桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ヤマトの南の海上に位置する海蛇島の、巫女の家系に生まれたナミマという女性が主人公の物語です。
彼女は幼い頃、一つ年上の姉であるカミクゥから引き離され、「陰」の巫女として、毎日カミクゥの食べ物を届ける役目を担うことになります。やがてナミマは、第二巫女の家系のマヒトという青年とともに、カミクゥの残した食べ物を口にするという禁忌を犯し、その後ナミマはマヒトの子を身ごもります。
ある日、マヒトは島を出ようとナミマに言い出し、ナミマはそれを受け入れて、2人は舟で沖へと出ていきます。ナミマは、海上で娘の夜宵を出産しますが、その後マヒトは、ナミマの首を絞めて殺してしまいます。
死んだナミマは黄泉の国に行くことになり、そこで女神のイザナミに仕えることになります。やがて彼女は、スズメバチの姿になって生者の世界を見ることになりますが、そこでマヒトはカミクゥの夫となり、ナミマが生んだ夜宵はマヒトの妹として育てられていました。マヒトの裏切りに恨みを抱いたナミマは、マヒトを刺し殺しますが、死んだマヒトは自分の罪もナミマのことも忘れてしまっていました。恨むべきマヒトの不甲斐なさに、ナミマはもって行きどころのない怒りに苛まれます。
一方、イザナミの夫であったイザナギは、八岐那彦(やきなひこ)という人間の名前で暮らしていました。自分の愛する女たちがイザナミによって殺されることを知ったイザナギは、人間へと身をやつしてイザナミのいる黄泉の国へとやってきて詫びますが、イザナミはそんな彼を許そうとはせず、黄泉の国の神として、死者を選ぶ仕事を続けます。
愛の恨みを抱く女たちと、その恨みを受け止めるだけの強さもない男との対比が一方の軸となり、恨みを募らせるも恨むべき男の不甲斐なさに恨みを貫けずかえって苦しみを負うことになるナミマと、同じく人間となったイザナギに失望しながらも、神として冷徹な姿勢を選び続けるイザナミの対比がもう一方の軸となって展開していく物語として読みました。 -
Posted by ブクログ
女子プロレスの小説ってありそうでないと思っていた。
ちゃんとあったんですね。
作者のホームページによると、タイトルの『ファイアボール』は、
薔薇の品種だそうで、DEEP PURPLEの曲とはまったく関係がないみたいです。
作者のHPを見るまでもなく、火渡抄子はやはり神取忍がモデル。
一応、長編ミステリーという扱いらしいが、
わし個人的にはミステリーと呼ぶにはかなり抵抗がある。
なぜなら、殺人事件の犯人があまりにも露骨で無防備でアタマ悪すぎだから。
警察は登場しないが、かなりマヌケである。
女子プロレスラーと編集者が探偵ごっこをしている間に、(この小説の世界に警察が存在するとして)警察はいったい何をしていたのだろう?
正直なところ、殺人事件は要らなかったのでは?
むしろ、名前だけ登場して描写がほとんどない三好、権藤、神林、キメラ、北本といった団体所属選手をもっと書き込んで欲しかった。
団体内の派閥争い、世代抗争などの人間模様をもっと深く追求してくれたら、
よりリアルなプロレス小説となりえたような気がする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ多くの人がイザナギ・イザナミの神話を「永遠の二項対立」の物語と理解しているだろう(私もそうだ)。イザナキは生命を産み続け、イザナミは生命を奪い続けるのだと。しかし本書で桐野氏は神話を物語として発展させ、イザナミにもっと過酷な現実を突きつける。
語り手であるナミマは人間であるため、憎むべき男が些かでも改心したかと感じられれば安らぎを得ることが出来た。イザナキは男神ゆえ己の運命すら覆して「死を経験できるかと思うと嬉しい」と言う。
しかし愛する男によって突然黄泉の国に送られ、閉じ込められたイザナミは、決して変わることが出来ない。許すことも仕事を放棄することもできない。
「真の破壊者」となってすべての運命を背負う。
「女は哀しい」「女であることは苦しい」という解釈も可能であるが、桐野氏がその他の作品でも貫く「真に強いのは女である」というメッセージを感じられる。
ナミマの物語がやや冗長なのと、その分後半の神話を超えた部分が短い気がしたので星は3つ。