桐野夏生のレビュー一覧
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谷崎潤一郎没後50年・中央公論新社130周年を記念して書かれた、オマージュの内の一冊。
2017年は本当に豪華な作家達が谷崎へ傑作を寄せていた。
本書は『細雪』に登場する姉妹の中でも主要人物であった「雪子」のモデルとなりながら、手記や書簡と言った声を残さなかった「重子」に語らせる。
重子(あくまで本書に登場する彼女の意で)は義兄の芸術に自らが採用された事を生涯、精神の拠り所としていた。
しかし、その愉悦と義兄に守られた平穏はある日、突然に破られてしまう。
義理の娘・千萬子の登場である。
浮世と一線を引く様な姉妹にとって千萬子は新時代の象徴であるのみでなく、芸術のミューズの座を奪う脅威と捉え -
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読んでいる間ずっとヒリヒリとした辛さがある小説だった。親や社会に見捨てられ、搾取する大人に集られながら生きるしかない少女たちの現実を小説に結晶化させている。
真由やリオナ、ミトを「愚かしい」「少しくらい我慢したらどうだ?」と責めることはとても簡単だ。実際この小説を読んでもその程度の感想しか抱けない大人はゴマンといるだろう。だが、作者の筆はそんな大人こそ愚かで説教したい気持ちを我慢できないだけと巧みに逃げ道を塞いでいるーー「説教しかしない大人より金をくれる男のほうがマシ」とはある人物の言葉だ。何と言っても、彼女たちはまだせいぜい17歳の子どもなのだ。作中彼女らの年齢が何度も具体的に表されるのは -
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ネタバレ面白いという表現は違うのかもしれないが、すごく引き込まれてあっという間に読み終わった。
私はその時代のことも、この事件のことも名前しか知らず、初めて知ることも多かった。
あの時代変革を掲げて自分たちの子どもさえ新な時代の戦士として育てたいという理由もあって山岳ベースにはいった女性たち。
その掲げたことさえもどこにいってしまったのか総括の対象になった妊婦の女性の亡くなり方が切なく苦しかった。
その山岳ベースに入ったうちの1人の女性のその後に焦点をあてたこの物語。
服役した後待っていたのは両親の死、親戚の絶縁、孤独。唯一妹と姪っ子と関係はあるが、そことも溝はある。終始彼女と関わる人との場面 -
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ネタバレ今から3年前2019年、当時の首相による日本学術会議の会員任命拒否問題は、政府による自由・学術・教育に対する介入であると大変な危機感をつのらせることになった出来事でしたが、自分の周りでこの件について同じようなことを考えていたり意見を交換したりということがあったのは、小学校教員である友人ただ一人との間でした。
そこにあるものの不穏さを感じ取った人が自分の周りにはあまりにも少なかった、と思います。
それから現在までを振り返ってみるとたった3年の間に自由というものがとても堅苦しく緊張の伴うものになってしまっており今なお進行形であると感じます。
気づいたら周りから固められてて自分は奇特な意見を述べる -
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久々に桐生夏生作品が読みたいと思って
手に取った本。
リアルフィクション。
行き場のない女子高生たちの現実。
親に捨てられた(そう思っている)女の子たちの現状。
自分の体をお金に変えるしか生きる術がない彼女たち。
ずっと苦しい話が続くんだけど
読む手が止まらなかった。
それは桐生さんの文才。
最後の真由の荒れ方が1番苦しかった。
怒りの裏にあるのは
どうしようもない寂しさや、苦しさ。
「落とし前をつけなよ」
この全てを悟っているリオナのセリフも、
リオナのこれまでの経験を物語っていて
切なかった。
どうしても家庭環境が良くないと
子どもは荒れる傾向にある。
だって
1番身近な大人に傷つ -
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一部ネットで嫌われてそうな論客たちからのメッセージ集。みなさん、日本から少しずつ自由が奪われていると危惧している。
ある一面の行動・発言が切り取られて批判されることが多い方々だが、その考えに直に触れると、国の在り方や自由について真剣に考えているのが分かる。
例えば表現の不自由展に携わった津田大介氏。近年、アートの世界では政権の意向に沿った展示しかできなくなってきたと言う。意向に反せば、補助金が下りないなど不自由を強いられるそうだ。
詳しく知らないが、おそらく、この展示は慰安婦像などを展示するのが目的ではなく、賛否両論のものを公の場で示すこと自体が目的だったのではないか。こうした国の動きに対 -
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福祉システムが崩壊した近未来の東京で生きる身寄りのない少年イオンの物語。東京は中流や金持ちが住む世界と、そこからはみ出したまま一生を終えるホームレスの人々が住む世界に分かれており、さらにその地下に陽の目を避けて生きる地下住民たちの世界がある。ホームレスは毎日がサバイバルで、女子供はかたまって派閥のようにして身を守りながら生きている。少年は守られたい気持ちと自由になりたい気持ちの両方を持ち、生き延びつつ成長もしているという、危ういながら伸びやかな存在として描かれている。最期の最後で両親を思う気持ちが切なく、人はみな、愛を注がれて育ちたいものなんだなと思った。いくつになっても、「優しいおとな」を求
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連合赤軍事件・・・山岳ベースや裁判ではない、一人の赤軍は女性を「設定」し、細かい細部まで再現ドラマのようにフィクションとして紡ぎ出している。
ラストの衝撃は見事・・サスペンスとしてよくできている。
この5年余り、殆ど国内小説を読まなくなった。余りに私小説過ぎたり、メルヘン臭が強かったりすることもあるのだが
一番は「自分のいる空間」と多少のずれはあるとしても共有する内奥が多すぎて 一体感がありすぎるせいからかも。
これが欧州なりアメリカなりの作品ならば他岸の火事的に俯瞰感覚で読めるのだが。
西田啓子と言う女性、近づいてきた古市、かつての男久間、君塚・・闇から立ち上って来た「妊娠の過去」が。。