桐野夏生のレビュー一覧
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怖しい。
正に『デンジャラス』。
いつの世も女性の嫉妬や妬みは怖いし、
いつの世も、いくつになっても男性がそんな女性たちに振り回されるのは変わらない。
…と言うことか。
実際の人物たちをモデルにしていると言え、
作家の想像が入った小説。
そうだとわかっているが、
狡猾な女性がひとり登場していて、
どうも好きになれない。
なのに!
小説の最後に謝辞を記している。
“えっ⁈この小説の内容を知っているの⁈”
“自分がどう描かれているか知っているの⁈”
その心の余裕、器の大きさを知り、
印象が変わった。
こういう女性だから谷崎潤一郎のお気に入りだったのだろうか。
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Posted by ブクログ
少しずつ読書ができる余白が、生活の中にできてきた。
久々に読もうとなって手にしたのがこの作品。
さすが桐野さんだ、重たい…!笑
子どもを産む予定のないわたしの子宮は、定期検査が必要な状態だし、生理も酷い。
この歳になって初めてピルを飲んで、多少改善した毎月の憂鬱に、「薬ってすげー」
と思う一方で、副作用のあるピルに対して「まあ、自然にくるものを止めようなんてことが無理な話か」と、わかったようなふりをして、副作用と戦う。
子どもは要らない。それなのにわたしの子宮はずっと子どもを産む準備を繰り返し、さらにそれによって苦しい思いを散々してきて、今がそれなりに快適、と言える状態になってきた。
わたしにとっては、ただ痛みをもたらすだけの存在に、価値があったんだろうか。今となってはそう思う。癌になりやすく、摘出して苦しい思いをしたり、亡くなったりする人がいることも、出産に対して悩みを抱えている人がいることも、わかってる。それでもわたしには、どうしても苦しい存在なのだ。
でも、もう少しわたしが若くて健康で、彼女のように今の生活にも困っている状況で、「妊娠中は生理が止まるよ」「無事子どもが産まれたらお金ももらえるよ」と、例えばそんな風に言われたとして。
きっとわたしは悩むだろう。目の前にぶら下げられた報酬に目が眩んで、代理母出産に興味を持つだろう。
貧困というのは、そういうことだ。急激に、状況がよくなることなんてない。ある程度先を見通して、毎日を「まあこんなもんだよな」くらいで、65%から75%くらいで生きていくのが、日々を生きるってことなんだと思う。だけど、貧困は、そうやって先を見通す力を奪う。今のこのしんどさを、今すぐに、どうにかしてほしいと思う。そして、そう願う、主に女性たちが、今たくさん搾取されている。
女性は子どもを産むことにしか意味を持たない、みたいな価値観の人は、実は多いのだろうな。それを表に出さないだけで。
この物語、たくさんもやもやした。
代理母が苦しんでいる中「乾杯しよう」とお酒が飲めるのか。そりゃそうか、自分の身体はアルコールに浸っても問題ないもんな。
わたしはお酒が好きだから、妊娠中にお酒が飲めないなんて信じられないと思っていたけれど、きっと妊娠したら、なんだかんだと胎児のことを考えて行動するんだと思う。考えすぎて苦しくなるほどに。
望まない妊娠というのは、あんまりよくない言い方だなと思うけれど、実際にそういうことはあって、出産前後の彼女の心の動きは妙にリアルだなと思った。
子どもを可愛いと思えない親って、いると思うんだ。でも、それを出してはいけないっていう空気があるから、本音を抑圧して、生きてる人がいる。でも、そう思う親が、ずっと可愛いと思ってないかと言われると、きっとそうではなくて、妊娠中、子どもが動いた時、出産した時、その瞬間、愛しい気持ちが芽生えたかもしれない。芽生えたその気持ちは、もしかしたら、これからもずっと続くかもしれないし、続かないかもしれない。彼女も、それはわからなかった。わからないまま、どんどんお腹は大きくなっていく。日々、いろんな気持ちが芽生えて、初めての感情にも包まれたりする。予期せぬことがたくさんある。
それでも、子どもは生まれてくる。
作中にも出てくるのだけれど、産まれてきた子どもは、誰のものなんだろう、という問い。
もちろんそれは子ども自身のものなのだけれど、産まれてきた子どもは、親のケアなしに生きられない。だとしたら、子どもの人生は子ども自身のもの、とは、子どもの人生のどのタイミングから言えることなんだろう。
こういう、「出産とは」「子どもとは」「女性が生きていくとは」みたいなことが、この463ページの中にぎゅっと濃縮されているものだから、多少疲れはするのだけれど、ラストスパートはもう息ができないくらいの早さで進んでいく。ラストシーンは、作中のもやもやとか、ぐるぐるした思考を、すっきりさせてくれる終わり方で、救いがあった。
もうね、作中では何度も草桶夫妻には振り回され、もやもやイライラ!笑
リキもちょっとだけ変わってるし、りりこは完全に変人だし、でも、この作品におけるりりこの存在は大きい。りりこが、読者のもやもやの大きなクッション中なってくれている感じがする。この作品で、わたしが一番好きになったキャラクターだった。
また少しずつ、本が読めそうな気がする。 -
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ネタバレ貧困から脱するために代理母という選択をした主人公・リキ。
身体の決定権を他人に握られかける極限状態で見せる彼女の無責任な行動は、愚かさの表れであると同時に、己の存在を証明するための弱者の最後の抵抗のようでもある。
一方で、子どもを望む側が抱く純粋な願いの裏には、持てる者が持たざる者を買い叩く、無自覚で暴力的な搾取の傲慢さが潜む。
