桐野夏生のレビュー一覧

  • 女神記

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    すごい。息を呑む、とはこのことか。とんでもなく面白い。

    女に生まれ、生きる、その苦しみ。

    「絶対に消えるものか。生きる楽しみを謳歌した者に、黄泉の国に追いやられた者の気持ちなどわかるわけがない。これからも怨んで憎んで殺し尽くすのだ。」(イザナミ、p.258)

    これは男として生まれた者に対する怒りなのかもしれない。

    桐野夏生さんが、『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ、2020)の選評で、「この国で女に生まれることは、とても憂鬱なことだ。女たちの憂鬱と絶望を、優れたフィクションで明確に表した才能と心意気は賞賛されるべきだ。小説でなければできないことがあるのだ。」と書いていたことを思い出し

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    2021年06月18日
  • 光源

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    映画制作に関わる人間たちの利害や思わくが激しくぶつかり合いながらも、撮影が進んでいく描写は生々しくも読む者を引っ張っていく。。
    普通の物語ならラストに映画が完成しハッピーエンドとなる所が、何故かふとした食い違いから大破綻を迎えてしまうが、予定調和のラストでは絶対に味わえないこのなんとも言えない不安感こそが、桐野作品の真骨頂なのでは。

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    2021年06月12日
  • 水の眠り 灰の夢

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    まるでチャンドラーを読むかの如き、ハードボイルドなミステリ。とにかく、すべてが格好良い。
    改めて、桐野夏生さんの筆の自在さ、巧みさには圧倒される。こんな作品も書いてしまうのか……本当に凄い。
    昭和38年という時代の明暗に浮き上がる、硬派で、その信念を貫く人間たちの生き様、悲しみ、寂しさ、そして優しさ。こんなふうに生きてみたくなる、憧れを透かしながら読んだ。ハイライトに火を付けて。

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    2021年04月03日
  • 水の眠り 灰の夢

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    ネタバレ

    スピンオフ作品なのを知ったのは読み終えてから。
    ただし、知らなくても読める作品です。

    トップ屋の男が巻き込まれることとなった
    女子高生殺人事件と、
    その時代に日本を混乱に陥れた爆弾魔、草加次郎。

    そこの一部には「触れてはならない」領域も出てきます。
    なぜならば犯罪関与者にいわゆる権力を
    持ったものが出てくるから。

    そして殺人事件にはあるとんでもない秘密が
    絡んでくるから。
    ある種の良くない出来事はその一部で
    本筋に関しては最悪な代物。

    重い内容だけれども
    読みやすかったのはひとえに、著者の文章力なんだろうな。

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    2021年03月31日
  • だから荒野

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    46歳主婦が、自分の誕生日に家族に嫌気がさして、突発的に家出をする。思い立って車で東京から長崎まで!裏切りや出会いがあり、単調な毎日と違う日々。結局は、人間は簡単には変われないけれど、冷め切っていた家族関係はいい方向に向かったんではないか。歯切れよくストレートでとにかく面白い。男の駄目っぷり。読後感も良い。450ページもあっと言う間に読めた。

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    2021年03月21日
  • バラカ 下

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     2016年刊行の長編小説。東日本大震災から5ヶ月後の2011年8月から2015年5月にかけて雑誌連載されている。「読書人」の対談(2010年)の中で本作について、大震災に直面し「小説に書かなければ」との思いで書いたと、作者が語っている。
     物語の最初の方では40歳くらいの独身女性が「男はいらない」が子どもが欲しいと、ドバイのマーケットで1歳半の女の子を買って来るが、ちょうど川上未映子さんの『夏物語』後半を思わせる問題系の話になっている。
     物語に登場する川島なる男性が凄まじく凶悪な人物で、あり得ないような命中率で出会う女性を次々と妊娠させ、不幸を呼び寄せ死へと至らしめる。まったく嫌悪すべき「

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    2021年02月26日
  • だから荒野

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    日常生活で満たされぬ思い、一番理解して欲しい家族に理解されない葛藤などが丁寧な描写で描かれています。

    自分の誕生日に車もろとも家出をする朋美に感情移入しながら最後まで一気に読みました。

    ストーリー的には納得出来ない場面もありましたが(亀田の真意、ころころ変化する息子の言動など) それを持ってしても人間の不可思議な面と捉えたら納得出来る様な気がします。

    「OUT」の様なブラックな内容を読みたい方にはもの足りなさが残るかも知れませんが日常の些細な場面にこそ毒が潜んでいると思うので満足出来る作品でした。

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    2021年01月27日
  • グロテスク 上

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    何回読んでも

    5回目くらいですが、やっぱり何回読んでも面白い。

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    2021年01月25日
  • デンジャラス

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    私の大好きな桐野夏生が、私の大好きな谷崎潤一郎の生涯を描く。これは読んでみなければ。細雪のモデルとなった妻とその姉妹、そして谷崎本人を、まるでNHKの朝ドラのように描く本作。谷崎の残した文章や周囲の人の記憶といった点を、桐野なりのストーリーとして線にしていく。線はフィクションだが、谷崎自身や彼の作品を理解する補助となり、今すぐ彼の作品を再読したくなる欲望に駆られる。作家としての姿勢を谷崎に語らせて、実は桐野そのものを語らせている手法も面白く、桐野、谷崎両者をより深く堪能することができる。とにかく物語が面白く、久々にページを早くめくりたい気分になった。年末年始に楽しい読書ができた。

