桐野夏生のレビュー一覧
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優しいおとな、厳しいこども。なんとなく、そんな対比を考えてみた。資本主義の北半球の国々は、大体こうだと思う。子供は、小さなおとなだから、今時子供だましのなにかではもう歓心を得られない。
この小説を、「現代の日本の社会的な問題で……」という視座から云々すると、とたんにテクストが色褪せ、興がさめてしまう。具体的な地理も、アンダーグラウンドも、闇人も照葉も、物語にしかなしえない、普通の階級の日常をおくる私たちの生活のメタファーだと感じた。要するに、希望を失って闇に潜るのはなにもホームレスとかストチルに限った話ではないということだ。私たちは、人生の中で喪失しつつ、得ようともがきつつ、底なしの希望を希求 -
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ネタバレ荒廃し、スラム化した日本の繁華街シブヤでストリートチルドレンとして生きる少年イオン。
親の記憶が無い彼は人への「愛情」を知らず、自分を助けてくれる唯一の大人モガミにも冷たくしてしまう。
イオンはかつて一緒に育った仲間を探すため、地下の犯罪者集団に飛び込んでいくが、そこも安住の地では無かった――。
序盤は近未来のサバイバル小説という様相で、物語についていけるか少し不安でした。
が、誰のことも信用できないような生活を送ってきた浮浪少年の思考回路や、彼の目から紡がれる路上生活の苛烈さが妙にリアルで、すっと物語に入り込めました。
読者に違和感を抱かせずに世界観を構築する作者のテクニックは、いつもなが -
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ネタバレ上巻(前半)のリアルさの迫力がすごかっただけに、下巻(後半)の何を描きたかったのか全然わからないところがとにかく残念。
ていうか、スティーヴィー・レイ・ヴォーン。後半は全然出てこないじゃん(笑)
思うに、下巻(後半)は著者の趣味が出すぎかなぁーとw
特に石山の変容と内海の人物造形は、変な言い方だけど著者丸出しって感じで。
あぁこういう人なんだなーと、正直鼻白んだ。
ミステリー小説的結末はないとわかって読んだので、そこに不満はないし。また、ストーリー的にもよかったと思う。
カスミのお母さんの意外な幸せという、(カスミへの)ちょっとしたしっぺ返し的展開も妙に小気味いい(人生における失敗を耐えるこ -
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ネタバレ文章は面白く引き込まれ一気に読んでしまいました。
ただ、上巻に比べて下巻の収束の仕方は自分は不満が残りました。
元々、伊坂幸太郎先生の『バイバイ、ブラックバード』のラストを批判する感想を述べていた方が
同じリドル・ストーリーならこれ、と仰っていたのが
この本を手にとったきっかけでした。
途中まで面白く読んでいたのですが、
遂に物語が確信に進むかと思えたのが夢落ちだったところから
少し冷めてしまい、
次の展開でもどうせ夢落ちなのだろうなと思ってしまいましたし
あれだけ上巻で神隠しとしか思えない不思議な消え方
と煽っておきながら、夢落ちにしろラストにしろ
それでなぜ証拠が見つからない完全犯罪に -
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私は桐野さんが好きです。
好きな小説家は?と聞かれたら、桐野さんと答えます。
でも、正直、この短編集は面白くなかったと思います・・・。
解説で、ある文芸評論家が、「本書で桐野夏生が短編作家としても松本清張に匹敵する~」と書いていますが、そんなことないんじゃないかな。桐野さんはやっぱ長編なんじゃないかな、僭越ながら。
それでも、絶賛離活中の私としては、表題作とか気になりました。
主人公は、夫の心に自分の何かを印象的に、しかもくっきりと傷つける形で残そうとしていたというのは、夫に不満を抱えるママ友からたまに聞く話ではありますが、私にはそういう気持ちはありません。
夫の心に私の何かを残したいとは