桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
だれもが、自分の影に怯えて生きている。自分に支えられて生きている。自分は結局、自分と付き合い続けなければいけないし、身の回りにあるものはすべて自分の選んだものだ。望んだものにしろ、生まれつき持っていたものにしろ、自分の行動で変化させてきたものだ。
主な登場人物。カメラマン、映画監督、プロデューサー、俳優。なぜかすべてに自分自身を見つけてしまう。若さゆえの奢りと理想、経験を重ねたからこそ捨てられないプライド、私生活への憤怒が生む仕事への熱と執着、過去の自分を捨てるために何でもしてみせるという覚悟、流されて一夜を共にする一時の愛、それで崩れる関係性、スキルが生むこだわりと美学、よいと考えつつも状況に勝てない諦念。桐野夏生にしてはめずらしく、特別にねじれた人間を書いているわけではない。こんなにもリアルなのに、どうして読んだこともない作品に仕上がっているのか、それがいちばん不思議だ。
結論はない。救いもとくにない。途切れるようにして最後のページはやってくる。でも、絶望はない。ただ生き続ける、行き続けなければいけない登場人物たちを見て思う。どんなにがんばっても、もうどうにもならない流れのなかで生きなければいけないこともある。投げ捨てようとも、振り切ろうとも、自分が自分である限り、自由も不自由もおなじぐらい抱えていく。光源はどこかと考えている。生きるとは、そういうものなのだと改めて感じさせられた。 -
Posted by ブクログ
大好きな桐野夏生なのですが、初のエッセイ集?あ、こんなのあったんだ、と手に取りました。どれも非常に短いけどパワフル。いつもどうやったらあんな世界を書き描くことができるんだろう、この人の頭の中はどうなっているんだろう、と思っていたので、彼女が書いている様子をちょっと覗けたみたいで嬉しくなりました。最終章の、彼女及び作品に対する不当な書評や無責任な非難に対しての、断固たる反論は非常に読み応えあり。まわりにもずいぶん「そんなものは放っておけ」と言われたらしいし、私も桐野さんほどの人がこんな軽い書評無視すればいいのに、と思ったが、あえて反論するところが彼女らしさなんだろうな。作家をするということがどれほどの覚悟が必要で苦しい作業なのかということが少しだけ想像されます。だから私は彼女の作品が好きなんだ。そして、安易な文章や安っぽい本が嫌いなんだ、と実感したのでした。