その昔、僕の友人がですね、桐野夏生の「メタボラ」を評して「ポップにグロい」と言っていたのですが、あの表現、まさに言い得て妙だなあ~、と思って、今頃感心しております。そうなんですよね。桐野作品、まさに、ポップにグロい。「ああ、これが現実社会なのか、、、そうなのか、、、」と突きつけられる容赦のなさ。その消費文化っぷり、そのグロさっぷり。あの表現、うん。まさに、桐野作品の真理を突いている気がする、と、この「緑の毒」を読んで、至極納得した次第です。
この作品、なかなか興味深いのは、連載時は、角川書店の雑誌「野生時代」に2003~2011年もの長期間にわたって、断続的に連載していたものなんですって。あしかけ8年に渡る連載!?長い。長いぜ。なんでそんなに長い年月かけて連載してたのかしら?そこまで、超大作でもない感じの作品ですし。謎ですね。ちょっと、ここらへんは、謎です。
あと、冒頭に、シェイクスピアの「オセロ」の一文が、エピグラフで挙げられてまして。嫉妬の怖さを言及した文章でして。で、小説の題名も「緑の毒」だし。green eyed monster. 緑の目の怪物。西洋では、嫉妬の色は緑色、って感じになるみたいですね。だからまあ、嫉妬は緑、というのが、この作品のテーマなのだろうなあ。嫉妬の怖さを描いた作品なのだろうなあ。
という思いで、読み始めたのですが、あれ?そんなに嫉妬、重要ではなくね?って思いながら読んでました。最初の章こそ、川辺康之が、嫁さんのカオルの不倫で嫉妬に狂って変になっていく感じを述べてましたけど、この川辺がマジ変人。カオルが不倫している事への嫉妬の気持ちで自分が逆に悦んじゃう、みたいなドMやないっすか。変態だなあ。
で、その嫉妬の気持ちの荒れ狂いっぷりから、水曜日の夜によなよな、連続レイプ犯罪をやっちゃうよ、みたいな流れ?になってるのか?って感じなのですが、、、嫉妬、関係ない気がするぞ?嫁のカオルが不倫してなくても、川辺、なんらかの犯罪に手を染めてたんではないのかなあ?というくらいに、なんだか変態です、この人。
で、いきなり最初から、主人公?って感じで登場した川辺はレイプ犯だわ、第二章になったら目線がレイプ被害者の亜由美に代わって、この亜由美の姉ちゃんは引きこもりだわ、で、うわあ桐野さん、、、相変わらず、えげつなく酷い物語を綴るなあ、、、ってこう、早速ね、鬱な感じになるんですけどね。
第三章になったら、やたらとこう、桐野さんっぽくないというか、普通な感じになってくる。若宮伸吾、登場。このキャラが、めっちゃ好青年。妹のルリ子がレイプ被害にあったことに、心の底から憤慨して、ぜってえ犯人とっつかまえてやる!ルリ子!お前の無念は、兄ちゃんが晴らしてやるからな!と意気込む麗しき兄妹愛。家族愛小説ですやん?バリに、真っ当に良い兄貴。うお?桐野さん。なんか、テイスト違わなくね?
って思ったら、こっから、なんかこうね、一気に物語が、ポップになるんですよ。しっかりグロいんですが、凄くこう、桐野的にマトモ、というか、なんというか。
嫌なキャラばっか登場するんではなくて、カオルの不倫相手の玉木は、なんだか爽やか男臭いキャラだし、ピーターフラット2の住人の、飲み会企画した本木 夢も、なんだか善人。川辺の、元共同経営者だった野崎 友秀なんかも、なんだか憎めない。
そんなテンションで、なんだか矢鱈とポップに、話が、、、進んでいく、、、という思いで一杯でした。川辺はマジで人間のクズ、みたいな酷い男でしたよ、ええ。レイプ犯だし、医院経営の方針も、全然親切にしない診療、がモットーのダメ経営者だし。でも、何だかほかが、あれ?案外、善人多いじゃん?とか思って、サクサクと読み進めてしまいました。不思議な感じだった。
が、まさに「ポップにグロい」というそのまんまの評価となる気がする、そんな一作でしたね。
ってか、性犯罪、絶対いかんよ。ダメですよダメ。川辺にレイプされた被害者の女性たちが、どうしても警察に被害を届けたくない、と、しり込みしてしまう気持ち、これはマジで真実なのだろうなあ、、、そこだけは、マジで真摯に受け止めたい。性犯罪と幼児虐待は、マジでダメだよ。ということを、肝に銘じたいですね。そんな思いは、確かに感じました。
物語の最後も、川辺は、えらくアッサリと捕まる感じで、若宮伸吾、どっから絡んできてたのよ?という感じでいきなり登場して、ちょっと微笑ましかったですね。で、川辺の後日談を全然描写しないところとか、桐野さん、クールやなあ、とか思う。最後の章の、描き下ろしの話の主役ポジションの人物が「お前じゃないが仕方ない」の海老根 たか子ってか!というのも、うーむ。潔い。たか子、沖縄のいきつけの飲み屋で、じろじろ自分を見てたオッサンに、キレてるし。そんな終わり方も、うーむ。なんだか、いさぎよい。