【感想・ネタバレ】深紅のレビュー

あらすじ

父と母、幼い二人の弟の遺体は顔を砕かれていた。秋葉家を襲った一家惨殺事件。修学旅行でひとり生き残った奏子は、癒しがたい傷を負ったまま大学生に成長する。父に恨みを抱きハンマーを振るった加害者にも同じ年の娘がいたことを知る。正体を隠し、奏子は彼女に会うが――。

高橋克彦氏激賞! これは奇跡的傑作である。犯罪被害者の深き闇を描く衝撃のミステリー。吉川英治文学新人賞受賞作。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

尻すぼみ感は否めなかったが、前半の描写は凄まじく、これまで読んだ本のなかでもトップレベルに情景が浮かんだ。第二章は引き込まれた。

0
2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

特段ページ数が多いわけでも固い言い回しをしてるわけでもないがどこか重厚な印象を読後に感じる作品だった。
カコがミホに対して自らが被害者の生き残りであることを言わなかったことはモヤモヤして、スッキリしないけれども、もし言ってしまっていたらこの一冊としての魅力は変わってしまうんだろうなと感じた。

0
2025年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ずっと気になっていたので読んでみた。
なんだか凄い作品に出会えました。
那須高原修学旅行の夜、6年生の少女の奏子は、「家族が事故にあい病院に運ばれた」とだけ、言われ、急遽4時間かけてタクシーで東京へ戻ります。
その道中での担任のぎこちない態度から、家族はすでにこの世を去っていて、その原因が交通事故ではないことを奏子は感じとります。
監察医務院という場所で叔母に迎えられ、慰安室で目にした家族は皆亡くなっていて、白い布をよけて顔を見ることすら許されませんでした。
父の不義理が理由で恨みを買い、奏子だけがいない夜に、一家惨殺事件が起きてしまったのです。
奏子にはその後、家族が殺された日に東京に帰るまでの4時間が突如フラッシュバックしてしまうことがあります、つらすぎる…
そこから8年経ち、「被害者家族の娘」として育った奏子は、犯人の娘である少女、未歩に出逢うのです。
奏子は素性を隠して未歩に会い続け、未歩もまた、「加害者家族の娘」としての葛藤や苦しみを抱いていると分かってきます。
それでも、”自分の家族を殺した男”の娘という事実を無視することはどうしてもできず、憎しみを持ってしまう自分がいることにとまどい続けます。
2人とも自分の置かれた境遇に対し、恨み辛みを積もらせてきているのが作中とても感じられて、胸が締め付けられました。
奏子にはその後、家族が殺された日に東京に帰るまでの4時間が突如フラッシュバックしてしまうことがあります、つらすぎる…
最初は憎んで近づいたはずの未歩に、最終的には自分が被害者家族の娘であることを明かさないまま未歩の前から姿を消し、死刑となった父との残り少ない時間を未歩に過ごしてもらうという選択をした奏子、凄いの一言です。
ラストシーン(電車の前でのシーン)が、奏子と未歩が被害者•加害者家族の娘という垣根を超えて繋がったんだなぁと、感動的ですらありました。

0
2025年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第1章と第2章の細かな描写に目を背けたくなったけど、とても惹き込まれた。第3章どんな展開になるかと思ったが、第4章からはやめて、会わないで、という気持ちが強くなった。最後までカコは騙し通した(素性を明かさなかった)けど、新幹線のホームのときにはミホは気づいていたんじゃないかなぁ。別れの予感含め。

0
2024年12月12日

Posted by ブクログ

被害者の娘と犯罪者の娘。立場は違ってもお互い苦しんでたんだな。興味本位で近づいたとはいえ、違う立場で出会っていたら仲良くなれそうだったのに。ラストの別れのシーンが切ないな。

0
2021年03月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

圧倒された。厚めの小説だけど、ページをめくる手が止まらず、一気に読んでしまった。一家惨殺なんてどんな猟奇的殺人者かと思いきや、被害者には恨まれる理由があって、殺人者に同情的な視点がどうしてもできてしまう。加害者と被害者の娘が出会い、内心憎しみ合いながらも最後は想い合い…なんて、フィクションじゃなきゃありえない。けれど、救いようのない話を救える話にできる。これがフィクションのいいところだと思う。

