桐野夏生のレビュー一覧
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自分が付き人をしているアマレス出身の火渡さんは最強だ。
うちみたいな小さなプロレス団体ではもちろん、
大手の「オール女子」のHIMIKOにだって引けをとらない。
そんな火渡さんが最近気にかけているのは
この前対戦途中で急に帰った外人レスラーのジェーンのことだ。
近くで身元不明の外国人女性の遺体が見つかったけれど
関係あるんじゃないだろうか。
しかしそればかりに気をとられていはいけない。
「オール女子」との試合で自分は勝たなければならないんだ。
まだプロレス初めて1勝もあげてないんだから。
イラスト:鹿爪秀紀 CG:田中和枝 デザイン:多田和博
戦う女の世界です。女子プロって見たことないけど興 -
Posted by ブクログ
うーん! 物足りない!
なんだなんだ、夏生さん、こんな薄いもの書くなんて。
久々の夏生で楽しみに読んだんだけどなあ。
全ての話が短編というよりは、長編になりえなかった小咄という感じで、中途半端感が満載だった。
その中で好きだー! と思えたのは「植林」と「毒童」。
「植林」は夏生作品には多い、腐った性根の女の根底にある膿みたいなものが軽快に描かれていた。
”植林”に含まれる意も空恐ろしくて惹かれるし、何より自分を特別な存在に押し上げるために、突然「グリコ・森永事件」を絡ませる破天荒な構成がなんともたまらん。
「毒童」の方は途中までは、何かミステリー的な仕掛けがあるはずと気を張って読んでいた -
Posted by ブクログ
どこまで行ってもゴキゲンに晴れ渡る青空になんて行けないような、どんよりとジメジメした行間の
オーラが好きで桐野夏生を読む。薄い雨雲に覆われて、今にも雨が降り出しそうな空気感。小説の中
での世界感だけではない、それ以前の読者の本を読む環境・心情にミステリー調の風を吹かせてしまう
あたりは、さすが桐野女史である。
今回手にした【ファイアボール・ブルース】は、僕が今までに読んだ【探偵ミロ】シリーズとはちょっと
作風が違う。ミステリーというよりはサスペンスか。小説の舞台は女子プロレス。「ファイアボール」
の異名を持つ女子レスラー・火渡妙子が巻き込まれるというか首を突っ込んでいくトラブルを、 -
Posted by ブクログ
あいかわらず読後感悪の桐野作品7短編。1篇目の「植林」は中でも終わらせ方がきつく感じ、読んだ後はぐへ。。。って胸焼けしたような感覚。「怪物たちの夜会」では不倫のドロドロ・愛人の狂気に空恐ろしさを感じ、表題「アンボス〜」では子供の妬みが表されていて、キツイ。他の作品も男女の卑しさ、心の闇、エゴ等などを各短編に徹底的に押し込めて、中途半端な救いなど垣間見せることさえなく・・・以上のように読んで楽しくなることは全くないが、それでもたまに桐野作品を読んでしまうのは、本質的に「的を得た」人間の内面を描いているからだろうと思う。ダーク過ぎるが、嘘はないというか。もしかしたらそれを読んでどこか安心しているの
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途中まで星4つあげてもいいくらい、テンポは上巻からさらにアップして、引き込まれた。話の要素はキツイ(レイプ、拳銃、半身不随、妊娠、だましあい・・・)けれども、読み手を嫌な気持ちにさせるものではなかったし。 しかし、ラストが私にとってはイタダケナイ。もしかしたら、別の探偵ミロシリーズで深く書かれてるのかもしれないけど、本書では死んでる状態でしか登場してない「成瀬」の手紙とかを最後にもってきて。。。意味がよくわからない。微妙に「つづく」みたいな終わりに感じられた。冒頭に40で死のうと思うとかいうラストを暗示するようなことをいっておいての微妙なラストでギャップが感じられてしまい、残念だった。
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展開とキャラクターは率直言って面白い思う。映画に携わる話ですが、専門的な用語や裏話的なところも丁寧な説明があるのでわかりやすいし、何か一緒に映画製作をしているような感じさえしてくる。映画監督の三蔵さんは考えが若すぎてちょっと同意できませんが、他の有村さん、玉ちゃん、高見さんに井上さんの気持ちはよくわかりました。 ラストはハッピーエンドともいえず、きれいさっぱり解決するという類のものでもないので、読む人によっては結局何が言いたいの?と思うかもしれないが、私は前述したキャラクターそれぞれの個性が出た上で話の世界に入り込めておもしろかったのでそれでいいと思います。
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この著者の小説は好きではないのですが、タイトルに惹かれて買ってしまったエッセイ集。表題作は『OUT』に対して「不当」と著者が思う批評に対して正面から闘う連載をまとめたもの。私にとっては、『頬に降りかかる雨』も『OUT』も最初は面白いんだけど、読んでいるうちに主人公の心情がどんどん私の手の届かないところにずれていって、あれあれと思う間に物語が終わる、常に着地点の違う作家――そういう人だ。これは読者である私の好みの問題なので、責められても困るが、批評家は個人の好みで発言すべきではない、であれば作家の反論に応えてしかるべきという著者の主張はわかる。残念なのは、何かの事情で半端で連載が終わっていること