小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
家庭環境に悩める少女の、出会いと成長の物語
喧嘩ばかりの両親の下で育ち、理不尽に怒る母親の気を悪くさせないように過ごす莉子。母親からは独りよがりな期待をかけられるうえに恩着せがましく接されている。
ある日の塾帰りに偶然、不登校のクラスメイトである澪に出会って強く惹かれ、居場所を無くした少年少女が集まる広場で時間を共にするようになる(現実世界でのトー横のような場所)。そして、それは母親を誤魔化せる夜9時半までがタイムリミット。
莉子の置かれている状況は過酷だ。ただ、莉子自身がそれを理解しきれず、小さな家庭の悩みだと思い込んでしまっているのが見ていてつらい。でも澪がそれを客観視して、莉子の心を解きほぐしてくれる。
強い信念と自分の価値観を持つ澪に惹かれ、虜になっていく莉子の言葉にできない感情が胸を打つ。
一方の澪にも悩みはある。お互いが理解できずにぶつかり合うこともあるものの、魂が共鳴する二人の少女が最後に選び取った未来の姿には、心が洗われるようだった。
さらに、装丁の美しさも物語に花を添える。金銀の花布に、薄桃色のスピン。とても素敵で、本作にぴったりだ。 -
Posted by ブクログ
本当に求めているものが何か分からない、〝成長、繁栄、拡大〟ばかりを追い求める•••
誰しもが感じたことがあるけど口に出すことはないモヤモヤを、すっきりと言語化してくれている。
会社などの共同体において、そこまで能力がないのに〝やる気がありそう〟なだけでチャンスをもらえたり評価が上がることがある。
数字で見える成果なんてほとんど無いのになぜ評価されるんだろう?と気になっていたけれど、〝共同体の成長と拡大に貢献してくれそうな人材だから〟だったんだと腑に落ちた。
この〝共同体の成長と拡大に貢献してくれそう〟=良いこと というのが生殖の視点から語られていて面白かったし、明確な答えはないけれど非常に考えさせられる本だった。
この本の主人公はどこか朝井さん本人に似ていて、きっと朝井さん自身が同じような葛藤を抱えたことがあったのだろう。 -
Posted by ブクログ
人の目が気になって、自分の「好き」を引っ込めてしまう。そんな人へ、宮島未奈さんの『成瀬は都を駆け抜ける』は心に突き刺さる。
シリーズ完結編の舞台は京都。京大生になった成瀬あかりが、新しい仲間と出会い、「京都を極める」という目標へ突き進む。
成瀬の個性は、まるでブルドーザー。誰かに好かれようと自分を飾ることなく、興味を持った方向へ一直線に進む。周囲は困惑し、ときには振り回されながらも、いつの間にか少し前向きに変わっている。
京都は、それ自体が強烈な個性を持つ街ですが、それでも成瀬の存在は少しも霞まない。むしろ同級生や達磨研究会との出会いが、成瀬あかりという光を、これまで以上に鮮やかに照らし出す。『太陽の塔』をはじめ、森見登美彦作品への愛を感じる仕掛けにも頬が緩んだ。
成瀬自身は、最後まで成瀬のまま。けれど、彼女が歩いたあとには人と人とのつながりが残る。終盤、その積み重ねが一つにつながり、幼馴染・島崎との短いやりとりに泣き笑いした。
読み終えたあと、自分の日常まで少し愛おしく思える、幸福感に満ちた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
一気読みした。
一話目の彼氏にはただただムカついたけど、私が1番印象を持ってかれたのは二話目。
私も高校時代、本当にさかきちゃんだった。亜美ちゃんみたいな存在の女の子の隣にいるのが自分だった。
今思えば、なんで私と一緒にいたんだろう?って思うけど、当時は正直、その子のこと好きなのに一緒に居て欲しくない気持ちがあった。みんな直接的な言葉では比べたりはしなかったにせよ、いつも褒められるのはその子。誰かが私と喋ってても、私のことを聞いてくるんじゃなくて、その子のことを聞いてくる。