0
2025年08月26日

Posted by ブクログ

冒頭からの出だしでは殺害された一家4人が不憫でならず、死刑判決を受けた犯人には同情の余地も無かったのに、死刑判決を受けた犯人が書いた上申書を読むと心情が一変してしまいました。
どんな理由があろうとも、人の命を殺めることは許されないはずなのに、なぜか犯人に同情してしまう自分が居ました。
殺害された一家でただ1人だけ死を免れた女の子と一家4人を殺害した犯人の1人娘の人生が交錯して。。。
正義って何?残された者たちの心情を様々慮ってしまう秀作だと思いました。

0
2025年08月23日

Posted by ブクログ

小学校の修学旅行の夜、先生に起こされて向かった監察医務院。そこには惨殺された父と母、そして幼い二人の弟の遺体があった。たった一人残された奏子は「私は生きていていいのか」と問い続けながら大学生に成長する。
奏子の父への恨みからハンマーを振るった加害者は死刑囚となるが、彼にも同じ年の娘がいることを知った奏子は正体を隠して加害者の娘・未歩に近づいていく…。

昔読んだ「破線のマリス」が面白かった記憶のある脚本家・野沢尚さんの手による小説。第22回吉川英治文学新人賞受賞作。
小学生の奏子目線の第1章、死刑囚都築則夫目線の第2章、圧倒的な緊張感にぐいぐいと引きつけられる。

被害者家族も加害者家族も形は違えどそれぞれが癒されない傷を負い生きている。誰を恨めばいいのか、誰を憎めばいいのか、自分は生きていていいのか、煩悶しながらいつのまにか二人の間に芽生えていく友情。

そして二人はある事件を起こす。それはとても杜撰な計画で、そんなにうまくいくはずもなく、殺人というものの圧倒的な重さを考えると、この結末で良かったと胸を撫で下ろす。
そして、それぞれが自分の思いを乗り越えて、ほんの少し明るい方に向かって歩こうとするラストが本当にいい。

野沢さんには長生きして、いい作品をもっと書いてほしかったな〜

0
2025年06月22日

Posted by ブクログ

究極の経験をした者はこういう思考をすることもあるかと想像力を広げられた。登場人物に感情移入してしまうとどんどん辛くなってきたので、途中からは冷静に一歩引いた感覚で読むようにしていた。

0
2025年03月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一家惨殺の生き残りの少女と、その犯人の娘を描く作品で、宮部みゆきを思い起こすような筆致の読み応えのある作品。ラストまで、どうなるんだろうと引き込まれる作品だったが、終わり方がちょっと物足りなかったかな。未歩は、生き残りの奏子だと気づいていたのかなとか思わなくもないような、でも匂わせもないし、とかそんなことを思った。

0
2024年12月31日

Posted by ブクログ

この本の描写は正直苦手ではある、生々しい凄惨な情景、触れるとあてられそうな心の描写。どれも読んでいてとても重くしんどい。苦手だ。
さらにストーリーが想像したくないぐらい濃密。
しばらくは惚けてしまう。
それぐらいの力を持ったこのお話、ということ

0
2024年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一家惨殺のただ一人の生き残りの奏子と加害者の娘の未歩。奏子は未歩の抱える傷をえぐり出そうと同い年の加害者の娘に接近する。なのに近づいたことで、だんだん気持ちが変化していく。
未歩の、暴力を受けたくて受けているのかも、父親から引き継がなければいけない罰のひとつ、という言葉が悲しい。まだ若いふたりが今後の困難を思うとため息が出るが、少しでも楽に生きていけるようにと思う。
前半はスピード感がありページがどんどん進んだが後半は失速気味だったかも。

0
2024年11月16日

Posted by ブクログ

設定がとても興味深く一読に値する。
タイトルの意味合いがやや弱いか。
感情移入しやすい柔軟な表現にまわりくどくて抽象的フレーズが交じり合う。
読むにつれ引き込まれ「この先がどうなる?」と飛ばし読み誘惑が発動するがもったいなさからちゃんと読むっていう。
「落としどころはどうするのか」も気になって気づいたら読み終えてた。
残念ながら著者の新刊はもう二度と夜に出ないが、別の作品を読んでみたくなった。

