桐野夏生のレビュー一覧

  • 「自由」の危機 ――息苦しさの正体

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    ネタバレ

    今から3年前2019年、当時の首相による日本学術会議の会員任命拒否問題は、政府による自由・学術・教育に対する介入であると大変な危機感をつのらせることになった出来事でしたが、自分の周りでこの件について同じようなことを考えていたり意見を交換したりということがあったのは、小学校教員である友人ただ一人との間でした。
    そこにあるものの不穏さを感じ取った人が自分の周りにはあまりにも少なかった、と思います。
    それから現在までを振り返ってみるとたった3年の間に自由というものがとても堅苦しく緊張の伴うものになってしまっており今なお進行形であると感じます。

    気づいたら周りから固められてて自分は奇特な意見を述べる

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    2022年11月14日
  • 新装版 顔に降りかかる雨

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    デビュー作であり江戸川乱歩賞受賞作。女性探偵村野ミロシリーズ第一弾。以前父親が新宿で探偵事務所を開いていて、今はそこにミロが住んでいて父親はリタイア、別の場所に住んでいる。親友が4千7百万円と共に蒸発。それを探す羽目になる。
    後半からのスピーディーな展開は面白かった。友人の仇取ってきっちりケジメつけるミロがかっこよすぎる。
    桐野夏生15冊目。やはり「らしさ」があって良かった。

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    2022年11月12日
  • 柔らかな頬 上

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    過去立場展開登場人物の過不足ない見事な描写にロードムービー要素が味付け。多く長い心情描写は桐野節でなければこんな上質作品にまとまらない。そりゃ文句なしに直木賞だ。

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    2022年11月06日
  • 路上のX

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    久々に桐生夏生作品が読みたいと思って
    手に取った本。

    リアルフィクション。
    行き場のない女子高生たちの現実。
    親に捨てられた(そう思っている)女の子たちの現状。
    自分の体をお金に変えるしか生きる術がない彼女たち。

    ずっと苦しい話が続くんだけど
    読む手が止まらなかった。
    それは桐生さんの文才。

    最後の真由の荒れ方が1番苦しかった。
    怒りの裏にあるのは
    どうしようもない寂しさや、苦しさ。
    「落とし前をつけなよ」
    この全てを悟っているリオナのセリフも、
    リオナのこれまでの経験を物語っていて
    切なかった。

    どうしても家庭環境が良くないと
    子どもは荒れる傾向にある。
    だって
    1番身近な大人に傷つ

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    2022年10月10日
  • 夜また夜の深い夜

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    大好きな作家さんの一人です。
    国籍を持たず、母親と逃亡生活を送る日本人の女の子が、知り合った二人の少女と犯罪に手を染めながらも、逞しく生きていくストーリー。
    目の前の相手を簡単に信用せず、“もう一人の自分”の声に耳を傾け、己の道を進んで行く…
    現代の私達も、このようなサバイバル生活に突入しているような気がします。

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    2022年10月08日
  • 柔らかな頬 下

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    ネタバレ


    登場する人物が全員自分のことしか考えていない
    その心理描写がすごい
    生々しくて魅力的でどんどん読んでしまいます
    最後まで救いはありませんでしたが
    だからこそ色々な解釈ができる

    なぜなのか説明はできないけど
    カスミが心の拠り所にしていた
    バスの教会のシーンが好きです

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    2022年09月06日
  • ダーク(下)

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    読み終わった!
    偽造パスポートで韓国にわたってからのミロの暮らし。

    ジンホとこんなにも信頼関係築くとは思ってなかったなぁ。

    ミロがすごく女!って感じした。

    韓国に行ってからもまぁミロは辛い状況に何度も陥って、何だかんだで日本へ戻ることになって
    パクミエの名は使えずに、結局村野ミロに戻ることになったり。

    40歳で死ぬと言ってたのに出産したり。

    人生何が起きるかわかんないよなぁ。

    強烈な怒りと理不尽と、これでもかってくらい負の感情が渦巻いていたけど、ミロには幸せになってほしいなーと願ってしまう。

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    2022年08月28日
  • ダーク(上)

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    村野ミロシリーズ読んでなくていきなりこれから読んだけど、相変わらず救いがないというか、
    どんどん下に落ちていくだけだなぁと。

    光州事件の描写は圧巻すぎてすごい。目を背けたくなるやつ。

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    2022年08月28日
  • 「自由」の危機 ――息苦しさの正体

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    一部ネットで嫌われてそうな論客たちからのメッセージ集。みなさん、日本から少しずつ自由が奪われていると危惧している。
    ある一面の行動・発言が切り取られて批判されることが多い方々だが、その考えに直に触れると、国の在り方や自由について真剣に考えているのが分かる。

    例えば表現の不自由展に携わった津田大介氏。近年、アートの世界では政権の意向に沿った展示しかできなくなってきたと言う。意向に反せば、補助金が下りないなど不自由を強いられるそうだ。

    詳しく知らないが、おそらく、この展示は慰安婦像などを展示するのが目的ではなく、賛否両論のものを公の場で示すこと自体が目的だったのではないか。こうした国の動きに対

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    2022年08月01日
  • グロテスク 上

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    【2022年34冊目】
    初っ端から主人公である語り部の"わたし"の癖の強さに慄くんですけど、どんどんと本当に狂っているのは誰か?みたいな流れになってきて最終的には全員が全員狂っているのだろう、みたいなところで上巻が終わります。否、ある側面から見たある人はまともなのかもしれないし、まともとは何か、といった話であるのかもしれません。どうしてこのタイトルなのか、物語の行き着く先はどこなのか、下巻を読むのが楽しみです。

