桐野夏生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
バブル期の証券会社で働く3人の男女を中心としたストーリー。
3人の視点で語られていきます。
80年代の半ばとあって、男尊女卑がひどく、男女で職種の区別がはっきりとあり、この30年ほどでかなり変わったんだな〜と思います(証券会社の実態はわからないので、少なからずまだこういう風潮が残っているのかもしれませんが)。
このあとバブルが崩壊するのを知っているだけに、投資に熱狂する日本の雰囲気に危うさを感じてドキドキします。
証券会社の社員をはじめ、酒と女に溺れる怠惰な医者や正体の知れないヤクザなど、バブルの崩壊でどうなってしまうのか、ページをめくる手が止まりません。
上下巻に分かれていますが、文字は大きめなので割とサクッと読めます。 -
Posted by ブクログ
母にオススメされて。
タワマンママ友界隈に限らず、狭い世界では人は人を蹴落として上に上がり続けるしかない。誰も信じられないまま仮面を被り続けて、ふと気づいた時に虚しくなる。本当はもっと世界は広くて、背伸びせずに生きても意外と大丈夫なようにできている。そこで、じゃあ何故自分はこんなに苦しい思いをしているのだろう?と自分を責めてしまいがちだけれど。
世間というものは、自分と重ねすぎてはいけない。言ってしまえば人間もただの動物の一種にすぎないのだから、"絶対にこうでなければならない"なんていう決まりはない。大人だって子供と地続きなのだから、時には失敗することや、人目を気にせず怒ったり泣いたりすることがあったっていい。ちゃんとしていなくたっていい。傷を負っても修復して、納得して、立ち直ることさえできればそれで良いのだ。
狭い世界で上を目指すのが苦でない人は留まるし、新たな環境に身を移す人もいて、とにかく自分で自分を縛らないことが一番大切だ。そして、そんな世界でずっと一緒にいられる人というのはとっても貴重な存在。今の自分の状況とも重なって、なんだかとっても身に沁みた。自分も、一緒にいてくれる周りの人も、より一層大事にしていきたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレバラカへの、これでもかという不運な境遇。人の裏切り、今度こそ信じてもいいのか、と疑心暗鬼になる気持ち。
自分の義父に震災の広告塔とされてしまったり、反対に崇め祭られる対象にされたり。
本当に信じられるのは、一番最初に見つけてくれた決死隊のおじいちゃん。
おじいちゃん、死んでなくてよかった。
『わたしを離さないで』が遺品って、カズオ・イシグロのだと思うけど内容が合いすぎてる。
毒をもられ話せなくなってしまったけど、バラカと心が通じるから話したいことがわかる、そんな心温まるシーンも少しだけあって。
そして健太、康太。
40歳超えて定住するバラカの様子、そして幸せでよかった。
いつ日本がこの様になってもおかしくない。
震災が描かれているので、読むのが辛い人もいるかと思う。読めそうなら、おすすめです。 -
Posted by ブクログ
いやはや、凄かった!
674ページ!夢中で読みました。
ギリギリの世界を生きる若者たちの息苦しさと、容赦ない描写と、しばしば危うさを感じ、苦しみも伴いました。(普通にずっと出てくる沖縄の島の方言、正確には分からないまま読んでいたけど、雰囲気で分かるの)
記憶喪失…って、昔はよくマンガで読んだ気がする。自分が何者なのかさっぱりわからないって、よく考えたら(考えずとも)物凄く恐ろしく怖いことだ。しかも、自分が何者か教えてくれる人が周りに皆無なのだ。何も持たず何も分からず、ただただ生きることだけを考える前半と、あることから記憶が蘇ってくる後半。上手い!
