あらすじ
光り輝く、夜のあたしを見てくれ!
女たちの孤独な闘いを描いた最高傑作。
名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。
「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」
悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。
ユリコの姉である“わたし”は二人を激しく憎み、陥れようとする。
圧倒的な筆致で現代女性の生を描き切った、桐野文学の金字塔。
解説・斎藤美奈子
※この電子書籍は2003年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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わたし
ユリコ
佐藤和恵
野中
水沢
ジョンソン
マサミ…バサミ
カール
イボンヌ
アンリ
チャン
ミツル
花ちゃん
ウルスラ
木島先生…木島高国
キジマ…木島高志
杢美…モック
中西
キリン娘
安治
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怪物的な美貌でニンフォマニアのユリコを妹つ持つ「わたし」を主人公にした小説。「わたし」の語りが明晰で観察眼も優れていて良い。語り手は、かくあってほしい。後半に近づくにつれ、人間関係がドロドロしてきて俄然面白くなってきました。下巻も是非読みます。
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すげえかった…一気に読み終わった今、頭がぐわんぐわんしている。
このあいだ読んだ、田中美津さんの「かけがえのない、大したことのない私」の中で本作品について言及しているところがあって興味を持った。自分はこの事件が起きたときしっかり小学生だったはずだけど、全然覚えていなかったので、事件自体は知っていたけど、もっと昔のことだと思っていた。97年、私の感覚では意外と最近だ。この作品の中では2000年になっている。
今、この年齢でこの本を読んだことにも宿命めいたものを感じる。私は30代なかばを過ぎていて、この4人とはほとんど同世代だ。そして私は最近、自分の目の下の濃くなってきたクマとか、昔より丸くなったなーと思う顔とか、笑っていないと自然と下がってくるほっぺたなんかを鏡の中で見つけては「あーあ」と思っていたのだ。自分から何かが失われていくようで怖かった。一言でいうと「若さ」のようなものだと思うのだけど、でもそれだけじゃない気がする。「若く見えるね」とか、本当に時々だけど「きれいだね」と言ってもらえる自分とか、鏡をみて今日はいい感じだなと張り切れる自分とか。それはルッキズムと呼ばれるものなのかもしれない。自分はそんなものには踊らされないと思っていたけど、この本を読んでいて、私の中にも和恵がいることをはっきりと悟った。そしてそれがきっと、私一人の目じゃなくていわゆる「世間」「社会」の目も一緒になってつくっている和恵なのだと思った。
なんて生きづらい世の中なんだろう。そんなこと気にしなければいいだけだから、その生きづらさは結局自分がつくっているといえばそうなんだろうけど、でも、じゃあそれって自己責任だと言われると反論したくなる気持ちもある。あんたが弱いだけだと言われたら、強さを求めてくる社会ってなんなんだと机をバーンッと叩きたい気持ちになる。
自分だけに集中して、自由になることが、どうしてこんなに難しい世界なんだろう、人間なんだろう。誰のせいでもない自分のせいなのに、自分のせいだけにはしたくない気持ちがまだある。
とにかくすごい本だった。桐野夏生さんの本は、なんとなくそのイメージから怖くて今まであまり手を出してこなかったのだけど、それはあたっていた。こわい。そして読み切るのにすごく体力と気力がいる。それから一気読みできる時間も必要だ。
たくさんの女の人が、たくさん大変な目に遭って、たくさん辛い思いをして、それで今私たちの手に「幸福だ」と思えるいくつかの瞬間があることを、忘れてはいけないと思った。和恵たちがいなければ、今のこの不完全な自由ですら感じられれている私はいなかったかもしれないのだ。
