桐野夏生のレビュー一覧
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連合赤軍で活動していた西田啓子は何故「夜の谷をを行く」ことになったのか?
刑期を終え、ひとり目立たぬ様に暮らしてきた彼女は告白する。「確かに、あたしは自分のやってきたことは、どこかで道を間違えたんだと思う。でも、出発点は間違っていなかったと思う」と。
連合赤軍のトップだった人たちも無惨にリンチで殺されていった人たちもきっとそうであったのだろう。
まだ自分が小学生だった頃の事件。
おかしな人たちの起こした無惨な事件てしてしか見ていなかったが、この作品を読んで、彼らの言葉も読んでみたいと思った。
主人公の啓子は親にも死なれ、妹の和子ともあまり関係が良くなく、過去を知られた姪からも拒否される。
そんな彼女の過去を知りたいと近づく若いライター古市。
啓子の事を記事にはしないと言いながら、何故彼女の話を聞きたがるのか?
それは最後の1ページ、彼女が頑なに守り通してきた秘密から彼女を解放し、物語にひと筋の光を投げかける。暗く苦しい物語から解放された。 -
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桐野夏生『インドラネット』角川文庫。
タイトルの『インドラネット』とはインドラの網ということで、物語が急展開する後半で説明がある。全く予備知識も無く読み始めたのだが、予測不能の展開と驚愕の結末に一気読みだった。読み終えてみれば、物凄く練られた小説だと非常に感心した。
東南アジア独特の熱量、海外ならではの平和ボケした日本人が遭遇する危険的状況が桐野夏生の手により、見事に描かれている。
年収260万円で働く非正規雇用の25歳になる八目晃はゲーム三昧の無為な生活を行なっていた。
ある日、晃は実家の母親から近所に住む仲の良かった同級生の野々宮空知の父親が亡くなったという連絡があり、葬儀に顔を出す。空知はモデルのような風貌とカリスマ性を合わせ持ち、何故か平凡でクラスでも不人気な晃だけを特別扱いしてくれたのだ。
晃はその葬儀に息子の空知と空知の妹の美貌の2人の姉妹の姿が無かったことに驚く。聞けば、空知も2人の姉妹も東南アジアに向かい、消息不明になっているらしい。
晃は葬儀に出席していた安井と名乗る男から資金を出すので、カンボジアで消息を絶った空知と2人の姉妹の行方を探して欲しいと頼まれる。非正規雇用に嫌気を感じていた晃は仕事を辞め、カンボジアへと向かう。
海外旅行は初めてで右も左も解らない晃に吉見というバックパッカーの女性が近付き、格安のドミトリーを紹介すると言われ、連れて行かれたドミトリーハウスで初日の晩に30万円を盗まれ、途方に暮れる。
晃はカンボジアで同級生の空知と2人の姉妹を見付け出すことが出来るのか。3人がカンボジアに留まり、帰国しない理由は一体何だったのか。
本体価格860円
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全員の言い分がわかる気がするからこそ、代理母がうまくいくかは運や縁になる気がした一冊。本書では、産まれてからうまく噛み合わなかったので、ああいうラストになってしまった。言い方は悪いですが、全員初めてだったのでどういう気持ちになるかまったくわからなかったのではないでしょうか。しいて言うならその気持ちの動きをフォローできなかったコーディネーターのミスなのかもと思いました。
わたしが日頃思っていることがあります。子供を産み育てるときに責任が伴うのは当たり前。でも、その責任が重くなりすぎると誰も持ちたくなくなる。何でも個人の責任、親の責任と言いたくなってしまうような世の中の流れの中で子を持つことはとても難しいものだと思いました。
産めない女性とは?子を持つとは?代理母とは?男性とは?取引とは?なんてことをずっと考えさせられる本です。
■本書全体に大きくのしかかる貧困
「全部貧困のせいだ」って言いたくなるほど、すべての根源となっているように思いました。どの場面でも、その行動をするのは「お金」だよね?と思わされました。一生懸命でも適当でもずっと同じ賃金。かといって、会社も派遣さんを正社員登用するほどのお金はない。人材不足と言われつつ派遣制度は減らない。田舎に戻ったら仕事は限られる。でも、働かないと生活できない。その一方で・・と考え始めるときりがなく、重かったです。
■りりこの潔さ
