桐野夏生のレビュー一覧
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ネタバレバラカへの、これでもかという不運な境遇。人の裏切り、今度こそ信じてもいいのか、と疑心暗鬼になる気持ち。
自分の義父に震災の広告塔とされてしまったり、反対に崇め祭られる対象にされたり。
本当に信じられるのは、一番最初に見つけてくれた決死隊のおじいちゃん。
おじいちゃん、死んでなくてよかった。
『わたしを離さないで』が遺品って、カズオ・イシグロのだと思うけど内容が合いすぎてる。
毒をもられ話せなくなってしまったけど、バラカと心が通じるから話したいことがわかる、そんな心温まるシーンも少しだけあって。
そして健太、康太。
40歳超えて定住するバラカの様子、そして幸せでよかった。
いつ日本がこの様になっ -
Posted by ブクログ
いやはや、凄かった!
674ページ!夢中で読みました。
ギリギリの世界を生きる若者たちの息苦しさと、容赦ない描写と、しばしば危うさを感じ、苦しみも伴いました。(普通にずっと出てくる沖縄の島の方言、正確には分からないまま読んでいたけど、雰囲気で分かるの)
記憶喪失…って、昔はよくマンガで読んだ気がする。自分が何者なのかさっぱりわからないって、よく考えたら(考えずとも)物凄く恐ろしく怖いことだ。しかも、自分が何者か教えてくれる人が周りに皆無なのだ。何も持たず何も分からず、ただただ生きることだけを考える前半と、あることから記憶が蘇ってくる後半。上手い!
貧困、格差、ニート、請負労働者、バックパッカ -
Posted by ブクログ
今、この時代に、読むべき物語、
って紹介にありました。私もそう思います。桐野作品の中でも、なんだか凄いものを読んじゃった!という気持ちになる、まさに、ディストピア小説です。 子供欲しさにドバイの赤ん坊市場を訪れる日本人女性、酒と暴力に溺れる日系ブラジル人、絶大な人気を誇る破戒的牧師、フクシマの観光地化を目論む若者集団、胡散臭い謎の葬儀屋、そして放射能警戒区域での犬猫保護ボランティアに志願した老人が見つけた、「ばらか」としか言葉を発さない一人の少女……。
小説内では、震災のため原発4基がすべて爆発した、という設定なので、その後の日本も、今の現実世界とは違う道をたどります。 ありえたかもしれな -
Posted by ブクログ
テレビでこの本が紹介され、あらすじが気になって読んだ。
最初から最後まで辛い物語だった。
だけど、現実的にあるような内容で、
大人たちに利用され搾取される少女たちの姿は、
行き場のない少女たちが集まり、共感し、
そこから抜け出したいのに抜け出せないジレンマがあると思った。
余談だけど、
近所の兄弟がうちの子と庭で遊んでいた時、
お昼になって『お母さんがご飯作ってるだろうからご飯食べてからまた遊びにおいで』と言って返したことがある。
その後は来なかった。
いつも兄弟一緒だったが、お母さんに好きな人がいて離婚した。
兄弟は父親に引き取られたが、父親にも好きな人が出来てうまくいかず、兄は高校中退し -
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「細雪」のモデルとなった谷崎潤一郎の妻、松子とその妹、重子、松子の前の夫との間にできた息子(重子の養子)の嫁・千萬子が小説家谷崎の家庭生活と創造生活を全てを司る様子が、重子の1人語りとてもリアルに表現されていて、これは重子の肉声なんじゃないかとさえ思ってしまった。
人気作家のわがままに翻弄されているのは結局のところ誰なのかわからない。最後、老い始めた谷崎を平伏させてしまうような重子なのか、それとも実は谷崎が重子に自分を足蹴にするように仕向けているのか。小説が現実を模しているのか、現実が小説を真似ているのか。
女たちの自分の存在意義を賭けた駆け引きや嫉妬などが繰り広げられるのだが、そこで生まれ -
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神の恩寵という意味のバラカ。飲んだくれで自己中心的な父親と神にすがる母親に連れられて行ったドバイで母親を失い、人身売買組織に売られ、そこを訪れた日本人の女に買われ、最後は原発事故を起こしたフクシマで行方不明になり、お爺さんに拾われた女の子。日本にたどり着いてからは、周りの人間の自己実現や社会正義の実現のために利用されつつ、自分を見失わずに生き延びた女の子。親代わりになったお爺さんの豊田さんでさえ、バラカに娘のような愛情を抱いていたのか、それとも自分の正義のために彼女を連れていたのか、結局のところはよくわからない。でも、守ってくれる人や見方になってくれる人との途切れ途切れに現れては消えていく儚い