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    2021年01月01日
  • デンジャラス

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    読みだした途端に感じる不穏な空気に夢中になった。谷崎潤一郎と妻の松子、松子の妹の重子をめぐる関係。あからさまな肉体関係はないようなのだけれど、もっと複雑で不穏で水面下でうごめいているからこそ、妙に生々しく、スリリング。
    そこに松子の連れ子の青一(戸籍上は重子の息子)の嫁の千萬子が現れて、物語はまさにタイトル通りのデンジャラスなすごみを帯びていく。
    千萬子の賢さ、したたかさと若さ。松子と重子の自負と嫉妬。谷崎に迫る老いと焦燥感。
    この絶妙なブレンドをなせるのも桐野さんならではだと思う。
    今度は谷崎の往復書簡集を読んでみたい。

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    2020年12月08日
  • だから荒野

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    ロードムービー好きにはたまらないロード小説。何故か鈴木京香が思い浮かぶと思ったら数年前にドラマ化されていた。夫婦の立場は逆だが、ふらっと長崎までドライブ行ってみたい。

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    2020年11月11日
  • 優しいおとな

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    上流と下流、光と闇、下の世界にはさらに下があってそれぞれの立場で理想を目指す。日本の中でさえも存在する世界の多重性に驚き、恐ろしく思った。経済の困窮、親しい人間の欠如がこんなにも人の精神を歪めることを知った。

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    2020年11月11日
  • 柔らかな頬 上

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    一気読み

    ぐいぐい引き込まれました。最初の登場人物を覚えておくことで混乱せずに読み進められます。上下巻揃えて読まれることをお勧めします!

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    2020年10月04日
  • 水の眠り 灰の夢

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    1964年の東京五輪の前年に起きた実際の事件をモチーフにしたフィクション。迷宮入りの事件をよくもこんなに面白い話に仕上げたものです。ラノベファンや当時の状況を知る由もない読者の興味は惹きづらいかもしれませんが、ケータイのない時代の経験者であれば面白く読めるはず。ま、昭和生まれ向きの話ということですね(笑)。私だって経験はしていない時代のことですが、当時のファッションが目に浮かびそう。

    草加次郎による犯行がピタッと止んだことを思えば、本当に犯人は死んだのかもしれない。想像する楽しさを味わえる、圧巻の読み応え。

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    2020年04月05日
  • 水の眠り 灰の夢

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    昔読んだ記憶はあるものの・・
    すっかり忘れていました
    村善、かっこいい!
    ミロシリーズも読み返したいです

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    2020年01月08日
  • バラカ 上

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    桐野夏生『バラカ 上』集英社文庫。

    登場人物の誰もが異常という何とも奇妙な小説。主人公はバラカなのか、沙羅なのか、それとも悪魔の如き川島なのか……現実と虚構の狭間で背中がざわざわするような嫌な味わいのストーリーが展開する。恐ろしいが、読まずにはいられない。

    ブロローグに描かれた東日本大震災による福島原発事故後の被災地。放射能被害警戒区域でボランティアの豊田老人に保護された謎の少女バラカ……次第に明らかになるバラカの出自と数奇な運命……

    果たして下巻では如何なるストーリーが待ち受けているのか。

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    2019年03月07日
  • 柔らかな頬 上

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    ネタバレ

    『ピクニック・アット・ハンギングロック』を読みたいなーなんて思っていたら、「そういえば、『OUT』を読もうとした時、『柔らかな頬』とどっちを読むか迷ったんだけど、あれ、確か失踪モノだったっけ」と思い出したのがきっかけ。

    そんな“代わりに”読んだ本だったんですけど、これ(上巻)はよかった。
    何がいいって、主要登場人物のカスミ、石山、道弘、典子、どれにも共感できちゃったのがよかったんでしょうね。
    ホントそれぞれ、「あー、わかる…」って感じ。

    といっても実際のところ、カスミはわからないんだろうなぁー(ていうか、実際に会ったらお互い大っ嫌い!ってタイプだと思うw)。
    ただ、“ここ(今)ではないどこ

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    2019年02月02日
  • 新装版 天使に見捨てられた夜

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    アダルトビデオでレイプされた女性を探すところからスタートするミステリー。
    桐野夏生さんの著作はあまり読んだことが無かったが、限られた文字数で構成も非常に練られている。終盤の謎解きについてもバランスが秀逸であり、テンポ良く読み進められた。どうやらシリーズものの2作目らしく、機会があれば1作目も手に取ってみたい。

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    2018年12月30日
  • 奴隷小説

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    すっと書いてある分、そこらのちょっとしたエログロより大分きつかった。一話につき30ページでこれだけ伝えられる表現力。遙かなる高み。「神様男」が身近には一番辛い、私はこういう人達を知っている。

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    2018年12月24日
  • 夜また夜の深い夜

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    ネタバレ

    第1部はナポリで母と二人暮らしの国籍を持たない18歳の少女マイコから七海への9通の手紙です。
    七海とは一体誰なのか。そしてこれはどういう話なのかと思いました。
    マイコは母に内緒でMANGA CAFEのシュンの店に毎日、通うようになります。
    しかし、マイコはヤマザキという日本人男性から逃れるため逃げます。
    そして、同じような少女、エリスとアナと知り合い、マイコは男装して、三人で逃避行する生活をはじめます。

    第2部は、七海への手紙のかわりに書いたマイコの手記です。私の奇妙な人生を記録したかったとマイコは語ります。
    七海から初めての返事が届きます。七海も海外に暮らす少女だということが、わかります。

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    2018年10月20日