0
2024年07月16日

Posted by ブクログ

惨殺事件の被害者の家族として一人残された奏子の苦しみ、痛み、悲しみ、憎しみが、本当に辛かった。加害者の一人残された未歩と出会ってしまった奏子の負の感情がどこまで落ちていってしまうのか、胸が苦しくなりながら先を急いで読んだ

0
2023年05月02日

Posted by ブクログ

両親と弟2人を殺害されて生き残った長女は心の中に暗い闇を持ちながら生きていかざるを得ない。その彼女が加害者の娘を探し出した時に沸き起こる気持ちは復讐の気持ちなのか。ただ憎悪にまみれるだけでない、迷いや戸惑いはあるだろうという感じが見えながらのストーリー展開はスリリングで面白かった。ちょっと加害者側には甘いかなという感じも小説としてはよかったかもしれない。

0
2022年11月23日

Posted by ブクログ

殺人事件の被害者家族と加害者家族の交錯する人生。
結末がどうなるのかを考察しながら、最後まで楽しく読めました。

0
2022年10月22日

Posted by ブクログ

前半の殺戮シーンは壮絶やけど、本来は、その後の話がメインなんやろな。

家族が殺人事件に巻き込まれ、1人残った娘さんを中心とした話…
しかも、被害者側だけでなく、加害者側にも1人…

両者立場が正反対かもしれけど、本人らには何の罪もない…
とはいえ、精神的には、かなりの痛手を被って…
事件は、小学生の頃、時は流れ、多少の復帰はしたものの…

生きてていいの?殺されて当然…
色んな葛藤があって、徐々に、両者が近づいていく…まぁ、被害者側が近づいていくんやけど。

これは、酷い…死刑宣告されても、自身の中は納得出来んものがある…それは、被害者側の娘も、加害者側の娘も…

絶対、連帯保証人にはならんとこ!
人を騙すとかもダメ!
後先考えんと、こんな事するから…
自分の子供が、こんな風な生き方になってしまったらと思うと…(T . T)

0
2022年09月11日

Posted by ブクログ

前半部分の筆力には圧倒されました。
被害者と加害者の娘同士が繋がる部分を読んでいると憎しみとは様々に形を変えて住み着くんだなと感じた。
やはり人は生きてく上で憎しみや嫉妬などの感情を捨てることは出来なく上手く付き合っていくしかないなと考えさせてくれました。

0
2021年07月12日

Posted by ブクログ

修学旅行中に家族を惨殺され、一人残された少女の心情の描写や、犯人が犯行に至る動機を述懐する描写が巧みで、双方の気持ちがわかる分、序盤から胸が苦しくなります。

12年後、少女は犯人に自分と同い年の娘がいることを知り、自身の正体を隠して、犯人の娘に近づき・・・

憎悪と血の連鎖は断ち切れるのか?という重たいテーマを扱った読み応えのある作品でした。

0
2020年10月14日

Posted by ブクログ

秋葉奏子(あきばかなこ)と都築未歩(つづきみほ)、被害者と加害者、それぞれが残した子供が、今、20歳で、似たような袋小路でうずくまっている。奏子は、私と彼女はどう違うのかを確かめたく、未歩に会いたいと思った。家族5人の生活からたった一人残された長女の奏子と、死刑囚の娘である未歩の出会いはどんな未来を映し出していくのか。野沢尚 著「深紅」、2003年2月発行(文庫)。

0
2020年03月10日

Posted by ブクログ

一家惨殺事件の生き残りの奏子がその事件の犯人の娘未歩に会いに行く話。犯人の上申書がガツンとくる、けどそれでも、という気持ち。各々の視点で進むので、2人が背負う十字架が重くのしかかる。出会ってからどこに転がっていくのか、底なし沼に引き摺り込まれるようで目が離せない。

0
2025年06月06日

Posted by ブクログ

3.4です。
究極的な体験を自らの意思とは関係なくしてしまった二人、どちらにも、どちらの意見、考えがある。
ただ、やはり現実離れしていて、創作だと思い込みながら読みました。
これに、共感できるということは、普通の人生を送っている人にはできないと思います。