本作には完全な善人も悪人も登場しないが、命を生み出す行為すら商品化される格差社会の不条理と人間の複雑な業を、容赦の無い鋭さで作者は浮き彫りにしていく。
綺麗事では済まされない歪んだ人間関係の果てに、安易なハッピーエンドは用意されない。
欲望の渦に呑み込まれた者たちが辿り着く結末に、読後は重い衝撃と割り切れない問いを突きつけられる。 -
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誰とでも 対等な関係で接し、誰に対しても先入観を持つことなくフェアに付き合いたい、と思っているけれど、どこへ行っても 派閥みたいなグループが存在し、その中で周りに合わせるように立ち回らないと 結局 浮き上がり、孤立する。「対等」だの「フェア」だのというのは ほどほどにしとかないと 大変なことになるのだ。さて。都市生活における息の詰まるような人間関係の困難さが描かれ、ゆえにある意味 怖い小説である。けれど、どうしてだろ?僕はこの小説に出てくる全ての タワマンママが 人として好きである。一方、共感できるかと言われると 登場人物で共感できる人物は一人もいない。共感はできないけれど 好き、という距離感で 作中の人間関係のドロドロを傍観でき スリル満点。大満足。僕としては。
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ネタバレ単行本で既読。優真と篤人が生きてて良かった、と思えない。子どもの頃からの教育というレベルでない生活の常識がわからない事を想像できなかった。クリスマスやお正月が特別な日、お風呂に入り歯磨きをする、それを中学生になった優真に一つづつ教えるのは単なる里親を超えている。どんな親の元に産まれるか自分で決められないのに、親の顔が見てみたいと言われる理不尽。最後の目加田の『わからない』、本当にそうだ。正解は無いんだろうけど親の責任が無い親にどう対応するべきなんだろう。里親をして刺された洋子の気持ちが伝わらないのが悲しい。ヘビーな内容だけど素晴らしい作品。
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福島の原発事故から15年が経ち、原発をベース電源とすると政権は舵を切った。
そんな中、著述業の集まりである日本ペンクラブは2025年に創立90年を迎え、2012年に「今こそ私は原発に反対します」を出したので、その続編として出版されたのが本書である。
最近青木美希さんの本を何冊か読んだので、他にないか探したら検索にかかり、読むことにした。
内容が原発、原爆、被曝などのため読んでいて心地よい本でもなく、どんどん読みたくなる本でもなかったので、少しづつ読み進めることになった。12人の書き手よる内容の濃い本となっている。もっと話題になっても良い本だとおもった。話題の多岐に渡っており情報の咀嚼力も必要である。
色々知らなかったことも多数書かれていた。
1.ゴルバチョフ大統領はクーデターで軟禁されている時は核のボタンは無効化されていた。
2.1989年。アメリカのショーラム原発が完成するも、避難経路がないと住民が反対し、それを受けて州政府は56億ドルかけて作られた原発をわずか1ドルで買い上げ、解体を決めた。
3.福島原発の核物質がどう拡散するのかSPEEDIのデータは国内では発表されなかったが、欧米の国々には毎時報告されていた。
4.電力コストという点で原発は決して安くない。
5.原発が有事の時、狙われやすい施設であるのは確かなのに防御の方法はほとんどない。 -
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▼桐野夏生さんは、以前に「OUT」を読みました。血が沸るくらい面白かったのですが、あまりにエグ味が強くて、その後はなんとなく忌避しておりました。この度ご縁があって。
この本は、つまりは「谷崎潤一郎(晩年)と女たちの物語」です。
▼おそらく、関係者に相当な取材もして書かれたんだと思います。全て実名なので、その時点で確かにデンジャラスです(笑)。
谷崎ファン、細雪ファンには、たまらない内容です。谷崎も細雪も知らない人にとって面白いかどうかは、ちょっと分かりませんが、それでも十分に小説としてヤバい魅力に溢れいてることは間違い無いかと。
▼要は、谷崎さんは実際に・・・
「四姉妹の2番目である女性と結婚していて、
その四姉妹の三女と長く同居していた。
三女さんは細雪でいうと、雪子にあたる。
そして、谷崎は、妻をヒント的に題材としていくつもの小説を書いた。
その妹の雪子(役)にも同じように題材として細雪を書いた。
その後晩年は、義理の姪(当然ながら世代的に若い)にシフトチェンジして、瘋癲老人日記を書いた」
ということを題材にした、長い年月の物語。そして、何度も言及されていますが、谷崎さんは若くして大成功した作家で、教養人であり、文化人であり、お金持ちであり、十分な変態さんだったので、、、、、
ここがすごいんですが、
「自分の家族的な範疇には、女性だけを配置した。自分の王国では、男性は自分ひとりで、女性陣が自分を取り巻いている世界を作り、維持した」
というあたりですね。これが、実際そうだったんだろうな、という納得性が高い。
▼その閉鎖された異常な世界の中で、この小説は、主人公の雪子(役)の心理にこれでもかと抉り迫る。その向こうに谷崎の世界。物語を、小説を書くというドロドロした華麗な絵巻物。それが曼荼羅のように、えぐく、濃厚に展開します。脱帽です。面白い。さすが桐野夏生さん。
▼実は関係する谷崎の作品群でいうと、「瘋癲老人日記」だけ未読。近いうちに読もうと思いました。