桐野夏生のレビュー一覧
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1971年頃は、大学のバリケードの撤去が始まり、学生たちの全共闘運動も一段落といった風潮だった。
その後、際立った活動をした一つが連合赤軍だった。
山岳ベースで武闘闘争のために訓練を行っていたグループの集団リンチ事件が明るみとなり、凄惨な状況は社会を騒がした。
その後、官憲から逃走したグループは、あさま山荘に籠って銃撃事件を引き起こす。
そして、これらの事件解決後、日本の過激派と呼ばれる極左運動は完全に地下に潜ることになり、日常社会は穏やかになったとの印象が私には遺っている。
社会問題に対してデモ闘争を繰り返しても、鉄壁の官憲の壁は崩すことができず、国会では強行採決が繰り返されていた時代だ。
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桐野夏生の作品は久しぶりに読んだ。高校生が主人公のものは確かもう一つあったと思うんだが、これは家に帰れない(というか家庭がない)女の子たちが生き延びるために必死に戦う話。女の子たちの生き様にハラハラして、とにかく危ない目に合わずに最後まで小説終わりますようにと願いながら読んだ。フィクションとはわかっていても、主人公が心に残って生き続ける感覚があって、そこが桐野夏生の物語の美しさなのかなと思う。
桐野夏生の描く女はいろいろだけど、だいたい出てくるのがハードボイルドな生き様の女。人を頼れない、いろいろあるから頼りたくない、孤独だけどそれを受け入れて生きていく。それしかできないし、それが自分だから -
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読みおわった日付:2022.3.22 ~本の内容に関すること~ ■本の要点 男とは、女とは。
それぞれを陥れることなく、男女の違う側面を美しい文章で、個人の話として語られる。
愛する男に殺された、黄泉の世界の女の気持ち。
神と人の違い。
■感想、意見
古代の神々が出てくるものの、美しい口語でお話しされるので、読みやすく面白かった。
イザナミ様の胸の内は、人である私には理解しきれないと思うと、それも含めて孤高で悲しく畏怖の念を抱く。
ナミマの無念や解明欲は、理解できる。
女神と人の差を、それぞれの感情を表現して伝えているのは、新鮮で面白かった。
そうだよね、まあわかる、なるほど、と女性とい -
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やっぱりだいすき!ミロシリーズ!
物語が進んでいくテンポがとても好み。主人公のミロの目線で、いろんな事象のちょっとした違和感とか着眼できるストーリーの組み立て方もほんとうに素晴らしい。親切なんだけど、絶妙に読者(少なくともわたしには)には謎解きしきれないから、クライマックスには毎度驚かされる。
1stシリーズの「顔に降りかかる雨」の時からだけど、登場人物の服装や身だしなみに言及することが多くて、その人となりを想像するのに有効だと思うし、時間の経過とかも感じられるからすごく効果的だと思う。そして個人的にファッションに興味あるから嬉しい。笑 著者もそうなのかな?
欲を言えば最後、トモさんにもう一度 -
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これを読んで好きな小説家が増えた。『柔らかな頬』のときも感銘を受けたが今回もそうだった。日常の中でふっと訪れる狂気。それは何も特別ではなく、他者の眼差しで冷ややかに見つめる自分自身も同じ狂気に染まっていた、といった安住のなさがある。こと「安住のなさ」にはいくつか在り方があるのだが桐野夏生の場合のこれは好きだ。別の在り方としては真実で四方八方を追い詰めるやり方だがそもそも真実とは?といった果てのない疑問を残すのだが、『錆びる心』の場合は「何を信じるのか」から出発するので問題の回答権を自身が掌握することができる。答えることのできる問題。そのようなものに挑戦できるのがこの著者の書く小説の真骨頂なのだ
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ネタバレまさに奴隷状態に置かれている人々をモチーフ(?)に書いた短編集。
設定はさまざま。ボコ・ハラムに誘拐された女子生徒たちと思われるものや、北朝鮮の人民を連想させるもの、何の情報も得られず、閉ざされたコミュニティでひたすら働くしかない炭鉱労働者、江戸時代に国外逃亡した男、など。
一つだけ現代の日本の女の子(の母)を題材にしたものがあって、「アイドルになりたい」という夢の”奴隷”となり、あらゆることを犠牲にしている、という設定なんだけど、かなりシリアスだった。AKBやら乃木坂なんちゃらやら、次々に現れては消えていくアイドルの、華々しい活躍の陰に、こういう”奴隷化”された人たちがいるんだな…と、ちょっ -
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まず著者群の面子を見て、少なくとも既知の名前において、それぞれの発信することばを追いかけている人が多いことを確認。演繹的に、その他の著者についても、かけ離れた立場にはないであろうと判断。あわよくば、今後の人生指針になり得る存在と出会えることも期待。前置き長いけど、そんな考えの下、発売前から気にかけていた本書。日本学術会議任命拒否問題についても、どこかでちゃんと読まなきゃと思っていたけど、その欲求も本書で満たされた。中曽根時代から綿々と受け継がれて今に至るってのも、何とも根深くて嫌な感じ。そのあたりまで遡って、ちゃんと勉強しなきゃ。あとは、己でさえままならない自由の取り扱いを、更に次世代に伝える
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