桐野夏生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
松任谷由美デビュー50周年を記念して、6人の女性作家さんたちが書き下ろしたユーミン曲がテーマのオリジナル小説集。題名見るだけで惹かれるものがあり、即購入。
収録されている話は以下、
・あの日にかえりたい(小池真理子)
・DESTINY(桐野夏生)
・夕涼み(江國香織)
・青春のリグレット(綿矢りさ)
・冬の終り(柚木麻子)
・春よこい(川上弘美)
いずれの曲も知っていたが、あらためて思ったのは、その曲に対する偶像イメージは『人それぞれ』ということ。特にユーミンなどは僕らの年代は誰もが知っていて、その曲に対する絵が脳裏に自然と浮かぶ。
ただ、それをいざ物語化してみたら、作家が描くストーリーが自分とは少し違うのだ。
例えば『あの日にかえりたい』のストーリーは学生運動の渦中であり全くオシャレ感は無く、『冬の終り』は歌詞には一切関係なく女性のパート職場の人間関係の話だった。
まあ当時の僕らがカーステレオで流す音楽の何割かがユーミンやサザンであったように、青春の傍らには必ずユーミン曲が流れていたという象徴のような小説なんだということかな。
『私を許さないで 憎んでも覚えてて』というキラーフレーズが印象に残る『青春のリグレット』は、自由奔放に恋愛をしていた女性が回顧しながら交差点で物思いする話は、僕のイメージに近かったかなあ。『綿矢りさ』だから、女性のしたたかさ?が描かれていてちょっと怖かったな。
-
Posted by ブクログ
初桐野夏生さん作品。
にんげんはグロテスクな生き物だ、と思う。でもそのグロテスクを裏とすれば、反面美しい表の瞬間だっていくつもあるはず。でもこの小説ではそんな瞬間は一切描かれないので、かなり読むのに困憊した。悪意悪意悪意にまみれながら、それでもこの人たちの結末を知りたいと下巻を読むであろう私もなんだかグロテスクな気がする。
「ミツルはこの学校の中で生まれた突然変異なのです。人並み外れた良心と優しさを持った生物。それはきっと、心の中に人より大きな悪魔がいるからなのです。ミツルの中の悪魔が、良心と優しさを育てたのです。」
「姉は私が化け物だと幼い頃から苛めてきたが、私には美しい外見などどうでもよかった。それより、姉のように母に似ていて、血が繋がっていることを目で確認できる方が重要だった。」
「私の中の淫蕩な血は、いずれ私を滅ぼす。そんな予感がして、私は沈黙した。」
「皆、私の主体性などとうでもよかったのだ。
私は他人と一緒の時は主体性を押し潰す訓練をとっくに始めていたのだ。まるで玩具の人形のような私を、誰が心の底から大事に思ってくれるというのだろうか。」
「私は、この学校では子供の振りをしてやって行こうと決心した。
だが、私には育ちのよさが与えた特権的好奇心や無遠慮さはない。
私は自分を欲する人間によって、生きている実感を得ている存在なのだから。」
「だって、すべての原因は、その人間を形作っている核とでもいうべきものに存するのではないでしょうか。
変貌する原因は自身にあったのだと思いますよ。」
-
Posted by ブクログ
ネタバレ話の先が気になり、どんどん読み進めてしまった。真由の気持ちも分からなくもないが、幸恵の気持ちもわかる。高校生の子供が突然1人増える。真由をリオナが見た印象を読むと、こういうタイプの子を歓迎しようとは思わないと思う。全ての原因は両親のせいだと思うが、もっと他に選択肢はあっただろうと登場人物たちへの苛立ちを覚えてしまう部分もあった。ただこれは自分が恵まれた生活を送ってきたから思う感想であって、この世には自分の想像をはるかに超えた苦しい経験をしている人達がいるのだと思うと、とても心にモヤっとしたものが残る。この先真由に少しでも楽しいことや幸せだと感じられる瞬間が訪れて欲しいと思った。
-
Posted by ブクログ
よくここまで胸糞な人物を、というのとそのクズさ加減に読んで嫌悪を覚えるかもしれない。
人間味っていう甘いも辛いもある味でいうとエグ味。嫉妬という感情から突き動かされるエネルギーは凄まじい。そのエネルギーを仕事に活かしたら、とも思うけどそううまくもいくまい。
これ、程度の差こそあれ、現実に起こっていることなのでは?不倫がーとか、レイプがーとかじゃなくて、形を変えた形でこのやるせなさって日常にひそみ、誰もが皆持ってるものだと思う。それを切り分けて小説という形に落とし込んでエグ味を足して一冊と成す。
この本もおそらく人を選ぶ、人が選ぶのを躊躇う部類だと思う。ただし、本がもたらす人間の在り方についてでいえば、かなり良書と言える。 -
匿名
無料版購入済み燕は何を暗示しているのか?
表紙から分かるように明るい話ではなく、シリアス路線です。
卵子提供はこれからどんどん増えていくでしょうし、
どうなる結末になるのか興味があります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ頼りない主人公が危ない旅に巻き込まれていく様子がとてもハラハラさせられて一気に読んだ。理解できそうに思えてやっぱり全然共感できない主人公の考え方。
ダメ人間だった主人公も旅で色んなことを経験してラスト親友に会う頃にはしっかりした人間になって感動の展開かと思いきや、やっぱり相手の言動にすぐ流されて自暴自棄なまま変わってなかったのか…それとも親友の思いを汲んであげたということなのか。空知は“お前が次のソルになれ”とか言ってたけど重要人物の空知消えたら主人公殺されないのか?
