桐野夏生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ第1部はナポリで母と二人暮らしの国籍を持たない18歳の少女マイコから七海への9通の手紙です。
七海とは一体誰なのか。そしてこれはどういう話なのかと思いました。
マイコは母に内緒でMANGA CAFEのシュンの店に毎日、通うようになります。
しかし、マイコはヤマザキという日本人男性から逃れるため逃げます。
そして、同じような少女、エリスとアナと知り合い、マイコは男装して、三人で逃避行する生活をはじめます。
第2部は、七海への手紙のかわりに書いたマイコの手記です。私の奇妙な人生を記録したかったとマイコは語ります。
七海から初めての返事が届きます。七海も海外に暮らす少女だということが、わかります。
そして、マイコたち3人は、知り合った少年、カマールの家で暮らし始めます。
しばらくして、ヤマザキから、マイコの母親の秘密がわかったからMANGA CAFEで会おうと連絡が入ります。シュンとの再会。でももうシュンのことも信用できなくなったマイコ。
そして、シュンの口からマイコの出生の秘密が明らかになります。
途中で、「オウム真理教」の名前が登場しますが、作者は、その辺から、このお話を発想したのかが、気になりました。オウム関連書は、以前に何冊かまとめて関係者の手記を読みましたが、マイコのような人物はいなかったと思います。
でも、何もかもひっくり返した、最後のどんでん返しはよかったです。
すごく、すっきりしました。 -
Posted by ブクログ
1960年代の物語。
トップ屋 村野善三は、地下鉄の爆破事件に遭遇。
その犯人は 草加次郎かもしれなかった。
村野は、その犯人らしき人物とすれ違って、
バイタリスの匂いを感じた。
遠山をトップとして、村野、後藤など 勢いがあった。
この村野と言うオトコの造形がすばらしくいい。
実に 芯がある。戦争で 両親と妹を亡くした。
トップ屋としての矜持があり、
調査屋として力量を発揮していた。
草加次郎とは?迷宮入りになった 愉快犯。
その時代背景が 浮き彫りになっている。
様々なタイプのオトコたちが いる。
後藤の雰囲気は スマートで、おしゃれ。
こだわりをもっていた。
市川という刑事も堂に入った刑事だ。
敵に回すと怖い存在であることがよくわかるが
ちゃんと 村野を認めているのが すばらしい。
早重という存在が 不安定で、なんとも言えず
方向性が定まらないのが、この物語をおもしろくしている。
後藤を思いながらも、村野さえも射程に入れている。
タキという存在が、村野の立ち場を悪くするが、
それを受け止めながら 切り抜けていこうとする
村野の意地が なんとも 頼もしい。
がんばれ。村善。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ今まで評価をつけてきたけど、今回が一番難しかった。評価は作品の印象でいつもつけるが、いつも通りの感じで一度4をつけた。しかし、その後の余韻というか、作品のインパクトいうか後からじわじわとくるものがあり、再度評価を考え直し5に評価を変えた。登場人物の視点で書かれた本は数多くあるけど中盤あたりから風向きが変わり、終わりまではあっというまでだった。急に展開が変わると読み手は混乱すると思うが、登場人物の心境についてはそれぞれの事情があることを読み手はちゃんと理解できるように構成されていて、それは序盤までに物語をうまく進めながら各人物の状況、心境について固めているから途中の展開の変化にも納得がいくのだと思う。
おそらく読み手によって評価はすごく変わる思うが個人的には評価したい作品。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ登場人物の分類される重要な立場が女か男かのふたつだと感じた。
主人公は女という概念がナミマという皮を被っただけであるし、イザナミ、イザナギ、マヒトもまた同じ。
陰にされた女、陽になった男、
自分勝手な男、昔のことを忘れる男、突き放され怨む女、昔に戻れればそれでいいはずの女。
徹底的にイザナギを恨み尽くすイザナミと、マヒトに優しくされたら揺らぎそうなナミマがいるが、ナミマだけが独白の文体があって感情移入しやすいし、多くの女性はイザナミよりナミマ寄りなのでは。
そのナミマがラストでイザナミに尽くすことを誓ったということは、多くの女性にイザナミと同じく男に屈しないことを奨励している?
イザナギとイザナミは神だからか言動が明快、絶対的で軸がぶれないが、人間たちは言動がいきあたりばったりで、未来が予測できず、他人の心が読めず(人の心情描写が少ない)、自分の行動原理もわかっていなさそうなのが現実に似ている。
これから日本は人口が減ると言われているが、物語のラストでイザナギが千五百の産屋を建てなくなるのに、イザナミは千を殺すのをやめないというのはそれになぞらえてあるような。
古事記での神は人間臭いが、ここでのイザナミは嫉妬、憎悪、怨恨などの感情はあるもののその他の明るい感情が感じられないので人間を超越した存在だと感じる。
人間になったイザナギを殺してしまうことでイザナミの絶対性が浮き彫りになる。これはなんなんだろう、男が滅びても女は生き続けるということかな?
この作品は存在も心情も極めて陽に立ち向かう陰としての女寄りにえがかれている。
陰の世界、陽の世界、それらが混じり会う人間界のみっつが感じられて楽しい。
"魂"の字を見ただけでなんの違和感もなく、なんとなく脳内に魂の表象が思い浮かぶ。魂の存在を疑っていない人がこの物語の魂の描写を読むとなにか根底にあるものが安心すると思う。 -
Posted by ブクログ
一つ一つの物語が個性を持っていて、印象強く本当に面白かった。
特に『愛ランド』と『浮島の森』は面白い!!!
東京島のベースとなった本とされている『愛ランド』はエロいけど女の人が本当に隠している本性、本音、願望?みたいなのを言い当てて、登場人物たちだけではない『女』の姿を上手く表現できてた。
あと『浮島の森』は谷崎潤一郎、佐藤春夫、千代夫人の3人の話をベースに、娘の立場からそれらが語られてて面白い。2人の父親の作家という仕事をクリティカルに分析し、拒否する彼女の姿勢が面白かった。
他の作品も、人間の深い黒い部分を細かく描いていて、おもしろい!!!おすすめです。