0
2025年04月27日

Posted by ブクログ

家族を失う苦しみも、家族が犯罪者になる苦しみも私には分からない。しかし、描かれている人間たちの苦しみは理解できる。

残された者は、自分の人生を精一杯生きることがせめてもの償いになるのではないだろうか。

破壊からは何も生まれない。

と、思う。

0
2025年04月06日

Posted by ブクログ

ラジオで聞いて設定に惹かれて読みました。
最後の展開は驚きもありましたが、1番の伏線だった
空白の30秒がなぞのままだったり、同じ野沢さんでも龍時と比べると期待する程度ではなかったので⭐️3つにしました

0
2024年12月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

途中まではスラスラ読めたものの、未歩に出会ったあたりからあまり共感ができなかった。。。
だが、家族をある日突然失ったということは相当な心の負担になるし、人格形成にも影響することがよく伝わった。

0
2024年12月16日

Posted by ブクログ

実際に起きた事件に興味があり、いろいろ調べていたら「練馬一家殺人事件」を基にしているというこの本を知ったので、読んでみた。

父親が恨みを買い、自分以外の家族が殺され、1人生き残った当時小学生だった女子大生が主人公。加害者にも自分と同じ年の子供がいたことを知り、素性を隠して近づいて仲良くなっていく、という話。

家族が殺された、ということも耐え難いが、修学旅行に行っていなければ自分も殺された、という事実の方が恐怖な気がする。父親が加害者にどんなひどいことをしたとしても、それは法廷で争うべきで、殺されて当然ということはない。
その後引き取られた親戚宅で普通に成長できて、もう事件のことは考えたくない、というのが普通の感覚だと思うが、なぜ加害者の子供と仲良くなりたかったのか、よくわからない。立場が違うとはいえ彼女も被害者だからだろうか?父親と同じ凶暴な血が流れている、と犯罪をけしかけえるが、思い留まるという行動もよくわからない。話の発想はいいが、あまり内容には納得できなかった。

0
2024年02月23日

Posted by ブクログ

修学旅行中に、家族全員を惨殺され、ひとり残された少女奏子。加害者の娘で、同じ年の未歩と会い、ある事件に加担していく。頭では理解していても、心の底から燻る思いに駆り立てられ、ブレーキをかける事なんて出来ない奏子の心情が、とても伝わってきた。これから先は、拓巳に心の黒い芯を溶かしてもらい、幸せになってもらいたい。

0
2023年02月12日

Posted by ブクログ

前半はすごくヘビー。
修学旅行から急遽タクシーで地元に戻り、これから向かい来る困難に備えようと心の準備をするシーンなんか、心の動きが手に取るように分かって素晴らしい描写と思う。

被害者遺族と加害者遺族、実際に会ったらどういう感情になるんでしょうね。

0
2023年02月11日

Posted by ブクログ

江戸川乱歩賞の「破線のマリス」は面白かった。その後も評判のいい本があったので買ってきて積んでいたが、この「深紅」がミステリを語る中で何度も目に入ったので読んでみた。衝撃的な出だしからすっかり夢中になって時間を忘れて最後まで読んでしまった。
目次は第一章から第五章まである。

まず第一章
事件が起きたとき修学旅行で信州の高原にいた小学校六年生の秋葉奏子(かなこ)の話。
旧友たちとふざけながら寝る用意をしていた時、緊張した気配で担任が部屋に入ってきて、すぐ自宅に帰れと言った。よくない予感がしたが、付き添われて高速道路を使って帰ってきた。行き先が監察医務院だと言う。不安は的中して、霊安室で両親と二人の弟に対面した。頭があるところがへこみ白布の上からでもいびつな形をしていた。家族思いで仕事も順調に成長し、新しい家も買った優しい父。ハミングしながら台所で働いていた母、可愛い年子の弟たち。呆然としている間に父方の叔母がきて、滞りなく葬儀が終わった。一人生き残った奏子に事件の話はひた隠しにされたが、テレビや週刊誌で自然に目に入ってきた。頭を金槌で殴られて倒れていった両親、可愛い幼い弟たち、床に広がった深紅、どんなに痛く苦しかっただろう。世間は一家に同情して、生き残った奏子に優しかった。事件現場で茫然自失の様子で座り込んでいた犯人はその場で逮捕された。人でなしの犯人は死刑にしろ。という。