完全に嫉妬してた。
でもその子特有の悩みがあるのは当時から分かってた。また、男や女から注目を浴びたり、褒められることへの反応が、根本から違った。本当の私をみんな知らないだけなんだよって。
私が感じてる嫉妬も、彼女の抱いている世界を思えば、お門違いだった。本当の意味で、世界が違うんだなと気づいてたからか、だからか嫉妬に狂うことはなかった。
その子は今でも彼氏がいないし、結婚もしてない。言い寄る男は常にいるんだろうに。
何を考えてるのかずっとわからないし、あみちゃんみたいにまだ愛には目覚めていないみたいだけど、それ以外はマジであみちゃん。
私はさかきちゃんみたいに寄り添う気はないけど。
感想ってか自分の話になった。笑 -
Posted by ブクログ
今夏のドラマの『tシャツが乾くまで』を見た勢いでこの本を購入しました。
結婚・離婚・出産・キャリア・ジェンダーなどを、ある一つの共通する舞台から5組の人間に焦点を当てて書いた小説。
あまり小説を読んでこなかった人間でしたが、一気に読み進められました。
当人どうしの描写が良く描かれていながらも、他の登場人物に対する評価・コメントが世間一般のフィルターに似ているということを通して、いかに現代が多様であること許しているかのように見えつつも、何故か生きづらさ・行き詰っているように感じてしまうのを上手く表現しているなと読みながら感心しました。
自分たちは特別・世間一般で言われるフィルター・枠組みとは違うと思いつつも、他の人・カップルには無意識のうちにそのフィルター・枠組みを当ててしまうというバイアス。
親子や交際相手であっても、理解し合えそうで合えない部分のもどかしさを人生の1つのターニングポイントである婚姻前後の5編で表現した作者が凄かったです。
スカッとはしませんが、読後、リアルだなとニヤニヤしたくなる作品でした。 -
Posted by ブクログ
最近読んだ中で、一番心に残った作品。
自分と重なるところがあって、読んでいて胸が苦しくなる場面もあったけれど、それでもすごく好きな作品だった。
特に黒田さんの「誰にも選ばれない僕を、僕は選びたいとはどうしても思えない」という言葉が忘れられない。
ずっと自分が嫌いで、愛されるために努力すればいいのに、それすらできなくて。それでも誰かには愛してほしいと思ってしまう。
そんな自分の矛盾と重なるところがあって、苦しくなった。
苦しいところもたくさんあったけれど、自分の中にあった言葉にならない部分を、この本に言葉にしてもらった気がした。
きっとこれからも、ふとした瞬間に思い出す作品になると思う。 -
Posted by ブクログ
凪良ゆうさんは、他者には理解してもらえない特別な心の結びつきの男女を美しく描くのが上手だなぁ。
「世の中に『本物の愛』なんてどれくらいある?だから自分が手にしたものを愛と定めてそこに殉じようと心に決める。それが結婚かもしれない。」
更紗と文は、人に言いたい事も言えず、理解もしてもらえず、辛く苦しいことばかりだったと思う。
だけど、この世に1人でも分かり合える人間がいて『本物の愛』を知ってるという点では羨ましかった。
更紗の彼氏からのDVの描写は個人的に動悸がするほどリアルだった。
DVに限らず、孤独が怖いから感情を押し殺して、何も悪くないのに謝って、身体中の痛みに耐えて、違和感を見て見ぬ振りして生きてる全ての人にこの本を読んで欲しいな。
「誰かと一緒にいても、私はずっとひとりだったじゃないか」
「1人の方がずっと楽に生きられる。それでも、やっぱり1人は怖い」
恋愛とか友達とか家族とかスタンダードな結びつきがなくたって、本物の愛は築ける。
そして、ひとりは怖いけど分かってくれない人とはいる必要無いね。
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