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登場人物の各々の視点が少しずつ重なり合う事で、真実が見えてきたり、各々の歪みが際立ってくる感じが気持ち悪くて最高だった。
肉体的な美醜に翻弄される女子高生たちは苦しいが故に残酷でもある。男に生まれて良かったと思うこともあるが、最近は男性も翻弄されているかもしれない。
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名門女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。
「わたし」とユリコは日本人の母とスイス人の父の間に生まれた。母に似た凡庸な容姿の「わたし」に比べ、完璧な美少女の妹のユリコ。家族を嫌う「わたし」は受験しQ女子高に入り、そこで佐藤和恵たち級友と、一見平穏な日々を送っていた。ところが両親と共にスイスに行ったユリコが、母の自殺により「帰国子女」として学園に転校してくる。悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。「わたし」は二人を激しく憎み、陥れようとする。
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女は常に他社から評価されている視線を意識して生きている
そのことがたまらなく苦しくて苛立つのに、その意識をどうしても拭い去れないどうしようもなさと、でもそこに抗って生きたいという相反する気持ちを残酷に描いた傑作だと思った
Posted by ブクログ
実際の事件を題材にした小説とのことで、色眼鏡で読んでしまうのでは.....と自分で自分が心配だったのだが、全くそんなこと気にも止まらないほどおもしろい。
性を売るユリコ、そのユリコを軽蔑しているようで気にし続ける姉、なぜか売春を得意げに語る和恵、そして優等生のミツル。4人の女達のそれぞれの終着点はどこなのか。
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おもろい!!!!
これは湊かなえ好きにはたまらんドロドロさ( ̄∇ ̄)
こーいうのを見てると、男の方が人間関係はやりやすそうって思う笑
ユリコ以外の全員に共通する感情が、周囲に勝ちたい、負けたくないということ。
無駄なプライドは身を滅ぼすことが改めて分かる(ᐡ⸝⸝o̴̶̷᷄ ·̫ o̴̶̷̥᷅⸝⸝ᐡ)
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あるツイートで腐女子は読むべき課題図書であると書いてあり、いずれ読まなくてはなぁと思いながらも機会がなかったのですがようやく読み始めました。まだ上巻しか読んでないし、元ネタの事件のことも知らないのでどのようなストーリーが展開していくのか楽しみです。
語り手である「わたし」が、いわゆる信用できない語り手なので、物語のどこまでが真実でどこまでが嘘なのかまったくわからない中での読書はちょっとだけしんどいです。
しかもこの語り手、底意地の悪さが半端じゃないので、読んでいてすごく嫌な気持ちになります。よくぞここまでひどい性格や思考でいられるな、と思いつつ、ちょっとだけ似ている人を知っていて(学生の頃の友人)、程度はあれどこういう悪意に覚えはあるな、とは思いました。
和恵のある種純粋で真っ直ぐな姿を滑稽で無知幼稚と描写する語り手の悪意には我が身を顧みてちょっと傷ついたりもしました。
しかし、お金持ちの内部性たちを、豊かさは淫靡であると表現したのには言い得て妙だなと思いました。
豊かさは淫らで享楽的。すごいいい表現だと思う。
女の意地悪さ、プライド、無知、思い上がり、自意識過剰、いろんな悪いものを詰め込んだみたいな小説って印象の上巻でした。(語り手の悪意を通しているからこそ際立っているのかもしれないけれど)
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登場人物それぞれに共感するところがあり、一人の人間のある部分をデフォルメして各人物が出来ているのかなと思いながら面白く読み進めることが出来た。
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初桐野夏生さん作品。
