桐野夏生のレビュー一覧

  • 夜の谷を行く

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    1971年頃は、大学のバリケードの撤去が始まり、学生たちの全共闘運動も一段落といった風潮だった。
    その後、際立った活動をした一つが連合赤軍だった。
    山岳ベースで武闘闘争のために訓練を行っていたグループの集団リンチ事件が明るみとなり、凄惨な状況は社会を騒がした。
    その後、官憲から逃走したグループは、あさま山荘に籠って銃撃事件を引き起こす。
    そして、これらの事件解決後、日本の過激派と呼ばれる極左運動は完全に地下に潜ることになり、日常社会は穏やかになったとの印象が私には遺っている。
    社会問題に対してデモ闘争を繰り返しても、鉄壁の官憲の壁は崩すことができず、国会では強行採決が繰り返されていた時代だ。

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    2022年07月08日
  • 路上のX

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    桐野夏生の作品は久しぶりに読んだ。高校生が主人公のものは確かもう一つあったと思うんだが、これは家に帰れない(というか家庭がない)女の子たちが生き延びるために必死に戦う話。女の子たちの生き様にハラハラして、とにかく危ない目に合わずに最後まで小説終わりますようにと願いながら読んだ。フィクションとはわかっていても、主人公が心に残って生き続ける感覚があって、そこが桐野夏生の物語の美しさなのかなと思う。

    桐野夏生の描く女はいろいろだけど、だいたい出てくるのがハードボイルドな生き様の女。人を頼れない、いろいろあるから頼りたくない、孤独だけどそれを受け入れて生きていく。それしかできないし、それが自分だから

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    2022年06月05日
  • だから荒野

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    久しぶりの桐野作品。一気読み。存分に楽しめた。
    桐野作品によく出てくる夫婦間のゴタゴタや、ダメ男には毎回頭が下がります。

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    2022年05月12日
  • キアラ 1巻

    無料版購入済み

    かなり昔のレディースコミック

    話がしっさりしてるし

    デザイナーのカインとアーベルが

    彫刻みたいな美しさがゾクゾクしました

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    2022年05月02日
  • 柔らかな頬 上

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    15回目ぐらいの再読をしました。この世のあらゆる小説のなかで、もっとも好きな小説です。先を知っていても、素晴らしかった。

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    2022年04月12日
  • 女神記

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    読みおわった日付:2022.3.22
~本の内容に関すること~
■本の要点
男とは、女とは。

    それぞれを陥れることなく、男女の違う側面を美しい文章で、個人の話として語られる。
    愛する男に殺された、黄泉の世界の女の気持ち。
    神と人の違い。
    
■感想、意見
    古代の神々が出てくるものの、美しい口語でお話しされるので、読みやすく面白かった。
    イザナミ様の胸の内は、人である私には理解しきれないと思うと、それも含めて孤高で悲しく畏怖の念を抱く。
    ナミマの無念や解明欲は、理解できる。
    女神と人の差を、それぞれの感情を表現して伝えているのは、新鮮で面白かった。
    そうだよね、まあわかる、なるほど、と女性とい

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    2022年03月23日
  • 新装版 天使に見捨てられた夜

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    やっぱりだいすき!ミロシリーズ!
    物語が進んでいくテンポがとても好み。主人公のミロの目線で、いろんな事象のちょっとした違和感とか着眼できるストーリーの組み立て方もほんとうに素晴らしい。親切なんだけど、絶妙に読者(少なくともわたしには)には謎解きしきれないから、クライマックスには毎度驚かされる。
    1stシリーズの「顔に降りかかる雨」の時からだけど、登場人物の服装や身だしなみに言及することが多くて、その人となりを想像するのに有効だと思うし、時間の経過とかも感じられるからすごく効果的だと思う。そして個人的にファッションに興味あるから嬉しい。笑 著者もそうなのかな?
    欲を言えば最後、トモさんにもう一度

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    2022年03月04日
  • 路上のX

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    ネタバレ

    仁藤夢乃さんが解説だったので購入。
    彼女がなぜあそこまで過激な発言・思想をするのかがわかった。
    フェミニズムに敏感な人は批判されやすいけど、敏感になる理由があったんだな、と気づいた。
    多分、当たり前にこういうことが起きていて、弱者は搾取されるしかない。
    弱者に厳しい世の中を少しでも就労という形で支援できたらいいな、、、

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    2022年01月29日
  • 光源

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    ネタバレ

    結構節操ねぇぜ、この作品。
    なので読書の際はホントーにお気をつけあれ。

    なけなしの金で撮影というところで
    まあアカンフラグはたっているわけですよ。
    そして関わる人物も節操なしというか
    なーんの摂生も効かないの。

    だけれどもなんだかんだで一人を除けば
    まっとうに活躍はできてるの。
    思わぬ救いの手が入ったりね。
    でも一人、あいつぁだめだよ。

    身勝手極まりない作品。
    不条理嫌いは読んじゃあだめだ。

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    2022年01月04日
  • 優しいおとな

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    貧困化が進み、福祉が機能しなくなった日本(東京)での話。
    一見、ファンタジーのような、近未来のような、今の私達には関係ない世界の話のように感じるけど、実はもうあと一歩でこの世界なんじゃないか?自分達が知らないだけで今実際に起こっていることなんじゃないか?と考えさせられる。
    桐野夏生さんの作品ってそういう話が多い気がするなー。
    ハウスの人や闇人達の平等に対する考え方も、なるほどなー、一理あるよなーと思う部分もあり。
    今日本は、着実にこの状態に向かっているのではないかと怖くなる!
    すごく面白くて、読む手を止められなかった!!

