桐野夏生のレビュー一覧

  • 新装版 顔に降りかかる雨

    Posted by ブクログ

    ハードすぎないボイルドさの、女性版少し無骨ミステリーでした。もし映画化したとしたら、原作が女性だと思う人は、きっと少ないストーリー。
    暴力的な中にも、女性の意地や、親友の彼氏に惹かれてゆく様子など、繊細で細やかな描写により、話にのめり込む事が出来ました。
    ミステリーとしても、散りばめられた伏線をしっかり回収し、最後の最後に全回収という、スッキリ読める作品だったと思います

    0
    2021年10月04日
  • 錆びる心

    Posted by ブクログ

    これを読んで好きな小説家が増えた。『柔らかな頬』のときも感銘を受けたが今回もそうだった。日常の中でふっと訪れる狂気。それは何も特別ではなく、他者の眼差しで冷ややかに見つめる自分自身も同じ狂気に染まっていた、といった安住のなさがある。こと「安住のなさ」にはいくつか在り方があるのだが桐野夏生の場合のこれは好きだ。別の在り方としては真実で四方八方を追い詰めるやり方だがそもそも真実とは?といった果てのない疑問を残すのだが、『錆びる心』の場合は「何を信じるのか」から出発するので問題の回答権を自身が掌握することができる。答えることのできる問題。そのようなものに挑戦できるのがこの著者の書く小説の真骨頂なのだ

    0
    2021年08月29日
  • 奴隷小説

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    まさに奴隷状態に置かれている人々をモチーフ(?)に書いた短編集。
    設定はさまざま。ボコ・ハラムに誘拐された女子生徒たちと思われるものや、北朝鮮の人民を連想させるもの、何の情報も得られず、閉ざされたコミュニティでひたすら働くしかない炭鉱労働者、江戸時代に国外逃亡した男、など。
    一つだけ現代の日本の女の子(の母)を題材にしたものがあって、「アイドルになりたい」という夢の”奴隷”となり、あらゆることを犠牲にしている、という設定なんだけど、かなりシリアスだった。AKBやら乃木坂なんちゃらやら、次々に現れては消えていくアイドルの、華々しい活躍の陰に、こういう”奴隷化”された人たちがいるんだな…と、ちょっ

    0
    2021年08月08日
  • 「自由」の危機 ――息苦しさの正体

    Posted by ブクログ

    まず著者群の面子を見て、少なくとも既知の名前において、それぞれの発信することばを追いかけている人が多いことを確認。演繹的に、その他の著者についても、かけ離れた立場にはないであろうと判断。あわよくば、今後の人生指針になり得る存在と出会えることも期待。前置き長いけど、そんな考えの下、発売前から気にかけていた本書。日本学術会議任命拒否問題についても、どこかでちゃんと読まなきゃと思っていたけど、その欲求も本書で満たされた。中曽根時代から綿々と受け継がれて今に至るってのも、何とも根深くて嫌な感じ。そのあたりまで遡って、ちゃんと勉強しなきゃ。あとは、己でさえままならない自由の取り扱いを、更に次世代に伝える

    0
    2021年07月28日
  • 夜の谷を行く

    Posted by ブクログ

    連合赤軍事件。その志向したものと結果の、凄惨なまでの乖離。その乖離ゆえに、大衆のゴシップ的好奇心に”消費”され、その志向したものは捨象され、単純化される。その内部にあった葛藤も、多くの元”兵士”たちのその後の人生も、何もかもが。言語化できない何かがそこにある。その、”言語化できないもの” を物語にすることこそが、文学の役割であろう。改めてその思いを強くする。

    0
    2021年07月23日
  • 「自由」の危機 ――息苦しさの正体

    Posted by ブクログ

    26名による日本学術会議任命拒否問題に端を発した、自由への権力の介入に関しての論考集。息苦しさの正体にはさまざまな形での!自由を禁じようとする動きがあったことに改めて気がつく。
    それぞれの立場で見た自由への介入は、幅広いものがあり、私たちの生活がじょじょに狭められてきていることが分かる。
    誰かの問題なのではなく、自分の問題として、さまざまなやり口で介入しようとしてくる権力にはNOを突きつけたい。

