桐野夏生のレビュー一覧
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本作のタイトルは『緑の毒』だが、あまり毒は感じなかった。
開業医の川辺は妻の浮気に嫉妬し、水曜の夜に街に出て女性に乱暴を繰り返す。彼の言動は身勝手の一言で同情の余地ゼロ。一方、被害者女性たちはインターネットで繋がり合い、川辺に復讐することを誓う。最低のクズ男に桐野姐さんがどう鉄槌を下すかとわくわくしていたのだが…
重いテーマを扱っている割には展開・登場人物の心理描写ともに何だか他人事のような軽い感じが否めない。終盤の展開に至ってはまるでB級コメディを見ているようで失笑した。私を含め、ある意味破壊的なダーク桐野を期待して肩透かしをくらった読者は多いのではないだろうか。
漫画のキャラクターの -
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ヤマトの南の海上に位置する海蛇島の、巫女の家系に生まれたナミマという女性が主人公の物語です。
彼女は幼い頃、一つ年上の姉であるカミクゥから引き離され、「陰」の巫女として、毎日カミクゥの食べ物を届ける役目を担うことになります。やがてナミマは、第二巫女の家系のマヒトという青年とともに、カミクゥの残した食べ物を口にするという禁忌を犯し、その後ナミマはマヒトの子を身ごもります。
ある日、マヒトは島を出ようとナミマに言い出し、ナミマはそれを受け入れて、2人は舟で沖へと出ていきます。ナミマは、海上で娘の夜宵を出産しますが、その後マヒトは、ナミマの首を絞めて殺してしまいます。
死んだナミマは黄泉の国に -
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女子プロレスの小説ってありそうでないと思っていた。
ちゃんとあったんですね。
作者のホームページによると、タイトルの『ファイアボール』は、
薔薇の品種だそうで、DEEP PURPLEの曲とはまったく関係がないみたいです。
作者のHPを見るまでもなく、火渡抄子はやはり神取忍がモデル。
一応、長編ミステリーという扱いらしいが、
わし個人的にはミステリーと呼ぶにはかなり抵抗がある。
なぜなら、殺人事件の犯人があまりにも露骨で無防備でアタマ悪すぎだから。
警察は登場しないが、かなりマヌケである。
女子プロレスラーと編集者が探偵ごっこをしている間に、(この小説の世界に警察が存在するとして)警察はいった -
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ネタバレ多くの人がイザナギ・イザナミの神話を「永遠の二項対立」の物語と理解しているだろう(私もそうだ)。イザナキは生命を産み続け、イザナミは生命を奪い続けるのだと。しかし本書で桐野氏は神話を物語として発展させ、イザナミにもっと過酷な現実を突きつける。
語り手であるナミマは人間であるため、憎むべき男が些かでも改心したかと感じられれば安らぎを得ることが出来た。イザナキは男神ゆえ己の運命すら覆して「死を経験できるかと思うと嬉しい」と言う。
しかし愛する男によって突然黄泉の国に送られ、閉じ込められたイザナミは、決して変わることが出来ない。許すことも仕事を放棄することもできない。
「真の破壊者」となってすべての -
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ネタバレ女探偵ミロシリーズの他の作品も含めて、この人の作品は殆ど読んできたが、本書だけ避けていた。あらすじを見た限りでは読むに堪えないと思ったからだ。それでも、今回何となく挑戦してみた。
読めない内容ではないが、おぞましい。「ダーク」という題は心の闇の意味だと思うが、このような闇の部分が本質の一部であるとしても、それだけで生きる人間が果たしているのだろうか。
何故このような作品を描かなくてならなかったのか。やはり理解できなかった。筋は追えるが面白いものではない。読後感がもっと悪ければそれなりの評価もできるような気もするが、そのようなインパクトもなかった。