あらすじ
ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で、ナイフで刺された黒人が死亡した。棟居刑事は被害者がタクシーに忘れた詩集を足がかりに、事件の全貌を追う。日米共同の捜査で浮かび上がる意外な容疑者とは!?
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とても50年前に書かれた作品とは思えない傑作だと思います。
最後の伏線回収がすごいのと、それぞれの抱える過去と事件のつながり、人が生きているモチベーションって一体何なんだろう?怒り?悲しみ?名声?お金?愛情?それぞれの登場人物の心情描写が素晴らしい。途中でモチーフになっている詩との絡みがこれまた凄かったです。
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「日本のキスミーに行く」と言い残しニューヨークを去った黒人青年が、東京の高級ホテルのエレベーターで刺殺体で発見される。
NYと日本で交錯する捜査と、並行して進む、ある女性の失踪をめぐる、夫と浮気相手の奇妙な協働。
全てが繋がる完璧な筋書き。やはり名作。
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読書録「人間の証明」5
著者 森村誠一
出版 角川文庫
p9より引用
“ 食事が豪華であればあるほど、食事本来の目
的から逸脱してくる。だが、人々はその矛盾にほ
とんど気がつかない。"
目次より抜粋引用
“エトランジェの死
謎のキイワード
過去をつなぐ橋
おもかげの母
人間の証明"
思い過去を持つ刑事を主人公とした、長編ミス
テリ小説。同社刊行文庫改版。
高級レストランへと向かうエレベーターの中
で、一人の外国人青年が亡くなった。彼の胸には
ナイフが根本まで突き立てられており、しかしそ
んな体でどこからか歩いてきたようで…。
上記の引用は、亡くなった青年が向かったと思
われる、レストランに来る客たちについての一
文。何のために食べるのかを忘れなければ、食事
に対して変な見栄を張らずに済むのかも知れませ
ん。
何度も映像化されている、日本ミステリの傑
作。私はTV版の連続ドラマで見てから知ったので
すが、話も犯人も分かっていてなお、後書きまで
全て読み通せる作品でした。
初版が1977年と50年近く前で、舞台も昭和40年
代で現代とは色々と違っていたりする部分もある
のですけれど、人の感情に訴えかける事というの
は、今も昔も変わらないのかなと思わされます。
初版の解説が、「金田一耕助シリーズ」の横溝
正史という所も面白いというか、日本の小説界の
歴史を感じられる部分ではないでしょうか。
ーーーーー
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今頃になって、初めて読みました
初めて読んだけれども、動機も犯人も知っています。
被害者が言った謎の言葉「ストウハ」の意味も知っています。
中学校の英語の先生が「アメリカ人の発音でストローハットと言っても、日本人の耳にはストウハと聞こえる」とネタバレしましたからな。
当時はネタバレに寛容だったので。
でも知っていたのはマスコミで流れた部分のみ。
実はいくつかの事件が縄を綯うように互いに絡みながら進んでいく話とは思いませんでした。
で、読んだ感想としては「因果応報」。
これに尽きると思います。
森村誠一と言えば社会派ミステリーで、社会はミステリーと言えば刑事が足で証拠をみつけていく話だと思っていましたが、この作品に関していえば、確かに社会派で、足で証拠を探していますが、ラッキーな偶然が多すぎます。
それというのもこの作品は、通奏低音として「因果応報」が存在しているからと思いました。
表立った意見の被害者と加害者だけではなく、関係者の心の中で消せない、事件とならなかった事件が、その無念を晴らすかのように偶然を連れてきたのかな、と。
作者あとがきで、当時この作品が「情念のミステリー」と言われていたことを知りましたが、確かにこれは情念の物語です。
黒人青年を殺した犯人は、今でいうサイコパスのように描かれていますが、多分心から大切にしていたのが黒人青年との日々だったのだと思います。
その後の人生は犯人にとって何の意味もない、興味もない、形だけの人生だったのかもしれない。
ただその形だけの人生が成功してしまったから、大切だった心から愛していた過去と形だけ成功した現在との相剋の中の一瞬の躊躇が、すべてを終わらせてしまったのではないでしょうか。