    0
    2021年07月16日
  • 夜の谷を行く

    Posted by ブクログ


    読書会のため改めて文庫本を読み直してみたら…
    初読時には創作だと思っていたシチュエーションが丹念な取材、実際の証言に基づいていた事を知り驚愕。満点でも星が足りない‼︎傑作。#八蔵の会

    0
    2021年07月06日
  • 女神記

    Posted by ブクログ

    すごい。息を呑む、とはこのことか。とんでもなく面白い。

    女に生まれ、生きる、その苦しみ。

    「絶対に消えるものか。生きる楽しみを謳歌した者に、黄泉の国に追いやられた者の気持ちなどわかるわけがない。これからも怨んで憎んで殺し尽くすのだ。」(イザナミ、p.258)

    これは男として生まれた者に対する怒りなのかもしれない。

    桐野夏生さんが、『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ、2020)の選評で、「この国で女に生まれることは、とても憂鬱なことだ。女たちの憂鬱と絶望を、優れたフィクションで明確に表した才能と心意気は賞賛されるべきだ。小説でなければできないことがあるのだ。」と書いていたことを思い出し

    0
    2021年06月18日
  • 光源

    Posted by ブクログ

    映画制作に関わる人間たちの利害や思わくが激しくぶつかり合いながらも、撮影が進んでいく描写は生々しくも読む者を引っ張っていく。。
    普通の物語ならラストに映画が完成しハッピーエンドとなる所が、何故かふとした食い違いから大破綻を迎えてしまうが、予定調和のラストでは絶対に味わえないこのなんとも言えない不安感こそが、桐野作品の真骨頂なのでは。

    0
    2021年06月12日
  • 水の眠り 灰の夢

    Posted by ブクログ

    まるでチャンドラーを読むかの如き、ハードボイルドなミステリ。とにかく、すべてが格好良い。
    改めて、桐野夏生さんの筆の自在さ、巧みさには圧倒される。こんな作品も書いてしまうのか……本当に凄い。
    昭和38年という時代の明暗に浮き上がる、硬派で、その信念を貫く人間たちの生き様、悲しみ、寂しさ、そして優しさ。こんなふうに生きてみたくなる、憧れを透かしながら読んだ。ハイライトに火を付けて。

    0
    2021年04月03日
  • 水の眠り 灰の夢

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    スピンオフ作品なのを知ったのは読み終えてから。
    ただし、知らなくても読める作品です。

    トップ屋の男が巻き込まれることとなった
    女子高生殺人事件と、
    その時代に日本を混乱に陥れた爆弾魔、草加次郎。

    そこの一部には「触れてはならない」領域も出てきます。
    なぜならば犯罪関与者にいわゆる権力を
    持ったものが出てくるから。

    そして殺人事件にはあるとんでもない秘密が
    絡んでくるから。
    ある種の良くない出来事はその一部で
    本筋に関しては最悪な代物。

    重い内容だけれども
    読みやすかったのはひとえに、著者の文章力なんだろうな。

    0
    2021年03月31日
  • だから荒野

    Posted by ブクログ

    46歳主婦が、自分の誕生日に家族に嫌気がさして、突発的に家出をする。思い立って車で東京から長崎まで!裏切りや出会いがあり、単調な毎日と違う日々。結局は、人間は簡単には変われないけれど、冷め切っていた家族関係はいい方向に向かったんではないか。歯切れよくストレートでとにかく面白い。男の駄目っぷり。読後感も良い。450ページもあっと言う間に読めた。