貧困、格差、ニート、請負労働者、バックパッカー、様々な状況の迫力ある展開に圧倒されながら…それでも、それでも、後半に感じていたのは、「不幸の状況がたとえ同じであっても、やはり、本人がそれをどう捉え、どう考え、どう動くか、ということで分かれ道が出来るのではないか?」ということ。主人公と妹の対比が象徴的だ。
しかし、こういう作品を読むと、そんな考えすら、屋根のあるところで住んでいる私だから言えるのだろうか?と思ってしまうほど、辛かった。
この作品、以前から気になりつつ、文庫になったので、おっ!と即買いしました。私にとって、桐野さんは信用度が高い作家さんなので、心配はせずガッツリ読み進め、やっぱり私は桐野さんが好きだ〜と思うのでした。キツイところは沢山あるけれど、桐野さん独特の凄みが、いつも読み応えを感じさせます。平和だと思ってる世界には様々な不幸が溢れているのだと、深く感じたのでした。
印象に残ったところ少し。
ーーーーー
細胞は生まれ変わる。夕方の僕は、朝の僕ではない。
結局、相手にコケにされているとわかっていても、得られない心が欲しくてあがくのが、恋さいが。
僕の負の感情は、この日から一気に、大きな悔いとなって僕を苦しめた。でもそれはやはり憎しみと裏表だった。
作業が辛くて仕方がないのに、何とかノルマを果たすべく頑張る、律儀な僕。作業が好きなのに、ノルマを果たせず、皆の手を煩わせる、怠け者の原口。
人生には、取り返しのつかない日や、その日を境にしてすべてが変わる日、というのが存在する。
愛情は変質する。人は死んでいく。空も海も毎日違い、この世に絶対変わらないものなんてない。
ーーーーー
解説の中でも印象深かった言葉を一つ。
『自己責任というものは存在する。それは、誰かの不幸を他の誰かが代わってあげることはできない、ということだ』
-
Posted by ブクログ
今、この時代に、読むべき物語、
って紹介にありました。私もそう思います。桐野作品の中でも、なんだか凄いものを読んじゃった!という気持ちになる、まさに、ディストピア小説です。 子供欲しさにドバイの赤ん坊市場を訪れる日本人女性、酒と暴力に溺れる日系ブラジル人、絶大な人気を誇る破戒的牧師、フクシマの観光地化を目論む若者集団、胡散臭い謎の葬儀屋、そして放射能警戒区域での犬猫保護ボランティアに志願した老人が見つけた、「ばらか」としか言葉を発さない一人の少女……。
小説内では、震災のため原発4基がすべて爆発した、という設定なので、その後の日本も、今の現実世界とは違う道をたどります。 ありえたかもしれない日本…。
でも実は、今の日本と重なる部分もあります。
いやあ〜〜いつもながら、桐野さんの筆運びは、容赦ない。身も蓋もない。
ああ〜、桐野さんの凄みをどう伝えたらいいんだろう?って思うくらい、凄いお話です。
津波のシーンはもう、恐怖なしでは読めないし、人の運命が一瞬の判断で決まってしまうことの恐ろしさ悲しさは鳥肌がたちました。
赤ちゃんが売られているという状況も、なぜ、そんなことに?というのも辛い。
そして、なんと言っても、今作の中には、きな臭く醜い悪魔のような、いや、まさに悪魔男が出てくるのです。
「こいつ・・酷い、酷すぎる」と何回も呟きながら読んでいました。
一瞬たりとも気がぬけず、運命に翻弄される、薔薇香とその周りをぐるぐる回ってるかのような人々。決して楽しいというお話ではないけれど、もう夢中でページをめくっていました。桐野さんパワー恐るべし。
しかし、私は大好きなので、桐野さんかなり読んでいますが、今作のラストは放り出すような感じとは違うのです。苦しみ闘った薔薇香のラストを、きちんと描いてくれたのが、読後感良かったです。
ハードな小説ですが、機会があったら読んでいただきたい力強い傑作です。 -
Posted by ブクログ
テレビでこの本が紹介され、あらすじが気になって読んだ。
最初から最後まで辛い物語だった。
だけど、現実的にあるような内容で、
大人たちに利用され搾取される少女たちの姿は、
行き場のない少女たちが集まり、共感し、
そこから抜け出したいのに抜け出せないジレンマがあると思った。
余談だけど、
近所の兄弟がうちの子と庭で遊んでいた時、
お昼になって『お母さんがご飯作ってるだろうからご飯食べてからまた遊びにおいで』と言って返したことがある。
その後は来なかった。
いつも兄弟一緒だったが、お母さんに好きな人がいて離婚した。
兄弟は父親に引き取られたが、父親にも好きな人が出来てうまくいかず、兄は高校中退した。
たまたま見つけたお母さんのSNSには、再婚相手との子供を楽しそうに投稿していた。
この『路上のX』の作品と重なり、胸が苦しくなって何度もその兄弟を思った。
この作品は決して想像だけではなく、現実して起こりうるノンフィクションじゃないかと思った。