だとすると、哀しい物語だなあ。
ママは思い出しはしなかった。
だって忘れてなかったのだから。
読んだ気になってパスしなくてよかったなあ。
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推理に、情念といった人間的要素を加えている本。
構成が極めて美しく、交響曲が最後ハーモニーを解決するような構成。私にとっての麦わら帽子はなんだったであろうか。
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久しぶりに読後に感無量の気持ちを味わった。
読むきっかけは著者の森村誠一さんの訃報のニュースをテレビで見たことから。自分より半世紀以上年上の方が書いた本、特に当時は戦争について興味を持っていたので悪魔の飽食を読むつもりだったのだが、こちらの方が先に目につき何気なく手に取った。
昔の人が書いた本だから読みにくいだろうかという心配は驚くくらい杞憂に終わった。
インターネットとスマホがないことを除けば全く不自然なことはない、どんどんと物語に入り込んでしまう巧みで魅惑的な文体。読みづらいなどと感じることは一切なかった。ああ世間は惜しい人を亡くしてしまったと思わされた。
作中にもある通り、西条八十の麦わら帽子の描く世界は誰の瞼の裏にも写る幻の母親だろう。初めて詩読んで感動してしまった。
そして本作で描かれる実際の母親「八杉恭子」はそんな一面を持ちつつも冷酷である。しかし文明やSNSが発達した現代では、子供を売りにSNSで有名になることを狙うなど、誰もが八杉恭子になり得る、またなりやすい時代となってしまった。
彼女は最後、非常に母親らしい一面をみせて終わったが、現実はもっと酷なのではないだろうか、救いがないのではないだろうかと、最後に思ってしまったのは欧米化し機械的になってしまった現在に生きる故のものだろうか。
また棟居の過去父親が殺された際の描写は非常に生々しく、文章なのに脳裏に焼き付く。薄まってきたところで最後にもう一度同じように描写されうっと生々しさにやられる。しかしこの描写は、戦争・戦後を経験した著者の実体験に近いものがあるのかもしれない、と感じた。実際戦後は米兵による性犯罪は多かったと聞く。そのような背景を考えるとフィクションとも割りきれず、嫌な不快感だけが作中の加害者たちに残った。
しかし、それだけで終らせないのがこの著者のすごいところなのかもしれない。作中でアメリカで独自に、積極的に捜査を行ってくれた割りに好感を持っていた刑事がその加害者だったことを知ったとき、言い表せない感情に苛まれた。許しがたいのに憎みきれない、これこそが人間の持つ二面性、人間の証明なのかもしれない。
シリーズもののようなので、ぜひ全て読んでいきたいと思う。もちろん悪魔の飽食も読みたい。
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「ストウハ」、「キスミー」というキーワードが何とも言われぬ哀愁と情愛を含んだ西條八十の「母さん 、僕のあの帽子、どうしたでせうね。 ・・・」という詩によって見事に紬合わされていく。 何十年振りかの再読だけど、読後の感動は今回も変わらない。 ♫「Mama,Do you remember〜」(^_^)v
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映画を鑑賞後に読みましたが、それぞれの良さがありますね。捜査の論理は映画の方が優れているように思いましたが、小説は人物描写が優れていると思いました。脇役的な登場人物も背景から心情まで丁寧に描かれています。時代背景や家庭環境など、さまざまな重荷を背負って生きてきた人たち、そしてその中で事件を起こしてしまった人たち。それも悲しい人間の姿なら、人の心さえ失わなければ、いつか立ち直れるのもまた人間、という、希望を失わない作者の思いが感じられます。
Posted by ブクログ
小さい頃、父親の本棚にあったハードカバーのを読み、面白く三部作全て読んだ。
棟居と、アメリカの刑事と、棟居の父親と、ジョニーと、八杉恭子が本当に絡み合って戦争の大変な時代を想像させてくれる感じにすごいなぁと当時思った。
そして、親と子の色んな関係とか思いとか人それぞれあるのだし、やっぱり慕うところも切ってもきれないものもあると感じた。
あのホテルは、もうストウハには見えないのかな?
