小説・文芸の高評価レビュー
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猿橋賞(優れた女性科学者に与えられる賞)の猿橋勝子博士(1920〜2007)の半生を描いた物語。
女性である、日本人であるというハンディにもめげず、地道な研究を重ねて、日本で、そして世界で、科学者としての信頼を勝ち得ていった猿橋。ただただ尊敬する。
1954年の第五福竜丸が被爆した際の研究に続き、原水爆実験による放射能汚染について研究。「核兵器とそれのもたらす災害について、科学者には全人類に伝える義務がある。科学者の職務は、科学を人間の殺戮と文明の破壊に使わせないこと」オッペンハイマーの孫弟子の東大の先生も出てくる。
戦争について、「これからの世界に必要なものは、社会を形づくる共通の言語 -
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第102回直木賞受賞作。そして、日本で正統派ハードボイルド小説を確立した小説。
この作品は、探偵・沢崎シリーズの2作目にあたる。1作目は『そして夜は甦る』、タイトルも良いし、内容も良い。この2作目はタイトルが気になったが、直木賞受賞作でもあり、原尞の代表作と言われているので、読むしかないと思って読んでみた。
探偵・沢崎が、作家の娘が誘拐された事件に巻き込まれて始まっていく。犯人からは、なぜか身代金を運ぶ指名を受けていたため、警察や依頼人からは犯人の一味と思われてしまう。何とも言えない驚きの展開でストーリーが始まる。
1/2位を読み終えたところで、誘拐された少女や犯人の行方がわかりそうにな -
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ネタバレ同志少女超えと聞いて信じられなかったけど、これはすごい。どうやったらこんな話が思いつくのだろうか。まるで世界地図を見ているようなストーリーの壮大さに驚いた。
どんどんバラバラになっている話がつながっていくところも面白いし、何よりもひとつひとつの話が濃くて良い。詐欺師の話も面白かったし、晴斗と修吾の話も良かった。期間工やアフリカの話もつながっていて面白いなと。
回復した友彦と晴斗が話しているところで涙が出た。たくさん時間を奪ってしまったから、これからは返していくんだ。ひとりでがんばるという簡単ではない選択なのに、家族思いなところは変わっていなくて感動した。
個人的に、子育ては自分が親から受 -
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前作の完成度に惹かれ続編に挑戦。
とは言え「はい、次のお話」というものではなく、前作の事件の直後という時間軸から始まり、登場人物やコミュニティがその余波を色濃く受けたまま話は始まる点が新鮮かつ印象的。
好感の持てた主人公は、今や前作の事件を題材にした人気ポッドキャストの配信者に。
序盤に前作の核心に触れる部分があるため、やはり順に読んでいくのが良いだろう。
今作では行方不明となった友人の兄を追うことになるが、調査パートの取材・推理の描写が相変わらず巧みで、翻訳も合っていてスムーズに読み進められた。
物語は後半で一気に加速し、感情の渦に巻き込まれる主人公の視界をそのまま共有しているような没 -
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事件に関しては、その人の性別や年齢、生活環境によって、それぞれ違う感情を抱くと思う。
りりちゃん自身の、りりちゃんだけの気持ち、というのが最後まで誰にもわからず、なんなら本人もよくわかってないのだろうと思った。
彼女の言動は毎回、誰かが求めた(求めていると思う)モノを、彼女なりに受け取り、体現しているだけのような気がする。
私が全部悪いわけじゃないと思うなら、それを突き通して欲しいとも思うのに、周囲の求めに応える言動はそうじゃない、ということだけはなぜか感じるから、その都度コロコロ変わっていく。変えざるを得ない。そうじゃないと自分が保てない。そんな印象を受けた。 -
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人生の指針となってくれる、童話・寓話のような本。
特に自分が進むべき道について迷ったり、思い悩んだりしているときに、この本を読むとそっと背中を押してもらえるんじゃないでしょうか。
とある読書垢の方の投稿で知り、とても読みたくなり手に取ってみました。
この本を紹介してくれてありがとうという言葉しかないです。出会えて良かった。
子供の頃に出会えてたら、少し違う人生になるんじゃないか?というレベルだと思います。
海外文学は名前が覚えられないから苦手という問題も、この作品には全くないです!なぜなら、主人公の名前(『老人と海』の主人公の老人の名前と一緒)が最初に一回出てくるだけで、それ以外は名前は -
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見事に騙されました。本文を2回慎重に読み、2つの仕掛けはわかりましたが、誰が行ったかまでは最後までわからずの状態でした。さらに、いちばん重要なところは、まったく予想せずです。一部、強引なところも見受けられますが、許容範囲ではないでしょうか。解答編袋とじは、伊達ではありませんでしたね。
ただ、内容を理解したり、推理したりするには、海外の事情と、部屋の配置図があったほうが良かったと思います。最後の説明では、これがないとやはり推理は難しいかなと思いますね。
それでも、とにかく、とても楽しめた1作でした。こういう作品がもっと出てきてほしいですね。