桐野夏生のレビュー一覧

  • 水の眠り 灰の夢

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    私立探偵村野ミロシリーズは未読だが、そのスピンオフである本作はそれを知らずとも楽しめた。五輪開催を目前に控えた高度成長期の東京を舞台に連続爆弾魔と女子高生殺人を週刊誌記者が追いかけるという設定だけでも充分面白いはずなのに、主人公の村善をはじめとした魅力的な登場人物たちが物語を大いに盛り上げてくれる。各局記者同士の戦友と呼ぶに相応しい絆が事件の真相を炙り出す様に胸が踊り、女性たちはそんな男共を翻弄しつつも翻弄され彩りを添える。熱気と共に加速し続ける昭和という時代の光と陰を描いた骨太で煙草の煙が香る物語だ。

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    2018年06月20日
  • 柔らかな頬 上

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    別荘でいなくなった娘を探し続ける母親。高校卒業して家出したその母親。その浮気相手、末期がんに侵されながら一緒に娘を探すのを手伝う元刑事。それぞれが自分の過去の行き方を思い返しながら、もがき苦しみながら生きていく。誰にもあること?特別なこと?どちらか良く分からない。

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    2018年04月08日
  • 奴隷小説

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    一読後、うーむと頭を抱えてしまいました。
    不条理な環境に置かれた主人公をどこか突き放した視点から描くいつもの桐野さんらしい筆致は楽しめたのですが、多くの作品が長編のプロローグのように思え、この続きを読みたいという欲求不満ともやもや感が残ってしまったからです。
    シンプルといえば確かにそうなのかもしれませんが、桐野さんレベルの書き手だったらもっともっと掘り下げた部分までじっくり描いて欲しかったなあと感じました。

    収録された7作の中で一番読みやすくて面白かったのは、やっぱり「神様男」でした。
    現代の地下アイドルを取り巻く歪な構造が悪意とユーモアを交えて描かれていますが、この作品だけが現代日本を舞台

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    2018年03月31日
  • アンボス・ムンドス ふたつの世界

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    2話目のルビーは結局住処のためには身体を差し出さなければならない。悲しく思う。

    怪物達の夜会/田口家はどうなってるんだ。怪物達という題名が妙にしっくりくる。

    愛ランド/オバハン達の果てしない性欲……
    代表作は本当に小学生だよね?っていう怖さよ。恐ろしい。

    パッとキレよく終わる話もあれば、え?というまだ続きあるのでは?という話もあってどれも刺激的で飽きずに楽しく読めた。

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    2018年02月09日
  • 優しいおとな

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    福祉システムが破綻した近未来の日本を舞台に、ホームレスの若者・イオンが探し求める希望を描く衝撃の長編。
    作品の発表時がリーマンショック直後ということで、若者の貧困や派遣切りなどが社会問題になっていた。暗い世相を反映して物語も陰鬱で、かつ高揚感もない。桐野作品の中ではあまり記憶に残らない作品。

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    2018年01月16日
  • ダーク(下)

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    下を読み始める前に皆さんのレビューでチラッと見えたのが、ダークは『ミロシリーズ』と呼ばれるもののひとつと知り、読後にこの話だけでは知り得なかった部分があったなぁと。

    久恵はどんどん大胆で図々しい性格になったな。
    ミロは上の時と比べて多少なりとも性格が軟化した気もするが、好きになれないのは相変わらず。
    鄭とは中途半端な終わり方の印象。
    ジンホが唯一、一途で可愛げがあったからジンホといる時のミロは切なかった。

    桐野さんのもっとえぐい性格描写が見たかったな。

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    2017年12月17日
  • ダーク(上)

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    桐野さんの作品に出てくる個性あふれる登場人物。
    村善さんを愛する久恵がいい。
    ミロは底知れぬ怖さがある。成瀬とはどんな関係だったのか。
    さて、ここで張られた伏線が下ではいかようになるのか楽しみ。

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    2017年12月16日
  • 奴隷小説

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    桐野夏生『奴隷小説』文春文庫。

    帯には『様々な囚われの姿を容赦なく描いた7つの異色短編』とある。確かに変わった設定の、イヤな後味を残す短編ばかりが収められている。が、最初の2編はまあまあ面白かったが、3編以降は次第に尻窄みといった感がある。

    『雀』。恐ろしく、おぞましい物語。どういう設定なのか解らぬままにストーリーは展開し、この物語の全貌を知るとき、何とも言えぬ不快感に襲われる。他人に決められた好きでもない男との結婚は女性にとって、さぞや苦痛なのだろう。

    『泥』。突然、囚われの身になった女子高生たち。これも気持ちの良い物語ではない。泥の下には…

    他に『神様男』、『REAL』、『ただセッ

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    2017年12月08日
  • 夜また夜の深い夜

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    人生に底はないと思った。
    それは夜が深いという感覚と似ていると思う。
    すごくしっくりくるタイトル。
    すごい。

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    2017年11月27日
  • 優しいおとな

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    福祉システムが破綻した日本。スラム化したシブヤのなかで生きるホームレスの若者たち。
    ありそうな生々しさ、息苦しさが漂う作品だった。
    読み進めるのはきつかったけれど、途中でやめられない力強さがあった。映像が見えてくるような感じ。
    『誰かと仲良く暮らすということは、響き合う楽しさを知ることだ』の言葉がしみた。

