あらすじ
妻の貌を、男たちは知らない。
男たちの身勝手さを、一行で打ち砕く桐野文学の極北!
夫公認のもと、元恋人と自由な時間を過ごす妻を描いた
表題作「もっと悪い妻」など、計六作の短編を収録。
「麻耶は大事だと思っている人が他にいるの?」
「いるよ。男でも親友になれるよ」
「それはそうだろうけれど。困ったな」
(「もっと悪い妻」より)
ネット上で〈悪妻〉と批判されることに悩む
バンドのヴォーカルの妻を描いた「悪い妻」。
妻と離婚した後、若い女性にしつこく迫る
壮年の男性の哀歓を伝える「武蔵野線」など、
男と女のカタチを切り取った現代の「悪妻論」。
西加奈子さん(作家)推薦
不幸な「悪い妻」は許されるが、
満たされた「もっと悪い妻」は断罪される。
「妻」という呪いと、
「妻」を理想化する社会へのしたたかなカウンター。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
6つの短編。どれも結末が笑い、怒り、同感、驚きがあるね。
「オールドボーイズ」は、定年退職して、そこそこ年金もあるだろうに¥3,000-振込願いは、セコすぎ!
Posted by ブクログ
夫の言動に悪態を吐く『悪い妻』。どの作品も男女の些細な日常を滑稽に活写している。『武蔵野線』の原田 は若い女に執着。挙句、高速道路を自転車で走る老人を目撃するが…元妻に泣きつく原田、大丈夫か。
Posted by ブクログ
短編というフォーマットのひとつの大きな魅力を十全に表現している。たとえば日常の瞬間を切り取るスナップ写真がその背景を、その過去と未来を見る人に想像させるように、その書かれているものを読んで「書かれていない世界」に思いを馳せることができる楽しみ。そんなことを思い出させてもらった。単純にぶったぎるタイミングがとても好みだったというのもあるけど。
Posted by ブクログ
表題作「もっと悪い妻」をはじめ、計六作の短編を収録。サクッと読み終わるが、それぞれにちょっと毒を感じる桐野スパイスがまぶしてある感じでした。(読者レビューを見る限り、もっと毒が欲しかったという意見が多数です、確かにそうかな)
僕個人の意見ですが、短編集の面白いところは、一冊の本を『ひとつの世界』になぞらえ、短編それぞれの主人公がパラレルに同じ時間にそれぞれの毎日を過ごしていると考えると、まさに世の中ってこんな感じなんだろうなあと、別な楽しみがある。(変でしょうか?)
一つの話の主人公の妻は旦那の行動を訝しみ罠を仕掛け、一つの話の主人公の妻は妥協して結婚をしたことをずっと悔やみ、別の話の主人公の中年男性は若い女性に好かれてると勘違いをしちょっとアブナイ精神状態、ある話では亡くなった夫の義理の母との微妙な関係を描く…それぞれにひょっとしたら、電車で隣に座ってる人、街ですれ違う人がこんな人かもしれないというようなリアリティを感じる。人間模様、人生いろいろ…。
Posted by ブクログ
「もっと悪い妻」の夫以外は、どの夫も「こんな男いらん」みたいな話だった。そんな男性が現実にも多いような気がして、「男なんていらん」って感じになった。でも今の若い夫は、変わってきているのではないか。どうだろう。
Posted by ブクログ
短編集。あっというまに読み終わった。色々な妻がいた。
『もっと悪い妻』は言うほど悪くないんじゃないか、と思った。不誠実で身勝手ではあるけれど。
離婚で独り身になったおじさんが、歳下の店員さんに執着する話が痛い。
Posted by ブクログ
この著者の作品はちょくちょく読んでいるが、どことなくシニカルで世間を斜めから見ているような作品が多いように思う、本作は6篇の短編でこの著者の短編というのは初めてである、コロナ期のものと思われ、他の女性作家もその頃の短編が多かったように思う、十分取材が出来なかったんだろうか。本作は女性が主人公の物が多いが、何となく恐怖小説のようで、女性は恐ろしいと改めて感じさせられた。