にんげんはグロテスクな生き物だ、と思う。でもそのグロテスクを裏とすれば、反面美しい表の瞬間だっていくつもあるはず。でもこの小説ではそんな瞬間は一切描かれないので、かなり読むのに困憊した。悪意悪意悪意にまみれながら、それでもこの人たちの結末を知りたいと下巻を読むであろう私もなんだかグロテスクな気がする。
「ミツルはこの学校の中で生まれた突然変異なのです。人並み外れた良心と優しさを持った生物。それはきっと、心の中に人より大きな悪魔がいるからなのです。ミツルの中の悪魔が、良心と優しさを育てたのです。」
「姉は私が化け物だと幼い頃から苛めてきたが、私には美しい外見などどうでもよかった。それより、姉のように母に似ていて、血が繋がっていることを目で確認できる方が重要だった。」
「私の中の淫蕩な血は、いずれ私を滅ぼす。そんな予感がして、私は沈黙した。」
「皆、私の主体性などとうでもよかったのだ。
私は他人と一緒の時は主体性を押し潰す訓練をとっくに始めていたのだ。まるで玩具の人形のような私を、誰が心の底から大事に思ってくれるというのだろうか。」
「私は、この学校では子供の振りをしてやって行こうと決心した。
だが、私には育ちのよさが与えた特権的好奇心や無遠慮さはない。
私は自分を欲する人間によって、生きている実感を得ている存在なのだから。」
「だって、すべての原因は、その人間を形作っている核とでもいうべきものに存するのではないでしょうか。
変貌する原因は自身にあったのだと思いますよ。」
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まだ上しか読んでいませんのでなんとも言えませんが
何か瞬発的におおきな驚きや、面白い!と感じる部分はありません。
ジトジトした描かれていることの面白みはとても感じます。
Posted by ブクログ
自分が理解出来ないことへの不安や恐ろしさが嫉妬や差別を生んでいくのだと感じた。
人間は自分が今までされてきたことを無意識的に、周囲の人にしていく生き物なのかもしれないと思った。
なので、核を作る途中にある子供の頃の体験が自身に多大な影響をあたえるのだろう。無力反応。
モノとして扱われてきたから、周囲も自分もモノとしてしか扱えないユリコ
希少価値や理由がないと、自分も周囲も存在するべきではないと考える和子
家庭のどこにも休める場所がない人はどうやって自身の核を作れば良いのだろうか。
普通に生きることって、物凄く難しいのかもしれない。
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桐野さん初めての作品ですが、おもしろすぎてこちらの上下巻読み終わったら違う作品も読んでみたいと思いました。主人公?というか語り手に共感の嵐でした。面白かったです。
Posted by ブクログ
妹のユリコと高校の友達の和恵が娼婦になり殺されるという結末から始まる。
『わたし』の一人語りで、Q女子高の時代から始まる。
とにかく怪物級の美しさを持つユリコへの数々のいじわる、和恵が壊れるよう間違ったアドバイスをして様子を見て笑う、『わたし』の腹黒さ、嫌らしさ。
女子校の内部生、外部生との越えられない壁、努力でもどうにもならない部分を明確にあぶり出している。
『わたし』、和恵が1961年生まれユリコが1962年生まれなので、時代的に古いが今も昔も大差ないのだと思う。
下巻に続く…
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読むのに体力を消耗する作品。
こんなに人間の醜さを文で書き連ねられるのか、と驚かされた。
姉と妹の言い分が違うのも本人と他人の認識の違いからくるものなのかな、でも姉の性格の悪さは読んでて胸が苦しかった。
Posted by ブクログ
名門女子高校に通う女子高校生たちの悪意、嫉妬、陰謀が複雑に絡み合うピカレスク小説。主人公だけじゃなく、登場する人物全てがエグくて、思いやりとか、善行なんてことをこれっぽっちも考えない。
娼婦となるべく生まれてきた美女、ユリコと彼女を心底、憎み続ける姉のマサミの手記に記される日常は食うか食われるかのグロテスクな世界。少女たちは自らの性、知、美を駆使し、他人を踏み台にして欲望を満たそうとする。
彼女たちの努力は認めるけど、どう考えても破滅に向かっているとしか思えない。ユリコの死はすでに示されているが、それは彼女にとって、ようやくの安らぎだろう。
そんな汚れた世界は下巻に続く。
