桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ここ30年、家族が壊れてきた。
昔のようではないということは目安にはならない、とは知っている。
変んだ、変んだと他人事に思って、 というより おかしくなってしまっているのを身近に経験する。
身内に感じる、ためいき。子育てを誤ったのか?親が悪いのか!?
言い訳をすれば一度しか経験できないものを、 失敗だってあるさ!
じゃあ、この物語のように親が誰だかわからずに、育っていくのって、どうか?
本人の拠りどころの無さは過酷だと思う。親代わりを見つけてしまうのも無理は無い。
だったら
失敗を恐れず親になるしかないのじゃない!?
出版されたらさっそく購入して読みたくなる作家さんの一人。 -
Posted by ブクログ
桐野夏生『優しいおとな』中公文庫。
何故か気になり、手にした2013年刊行の文庫本。福祉システムが破綻した希望無き近未来の日本を舞台にした小説である。
全編に漂う絶望感。何とも言えない退廃的な雰囲気の中で主人公イオンの成長の物語が展開する。ラストの描写は……
どうしても今の日本と比較したくなるのだが……今の日本は福祉システムの破綻どころか、新型コロナウイルス感染と相次ぐ未曾有の天災により、破滅への道をまっしぐらに突き進んでいるとしか思えない。本作には微かな生きる望みが描かれているが、今の世の中はどうだろうか……
スラム化したかつての繁華街シブヤで、他人とは距離を置いて独り暮らすホームレ -
Posted by ブクログ
谷崎潤一郎の半フィクションバイオグラフィ、という宣伝が目に入ったので読んでみた。私も例にもれず、10代の頃に谷崎・三島の耽美沼にハマったので、それこそ作品はもちろんありとあらゆる書簡集やら論文やらを読み漁った。若かりし頃のあの滾るものを思い出した。本作、非常に真面目に史実と史実の間を”ええ感じ”に盛ってあり、読みやすくわかりやすい。ただ、わかりやすすぎて、すこし寂しさが募る。寂の文字が大谷崎にはよく似合うのでそれはそれでええかとも思う。自分の中で構築している谷崎及び家族像とは少々違うところも目立つが、ギャップも面白く感じた。
視点人物はマスターピース『細雪』の雪子のモデルになった重子。細雪の