桐野夏生のレビュー一覧
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すごい。息を呑む、とはこのことか。とんでもなく面白い。
女に生まれ、生きる、その苦しみ。
「絶対に消えるものか。生きる楽しみを謳歌した者に、黄泉の国に追いやられた者の気持ちなどわかるわけがない。これからも怨んで憎んで殺し尽くすのだ。」(イザナミ、p.258)
これは男として生まれた者に対する怒りなのかもしれない。
桐野夏生さんが、『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ、2020)の選評で、「この国で女に生まれることは、とても憂鬱なことだ。女たちの憂鬱と絶望を、優れたフィクションで明確に表した才能と心意気は賞賛されるべきだ。小説でなければできないことがあるのだ。」と書いていたことを思い出し -
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2016年刊行の長編小説。東日本大震災から5ヶ月後の2011年8月から2015年5月にかけて雑誌連載されている。「読書人」の対談(2010年)の中で本作について、大震災に直面し「小説に書かなければ」との思いで書いたと、作者が語っている。
物語の最初の方では40歳くらいの独身女性が「男はいらない」が子どもが欲しいと、ドバイのマーケットで1歳半の女の子を買って来るが、ちょうど川上未映子さんの『夏物語』後半を思わせる問題系の話になっている。
物語に登場する川島なる男性が凄まじく凶悪な人物で、あり得ないような命中率で出会う女性を次々と妊娠させ、不幸を呼び寄せ死へと至らしめる。まったく嫌悪すべき「 -
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私の大好きな桐野夏生が、私の大好きな谷崎潤一郎の生涯を描く。これは読んでみなければ。細雪のモデルとなった妻とその姉妹、そして谷崎本人を、まるでNHKの朝ドラのように描く本作。谷崎の残した文章や周囲の人の記憶といった点を、桐野なりのストーリーとして線にしていく。線はフィクションだが、谷崎自身や彼の作品を理解する補助となり、今すぐ彼の作品を再読したくなる欲望に駆られる。作家としての姿勢を谷崎に語らせて、実は桐野そのものを語らせている手法も面白く、桐野、谷崎両者をより深く堪能することができる。とにかく物語が面白く、久々にページを早くめくりたい気分になった。年末年始に楽しい読書ができた。
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ネタバレ『ピクニック・アット・ハンギングロック』を読みたいなーなんて思っていたら、「そういえば、『OUT』を読もうとした時、『柔らかな頬』とどっちを読むか迷ったんだけど、あれ、確か失踪モノだったっけ」と思い出したのがきっかけ。
そんな“代わりに”読んだ本だったんですけど、これ(上巻)はよかった。
何がいいって、主要登場人物のカスミ、石山、道弘、典子、どれにも共感できちゃったのがよかったんでしょうね。
ホントそれぞれ、「あー、わかる…」って感じ。
といっても実際のところ、カスミはわからないんだろうなぁー(ていうか、実際に会ったらお互い大っ嫌い!ってタイプだと思うw)。
ただ、“ここ(今)ではないどこ -
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ネタバレ第1部はナポリで母と二人暮らしの国籍を持たない18歳の少女マイコから七海への9通の手紙です。
七海とは一体誰なのか。そしてこれはどういう話なのかと思いました。
マイコは母に内緒でMANGA CAFEのシュンの店に毎日、通うようになります。
しかし、マイコはヤマザキという日本人男性から逃れるため逃げます。
そして、同じような少女、エリスとアナと知り合い、マイコは男装して、三人で逃避行する生活をはじめます。
第2部は、七海への手紙のかわりに書いたマイコの手記です。私の奇妙な人生を記録したかったとマイコは語ります。
七海から初めての返事が届きます。七海も海外に暮らす少女だということが、わかります。