あらすじ
父と母、幼い二人の弟の遺体は顔を砕かれていた。秋葉家を襲った一家惨殺事件。修学旅行でひとり生き残った奏子は、癒しがたい傷を負ったまま大学生に成長する。父に恨みを抱きハンマーを振るった加害者にも同じ年の娘がいたことを知る。正体を隠し、奏子は彼女に会うが――。
高橋克彦氏激賞! これは奇跡的傑作である。犯罪被害者の深き闇を描く衝撃のミステリー。吉川英治文学新人賞受賞作。
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Posted by ブクログ
特段ページ数が多いわけでも固い言い回しをしてるわけでもないがどこか重厚な印象を読後に感じる作品だった。
カコがミホに対して自らが被害者の生き残りであることを言わなかったことはモヤモヤして、スッキリしないけれども、もし言ってしまっていたらこの一冊としての魅力は変わってしまうんだろうなと感じた。
Posted by ブクログ
ずっと気になっていたので読んでみた。
なんだか凄い作品に出会えました。
那須高原修学旅行の夜、6年生の少女の奏子は、「家族が事故にあい病院に運ばれた」とだけ、言われ、急遽4時間かけてタクシーで東京へ戻ります。
その道中での担任のぎこちない態度から、家族はすでにこの世を去っていて、その原因が交通事故ではないことを奏子は感じとります。
監察医務院という場所で叔母に迎えられ、慰安室で目にした家族は皆亡くなっていて、白い布をよけて顔を見ることすら許されませんでした。
父の不義理が理由で恨みを買い、奏子だけがいない夜に、一家惨殺事件が起きてしまったのです。
奏子にはその後、家族が殺された日に東京に帰るまでの4時間が突如フラッシュバックしてしまうことがあります、つらすぎる…
そこから8年経ち、「被害者家族の娘」として育った奏子は、犯人の娘である少女、未歩に出逢うのです。
奏子は素性を隠して未歩に会い続け、未歩もまた、「加害者家族の娘」としての葛藤や苦しみを抱いていると分かってきます。
それでも、”自分の家族を殺した男”の娘という事実を無視することはどうしてもできず、憎しみを持ってしまう自分がいることにとまどい続けます。
2人とも自分の置かれた境遇に対し、恨み辛みを積もらせてきているのが作中とても感じられて、胸が締め付けられました。
奏子にはその後、家族が殺された日に東京に帰るまでの4時間が突如フラッシュバックしてしまうことがあります、つらすぎる…
最初は憎んで近づいたはずの未歩に、最終的には自分が被害者家族の娘であることを明かさないまま未歩の前から姿を消し、死刑となった父との残り少ない時間を未歩に過ごしてもらうという選択をした奏子、凄いの一言です。
ラストシーン(電車の前でのシーン)が、奏子と未歩が被害者•加害者家族の娘という垣根を超えて繋がったんだなぁと、感動的ですらありました。
Posted by ブクログ
第1章と第2章の細かな描写に目を背けたくなったけど、とても惹き込まれた。第3章どんな展開になるかと思ったが、第4章からはやめて、会わないで、という気持ちが強くなった。最後までカコは騙し通した(素性を明かさなかった)けど、新幹線のホームのときにはミホは気づいていたんじゃないかなぁ。別れの予感含め。
Posted by ブクログ
圧倒された。厚めの小説だけど、ページをめくる手が止まらず、一気に読んでしまった。一家惨殺なんてどんな猟奇的殺人者かと思いきや、被害者には恨まれる理由があって、殺人者に同情的な視点がどうしてもできてしまう。加害者と被害者の娘が出会い、内心憎しみ合いながらも最後は想い合い…なんて、フィクションじゃなきゃありえない。けれど、救いようのない話を救える話にできる。これがフィクションのいいところだと思う。
Posted by ブクログ
一家惨殺の生き残りの少女と、その犯人の娘を描く作品で、宮部みゆきを思い起こすような筆致の読み応えのある作品。ラストまで、どうなるんだろうと引き込まれる作品だったが、終わり方がちょっと物足りなかったかな。未歩は、生き残りの奏子だと気づいていたのかなとか思わなくもないような、でも匂わせもないし、とかそんなことを思った。
Posted by ブクログ
一家惨殺のただ一人の生き残りの奏子と加害者の娘の未歩。奏子は未歩の抱える傷をえぐり出そうと同い年の加害者の娘に接近する。なのに近づいたことで、だんだん気持ちが変化していく。
未歩の、暴力を受けたくて受けているのかも、父親から引き継がなければいけない罰のひとつ、という言葉が悲しい。まだ若いふたりが今後の困難を思うとため息が出るが、少しでも楽に生きていけるようにと思う。
前半はスピード感がありページがどんどん進んだが後半は失速気味だったかも。