朔の香り(改題)
調香師の元で働く事になった女性のお話
以下、公式のあらすじ
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香りは、永遠に記憶される。きみの命が終わるまで。
元・書店員の一香がはじめた新しいアルバイトは、古い洋館の家事手伝い。
その洋館では、調香師の小川朔が、オーダーメイドで客の望む「香り」を作る仕事をしていた。人並み外れた嗅覚を持つ朔のもとには、誰にも言えない秘密を抱えた女性や、失踪した娘の手がかりを求める親など、事情を抱えた依頼人が次々訪れる。一香は朔の近くにいるうちに、彼の天才であるがゆえの「孤独」に気づきはじめていた――。
「香り」にまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。
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所々に漂う蠱惑的な雰囲気
恐らく、「空気」というのは雰囲気を表す言葉になったように、香りってその場の状態を方向づける役割ってあるのでしょうね
調香師で、異常な程の嗅覚を持つ朔さんを筆頭に個性的な登場人物たち
本物の探偵の新城
庭の面倒を見ている源さん
一香の住んでるアパートの大家さん
書店の元同僚のさつきちゃん
警察官の木場
本当の探偵が出てくるのにミステリではない不思議
まぁ、犯罪もあるし日常の謎ではあるんだけどね
恋愛ではないけど特別な関係性でもあり、調香の依頼という日常の謎もあり
それでいて傷ついた人の快復を描いたヒューマンドラマでもありという様々な要素を含むなぁ
香りに関するあれこれに関しては「探偵ナイトスクープ」の依頼で時々山本香料が出てくる度にちょっとした知識を得られる
あと、世の中には嗅覚が犬並みに鋭い人もいるようで
芸能人だったらジミー大西、あとナイトスクープに出てたのは友達を臭いで判別できる女の子とか
フィクションだったらデカワンコとかね
なので、朔さんみたいな人がいてもおかしくはないかなとは思ってしまう
香りと記憶についての色々
「香りは脳の海馬に直接届いて、永遠に記憶される」
「人が懐かしい香りに出会う時素直に感情が表情に出てしまう。」
「香りは再起動のスイッチ。ショックやストレスを受けてフリーズ状態に陥った脳は、香りで目を覚ますことができる」
まぁ、香りで記憶が思い出される経験はある
それがどんな記憶であれね
朔さんの場合は、似たような香りでも正確に嗅ぎ分けるので、まったく同じ香りでなければ記憶をふと思い出すことはないのではなかろうか?
朔さんの臭いに関する生き辛さ
「嘘は臭う」
「匂いがうるさい」
「感情の浮き沈みが人より少ないから体臭がうるさくない」
一般的には臭いと言われる匂いが嫌なわけではないようだ
ホームレスよりも、ストレス系の臭いが苦手なのでしょうねぇ
人は嘘を付くときに体温が上がったり発汗したりするというし、そんな匂いを嗅ぎ分けているんんだろうけど、普通の汗とかとどう区別してるのでしょうね?
あと、タバコの匂いでも、それが信頼しているひとの臭いなら別という解釈も納得
匂いの好悪なんてその人の経験によって変わってくるんだろうな
それこそ、国によって好まれる香りの種類が違うようにね
朔さんのデリカシーのない発言も、本人にとっては気遣うところではないという認識なのかな
目に見える事をそのまま言ってるようなもので
朔さんは、嘘も即座に見抜くし、指摘することはあるけど、依頼された香りを作るのは、その先にどうなるか予想できても作ってしまう
何と言うか、そのスタンスに笑うセールスマンみたいなちょっとしたブラックさも感じる
そう言えば、ミツコという香水が出てきてた
特定の人ではなく漠然としたアジアンなイメージのネーミングらしい
この香水は「CAT'S EYE」のミツコさんが付けてるという設定があったなぁ
あと、モンシロチョウの翅はレモンの香りとあったけど、本当だろうか?
子供の頃はモンシロチョウを捕まえた事があるけど、匂いを嗅ぐような事まではしなかったので、よくわからん
香りに関する物語ではあるけど、食べ物に関する描写も興味を惹かれる
苺とミントのスープ、薔薇のジャム、烏龍茶と金木犀のジュレなんかは食べてみたいし
卵焼きと塩豚のスライス、胡瓜と茄子の浅漬け、塩結びといった普通のご飯の描写もとても美味しそうに感じる
そして考えてみると、朔さんの内面の深いところが伺えるエピソード
過去には、コインロッカーに入れられた子供の通報を次々としていたので、警察から怪しまれたというアレ
多分生きているうちに気づいているだろうに、亡くなってから通報するのは……
生き残ったとしても、親に捨てられた子になってしまうから、なのだろうか
それを考えると、朔さんが自身をそんな風に思っているのでは?と邪推してしまう
一番はっとさせられたのが「執着と愛着」の違い
確かに、違いは何かと聞かれると答えに窮する
自らの欲望が主体なのが執着だとしても、愛欲なんて言葉もあるわけで
愛情というのも一種の欲望なのではなかろうか?
「言葉の意味を越えて、嗅覚が際立つという稀有な体験をさせてくれる小説である。」と小川洋子がこの小説を評しているように、確かに読んでいて何らかの匂いを感じるシーンがいくつもあった
香りで記憶を思い出すように、想像から香りを思い出すというケースもあるのだなと実感した
あと、続編があるようだけど、まだ文庫化してないようで
文庫化したら読むかな