桐野夏生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
数日前には「この強い女性の言葉は今読めない」と感じた文章だったが、今は読み易い。
何度か引用している、大江さんのいうところの「読書のタイミング」が、まさしく今だったようだ。
コラムの中に、お母様を亡くした時のことが書かれており、それも今ドンピシャだと感じる。
その文章に触発されて数日前「なにをみてもなにかをおもいだす」という文章を書いたけれど、それはまだ公開していない(ちなみにこの言葉は、横田創の『亡霊カフェ』という文章の一文で、そこでの表記は「何を見ても何かを思い出す」だが、音として想起したので、ひらがなになっている)。
読めばしゃべりたく(書きたく)なり、書きながら続きが読みたい文章。
大江さんの文章以来の興奮じゃないだろうか。
坂本龍一と村上龍の対談を読んだときもこんな感じになったかな(『EV.Caf´e』)。
分野の区別でなく、「あっ」と思った文に出会うとどこかに写しておくことにしている。
小説の時でも、対談やエッセイの時でも、詩でも、台詞でも、誰かが口にしたことでも。
そうやってクリップしておきたくなる言葉があっても、それによってしゃべりたく(書きたく)なるとは限らない。いまは公演の製作日誌を書いてた余波で手が饒舌なのか、もう眠ろうと思ってベッドで本を読んでいると、興奮してリビングに戻り、パソコンにメモし、こんなことをしてる始末。
いま早急に、かつ慎重に考えるべきことがふたつあって緊張してるせいもあるだろう。
桐野夏生の小説は過去に借りた『魂萌え!』しか読んでおらず、それがあまりしっくり来なかったので余計に、この本が今これだけ自分にヒットしたことが驚きだ。
ショート・コラム、エッセイ、短編小説、表題の「白蛇教異端審問」と通して読んでみての感想。
この作家さんのは、小説よりも、コラムとかエッセイの方が好きだ。小説も決して悪くないけれど、硬質すぎるように感じる、少なくとも今のわたしには。 -
Posted by ブクログ
優しいおとな、厳しいこども。なんとなく、そんな対比を考えてみた。資本主義の北半球の国々は、大体こうだと思う。子供は、小さなおとなだから、今時子供だましのなにかではもう歓心を得られない。
この小説を、「現代の日本の社会的な問題で……」という視座から云々すると、とたんにテクストが色褪せ、興がさめてしまう。具体的な地理も、アンダーグラウンドも、闇人も照葉も、物語にしかなしえない、普通の階級の日常をおくる私たちの生活のメタファーだと感じた。要するに、希望を失って闇に潜るのはなにもホームレスとかストチルに限った話ではないということだ。私たちは、人生の中で喪失しつつ、得ようともがきつつ、底なしの希望を希求していつのまにかエアポケットにはまりこむ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ荒廃し、スラム化した日本の繁華街シブヤでストリートチルドレンとして生きる少年イオン。
親の記憶が無い彼は人への「愛情」を知らず、自分を助けてくれる唯一の大人モガミにも冷たくしてしまう。
イオンはかつて一緒に育った仲間を探すため、地下の犯罪者集団に飛び込んでいくが、そこも安住の地では無かった――。
序盤は近未来のサバイバル小説という様相で、物語についていけるか少し不安でした。
が、誰のことも信用できないような生活を送ってきた浮浪少年の思考回路や、彼の目から紡がれる路上生活の苛烈さが妙にリアルで、すっと物語に入り込めました。
読者に違和感を抱かせずに世界観を構築する作者のテクニックは、いつもながら凄いです。
そして中盤から、イオンがアンダーグラウンド世界に潜っていく展開の先が読めず、この話はどうなるんだろうと嫌な予感がしながら読み…。
イオンが愛情を求めるのと同じくらい物語が加速していくドライブ感が凄まじく、唐突とも言えるラストの情景に辿り着くまで、一気に読みました。
全体的な感想は…悲しい話でした。
優しさや愛情というものの正体についての言及が鋭く、考えさせられました。
特定の一人への愛着(愛情)は、エゴイズムなのか。
愛情が深ければ深いほど、どうでもいい他人を傷付ける凶器になったりもする。
しかし、特定の愛情を受けなかった子どもは、その後の人生にそれが大きな影響を及ぼしてしまう…。
親を知らないイオンにとっての大人とは、優しいか優しくないか、どっちつかずかの三種類。
独りきりの時はそれゆえに強かった彼は、他人の気持ちに触れることでを自身の弱さを知る。
悲しくもあたたかいラストは、ひどく心に残ります。