Posted by ブクログ
どの短編も、冷笑的でシニカルな作者の目線心地よかった。本人達は真剣で真面目でも、側から見たらみっともなくて笑っちゃうのが人生かもな、などと思わされた。
Posted by ブクログ
悪い妻
「子供が生まれてからは、文字通り戦争のような日々を送っているのに、評判だけは反比例してさがってゆく」子育てを経験して、このことがとてもよくわかる気がした。旦那の仲間から悪く言われ、「悪い妻」に仕立てあげられてしまっていて、気の毒。最後が、中途半端な気がしたのが残念。続きがあればいいのにと思った。
残念
こちらも、続きがあればいいのに、と思った。
オールドボーイズ
亡くなった旦那の上司の奥様が亡くなられ、それについての書いた本を読んで、思い遣りや感慨にふれ、自分は冷たかったと思った亜美。そこからの最後の一文「気に入ってくださった方は、下記に三千円を振込願います」が、最高のオチだと思いました。短編小説の極み。
もっと悪い妻
最高に悪い妻!少しの罪悪感も持っていないところが清々しい。自分は夫も元恋人も好きで、夫への気遣いゼロなのに、新しい子猫を迎えることについては、今飼っている犬が嫌がるから、ヤキモチを焼くからダメ、と娘に言っているところがなんとも言えず面白い。
Posted by ブクログ
個人的趣向が合うのか、現代にざっくり包丁を入れる桐野さんの計算が至高なのか、一気読みした。
面白い?いやいや、残酷、乾いている、現代「昭和から平成、して令和への変遷」の空気を計算しつくしている文体。
無駄がなく、だれること皆無。
6編の夫婦、取り巻く男女の友達、同僚は個人的に「悪い」とはとは思えない。
それどころか、「いい妻」って何?と自問した。
男が望む?社会が望む?会社組織が望む?島国日本が粛々と培ってきた江戸、明治、大正、昭和の重箱にでも入ったような空気を後生大事にしてきた御仁には、ひゃぁ~~と気も狂わんばかりだろうな。
時代は変わる、社会は変わる、「古き」はよきものとは限らない。
Posted by ブクログ
6編の掌編からなる一冊だ。
私はこの物語を読み進むにつれ、寸劇の舞台を観ているような感覚に陥った。
男と女、ここでは夫婦が主に取り上げられているのだが、主人公の視点から生活の一コマを活写し、単純・明快に描かれている。
この一編一編には、物語としての明確な終止符は打たれずに、読者にその後を想像させる仕組みだ。
鈍感な感性の読者(失礼)には「なにこれ⋯?」となり、洞察力・感性に優れた読者にとっては「ブラックな物語」になったり「男としての反省点」を諭されたりと、人それぞれの解釈が生まれる内容となっている。
人の心の摩訶不思議さを、桐野夏生女史は敢えて掌編と云う短さで表現したのではないか。
一見中途半端な終わり方にも思えるのだが、その後の話は読者の想像に任せているように思える。
表題の『 もっと悪い妻 』の「妻」は、「夫」、「男」、「女」にも置き換えられる気がする。
Posted by ブクログ
6遍からなる短編集。「悪い妻」といいつつも、どこにでもいる誰でも感じているであろう感情を持った妻や元妻たちの話。読んで幸せな気分にはならないし、自分も確かに共感するところがあると認めざるを得ない、そこがなんとも言えず怖い。
Posted by ブクログ
全部で6篇。
どうにもこうにも居心地の悪い本。
心がざわつく物語が収められている。
「武蔵野線」は勘違い中年男の物語。
メールで変なアプローチを仕掛けてくる中年男性の気持ち悪さよ……。
仕事上の笑顔と愛想は最低限のビジネスマナーで、客に好意を持っているからではない。
人として対応しているだけなのに「電話ください」「メール返してください」は恐怖でしかない。
でも全くわかっていない主人公。
な ん で ?
