桐野夏生のレビュー一覧
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主人公のマイコは18歳の日本人。生まれた時から母親と2人暮らしで、アジアやヨーロッパの都市を転々としており、学校にもまともにも行っていない。現在はナポリの貧困地区に暮らしている。母親は何かから逃げているようであり、身元が判明することを極端に恐れている。自身は整形手術を繰り返し、容姿さえ変えながら、あちこちを転々としている。マイコから足がつくことを怖れ、マイコは国籍もIDも持たせてもらえない。
マイコはそのような暮らしに不満を抱きながらも、母親の言いつけを守りながらナポリで暮していたが、ひょんなことから日本の漫画を置く、MANGA CAFEに入り浸るようになり、漫画に熱中すると同時にカフェの主人のシュンに惹かれる。そして、マイコはある日、母親の元から逃走し、難民の少女たち、エリスとアナと行動を共にするようになる。そこから、息をつかせぬ感じで物語は走り始める。
テンポの良いストーリー展開で面白く読んだが、物語の骨子は、さほど意外性に富むものではなく、また、物語の最後はバタバタとまとめた感が強かった。桐野夏生は好きな作家であるが、彼女の作品の中では、好みの上位に来るものではなかった。 -
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大好きな桐野夏生先生の作品。
最初は40歳を過ぎた女性の寂しさや孤独、それに伴う身勝手さなどなど自分にもこれから降りかかるんじゃないかという現実を描いていたが東日本大震災が起こり、原発爆発事故が起こり…とここまではリアルな描写。
原発4基すべてが爆発っていうところからファンタジー感が増してちょっと追いつけなくなってきたって感じかな。
私がファンタジーやSFが苦手なのもあるけど。
それでもこの人の弱者の視点や観察眼は本当に好きで毎回考えさせられる。
ただ結末は悩んだんじゃないかなあ、それとも悩まなかったのかなあ。
私はご都合主義のハピエンはそんなに好きじゃない。
もちろん希望を持たせた終わり方で救われる人もいるのも事実だから否定はしないけど。
そして原発の事故によって首都は大阪に移転しない、けどコロナがやってきた。
得体の知れないウィルスに世界は飲み込まれた、なんて思いもよらないよな。
事実は小説より奇なり。 -
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ネタバレ出会ってしまったら危ない橋でも渡りたくなってしまうのは正直わかる。だから、有紗が沼に嵌っていくまではソワソワし通しで、指の隙間から見るように読んだ。ただ、これが本物の恋なんだとしてしまうところまでは気持ちが追いつかなかった。もちろん洋子の恋愛も同様である。
有紗には自分という軸ができた。ハピネスの頃の彼女とラストの彼女はまるで違う人間だ。それでもこれを「大人になった」とか、「人間として成長した」と前向きな表現で評価したくない。彼女は「図太くなった」だけなのだ。そしてきっとこの先もよりそれが強くなるのだろうと思う。良くも悪くも。
結果的になんとなくきれいに丸く収まったとしても、後々を考えると恐怖でしかない。このように考えてしまう私は、この本で言うところの"つまらない女"なのだろう。 -
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昭和の半ば1970年代にもとんでもない事件がいろいろあった。「連合赤軍のリンチ殺人」もそう。「永田洋子」という氏名は忘れられない。この小説はその事件に参加してしまった女性のその後の人生を虚実まじえて描いている。
主人公西田啓子は前期高齢者の仲間入りが間近、事件の秘密を抱え、出所後目立たないように生きていたのに2011年2月「永田洋子」が獄死したことによって、昔かかわった仲間にも居場所を知られてしまい、フリーライターの取材を受けないかと迫られる。それは断るのだが身内にもさざ波が立ち、決別したかった過去がよみがえる。結末はあっけにとられるが、あり得ると思わせる・・・。
「革マル派」「赤軍派」の特殊な団体の異常な事件だけれども、人間が共同社会で生きていくには避けられないことが含まれているのかもしれない。そののちの「オーム事件」でも知識人があり得ない行動をした。その時「なぜそうしたか?」はなまなか解明できるものではない。 -
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かつて故郷を捨て、今は取引先の男性と不倫の関係を続けている女性を襲った娘の失踪事件を軸に、人間の持つ業を描いた作品。
正直、真っ当な倫理観や理想論を持って読むと、まったく登場人物たちを好きになれないのだけれど、時にマンガ的でもある彼女らの振る舞い・心情は、どこか自分の心の片隅に潜む欠片のようにも思えて、憎めない。序盤に描かれる石山とのひりつくような生、そして後半の内海との冷え入るような死。途中回り道に思えるようなところもカスミ達の心の振れを描くのに必要だったように思う。
その長い旅路の果てにカスミが下した結論は理解もできるし、共感というか自分もその気持ちを共有できる境地になっていたのだけれど、でもやっぱり、ラストはきっちりと答えを描いてもらいたかった気もする。そこは読者の解釈次第ともいえるのだろうが。