主人公はカンボジアのばあちゃんとか空知のことばかり気にかけて本当に心配してくれている日本の母親には金を無心するだけでろくに連絡もしないってとことん何かが偏ってる
ラストだけゲームで唐突なバッドエンドになったときくらい急に幕が閉じられてしまった感はある。でも帯には「最後の1ページまで希望と絶望が反転し続ける」と書いてあったのでまさにその通りだった。
総じてすごく楽しめました。めちゃくちゃ後味は悪いけどね
これ語り合いたいけど、周りで誰も読んでくれそうな人いないかなしみ -
Posted by ブクログ
ネタバレ桐野夏生さんの本は大好きで全部追いかけて読んでいるが内容を忘れてしまっていた。でもこの話は上位に入るくらい好きな話だったのを思い出した。
細切れに読んでもすぐにちょっと前が思い出せる感じ、食事中も続きが気になって、誰もいないお昼についに読みながらご飯を食べる始末。それくらいやめられなかった。
AVの作品は生まれてこの方見たことがない。でもどんなものかはもちろん知っているけれど笑笑
いろんなジャンルがあるのもなんとなくわかるけれど、本当にレイプがあったのかなかったのか、それは見極め難しいんだろうな、と思う。最初から演技としてと演者に伝えているより、知らない方がリアリティを追求できるのか。
何にせよ、18歳以上で見ることができてしまうものは現実とは別にして考えてほしいと女性の立場からは思う。不思議なことに禁止されたシュチュエーションのものがとても多く、さらにそれが多いと言うことは人気があると言うことか。私としては胸糞。
ミロはこの二作、めんどくさくなりそうな人と関係を持ってしまうが、それも癖なんじゃないかなと思った。学生の時もいた、人の彼氏ばっかりとる人。
そう言う癖なんだと思ってみてた。
ミロのシリーズ全部読んだはずだけど、次も読んでみる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ松任谷由実デビュー50周年記念オリジナル小集。全作書き下ろし。ユーミンの名曲タイトルから6人の女性作家が新たに奏でる小説のハーモニー。令和4年7月1日発行。
小池真理子 「あの日にかえりたい」(1975年)
桐野夏生 「DESTINY」(1979年)
江國香織 「夕涼み」(1982年)
綿矢りさ 「青春のリグレット」(1985年)
柚木麻子 「冬の終り」(1992年)
川上弘美 「春よ、来い」(1994年)
ユーミン世代ではないので、リアルに記憶にあるのは「春よ、来い」くらい。といっても、歌詞なんて気にしてなかった年頃だったので、いまいちよく分かっていない。本当は、曲を聞いて、歌詞を読んでからこの本を読もうと思っていたのだけど、まぁ、積読になってしまっていたので、ひとまず読んでみた。
ユーミン世代のお姉さまたちに読んでもらって、感想と解説を求めようと思う。
NHKのドラマでもやっていたのは知ってたけど、見逃したんよね。
以下、各小説ごとの感想。
「あの日にかえりたい」
1970年代に東京の大学に出てきた女子学生。恋?と友情のあいだで迷い、友情のために嘘をついたのに、気付かれて疎遠になってしまう。でも、年賀状のやり取りは続く。あの日、嘘をつかなければ、ずーっと大人になった今の2人の友情の形は違ったのかな。
「DESTINY」
30歳を過ぎた真面目だけど、マザコンなのでは?という男性の恋。きっとこういう誠実で真面目で、仕事も安定してるけど、恋愛下手な男性っていると思う。女性も然り。
「夕涼み」
結婚して子どももいる姉が、年の離れた妹の結婚をお祝いしつつ、結婚後に起こる、女性が抱える悩み、窮屈さ、夫婦関係の悩み・・・。そんな思いを妹がしなくてもよい結婚を姉は願う。敢えて海外で見た女性たちの様子を例えのように出しているのが、美しいというか、生々しくない。海外でも日本でも、女性が抱えるものは同じなのね。ちょっと切ない。切ないけど、この姉の願いが多くの人に広がって、何かが変わっていくといいな。
「青春のリグレット」
自分の方が相手を好きで好きでたまらなくて結婚した方が幸せなのか。それとも、相手の方が自分のことを好きで好きで大切にしてくれて結婚した方が幸せなのか。
私も思い当たる恋愛があり、んー、と考えてしまった。
「冬の終り」
地方の寂れた?スーパーのフードコートで働く女性。時々シフトが一緒になる女性のことが気になる(恋愛ではない)。ある時ユーミンの曲が店内でかかったとき、その女性と心が通じ合ったような、近づいたような気がして、スーパーの他のおばちゃんたちと深入りしないでおこうと思いながらも、行動は深入りしていて、ちょっとクスッとしてしまった。いいね、女の友情。これは女の友情だと私は思う!柚木麻子さんはこういう話うまいな~。
「春よ、来い」
実は一番よく分からなかった話。でも、私なりに解釈した。
知らない誰かのために、自分に与えられた特別な能力を使って、知らない誰かの幸せを願う。
きっと私たちの世界って、どこのだれか知らないけど、心のなかで「頑張れ!」と応援したくなったり、「この子の優しさがこの子を幸せにしますように」とそっと願いたくなったり、そういう小さな小さな誰かに対する優しい気持ちが集まって、巡りめぐって、自分にも幸運がやってきているのかもしれないと思う。
さて、近いうちに、ユーミンの曲を聞いてみよう。