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    2017年11月06日
  • 錆びる心

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    桐野夏生さんは初めてだと思います。大体ミステリーは読まないので。
    あることから興味を持って、桐野さんの作品を読むことにしたのですが、なるべくミステリーっぽくない本ということで、この本を選んだのですが。
    読後感は・・・。余り印象が無い。何か特別な仕掛けもないし、さほど情緒溢れる雰囲気でもないし。。。。
    どうも苦手な作家さんのようです。

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    2017年10月30日
  • 夜また夜の深い夜

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    あまりに健全すぎないか!?ってびっくりするくらい、イヤミス的な読後感の憂鬱さがなかった。なんだろ、村のミロシリーズとかよりもぜんぜんさわやかな感じ。ここ数作は読んでなかったんだけど、最近こんな路線なのか?
    ゆるふわのアナ、姉御肌のリーダーエリス、近くて遠いシュン、と設定としては定型的なのに、掘り下げて夜の闇みたいに深い奥行きを出しているのはさすが。一生ついていきます。
    ただ、宗教がらみに話を展開しちゃうとこ、個人的に食傷気味だったので少し退屈だった。東直己がわりとやるのよ。尤も東直己は消費者問題とかと絡めて現代の軋みを炙り出すんだけど。純文学的な文脈で新興宗教を扱うのであれば、ひとひねりないと

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    2017年09月13日
  • 夜また夜の深い夜

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    ネタバレ

    生ぬるい日本の感覚とは違った外国育ちで、純朴だった舞子は、厳しい環境の中で成長を遂げていく。それぞれに思わぬ生い立ちを持つエリン、アナと共にアンダーグラウンドな生活を潜り抜け,行きぬけていけるたくましさを手に入れた。

    自分の本能にこんな強さはあるか。それを眠らせてないか。

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    2017年09月09日
  • ファイアボール・ブルース

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    殺人事件もからめてあるが、描かれているのは、主人公が女子プロレスを通して心身共に成長していく姿。女子プロの世界という特殊な舞台を、きっと綿密な取材を経て書かれたのだろうと思われるノンフィクションのような物語。「女にも荒ぶる魂がある。闘いたい本能がある」。いいな、この言葉。女だって、やるときはやるよ!

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    2017年06月22日
  • ファイアボール・ブルース2

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    ネタバレ

    前作を読んだので、続けて読んでみた

    ・短編集で、前作よりも時間軸は前の話

    ・最後の最後に、前作の後日譚がみられるが
     うまく整合していない?のかなと思った。
     ただ結果は予想外の方向で。

    ・エピソードとしては、最初の新入門レスラーの話と
     最後の付き人の彼女は、普通の人だったという2つが
     意外性のある終わりかたで、印象に残った

    ・前作と同じく、ものすごい熱中するわけではないが
     スラスラ読めて楽しめる

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    2017年04月08日
  • ファイアボール・ブルース

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    ネタバレ

    殺人事件の犯人さがしというよりは、女子プロとその周辺の
    情報が面白さの原因かなと思った

    強く頭の良い女子レスラー火渡さんの付き人の視点で進む

    試合開始前に敵前逃亡した相手レスラーが
    死体になってみつかった(のではないか?)ということで
    犯人さがしをしていく

    サクっと読めて、重さもあまりない話

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    2017年04月08日
  • 緑の毒

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    どんな感情に仕分ければ良いのだろう。

    男に襲われた女性たちの悲劇を、興味深く読めば良いのだろうか。書いているのも女流作家。だからと言って被害者の本質を正確に投射できているのだろうか。正直に言うと、技巧を凝らした勧善懲悪モノとしてエンターテイメント調に描かれているものの、男女の不倫や事件を少し軽率に扱い過ぎではないのだろうか。少女漫画によくある人間関係の歪みが織り成す闇と、その闇に魅了された読者の視聴率稼ぎ。イヤミスというジャンルはそんな人間の欲望を知りながら、嘲笑と共に生まれてきたのだろう。しかし、人間ドラマとしてこうした一面がある事を潔癖に拒絶してはならない。多様性を受け容れ事が成熟であり

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    2017年03月17日
  • 光源

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    誰もが当人にしかわからない事情を抱えている。
    そして、誰もが自分にしか通用しない正義を信じている。
    物語に登場する人物は、何があっても最終的に悪いのは他人だと思っている。
    自分にも悪いところはあっただろう、でも、それ以上に悪いのは他の人間だと・・・。
    吐き気がするほどの身勝手さが、服を着て話し、偉そうに自分の正義を押し通す。
    映画に魅入られ、映画・・・映像と関わることを職業として選んだ人々。
    でも、本当に好きなのは映画ではなく、自分自身。
    名声や人気が何よりも大切で、欲しいものだのだ。
    実力以上に自分を評価し、周囲が認めてくれないと腹を立てる。
    監督としての実績もなく、力量も未知数なのに、我を

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    2017年03月15日
  • ポリティコン 下

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    桐野夏生っぽい。ただ、主要登場人物に感情移入できぬまま終了(「メタボラ」にはあった愛嬌が決定的に欠けてる)。特筆すべきは、終章の「礼儀正しいオヤジ」の登場だけで、一瞬にして物語のバックボーンを正体不明の不気味なものに変えた力量。この瞬間があっただけで、とりあえず読んだ努力は報われましたね、という作品。

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    2016年12月29日
  • 柔らかな頬 上

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    うmmmm
    こどもを持つ母として、また不貞をはたらいた両親をもつこどもとして、
    不倫は絶対しちゃだめよねーと、おもいます。
    直木賞なのかー
    カスミには不快感しかないけれど、
    下巻の構成は好き。石山さんとかね
    最後とてもかなしい

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    2016年12月07日