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    2022年07月27日
  • 優しいおとな

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    福祉システムが崩壊した近未来の東京で生きる身寄りのない少年イオンの物語。東京は中流や金持ちが住む世界と、そこからはみ出したまま一生を終えるホームレスの人々が住む世界に分かれており、さらにその地下に陽の目を避けて生きる地下住民たちの世界がある。ホームレスは毎日がサバイバルで、女子供はかたまって派閥のようにして身を守りながら生きている。少年は守られたい気持ちと自由になりたい気持ちの両方を持ち、生き延びつつ成長もしているという、危ういながら伸びやかな存在として描かれている。最期の最後で両親を思う気持ちが切なく、人はみな、愛を注がれて育ちたいものなんだなと思った。いくつになっても、「優しいおとな」を求

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    2022年07月11日
  • 夜の谷を行く

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    連合赤軍事件・・・山岳ベースや裁判ではない、一人の赤軍は女性を「設定」し、細かい細部まで再現ドラマのようにフィクションとして紡ぎ出している。
    ラストの衝撃は見事・・サスペンスとしてよくできている。

    この5年余り、殆ど国内小説を読まなくなった。余りに私小説過ぎたり、メルヘン臭が強かったりすることもあるのだが
    一番は「自分のいる空間」と多少のずれはあるとしても共有する内奥が多すぎて 一体感がありすぎるせいからかも。

    これが欧州なりアメリカなりの作品ならば他岸の火事的に俯瞰感覚で読めるのだが。
    西田啓子と言う女性、近づいてきた古市、かつての男久間、君塚・・闇から立ち上って来た「妊娠の過去」が。。

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    2022年06月18日
  • デンジャラス

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    谷崎潤一郎を細雪の雪子の視点で書いたフィクション。
    細雪を読んでいないと何の話しかはわからない
    だろうと思う
    フィクションとは言っても概ね事実に近いのか
    実在する人物を描いているので
    なるほどデンジャラスなのだな
    不可触の領域に踏み込んでいる

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    2022年06月16日
  • 夜の谷を行く

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    テーマは暗くて陰湿だが、小説ベースで書かれているのでサクサク読めてしまう。怖いもの見たさ知りたさで、子供の頃テレビで観た浅間山荘事件の映像と重なりあい好奇心が止まらない。ああいった学生運動した人って今でも極身近にいるんだろうなぁと考えると何とも複雑な気分。

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    2022年06月12日
  • 新装版 天使に見捨てられた夜

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     1994年刊。『顔に降りかかる雨』(1993)に続く、桐野夏生さん初期の女探偵ミロ・シリーズの2作目に当たる。
     やはり、面白かった。やはり現代のエンタメ系文学は非常にスイスイ読めるし、物語の展開にはまって先へ先へと駆り立てられる。
     本作でミロは、むしろ敵側と思われるようなダ男性に性的に惹き付けられて寝てしまい、それが原因となって失敗を招くなど、「アラアラ」と悔しくなるような弱さを露呈しており、それもあって、非常にリアルでなまなましい女性像を確立している。
     ミロが探し求める女性リナも、極めて不幸な幼少期を送って情緒面で発達障害的になってしまった人間として、後半リアルに描き出される。
     そ

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    2022年06月11日
  • 「自由」の危機 ――息苦しさの正体

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    「知る」ことで「知らない」では感じられなかった物事が立体的に色彩を持って立ち上がってくる。
    ニュースを見て感想を抱くだけといった姿勢では流れに逆らうことはできないが、思考し行動することは人を新たな場所へ連れて行ってくれる。
    本書では各分野の著名人が各々の視点から考えを述べており、他人の視点、思考、背景等を感じながら読み進められるという点で対話的な(厳密には違うが)一冊になっている。
    自由を重んじる立場の方々の考えに多く触れることができて心地良さすら覚えるが、逆に反論する立場の人の意見にも触れたい気持ちになった。

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    2022年06月01日
  • ロンリネス

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    高級タワマンに暮らすママ友たちの人間模様を描いた『ハピネス』の続編。

    前作で主人公・有紗の夫が出張先のアメリカで女子大生と不倫したという告白を聞いた一件を経て、今作では有紗自身がタワマンの一階下の住人(『ハピネス』にも登場した高梨という男)と怪しい関係に、そしてやっぱりというか、親友の美雨ママは別のママ友の夫と相変わらず不倫&修羅場継続中という、何だかドロドロとした展開のお話である。

    『ハピネス』ではタワマン住民内にある格差みたいなところがテーマとして前面に出ていたと記憶しているけど、今回はお受験に関する話は出てくるものの、プライベートな不倫ネタがメインとなっており、やや俗っぽくなった印象

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    2022年05月29日
  • 水の眠り 灰の夢

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    読みやすかった。トップ屋と呼ばれる週刊紙のライターが事件に巻き込まれる話。昭和30年代の時代背景もよく描かれている。

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    2022年05月20日
  • 路上のX

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    1度読み始めると続きがめちゃくちゃ気になって、気が付いたら読み終わってた

    10代でこんな壮絶な経験してんのやばくない…?って思ったけど、描写がリアルすぎて現実味がある
    誰を信じて頼ったらいいのかわからない子も、苦い経験から強かに生きる子もその日を必死に生きてる

    若いから、女子だから、って理由で価値があるなんて思ったり思わせたりしちゃ駄目だよなぁ

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    2022年05月17日
  • バラカ 下

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    東日本大震災、赤ちゃん売買、それらに関わる人達の繋がりと邪悪な心。
    一人の幼い少女が立ち向かうにはあまりに強大で恐ろしいものがある。
    読んでいるこちら側が恐怖で叫びそうになる。

    2022.4.9

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    2022年04月09日