表題作もそうだが、何か得るもの、と言われると、これと言ってない。
ただ、日常のなんだか嫌な感じと、後悔と、その他言葉にならないモヤモヤした居心地の悪さがふんだんにまぶされている。
読後がいいとも悪いともいえず、明確な結論もない。
作者及び物語の個性ではあるが、少しの物足りなさも感じた。
Posted by ブクログ
短編ではあるがそれぞれ毒気も
あり、オールドボーイの最後のオチは
愛も最後は金に取って変わる皮肉さ。
女達の真の恐ろしさもこの短編の
醍醐味だ。
Posted by ブクログ
短編集、表紙を見てもう少し怖い話かと思っていたら、サラっと読みやすい感じだった。特に最後の「もっと悪い女」の終わり方がよくわからなかった。
Posted by ブクログ
なんか思っていた感じとは違った。
自分の子供の名前をネタにされて、DQNネームだと笑われるのは耐えられないなー。旦那はそれを黙って聞いてるのもないけど、そこよりも自分の悪口に怒る妻もないなー。
あとのはよくわからん。すぐに内容を忘れてしまいそうな1冊。
Posted by ブクログ
短編6編を集めた本
悪い妻がどんどん悪い妻になっていく話かと思って読み始めるとちょっと肩透かしを喰らいます。
内容としては、家庭生活の中でよくある(?)夫婦の日常で奥さんこんな事してますよー(考えてますよ)みたいなことを詰め込んだ話でサクッと読めますが、のめり込む感じはなかったです。
悪い妻がキーワードかと思いますが、ここに出てくる奥さんたちがそんなに悪い妻に見えないのは、私だけでしょうか?
悪いことではあると思うけど、そういう人は世の中いっぱいいそうだし、旦那さんや周りの人にも原因があるような気がして、そりゃ悪いことしたくもなるよねと同情してしまいました。
作者の桐野さんがこの作品を書かれたのが70前後のことなんでこの世代の人からしたら、これは絶対悪いことなのかもしれませんが。
個人的には別れた元奥さんのことを「あんた」と呼ぶ元旦那さんに別れたらそうなっちゃうのかと、そこに共感?違和感?を感じました。
Posted by ブクログ
夫婦の形なんて夫婦の数だけあるのだから、いろいろなストーリーがあるってきまってる。
様々なパターンでみんなが感じてる心の内を正直に表現してくれていて、すっきりした。
Posted by ブクログ
6編を収めた短編小説集。
その短編の中に起承転結がはっきりとある訳ではなく、また、連作の短編集ではなく短編間のつながりはない。もちろん、文章のうまさで、さくっと読ませる内容になっているが、後にほとんど何も残っていない。
何だろう、この短編集は?
何か私が気づけていない仕掛けがあるのだろうか?
Posted by ブクログ
あっという間に読めましたね。長編の合間に書いた短編を集めたってことでしょうか。始めが「悪い妻」で、ラストが「もっと悪い妻」だから繋がるのかと期待しましたが、そうでもないのですね。
「悪い」と言われているけど、ほんとにそんなに悪い?って思えますね。
Posted by ブクログ
短編小説。
昭和から令和にかけて夫婦の日常とどこか狡い一面を描いている。
狡賢い部分が見えた時に話が終わるのでその先も読んでいきたいと思える内容。
Posted by ブクログ
他の方と同じ感想。桐野夏生節は弱め。短編集なのでサクサク読めるけど、ドスっと重い読後感はなく、あっさり目。好きだった章は2つありました。
・残念
結婚相手を間違ったと考えている妻。義理の両親との二世帯住宅に不満たらたら。昔、自分に気を寄せていた(と考えている)男が海外出向から帰国したと聞いて…。そのあとが知りたくなる。
・もっと悪い妻
冒頭に収録されている「悪い妻」より、こっちのほうがしっかり、悪い妻だなー。大学時代の元カレと、仕事をきっかけに焼け木杭に火がつき、あれよあれよと不倫を謳歌している妻。子供もいて、夫はその不倫に異議は唱えるものの、不倫相手との逢瀬から帰ってきて二日酔いになってる妻の代わりに、子供に朝ごはんを作ってあげる、という、寛容なのか無関心なのかわからない謎。いびつな家族関係。この主人公家族にフォーカスした1冊分を読みたいと思った。