分が、些細な差異を過剰に気にする心性と、他者に対する差別心を生む -
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上巻を読んでいたときは、川島を甘く見ていた。
あいつは極悪人だ。
人は善と悪で単純に分けられるものじゃない。
誰しもが、それぞれの「善」だと思う方向に向かって行動している。
悪を悪だと自覚したうえで行動する極悪人は一握りだ、という言葉を思い出した。
川島は特に同情できるところもない、絵に描いたような極悪人…
この物語には
人身売買、宗教、大地震、反原発、
そしてミソジニー(女性嫌悪)
が複雑に絡み合っている。
一本の映画を観ているような感覚で
息つく暇もなく読み進めた。
「子どもを売り物にする」という言葉。
文字通りの意味と、象徴的な意味の両方が重なり
もうやめてくれ…
助けてやってくれ… -
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桐野さんらしく読んでいてずっとキリキリする。
ページは進むのに気は休まらない。
川島という男がとにかくきつい。
支配的でモラハラ気質。
読んでいて
おるよね、こういう人
と思ってしまうタイプ。
正直に言うと川島はまだ詰めが甘い。
本当にやばい人間は、周囲や大人には「いい人」に見える。
外面がよく密室でだけ相手を支配する。
その点川島は少しわかりやすい。
それでも十分に不快で現実と地続きの怖さがある。
桐野夏生の描く人物は、フィクションとして割り切れないところがあるからきつい。
今はまだ上巻。
続きは覚悟と体力があるときに読みたい。
夜寝る前はダメ、ゼッタイ! -
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主人公の村野ミロは、夫の自死による喪失感から広告代理店の勤務を辞め、父親が探偵事務所として使っていた歌舞伎町の片隅で、一人ひっそりと暮らしていた。
ある日成瀬時男と名乗る男から、ミロの親友の宇佐川耀子の行き先を知らないかとの電話が掛かってきた。
成瀬は耀子の恋人であり、輸入車の販売店の経営を暴力団と関係が深い上杉と云う男から任されていた。
耀子はノンフィクションライターとしてそこそこの仕事をしていたのだが、経済的には然程稼いでいたとは言い難いのだが、生活は派手だった。
そんな耀子が、表には出せないお金1億円(新装版で金額アップか?)を持って姿を隠してしまったと成瀬はミロに告げる。
要はミロと耀 -
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巻末に参考文献が掲載されており、当事者らが記した書籍も含まれている。そのうちのいくつかは自分も読んだことがある。
それらを読んだとき、印象に残るのは彼ら彼女らの無責任さである。当事者なのに他人事のように語り、さんざん総括を要求していたくせに自分たちのことは総括はしない。これは学生運動に熱心だったひとたち全般に言えることだが、言葉が達者なだけの幼稚な人間たちという印象は拭い得ない。
この小説では、そのような無責任な幼稚さが徹底して描かれる。主人公は元連合赤軍で、山岳ベース事件にも関わっていた設定で、幾度となく「自分は殺人そのものはしていない」と語る。しかし、それは現実の主犯であった永田や森が自 -
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今、Netflixであるリアリティ番組を観ている。
私はその人たちのことを映像というフィルター越しに
少し距離を取って眺める感覚がある。
人が衝動的に動く瞬間や、
理屈より先に感情が出る場面を
じっと見てしまう。
柔らかな頬を読んでいてその感覚とどこか重なった。
カスミや石山、内海、別荘地の人々のような存在は
身の回りにそう多くいるわけではない。
でも、確かに「どこかにいる人たち」でもある。
桐野先生はある五歳の女の子の失踪事件を通して
そうした人間のふるまいを一定の距離を保ちながら、あらゆる視点から描いている。
人間をよく見ている作家さんなんだなと感心。
何もないところからカスミや石山 -
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桐野夏生 (1951- )。
主婦たちの犯罪をリアルに描いた『OUT』が書かれたのは、1997年。
その二年後の1999年に、本作『柔らかな頬』は発表され、直木賞を受賞した。
娘を失踪事件で失った母親の、娘を探す物語。
別荘で不倫に溺れる母親は、その時、娘を失っても良いと思う。
その思いを実現化するかのように、娘は突然神隠しに合う。
後半、末期癌に犯された元刑事が、母親の娘探索に加わる。
死の迫る元刑事にとって、この事件は最後に生命の炎を燃やすテーマたり得ていたのだ。
最愛の娘を失い、自己の人生の核を喪失した母親にとって、娘の探索を助力してくれる元刑事はありがたい存在だ。
二人は、実は「