第二章
犯人都築則夫の上申書が一回目の公判前に裁判長に提出された。

秋葉則夫は家庭が崩壊した農家の生まれで、高校卒業後教材会社に就職、関東以北の土地を営業で回っていた。知り合った学校職員の千代子と結婚し娘・未歩が生まれた。その頃は営業一課の係長になっていた、幸せだった。
その頃、秋葉由紀彦と知り合った。由紀彦の会社から機器を仕入れ、自社製品とセットにして売った。その利益の1%を秋葉の会社の口座に振り込んでいた。秋葉は取引先の要人という立場をとり目上の付き合いだった。
秋葉の実家は開業医だったが、能力がなくその劣等感をバネにしてきたが、成功して独立するのでよろしくといった。もちろん否といえる立場ではなかった。
その頃体が弱かった妻が死んで保険金が入った。8千万という金は今まで家を買い未歩の学資にと切り詰めてきた夫婦の気持ちが無念さだった。
世話になった秋葉は葬式の時にそっと涙をためて妻を見送ってくれた。それにほだされて、秋葉の父が予備校を開設するという、その資金の保証人を引き受けた。秋葉と連帯保証人ということだったが蓋を開けるとあ秋葉の名前が無く、全て自分の借金になっていた。取立て屋が来る頃は一千万円が二千五百万に膨れ上がっていた。それを貯金から返済した。秋葉はのらりくらりと言葉を濁し、ついに詐欺だったことがわかったのだが、秋葉の会社に依存して業績を伸ばした手前、会社の命運もかかっていた。バックマージンを2%に上げて分割で返していくと秋葉は言った。謹厳実直な性格はそれを許すことが出来ず、犯行に及んでしまった。夫婦を殺したことは覚えているが子供のことはショック状態で何も覚えていないと言う。心神耗弱か喪失常態か、裁判は子供殺しの点で紛糾した。上申書が公表されると、世間の風向きが変わってきた、だが一審の判決は死刑だった。
都築は控訴した。死刑は覚悟している罪は認めて償うといっていたが。


第三章から最終章まで
怒涛のようなショッキングな進行で読み進んだ後、ここからは8年後。奏子も未歩も二十歳を前にしている。
奏子が太めにした雑誌にッルポが乗っていた、以前取材に来た貴社の名前入りの記事だった。犯人の娘のその後が書いていった。
奏子は同じ年に生まれたその娘に合いたいと思う。立場は違っても辛い生き方は牡マジだろう、しかし自分は未歩の父のために取り返しの出来ない人生を歩む破目になっている。何とか未歩に合った自分の立場を知らせたい、娘に対して出来るなら復讐をしたい。

記者から無理に聞きだした未歩のアルバイト先に訪ねていき名前を隠して近づいていく。


あとがきは、吉川英治賞の選考委員の高橋克彦書いている。二章までの怒涛の展開、緊張感、重いテーマに絡ませる子供たちの立場、犯人の立場。稀に見る凄惨な現場を作り出した男。それを群を抜く作品として自信を持って認めた。奇跡的傑作だとある、亡き野沢さんへのオマージュの言葉と読めた。


読んでいてぞっとするほどの恐ろしい感じがある心理的に視覚的に。残された子供たち、世間の感心の深さ、マスコミの執拗さなど息が抜けない。
都築の控訴の根拠が読者に迷路を歩ませる。

三章から子供たちの話に移ると、日常生活の描写が幾分ゆるく感じられる。一、二章の流れで、読者の意識下に残虐なシーンが残っていてこそ、奏子に感情移入が出来るが、立場を変えると未歩の過去も悲惨である。
どう生きて来たか、これからどう生きるか、二人が生身でぶつかったとき、話の幕が閉じる。



44歳で亡くなった野沢さんは、多方面で心に残る作品を残している、創作でありながら孤独で悲しいこんなミステリはまだ読み足り無い。

0
2020年01月18日

Posted by ブクログ

なかなか評価の難しい一作。被害者遺族と加害者遺族の邂逅がおそらく作者が最も主張したかったテーマのはずだが、どうにも心理サスペンスとして焦点を曖昧に暈し、本質の記述から逃げてしまった感がある。前半部の評価が高いようだが、解説で触れられていた通り、前半のドロドロした描写はむしろ不要で、もっとシンプルに主題を追い求めていれば、より一層鮮やかな作品になったのではないか。そんな印象の強い作品。

0
2021年09月23日

「小説」ランキング