Posted by ブクログ
棟居刑事は刺殺された黒人の事件を捜査するが、次第に過去の因縁や様々な人間の業をも手繰り寄せてくる。
緊張の高まりに伴って、徐々に謎が明らかになり、最後には周到に用意された意外性が待っている。
名優、松田優作さんが出演してる映画版もいつか観てみたいな。
Posted by ブクログ
これは凄い小説だ。
読後、思わず心の中でつぶやいてしまった。
「Mama do you remember?」という印象的な音楽と、黒人の子ども、そして風に舞って落ちてゆく麦わら帽子のシーンを、昔TVで見たことを鮮烈に覚えているが、映画も観ておらず、小説も読んだことがなかったが…。
特に最終章に向かうクライマックスは、登場人物のモノローグで語られ、少しずつ真実に迫ってゆき、最後に一つの大きな物語を終結させる。
読み手は結末に向け、隠された真実を刑事と共に追い続けるかのような気持ちになってくる。そして徐々に明らかにされてゆく過去、それぞれの切羽詰まった思いに胸を打たれてしまう。
とりわけ、人間の情愛、怨恨、欲望や自己保身が計算されたように交差し響き合う後半部分は、引き込まれるかのように読み進んでしまった。
いつの時代にも共通する人間の哀しさと、自分の中にもある醜さを呼び起こされるような作品だった。
本書の初版は1977年。50年近くも経過した作品とは思えない。
考えてみると、「事件発生に続く後半の謎解き」という流れは、本書への解説として寄稿している横溝正史の作風にも通じるものがある。この頃はこのような骨太な作品が多かったように思う。
文句なしの星5つだ。
Posted by ブクログ
2013年6月から真面目に読書を始めて200冊目!!
古いながらも映画やドラマその他もろもろ映像化された名作!!
読破して理解した。淡々と物語と進む…でもどうつながっていくのか…
冷静に興味をそそりながら最後は安心と共に悲しい気持ちになった複雑な作品。
私はオススメします。200冊目に相応しい作品でした!!
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映画・ドラマで幾度も映像化されているヒューマンミステリーのよく知られた作品。映像も原作も知らずに来たのですが、やっとの初読でした。
敗戦から復興してきた昭和30~40年代。都内で発生した黒人青年刺殺事件を巡って、その裏に潜むもの悲しいヒューマンドラマが、日米を舞台に展開していきます。
その中で触れられる、家族・夫婦、人種差別、戦後混乱などにまつわるエピソードに、心をえぐられるような衝撃を受けました。
単純な娯楽エンターテインメント作品とは異なる読後余韻が残ります。
映像化のたびに賛否分かれる評価がなされているようですが、私個人は時をおいて再読してみたいと思いました。(映像を見るかどうかは念頭にありませんが)
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森村誠一。高層エレベーターの中で黒人が胸にナイフを刺されて死亡した。被害者は別の場所で刺されてかなりの距離を移動していた。犯人は誰か、彼はなぜここまで移動したのか?被害者の住居があるニューヨークの警察にも協力してもらい、捜査を始める。また同時期にとある男の妻が行方不明となる。彼女は誰かと不倫していたようだが、男はその相手を探し求める。
多くの登場人物が現れ、事件を中心に群像劇のように物語が進む。主要人物は全員人間不信で心の奥に闇がある。その上で最後に犯人が見せた人間の証明とは。途中地方まで調べに行くところは正直ダレたが、クライマックスはとてもよかった
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何かで面白いという評判を目にして読んでみた。時代設定は70年代か。ホテルのスカイレストランへ向かうエレベーター内で死亡した黒人男性の事件の謎を、西條八十の詩をキーワードに追っていく。情景描写が豊かで目に浮かぶように想像が膨らみ、実際に自分もその場にいるかのように感じられる。伏線はここまで繋げるとやり過ぎに感じるが、これを差し引いても俄然面白い。失踪した妻の行方を、警察顔負けの捜査で真犯人まで辿り着いた小山田が凄い。因果応報は唯一ジョニーには当てはまらない点が切ない。