    0
    2021年03月21日
  • バラカ 下

    Posted by ブクログ

     2016年刊行の長編小説。東日本大震災から5ヶ月後の2011年8月から2015年5月にかけて雑誌連載されている。「読書人」の対談(2010年)の中で本作について、大震災に直面し「小説に書かなければ」との思いで書いたと、作者が語っている。
     物語の最初の方では40歳くらいの独身女性が「男はいらない」が子どもが欲しいと、ドバイのマーケットで1歳半の女の子を買って来るが、ちょうど川上未映子さんの『夏物語』後半を思わせる問題系の話になっている。
     物語に登場する川島なる男性が凄まじく凶悪な人物で、あり得ないような命中率で出会う女性を次々と妊娠させ、不幸を呼び寄せ死へと至らしめる。まったく嫌悪すべき「

    0
    2021年02月26日
  • だから荒野

    Posted by ブクログ

    日常生活で満たされぬ思い、一番理解して欲しい家族に理解されない葛藤などが丁寧な描写で描かれています。

    自分の誕生日に車もろとも家出をする朋美に感情移入しながら最後まで一気に読みました。

    ストーリー的には納得出来ない場面もありましたが(亀田の真意、ころころ変化する息子の言動など) それを持ってしても人間の不可思議な面と捉えたら納得出来る様な気がします。

    「OUT」の様なブラックな内容を読みたい方にはもの足りなさが残るかも知れませんが日常の些細な場面にこそ毒が潜んでいると思うので満足出来る作品でした。

    0
    2021年01月27日
  • グロテスク 上

    購入済み

    何回読んでも

    5回目くらいですが、やっぱり何回読んでも面白い。

    0
    2021年01月25日
  • デンジャラス

    Posted by ブクログ

    私の大好きな桐野夏生が、私の大好きな谷崎潤一郎の生涯を描く。これは読んでみなければ。細雪のモデルとなった妻とその姉妹、そして谷崎本人を、まるでNHKの朝ドラのように描く本作。谷崎の残した文章や周囲の人の記憶といった点を、桐野なりのストーリーとして線にしていく。線はフィクションだが、谷崎自身や彼の作品を理解する補助となり、今すぐ彼の作品を再読したくなる欲望に駆られる。作家としての姿勢を谷崎に語らせて、実は桐野そのものを語らせている手法も面白く、桐野、谷崎両者をより深く堪能することができる。とにかく物語が面白く、久々にページを早くめくりたい気分になった。年末年始に楽しい読書ができた。

    0
    2021年01月01日
  • デンジャラス

    Posted by ブクログ

    読みだした途端に感じる不穏な空気に夢中になった。谷崎潤一郎と妻の松子、松子の妹の重子をめぐる関係。あからさまな肉体関係はないようなのだけれど、もっと複雑で不穏で水面下でうごめいているからこそ、妙に生々しく、スリリング。
    そこに松子の連れ子の青一(戸籍上は重子の息子)の嫁の千萬子が現れて、物語はまさにタイトル通りのデンジャラスなすごみを帯びていく。
    千萬子の賢さ、したたかさと若さ。松子と重子の自負と嫉妬。谷崎に迫る老いと焦燥感。
    この絶妙なブレンドをなせるのも桐野さんならではだと思う。
    今度は谷崎の往復書簡集を読んでみたい。

    0
    2020年12月08日
  • だから荒野

    Posted by ブクログ

    ロードムービー好きにはたまらないロード小説。何故か鈴木京香が思い浮かぶと思ったら数年前にドラマ化されていた。夫婦の立場は逆だが、ふらっと長崎までドライブ行ってみたい。

    0
    2020年11月11日
  • 優しいおとな

    Posted by ブクログ

    上流と下流、光と闇、下の世界にはさらに下があってそれぞれの立場で理想を目指す。日本の中でさえも存在する世界の多重性に驚き、恐ろしく思った。経済の困窮、親しい人間の欠如がこんなにも人の精神を歪めることを知った。

    0
    2020年11月11日
  • 柔らかな頬 上

    購入済み

    一気読み

    ぐいぐい引き込まれました。最初の登場人物を覚えておくことで混乱せずに読み進められます。上下巻揃えて読まれることをお勧めします!

    0
    2020年10月04日