本書のなかの清涼感あふれる人物りりこ。意見がはっきりしていて清々しい印象を持ちました。意外な過去が出てくるかと思いきや、出てこなかったところが、より清々しさを引き立てました。彼女の仕事の描写は、はじめはドキッとすると思いますが、「快楽のみであえてその先の苦しみは書いてない」など話の中でいいアクセントとなっていました。
■リキのこの先・・
心配しかありませんでした。解説では「清々しさ」という表現でラストシーンを表現されていましたが。確かにわたしも一瞬その感覚を覚えました。赤ちゃんって不思議と「かわいい。守りたい」と思わせてしまうんです。それが赤ちゃんの生存戦略とも言われています。しかし、子供を育てる親として心配してしまうのです。ひとりで初めて子育てをする困難さを。「かわいい。守りたい」と感じなくなった先のことを。特にリキは今までの行動からして危なっかしいところがあったのもそう思わされます。元手があるとはいえ、リキにはラストシーンの時点で収入の手立てがありません。住むところも。体調も万全でない。親も手伝えない。資格もなくて子持ち。繰り返されるってこういうことなのではと思ってしまいます。 -
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読みやすく、引き込まれて、一気に読みました。
水矢子は、滞納でアパートを追い出され、3ヶ月路上を彷徨っている。
井之頭公園の中で、夜を過ごす場所に決めて座ってベンチ。
そこに、昔勤めていた銀行で、同期入社して親しかった佳那が現れた。佳那に、同期で職場結婚した望月昭平は、元気か?と尋ねると、「うん」と。
そこから、一気に舞台は、何年か前の福岡へ戻って、物語が始まる。
3人は、東京へ出るという野心を胸に、日々葛藤していた。
第一章バブル
水矢子、佳那、望月の3人を中心に、
バブル期に、証券会社で起こっていたであろう物語が紡がれていく。
危うさを秘めながら、富と名声を得て行くが…
第二章フィーバー
NTT株の白熱ぶりが描かれている。
望月は、敏腕証券マンに変貌し、太い顧客を求めて、ヤクザとも繋がりをもち…
どうなるのでしょう? -
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ネタバレ30年前の作品ではあるけど、無駄な読書をしたくなくて、桐野夏生を選んだ。
作品の舞台はオリンピックの前年。切ないほどの昭和の描写に、何度も本を置き、アイビールックや古いフランス映画、バイタリスの匂いを脳裡に蘇らせる作業は甘やかな悦びがあった。
最後になって、ああ、これは村野ミロの義父の話なんだ、とわかった。いろんなレビューに書かれているようだったけど、そこはチェックしてなかったので、わかった時は嬉しかった。
「顔に降りかかる雨」と「天使に見捨てられた夜」の再読をしようと思うと少し嬉しい。また、未読の「ダーク」も楽しみになった。 -
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ネタバレケチンボのにこにしては、珍しい正規購入本。だって、上巻の帯ウラで
「桐野夏生が描く当世地獄絵図(めぐり)」などと煽られたら、ねぇ。
上巻の表紙は小島佳那。1986年入社の証券会社のフロントレディ。いわゆるバブルでアゲアゲだった時代の話です。萬三証券という中堅どころの証券会社の福岡支店を舞台に、佳那、水矢子、望月という3人の若者を軸に物語はすすみます。佳那は短大卒、望月は大卒男子、水矢子は高卒。貧しい家庭の出身の彼らは、当時のバブルの勢いを得て、自分の力だけで生きるための資力を得ようとするのですが、果たして。
当時の証券業界のデタラメっぷりが、垣間見えます。ネットなんて、影も形もなく、どぶ板と称されるような飛び込み営業で証券を売る。売る相手にも知識なんかなく、いいように転がして、ノルマ達成の道具にするだけ。モラルゼロ。こんな風潮を「男の世界」と称して、もっともっとと煽り立てる。佳那はこんな世界で、なんとか頑張っていこうとするのですが、なまじ美貌だったために、そこにつけ込まれてしまう。姉の交際相手で富裕な医師の須藤に枕営業を持ちかけられ、危うく逃げた佳那でしたが、同期の望月はそのことを利用して須藤に取り入り、のし上がる足掛かりにしていく。福岡支店トップの売り上げを達成し、イケイケの望月。その望月に望まれて、婚約者となった佳那。このまま順風満帆、夢の海外生活も射程内か、と思われたのですが。NTT株の放出を契機にできた山鼻とのつながりが、望月と佳那の将来に暗い影を落とす。以下、下巻へ。
NTT株の放出とか、なんか懐かしいです。貧乏育ちだったにこには、縁もゆかりもない話でしたが。この本を読むと、なくて幸いだったな、って思います。