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東電OLモデル人物の心理描写がとにかく圧巻。これが真実だろうと思わずにいられない。周囲の架空人物は邪魔にすら思えたが人物造形もラストも物凄い!桐野ワールド恐るべし。
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主に女性の中に存在する、「他人を攻撃したい気持ち」がとても強い主人公だった。
実生活で、特に親しい間柄の女友達との会話において「なぜこの人は今私を攻撃するような言葉を使ったのだろう?」と思うことがよくある。反対に、「この人の嫌な部分をこの人に伝えたい」と思った時に、それを察させるようなまわりくどい意地悪を言ってしまうことがある。
このような意地悪を含んだ会話をしている時、会話と同時並行して、サイレント口喧嘩が行われているようで、私はこの時間がとても嫌いである。そして、それをしてしまうまでの心の動きが細かく描写されており、興味深かった。
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【2022年34冊目】
初っ端から主人公である語り部の"わたし"の癖の強さに慄くんですけど、どんどんと本当に狂っているのは誰か?みたいな流れになってきて最終的には全員が全員狂っているのだろう、みたいなところで上巻が終わります。否、ある側面から見たある人はまともなのかもしれないし、まともとは何か、といった話であるのかもしれません。どうしてこのタイトルなのか、物語の行き着く先はどこなのか、下巻を読むのが楽しみです。
Posted by ブクログ
誰を信じたらいいのか分らない
誰の描写を読んでも鬱屈とした気分になってしまう、なのに読み休めない
最後まで名前の出てこない わたし が不気味で不憫で、嫌だ嫌だと思いながらも、わたし にも 和恵にも共感できる部分がある
初めて読んだ桐野さん作品
Posted by ブクログ
桐野夏生さんの作品、初読みです。2025年初作家32人目です。
レビューや本紹介動画を見てて思っていた内容と違った。もっとミステリかと思っていたけど‥。悪意ある女の半生。面白くないわけじゃないけど‥。
下巻を読んでまた、感想書きます。
Posted by ブクログ
東電OL殺人事件がモデルと聞いてたけど上巻は女子高編って感じか。にしても、語り手である「わたし」が性格悪すぎる。妹ユリコに対するコンプレックスもあるけど、悪意に満ちすぎている。不快。不愉快。なのに、ページをめくるのがやめられない。性欲が強すぎるユリコ、不器用な和恵。この3人の関係をグロテスクとするのだろうか。それとも、3人の生き様なのか。下巻を読み終えればわかるのだろうか。
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笑っちゃうくらいドロドロしてた。東電OL事件とオウム事件をモチーフにした、女子高生や女性の黒さを出しまくった小説。モデルの高校に訴えられないか??と心配になるほど。ラストは個人的には残念だったけど。
あとは、医者の同級生の出所後の言葉が響くな…勉強一番のアイデンティティしかないとキツイ、ていうのを見事に言語化してた。
Posted by ブクログ
女の悪意や嫉妬といったダークな感情がまとわりつき、読み手の内にある同じ感情を煽り、同意を求めてくるような作品。
絶望感ではなく、人間の醜さを味わう感覚が強い。一定のテンポで進み、明確な山場はないものの、なぜか強く心に残る。下巻へつづく。
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主人公ユリコミチル和恵4人の女がそれぞれに歪んでおりひたすら陰鬱に悪意に満ちた告白が続く。
これが人間だなという圧倒的な心理描写とそれゆえに立場が似ていたり似たような経験してるとめちゃくちゃ引き摺り込まれてめっちゃ落ち込む。
迫力も精緻さも間違いなく一級品なんだがそれ故にメンタルへの負荷がすごいので⭐︎5にできなかった……
和恵の壊れ方がかなり生々しくて元になった事件の人はどうだったんだろうなと考えたりするし、それを狙った本なんだと思う。
Posted by ブクログ
主人公の性格の悪さがここまでいくと清々しい。
娼婦という職業を生物教師が「あなたの愛する人を傷つけてしまうし、あなた自身も自分のことを愛せなくなる」と言っているシーンが印象に残った。