桐野夏生のレビュー一覧
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主人公の村野ミロは、夫の自死による喪失感から広告代理店の勤務を辞め、父親が探偵事務所として使っていた歌舞伎町の片隅で、一人ひっそりと暮らしていた。
ある日成瀬時男と名乗る男から、ミロの親友の宇佐川耀子の行き先を知らないかとの電話が掛かってきた。
成瀬は耀子の恋人であり、輸入車の販売店の経営を暴力団と関係が深い上杉と云う男から任されていた。
耀子はノンフィクションライターとしてそこそこの仕事をしていたのだが、経済的には然程稼いでいたとは言い難いのだが、生活は派手だった。
そんな耀子が、表には出せないお金1億円(新装版で金額アップか?)を持って姿を隠してしまったと成瀬はミロに告げる。
要はミロと耀 -
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巻末に参考文献が掲載されており、当事者らが記した書籍も含まれている。そのうちのいくつかは自分も読んだことがある。
それらを読んだとき、印象に残るのは彼ら彼女らの無責任さである。当事者なのに他人事のように語り、さんざん総括を要求していたくせに自分たちのことは総括はしない。これは学生運動に熱心だったひとたち全般に言えることだが、言葉が達者なだけの幼稚な人間たちという印象は拭い得ない。
この小説では、そのような無責任な幼稚さが徹底して描かれる。主人公は元連合赤軍で、山岳ベース事件にも関わっていた設定で、幾度となく「自分は殺人そのものはしていない」と語る。しかし、それは現実の主犯であった永田や森が自 -
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今、Netflixであるリアリティ番組を観ている。
私はその人たちのことを映像というフィルター越しに
少し距離を取って眺める感覚がある。
人が衝動的に動く瞬間や、
理屈より先に感情が出る場面を
じっと見てしまう。
柔らかな頬を読んでいてその感覚とどこか重なった。
カスミや石山、内海、別荘地の人々のような存在は
身の回りにそう多くいるわけではない。
でも、確かに「どこかにいる人たち」でもある。
桐野先生はある五歳の女の子の失踪事件を通して
そうした人間のふるまいを一定の距離を保ちながら、あらゆる視点から描いている。
人間をよく見ている作家さんなんだなと感心。
何もないところからカスミや石山 -
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桐野夏生 (1951- )。
主婦たちの犯罪をリアルに描いた『OUT』が書かれたのは、1997年。
その二年後の1999年に、本作『柔らかな頬』は発表され、直木賞を受賞した。
娘を失踪事件で失った母親の、娘を探す物語。
別荘で不倫に溺れる母親は、その時、娘を失っても良いと思う。
その思いを実現化するかのように、娘は突然神隠しに合う。
後半、末期癌に犯された元刑事が、母親の娘探索に加わる。
死の迫る元刑事にとって、この事件は最後に生命の炎を燃やすテーマたり得ていたのだ。
最愛の娘を失い、自己の人生の核を喪失した母親にとって、娘の探索を助力してくれる元刑事はありがたい存在だ。
二人は、実は「 -
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両親が借金のため、親戚の家に弟と別々に預けられた高校生の真由。
真由が預けられたのは父親の弟夫婦の家で、そこには小学生の娘2人いた。どちらかといえば貧しい暮らしの叔父の家で真由は居場所もなく、食事もろくに与えてもらえなかった。
学校も市立に行く予定が金銭的な理由で公立に変更になり、通うことになった高校も荒れた所で行く気になれなかった。
真由は少ない小遣いしか渡されておらず、昼食も買えないことから、ラーメン屋のバイトを見つけ、なんとか少しでも足しにしていた。
しかし、叔父の家に帰りたくなくて夜の町をさ迷っているうちに年上の女性に騙されたり、とにかく危険な目に合って行く。
そして、リオナというひと