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母が若い頃に読んで衝撃的だったと話していたので、すぐに買って読んでみた。
棟居刑事の子どもの頃の描写が読んでいてつらくて、一瞬諦めそうになった気持ちを堪えた甲斐がありました。全部繋がった。
設定が所々変わっていそうだけど、映画も観てみたいと思いました。
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今更ながら初めて読んだ。原作では序盤から場面があちこち飛ぶのでややこしい気もするが、それらのストーリーがひとつに繋がっていく面白さがある。
奥の深い作品。読んでよかった。
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かなりの長編小説だったが寝るのも惜しんで一気に読みたくなる本だった。
ややご都合主義的な点はあったが、幾多の人間のストーリーが次第に繋がっていく様は見事だと思った。
人間の弱さ、醜さ、卑しさの中に残る一抹の愛が印象的だった。
登場人物が多いので、人物相関図を描きながら読むのもおすすめです。
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有名タイトルだが読んだことがなかったので改めて。
初版が1977年とのことで、さすがに古さは感じるものの、最後まで一気読みできる面白さは不朽の名作たるゆえんか。
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「人間の証明」のタイトルが出てきたときはゾクッとしました。
犯した罪は許されないし、犯人が殺人を犯してまで守りたかったものは全て喪ったけれど、人間だと証明はされた。
母の思い出だけに縋って日本までやってきたのに、生活と地位を守りたい母に殺されてしまうのは悲しい。松本清張「砂の器」に動機が似ている気がします。
全ての人間を憎む棟居さんを始めとする警察の執念も凄かったけれど、まさか棟居さんの父親が彼女を庇ったことで亡くなった原因の女の子が八杉恭子で、父親を殺した米兵のひとりがアメリカで事件を追ってくれていたケン・シュフタンだったなんて…因果因縁、と思いました。
妻に蒸発された男が、妻の不倫相手を突き止めることから始まるエピソードはいきなり始まって何の話?となりましたが、こちらも男と不倫相手の執念がすごい。メインの事件との絡みも。
古い作品なので男女観など相容れないものがありましたが、面白く読みました。西条八十の詩が印象的でした。
Posted by ブクログ
全体的にストーリーの組立が良く出来てるなーと思いました
最初読んでる内はどう言う風に進んで行くんだろう?と思ってましたが、登場人物それぞれの人間性が出てきてリアルな展開に引き込まれていきました
最後はまさにタイトル通り「人間の証明」となり、今一度人の心の底にある物を改めて考えさせられる内容でした
「全て失ったが1つだけ残したものがあった」この一文がこの作品のタイトルに込められた思いの全てを表しているんだろうなと深く心に刻まれました
事件の真相ばかりに気持ちが行ってましたが、終わりに向けての複数の伏線の回収も見事でした
ただ、難しい表現が多かったのと、性的な表現が好きじゃなかった、、、と言うか多く感じたので☆-1で
Posted by ブクログ
子どもの頃に映画のテレビCMで何度も聞いた「母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね?」の詩だが、想像以上にストーリーに重要な意味を持っていた。
Posted by ブクログ
お、面白そうだな、という感覚が読めば読むほど削がれていく感じでした……。あとまあ、男性作家の書く男女関係のテンプレートみたいな。女から見たら胸クソ悪いだけのやつ。伏線しいて回収したとこまではいいけど回収の仕方は平凡。