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    2021年12月11日
  • 錆びる心

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    「OUT」以来の久しぶりの桐野夏生さん。

    短編6篇の登場人物がそれぞれ心の内で悩んだり怒ったり決意したり、その決意が鈍ったり…その辺にいる人間らしくて、各々の話にどっぷりハマりこんで読めた。
    特にジェイソンが気に入った。ジェイソンに変貌した自分を知るにつれ落ち込む主人公。ラスト、妻さえいてくれたらと開き直ったのに、やっぱりジェイソンは妻に対してもジェイソンだった。けど、お酒の失敗でなくても時に誰かのジェイソンに誰でもなり得てしまうんではないだろうか?私だけが知らないだけで…。

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    2021年11月29日
  • 「自由」の危機 ――息苦しさの正体

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    忖度か、同調圧力か、権力の逸脱か。最近、表現の自由が失われつつある風潮がある。26人の研究者、作家、芸術家、ジャーナリストが自由について考察し、声をあげる。

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    2021年11月03日
  • 夜また夜の深い夜

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    面白いとかつまらないとかそういうありきたりな感想ではまとめられない作品。
    残るのは『なんじゃこら〰』って言う心のモヤモヤ、ポッカリとした虚無感みたいなものだけですね。
    衝撃作といえば★5ですが、もう一度読み返したいかといえばもう読みたくないので、★1とも言える作品。
    桐野作品の中ではやや異質だが、特殊な設定の状況に置かれた人間が発揮するたくましさの描き方は、少し『東京島』を彷彿させるところがあった。

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    2021年10月16日
  • 新装版 顔に降りかかる雨

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    ハードすぎないボイルドさの、女性版少し無骨ミステリーでした。もし映画化したとしたら、原作が女性だと思う人は、きっと少ないストーリー。
    暴力的な中にも、女性の意地や、親友の彼氏に惹かれてゆく様子など、繊細で細やかな描写により、話にのめり込む事が出来ました。
    ミステリーとしても、散りばめられた伏線をしっかり回収し、最後の最後に全回収という、スッキリ読める作品だったと思います

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    2021年10月04日
  • 錆びる心

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    これを読んで好きな小説家が増えた。『柔らかな頬』のときも感銘を受けたが今回もそうだった。日常の中でふっと訪れる狂気。それは何も特別ではなく、他者の眼差しで冷ややかに見つめる自分自身も同じ狂気に染まっていた、といった安住のなさがある。こと「安住のなさ」にはいくつか在り方があるのだが桐野夏生の場合のこれは好きだ。別の在り方としては真実で四方八方を追い詰めるやり方だがそもそも真実とは?といった果てのない疑問を残すのだが、『錆びる心』の場合は「何を信じるのか」から出発するので問題の回答権を自身が掌握することができる。答えることのできる問題。そのようなものに挑戦できるのがこの著者の書く小説の真骨頂なのだ

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    2021年08月29日
  • 奴隷小説

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    ネタバレ

    まさに奴隷状態に置かれている人々をモチーフ(?)に書いた短編集。
    設定はさまざま。ボコ・ハラムに誘拐された女子生徒たちと思われるものや、北朝鮮の人民を連想させるもの、何の情報も得られず、閉ざされたコミュニティでひたすら働くしかない炭鉱労働者、江戸時代に国外逃亡した男、など。
    一つだけ現代の日本の女の子(の母)を題材にしたものがあって、「アイドルになりたい」という夢の”奴隷”となり、あらゆることを犠牲にしている、という設定なんだけど、かなりシリアスだった。AKBやら乃木坂なんちゃらやら、次々に現れては消えていくアイドルの、華々しい活躍の陰に、こういう”奴隷化”された人たちがいるんだな…と、ちょっ

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    2021年08月08日
  • 「自由」の危機 ――息苦しさの正体

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    まず著者群の面子を見て、少なくとも既知の名前において、それぞれの発信することばを追いかけている人が多いことを確認。演繹的に、その他の著者についても、かけ離れた立場にはないであろうと判断。あわよくば、今後の人生指針になり得る存在と出会えることも期待。前置き長いけど、そんな考えの下、発売前から気にかけていた本書。日本学術会議任命拒否問題についても、どこかでちゃんと読まなきゃと思っていたけど、その欲求も本書で満たされた。中曽根時代から綿々と受け継がれて今に至るってのも、何とも根深くて嫌な感じ。そのあたりまで遡って、ちゃんと勉強しなきゃ。あとは、己でさえままならない自由の取り扱いを、更に次世代に伝える

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    2021年07月28日
  • 夜の谷を行く

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    連合赤軍事件。その志向したものと結果の、凄惨なまでの乖離。その乖離ゆえに、大衆のゴシップ的好奇心に”消費”され、その志向したものは捨象され、単純化される。その内部にあった葛藤も、多くの元”兵士”たちのその後の人生も、何もかもが。言語化できない何かがそこにある。その、”言語化できないもの” を物語にすることこそが、文学の役割であろう。改めてその思いを強くする。

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    2021年07月23日
  • 「自由」の危機 ――息苦しさの正体

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    26名による日本学術会議任命拒否問題に端を発した、自由への権力の介入に関しての論考集。息苦しさの正体にはさまざまな形での!自由を禁じようとする動きがあったことに改めて気がつく。
    それぞれの立場で見た自由への介入は、幅広いものがあり、私たちの生活がじょじょに狭められてきていることが分かる。
    誰かの問題なのではなく、自分の問題として、さまざまなやり口で介入しようとしてくる権力にはNOを突きつけたい。

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    2021年07月16日
  • 夜の谷を行く

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    読書会のため改めて文庫本を読み直してみたら…
    初読時には創作だと思っていたシチュエーションが丹念な取材、実際の証言に基づいていた事を知り驚愕。満点でも星が足りない‼︎傑作。#八蔵の会

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    2021年07月06日