桐野夏生のレビュー一覧
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2018年刊。『ハピネス』(2013年)の続編である。
前作はタワマンに住むプチセレブな女児をもつママ友グループに露呈される階級による軋轢が主題であったが、本作ではそれは影を潜め、恋愛—不倫が主題となっている。
主人公は同じ有紗で、前作のラストでは夫とよりを戻してハッピーエンドになっていたのに、2年後を描く本作では冒頭から夫婦仲があまり上手くいっておらず、不穏である。
前作から引き続いて継起している親友・美雨ママのダブル不倫に触発されたこともあって今度は有紗が妻ある男性・高梨と恋愛に落ちる。
しかしこの高梨なる男性はよく分からない。美雨ママの言うように「女たらし」であって、上手いこと -
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ネタバレハピネスの続編。恋愛の良い部分だとか、甘ったるく共感できる部分なんてほとんどなくて、ただ淡々と書かれたそのストーリーが面白い。あまり登場人物の誰かに強く肩入れしていない書き方が、この手のストーリーの重さや苦しさを軽くしてるから、割とあっさり読めた。高梨は危ない臭がすごい…このやり口で一体何人の女を泣かせてきたんだと言いたくなる。一生2人で旅に出るなんて絶対うそ!面倒くさくなった女に距離を持たせる貞の良い常套句で、また新しいところで新しい女をつくるぞこいつは!!と1人悶々としながら読んだ。でもこういう危ない男を求めてしまうのが不倫なんだろうなー。結婚してるから、ただ優しくて誠実でおおらかな人は求
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1993年、「江戸川乱歩賞」を受賞した桐野夏生さんのミステリデビュー作。実はこの前に彼女は野原野枝実という名義で少女小説を幾つも書いて出版しているので、これが処女作とは言えない。
読み始めて、うわっ、これ面白い、すげえ、ヤバい。と焦るほどで、どんどんページをめくっていった。冒頭から実に巧みなストーリーテリング。しかも、女性主人公のミロの微妙な心理などを繊細にリアルに描出しており、さすが桐野さんという感じだ。
近年の桐野さんの作品は描写の少ないスカスカの文体であることが多く、初期の『OUT』は逆にやや濃密な描写が重苦しい雰囲気を醸し出していたが、この作品の文体は「ちょうどよい」くらいだ。も -
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下巻の追い上げ力が半端ない!
別荘へ家族で出かけ、その同じ屋根の下で密会とかもう情熱で周りが見えなくなった男女のパワーは圧倒的で、そして脆い。
ようやく冒頭の少女が行方不明の事件が発生し、崩壊劇が始まると、ここへもう一人強力な人物が登場する。死をまじかに迎えた元刑事とかもうドラマすぎて、しかもここからは2度、3度と現実を帯びた夢が始まり、え?そんな事実が!?って思ったらそれは夢で現実かは定かではない、しかもそれが全然間違ってるとも思えないといった感じで読み手をぐるぐるかき混ぜてくれる。やるやん、桐野さん!ってちょっと見る目が変わった。
一体少女の行方はどうなったのか?ずーっと気になりその顛末は -
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桐野夏生さんの小説は突き抜けているから好きだ。欲を言えば最近は少し勢いがないか。
今はイタリアのナポリのスラムで生活しているマイコは、母親とアジアやヨーロッパのスラム街を転々と移り住み、教育も受けられず、友達も持ってはいけない、母親には秘密がある、という中で成長した。「日本人の娘」らしいと思うのに、国籍もIDもないマイコは淋しい根無し草か?
あるきっかけからマンガカフェを経営する日本人に出会い、カフェで日本のマンガに魅せられ耽読する。自意識の発見、家出、友人、事件展開、変化していくマイコ。桐野さんのスピード感ある筆は、しだいにマイコはどこの誰でもないと粋がっているデラシネではない、解き放たれ -
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うーん、先に「ローズガーデン」読んでしまったのがいけないかな。
ミロさんのキャラクターを知っていて、最初から好もしく読み進み期待を裏切られなかったのですが、ここではミロさんに過去があるからこそ、そこはかとない陰影がでてすごみがあるように思うのです。
やはり作品が書かれた順に読むべきだったとの思いです。
ところで私の早とちり「村野ミロさん」を「野村ミロさん」と思い込んでた。「ローズガーデン」の感想日記にそうなってる。よくこういうことある、なんか掛け違って思い込むのよね。
あえて直さないこっぱ恥ずかしい日記はここにあります。
解説にもあって思い出したけど、サラ・バレツキー著「V・I・ウォ